もしアイドル達にオリ兄弟がいたら?   作:雨乃谷 飴人

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こんにちは雨乃谷です。
総合6位 キュート2位 ユニット化おめでとうございます。
皆さんは群馬、当たりましたか?
ではどうぞ。


天才に兄がいたら?

「あたしは天才だ。」

 

だからあらゆる人を凌駕し、おのが道を進む。

 

「私は凡人だ。」

 

だからあらゆる人と同じ道を歩んだ。

 

「あたしは天才だ。」

 

だから努力しなくてもよかった。

 

「私は凡人だ。」

 

だから努力しなくてはいけなかった。

だから天才()は理解出来なかった。

 

「あたしは天才のはずだ。」

 

けれど、凡人()は理解出来なかった。

 

「私は凡人なんだ。」

 

だから、理解するために努力し続けた。

 

あの人()は凡人なの?」

 

あたしにはあの人がわからない。

 

あの子()は天才なのか?」

 

私にはあの子が手に取るように解る。

 

「だからあたしは努力する。」

 

あの人を理解するために。

 

「だから私は努力をやめる。」

 

これ以上あの子の天才を崩さないために。

 

「そのためにあたしは」「そのために私は」

 

『凡人になろう/でいよう。』

 

 

 

「……眠い。」

 

自分のお腹に重みを感じ、目が覚めた。随分懐かしい夢を見ていた気がするが……はて、なんだったか。

しかし、私が夢で起きるとは珍し……いや違う。圧迫感だ。特にお腹に普段感じない程の重みがあるぞ。

 

「……重い。」

 

「_(ˇωˇ」∠)_ スヤァ…」

 

腹に猫がいた。いや、妹がいた。

ベット全体に広がる長い髪、年齢の割には幼い顔つき、女性なら誰もが羨むであろうプロポーション。

そんな妹がそこにいた。

 

「むにゃ〜……」

 

「ちょっと。」

 

「んふ〜……」

 

「起きてほしい。」

 

「_(ˇωˇ」∠)_ スヤァ…」

 

起きる気配がない。

動かせる首であたりを見渡すと至る所に紙が落ちている。その紙には細々と文字が並べられ、データをグラフ化したようなものが書かれている。

普段触れない人にはなんなのか理解するのは難しいだろうが、論文だ。恐らく私の。

 

「そうだよ?」

 

「っ!?」

 

「えへっ♪」

 

驚いた……。私が思考を巡らせているうちにいつの間にか起きていたらしい。寝ていたはずの彼女目は私をしっかり捉えている。

 

「おはよぉアニー?」

 

「おはようシスター。」

 

彼女まだ眠そうにしている。

 

「志希ちゃんね、あの論文理解出来たよ!」

 

「ほぉ?さすが天才。」

 

「んふふ〜撫でてー!」

 

「お〜よしよーし。」

 

いつも通りな会話。変わらない日々。

 

「でもね〜……。」

 

「ん〜?」

 

「アニーは理解出来なかった。」

 

「……そうか。」

 

これも変わらない。

 

「大丈夫さ、すぐに理解する。」

 

「そうかにゃ〜?」

 

「だって君は天才だからね。」

 

「んふ〜なら、志希ちゃん頑張っちゃおうかな!」

 

「おお、頑張れ頑張れ。」

 

この娘は天才だ。18歳にして海外で飛び級なんてこともして見せ、匂いによる研究で彼女を知らない人はいないだろう。。この辺はあのマッド……いや父譲りの才能だ。

 

「ところでシスター。」

 

「なぁに?」

 

「私の部屋に何か焚いたな?」

 

「……」

 

そう、先程から嗅いだことがない匂いが部屋に充満しているのだ。まあ、匂いだけであるため体には無害だとは思うが。

 

「あれ〜?何も感じない?」

 

「感じないが?」

 

「ホントに?あたしを見て?」

 

「見てるが?」

 

……何か怪しい。

 

「なんかこう……ムラッとしない?」

 

「おい。」

 

さてはこの娘……

 

「おかしいな〜プロデューサーには効果あったのに」

 

「待て待てあの人に試したのか?君が?」

 

「あ、心配しないで〜対象はあたしじゃなくて事務の人にしたから♪」

 

「そういう問題ではない!」

 

また、迷惑をかけてしまった……。

私は何回菓子折りを持っていかなくてはならないんだ。

今度は煎餅にするか……。

 

「ま、いいや!」

 

「はぁー」

 

全く良くはないが、この調子ならもうしないだろう。

実は彼女は興味が3分程しかもたない。だから、研究もすぐに飽きてしまう。真剣にやれば相当な成果も残せるバスなのだが……。

そんな飽き性とも言える天才が、唯一人生の課題として調べ続けているのが、

 

「媚薬によるお香は効果なし……。

アニーはやっぱり面白いね!」

 

私の事だ。

彼女にとってこの世の中で唯一理解でない人間らしい。

私は妹とは違い凡人だ。現在は同じ科学者として生きているがここまでたどり着くのには血反吐を吐くような努力をしてきた。

それが彼女にとって理解できない点なのだろう。

と、言うものの彼女の足元程しか届いていないが。

 

「じゃあ今度は媚薬漬けにしてみよう……。」

 

「待ちなさい。」

 

「え?だめ?」

 

「ダメに決まっているだろう。」

 

家の浴槽が……。

 

「え〜アニーを理解するためにはこれくらいしないと」

 

「君の努力の方向性は間違っていると思うが。」

 

「むむ〜……。あ!じゃあ媚薬入のボディソープは?」

 

「まず媚薬から離れなさい。」

 

私を理解するために彼女なりに努力しているらしい。

本人は努力したことがないから新鮮だと言っていた。これが私にとって良いか悪いかは見ればわかる。

 

「まあいい。いや、良くはないが、その話は置いておこう。まずは朝食だ。」

 

「そう言えばお腹すいたにゃあ?」

 

「着替えは……後でいいか。何がいい?」

 

「おっまかせ〜!」

 

「了解」

 

「とうっ!」

 

「うっ」

 

ニコニコしながら私の背中にくっついて引きずられる天才。今の彼女は楽しそうでいい。私が科学者として彼女の前に現れた時はひどい顔をしていたからな。

願わくばずっとニコニコしていて欲しいものだ。

……しれっと媚薬をポケットに入れようするのはやめなさい。

 

 

おわり!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありゃ〜バレちゃた。アニーは背中にくっついている時が1番油断していると思ったんだけどねえ。

 

あたしがアニーを研究し始めて1年がたった。未だに彼を理解することは出来ていない。

 

あたしは天才だ。与えられた天才。大抵の事は少しかじればある程度は理解出来る。だから興味がそそられるものはなく、海外に新しいものを探しに行ったけどそれも意味はなかった。

 

はずだった

 

あたしが17歳の時に彼は姿を現した。突然に、前触れもなく。

 

「努力したんだ。」

 

彼はそう言った。周りの人間も天才兄妹だ、と口にしていたが、あたしにとっては人生を揺るがすほどの衝撃だった。

 

ありえない。この人は凡人のはずだ。それは周りも知っているはず。実は天才だった?そんなはずがない。

 

この人は、この凡人()は努力であたしのいる所まで登って来たと?短期間で?

 

努力を知らないあたしにとって、この出来事はどんな論文、どんな研究よりも興味が湧いた。

 

それ以来あたしは彼を研究テーマとして生活している。

慣れない「努力」を重ねながら。

 

今がすごく楽しい。

分からないことが嬉しい。

今、あたしは最高に幸せだ。

 

「シスター」

 

「なぁに?」

 

「後で正座。」

 

「え」

 

幸せだ。

 

 

 

 

 

 

 

おわり?

 

 

 




ありがとうございます。
私?群馬外れました。久々に泣きました。
ではまた次回。

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@Hameln_rain

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