Fate/GrandOrderとセブンスドラゴンシリーズを混ぜてみた   作:白鷺 葵

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・『百花繚乱クロニクルセブン』の世界観に関するネタバレに抵触する可能性がある。あちらの方でも大分バレバレだが、注意してほしい。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
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・クロスオーバーのバランスはナナドラ>越えられない壁>FGO(重要)。
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・真竜がFate関連要素をこき下ろす言動が出てくる(重要)
・セブンスドラゴン無印・2020シリーズ・Ⅲ-code:VFD-の容赦のないネタバレ。
・パワーワードのオンパレード。
・「もしも第1部開始前の時点で統合者がキレていたら?」という前提で出来上がったパラレルワールドの世界線。
・ゲーティアとレフが酷い目に合う(重要)
・ゲーティアとレフが酷い目に合う(重要)
・ゲーティアとレフが酷い目に合う(重要)
・ゲーティアとレフが酷い目に合う(重要)
・前回並みにヤバイ(重要)
・前回並みにヤバイ(重要)
・前回並みにヤバイ(重要)
・前回並みにヤバイ(重要)
・あまり深く考えないで読むことをお勧めする(重要)
・あまり深く考えないで読むことをお勧めする(重要)
・あまり深く考えないで読むことをお勧めする(重要)

上記の注意を読んだうえで大丈夫な方のみお進みください。


IF:某魔術式とレ/フ「引きこもってる場合じゃねえ!!」

「暇か?」

 

 

 奴は突然、冠位時間神殿――ゲーティアの背後に現れた。こちらが何かを返答するより先に、そいつは即座に「暇だな!」と自己完結する。

 

 次の瞬間、ゲーティアは首根っこを引っ掴まれていた。

 「貴様は何者だ」の「き」の字を言い終わる前に、そいつは言った。

 

 

「どうせなら、もう少し外に出てみたらどうだい? 人類救済を謳う憐憫の獣よ。――そうすれば、もっとうまい救済方法が分かるかもだぞ?」

 

 

 背後に広がる奈落の底へ、ゲーティアは容赦なく突き落とされた。どういう訳か浮遊魔術を使うことができず、魔術王ソロモンの身体は成すすべなく真っ逆さま。永遠に落下し続けるのかとらしくもなく不安に駆られたとき、不意に世界が明るくなった。

 そこは2020年代の東京だった。新宿にある東京都庁前。そこには老若男女が集められている。ゲーティアの格好はいつの間にか、ソロモンが見に纏っていた衣服から、山吹色のスーツへと変わっていた。緑の髪に眼鏡をかけた青年が、ゲーティアを見て点呼を取る。

 

 

「ゲーティア・アーキマンくんにレフ・ライノールくん。あの2名で、試験参加者は最後のようです」

 

 

 己に与えられた人間名もアレだが、もっと酷かったのは、後から出てきた既視感のある名前だった。

 試験関係者の視線を辿れば、爆弾を抱えたまま挙動不審になっているレフ・ライノール――もとい、魔神柱フラウロスの姿が。

 

 

「「なんなのだこれは!? どうすればいいのだ!?」」

 

 

 それ以外に何を言えばいいのか、2人には分からない。とりあえず、レフが持っていた爆弾は、試験で湧いて出たマモノへの攻撃に使うことで処分しておいた。

 

 もっとよく分からなかったのは、ムラクモ機関と呼ばれる秘密結社の存在だった。こんな組織が人員補給を行う試験のために都庁を貸し切るような動きを見せていたなら、既に千里眼で情報を掴んでいるはずである。こんな組織が表立って動いていた未来は見たことがない。

 しかし、これで終わりではない。ムラクモ機関の存在など、次に起きた出来事に比べれば一切大したことなかった。特に労せず試験を終えて、配置していない謎のマモノ――どうしてか星の具現者(アルティメット・ワン)と同じ気配を感じるヤバいやつ――を撃退し、屋上で待機していたときのことだ。

 何の気なしに空を見上げた。そこには、先程自分たちが倒した謎のマモノが、蒼穹の隙間を探すのが難しい程の量で、隊を組んで飛んでいた。奴らは無遠慮に――むしろ我が物顔で飛び回り、無力で脆弱な人類たちに襲い掛かる。あちこちから断末魔の悲鳴が上がった。

 

 無意味に、無残に、人間たちは死体に成り果てる。本来なら訪れるはずのなかった超弩級の理不尽が、ゲーティアたちが想像する以上の破壊力を持って示された。

 

 待ってほしい。こんな未来知らない。こんな惨たらしい未来なんか知らない。今まで見てきた死の中で、あまりにも許容不能な光景だった。

 老衰や病で死んでいくことより、不慮の事故で死んでしまうことより、人間同士の愚かな争いの果てに死んでいくより、凄惨な死に様を見たことがなかった。

 今まで人類が積み重ねてきた死は、あまりにも幸せな微睡みだった。恵まれていた、幸せな終わりだったのだ。ゲーティアたちは戦慄する。

 

 

「――何故だ」

 

 

 憐憫の獣は問いかける。

 眼前に降臨した、赤い暴竜へ。

 

 

「何故、これ程までの圧倒的な死を、悲劇を、何の感慨も抱かず振るうことができる――!?」

 

 

 下等生物の問いなど知ったこっちゃないと言わんばかりに、赤い暴竜が吼えた。

 

 ゲーティアたちの問いに答えてくれる相手が現れるのは、大分時間が経過した後のこと。

 この暴竜を始めとした7匹の帝竜を下した果てに相まみえた、黄金色の真竜であった。

 

 

***

 

 

 魔神柱は3000年の時間を費やし、冠位時間神殿で人理焼却の準備をしていた。その間、統括局は一切外に出たことがない。言い方を現代風に返れば「引きこもり」という単語が一番しっくりくるだろう。外での作戦遂行は他の魔神柱の役目だった。特に、計画開始のキーパーソンがレフ・ライノール・フラウロスである。

 彼は人類に対して一番期待をしている個体だった。彼はカルデアで出会ったデザインベビーたるマシュ・キリエライトを気にかけている。彼の考え――マシュを“自分たちと同じ、人間の手によってつくられた命”とみなした価値観は、個体によって差はあるものの、魔神柱たちの中で共通していた。閑話休題。

 

 他者の介入という予期せぬ事態によって外に投げ出された自分たちは、そこで悍ましい地獄を見た。

 人が蟻を罪悪感なく潰すように、圧倒的な力を持った星の具現者(アルティメット・ワン)――ドラゴンが人間を踏み躙る。

 自分たちが見てきた死など生ぬるい光景が、当たり前のように広がっていた。容赦なく広がっていた。

 

 人類よりもヒエラルキーが上の存在が齎す圧倒的な暴力に、人類は怯えることしかできない。――だって人間は、あまりにも脆弱すぎたから。

 

 

「我々が手を下すまでもなく、人類は滅びる。……()()()()な」

 

 

 口に出すだけで、ゲーティアの精神はごっそり削り取られた。前半までなら万々歳なのに、後半で何もかもが台無しである。ゲーティアとレフが人類に与して戦うしかないのは、『人理焼却をするためには、まず自分たちが生きていなければならない』という制約があるからだ。

 魔神柱の生命力は人間と違い、膨大な回数で蘇生することが可能である。だが、この地球に飛来した星の具現者(アルティメット・ワン)たちは、魔神柱が持つ力ごと『喰らう』性質があった。奴らに喰われれば最後、蘇生する分のエネルギーごと奴らの養分に変換され取り込まれる。

 奴らはゲーティアとレフを重点的に狙ってきた。ドラゴンが何を言っているのかは全く判別できなかったが、何を言わんとしているかの予想は何となく掴める程度になってきたように思う。アレは、人類が積み上げた歴史――人間によってつくられたものに対して強い特攻を有する生き物だ。ソロモンの手によって作られた魔術式は、上質な餌と言ってもいい。

 

 頭を抱えるゲーティアの隣で、レフも顔を覆っていた。

 

 

「しかし、文化と文明ごと種族を喰らう星の具現者(アルティメット・ワン)が、人類を喰らう対象として見出す可能性があったとは……」

 

「我が王の千里眼でも、この未来を見ることはなかった。我が王も、こんな未来を見た形跡はなかった。こんな未来、見えなかった。……何故、王の目は、この未来を見過ごしたのだ……?」

 

 

 魔術王の千里眼は、どんな未来も余すところなく見出すはずだ。こんな未来を目にしたら、流石の人でなしも、一言くらい言及するはずだろう。

 彼の傍に控えていた魔術式たるゲーティアたちだって、この未来を目撃していたはずなのだ。見ていたっておかしくなかったはずなのだ。

 

 もし、あの時点でこの未来を――ドラゴンの襲来を目の当たりにしていたならば、ゲーティアたち魔術式一同のとる行動も違っただろう。人理焼却なんかやっている暇はない。だってこんな――圧倒的な暴力によって蹂躙されるしかない運命と惨たらしい世界を、許容できるはずがないのだ。

 

 何をしていたのだ。この3000年間、人類から死を撲滅しようとしていた日々は一体何だったのか。人類を救いたい一心で牙を研ぎ澄ませてきたのに、それすら現状の打破には至らないことを思い知らされて。『規格外』という概念で殴られ続けた憐憫の獣は、既に途方に暮れていた。

 ……しかし不思議なことに、この世界にいる人類たちの中には、不思議な個体が存在する。圧倒的に不利な状況に立たされても尚、僅かな可能性にすべてを賭けて突き進む者がいるのだ。奴らは破竹の勢いで帝竜たちを倒し、人類最後の拠点に希望の光を灯し続けていた。

 人類に与せざるを得なくなってから、魔神柱であるゲーティアとレフの価値観も、少しづつであるが変容しているように感じる。以前の自分たちであれば、勝率100%でなければ安心して策を行使できなかっただろう。今では「1%でも可能性があれば何でもできる」と思えて仕方ない。

 

 

「人類の講じる策も滅茶苦茶だが、それを実行できてしまう連中も連中だ。惨たらしい終わりを跳ね除け続けている」

 

「奴らの動機もな。『世界を救いたい』と願っていることは確かだが、それ以上に、『生きたい』という意志の強さを感じる」

 

「……不思議なものだな、統括局。奴らは無様な生き汚さを晒しているにも関わらず、我々は、奴らの生き汚さから目を逸らすことができない」

 

 

 レフは困ったように苦笑する。ゲーティアもため息をついた。

 

 こんなものを見せつけられてしまったら、期待したくなる。自分たちが出した証明を、この世界の人類たちが否定してしまうのではないか――否定してくれるのではないか、と。

 此度の物語には、惨たらしい終わりは存在しない。絶望と悲しみだけで終わるのではない。他者の悲しみや絶望を背負った人類の救世主は、確かに希望を紡いでいく。

 

 

「フラウロス。我々が証明したかったことを、この人類はいずれ否定するだろう。これは確証だ」

 

「統括局」

 

「けれど、私は望んでしまう。我々の証明の否定と、彼らの証明を。――『希望に満ちた人類の戦いは、これからだ』と」

 

 

 願わくば、その証明が、自分たちの世界にいる人類にも適応されてほしいとさえ思うのだ。

 

 

「――レフ教授、いる?」

 

「――ゲーティア、いますか?」

 

 

 大分毒されてきたなと自分自身に苦笑していたとき、部屋に来客がやってきた。顔を出したのは、金髪碧眼で色白の少年少女。13班の専属ナビゲーターであるミロクとミイナだ。魔術式たる自分たちや、カルデアのデザインベビーたるマシュと同じ、人間によって生み出された人工生命体。それ故、自分たち――特にフラウロスの方が、ミロクとミイナのことを可愛がっていた。

 2人はソワソワした様子だったが、意を決したように『ソレ』を突き出す。簡素なラッピングが施された袋に入っていたのは、手作りのクッキーだ。2人は「レフとゲーティアの為に造った」と言って得意気に胸を張る。「もしも自分たちに父親がいたら、レフみたいな人だと思う」という言葉によって、感極まりすぎたレフが目頭を押さえて唸り出した。「オーバーリアクションだ」とミロクとミイナは苦笑する。

 微笑ましいけど凄く不服だ。真っ二つになれフラウロス、と、ゲーティアはひっそり呪詛を贈る。だが、ミロクは「兄ちゃんにするならゲーティア」と言ったので、ゲーティアは感極まってミロクの頭を滅茶苦茶に撫でまわしてやった。この子たちは本当にいい子たちである。身体能力の脆弱さは否めないが、その分析能力は自分たちのソレを遥かに超えた。自分の戦場はナビゲーターだと確固たる誇りも持っていた。

 

 ここの人類は脆弱だが、ただただ惨い死を待つだけの弱者ではない。

 誰もが自分の戦場を見定め、自分のできる戦いを繰り広げている。

 

 ――『生きたい』という、その一念で。

 

 確かに救いは求めているけれど、それは自分たちが信じる13班が成してくれる。彼らに思いを託すために最善を尽くすことこそ、己の責務だ――方向性はどうであれ、多くの者がそう信じている。信じて思いを託し、自分たちのできる範囲で、彼らの帰る場所を守ろうとしている。

 魔神王が成そうとする証明は、この光景を「無意味で無価値なもの」と断じること以外の何物でもない。託して託して繋がれてきた人の想いを、その一端をゲーティアやレフに託して散った人々の信頼も、無に帰すことと同義であった。昔の自分たちだったら、何の躊躇いもなくそう言えたのに。

 

 でも、自分たちは目の当たりにしてしまった。誰かが誰かに思いを託すその瞬間を。誰かが自分に希望を託し、目の前で死んでいくその姿を。

 自分たちは体験してしまった。誰かが最期に想いを託す相手として、他ならぬゲーティアやレフが選ばれたとき、心の奥から湧き上がってきた感情を。

 無意味にしてはいけないと思った。無価値にしてはいけないと思った。僅かでも彼らを可哀想だと思うなら、何か成すべきだと思った。――走らねば、とも。

 

 

(獣はきっと、殺される。『生きるため』に戦うこの世界の人類によって)

 

 

 けれどそれは、この世界に限った話。元の世界にいる人類が、ここの人類のように立ち上がれたなら、あり得る話だ。

 

 “救いなど要らなかった”――自分の中に湧き上がった自己否定。それを認めるには、まだゲーティアは物分かりが良くない。良くなりたくない。自分たちが積み上げた3000年を、そう簡単に「無意味で無価値」だなんて言いたくなかった。合理的な思考から離れつつあるのも、この人類に触れ合った影響だろう。

 悪影響と断じられない時点で答えは決まったようなものだが、今はまだ、それに見ないふりをしてもいいだろうか。今はまだ、その答えを先延ばしにしてもいいだろうか。彼らの成す証明を、もう少しだけ見ていたいと思っていいだろうか。――それに答える魔神柱の声は無い。これはあくまで、ゲーティア個人の意思だった。

 

 

■■■

 

 

 2020年代を駆け抜けたと思ったら、今度は2100年にいた。

 

 

「「なんなのだこれは!? どうすればいいのだ!?」」

 

 

 それ以外に何を言えばいいのか、2人には分からない。

 

 だって、帰って来たと思ったら、ニコニコ笑う銀髪に紫の瞳を持つ男が玉座に格好良く座ってて。

 「どうして千里眼があの未来を見通せなかったか知りたい?」なんて言うから、つい頷いた。――その結果がコレである。

 

 しかし、悲劇はこれだけで終わらない。

 随分後になって、2人は再びこのセリフを口走る。

 

 ――すべてが死に絶えたお花畑で、もう1回。

 

 

「「なんなのだこれは!? どうすればいいのだ!?」」

 

 

 だってそうだろう。休暇が明けたと思ったら人類が絶滅寸前だ。ノーデンスの語った「人類を滅ぼすのは秒単位あれば十分だよ! 巷ではRTAって言うんだっけ?」という台詞は、憐憫の獣にとってのベストオブ不謹慎に殿堂入りしている。こんなRTAは絶対嫌だ。

 自分と同じ“人間によって作られた”人工生命体でこの世界における息子のような存在だった青年は、魔神柱とは違うベクトルの怪物と化した。彼を下した際の叫び――「生まれてこなければよかった」という自己否定は、ゲーティアたちの心に深々と突き刺さっている。

 2020年代で可愛がっていたミロクとミイナの系譜を継いだ少女は、13班全員を激励しながら死んでいった。「貴方に会えてよかった」という言葉は、きっと忘れてはいけない。無意味にも無価値にもしてはいけないと思った。

 

 必死になって駆け抜けた自分たちだけど、最後に出した答えが正しかったのか否かは分からない。

 “人間の弱さがなければ、不安定さがなければ、人類全滅は避けられなかった”と知ってしまったためだ。

 

 意地汚くてもいい。愚かでもいい。無様でもいい。脆弱でもいい。過ちを積み重ねてもいい。泥くさくてもいい。――その不安定さが、その不完全さが、確かに、滅びの運命を覆したのだ。自分たちはその現場を目の当たりにし、骨の髄まで体験した。

 

 

「――どうだった?」

 

 

 そこに男がいた。この男こそが、『すべての偉業を焼却して、何もかもを失っても尚、人類の“生きたい”という願いを叶えて見せた』奇跡の体現者だった。

 玉座から降りてきた彼は、ゲーティアとレフに問いかける。――2人の答えは、もう決まっていた。

 

 

「「引きこもってる場合じゃねえ!!」」

 

 

 ――憐憫の獣は、この瞬間を以て死に絶えた。




ふと思うところがあって書いた産物。爆破テロ寸前のレフと冠位時間神殿に籠ったままのゲーティアをナナドラ世界に放り込んだら、クリア後には「引きこもってる場合じゃねえ!!」と叫びそうな気がしたんです。
魔神柱の面々は、ナナドラ世界を行脚しても「人理を焼く暇がある」と言いそうなタイプじゃないと思うんですよ。どこかでは「ゲーさんは人類の守護者になり得る資質があった」と考察されている方がいらっしゃったっけ……。

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