Fate/GrandOrderとセブンスドラゴンシリーズを混ぜてみた 作:白鷺 葵
・ナナドラキャラによる一方的な蹂躙劇
・ナナドラシリーズ全編に関する重大なネタバレあり
・真竜=アルテメット・ワンと同格扱い
・サーヴァントとしてではなく、真竜として直接乗り込んできた(重要)
・サーヴァントとしてではなく、真竜として直接乗り込んできた(重要)
・サーヴァントとしてではなく、真竜として直接乗り込んできた(重要)
・独自解釈
・理不尽
・メタ
・原作キャラ死亡
・語り手が上位生命体故、暴言や差別表現あり
・採集章不可避
・Pixivの『花咲く世界』シリーズ、ハーメルンで連載中の『百花繚乱クロニクルセブン』よりゲストが登場。該当者は「平行世界の存在」だと思ってくれればいい。
・ユウマは原作よりマシな死に方を迎えた模様。ただし深くは触れない。
【参考および参照】
『走れメロス』『津軽』(太宰治)
『吾輩は猫である』(夏目漱石)
カーチャン「ムカ着火ファイヤーインフェルノォォ!」
振り返ったら
瞬きしたら
口を開けたら
――端的に言う。殺された。
◆◆◆
カーチャンは激怒した。必ず、かの
カーチャンは真竜である。名前はノーデンス。どこで生まれ育ったかなんて、随分昔のこと過ぎて思い出せない。そもそも、真竜に至るプロセスを鑑みるに、『カーチャンの故郷は、カーチャンが生まれ落ちたと同時に宇宙ごと滅亡した』と言った方が正しいだろう。旧き命の終わりは新しい命の始まりなのだ。
カーチャンは『命を育み、育った命を食べる』という循環を繰り返しながら生活していた。けれども命の進化に対しては、人一倍に敏感であった。
話は変わるが、カーチャンにはペットがいる。やたらと豪奢で悪趣味な金ぴかだ。序列は3番目。性格は傲慢極まりないが、学習能力がない上にしょっちゅう慢心するのでドジが多い。しかも、こいつは真竜の常識――命の循環というものをてんで知らぬ。自身が極点の捕食者と豪語して憚らない。
そんなのだから、人類を3回襲って失敗し、挙句竜殺剣でぶった切られ、文字通りの前菜にされるのである。
因みに、満を辞した
そんな残念なペットだが、仮にも真竜。彼にも一応全盛期と呼ばれるものは存在した。海洋帝国アトランティスで行われた戦いで左翼を失ってから1万2000年後――西暦2020年、3番目の竜は再び地球/人類へと襲い掛かる。1度目の失敗に多少は思うところがあったようで、奴は1か月で人類を滅亡寸前まで追いつめた。人類が食われるのも、最早時間の問題であろう――どの竜たちもそう考えた。
だが、人類は屈しなかった。極東と呼ばれる小さな島国の首都――東京から、反撃の狼煙が挙がったのである。ムラクモ13班と呼ばれた“狩る者”たちが、1匹、また1匹と帝竜を屠り、快進撃を始めたのである。途中、人類同士の内ゲバの果てに“偽りの進化”を遂げ淘汰された者もいたが、人間たちは7の帝竜をすべて打ち倒したのだ。そんな“狩る者”を、3番目もまた、「喰らうべき極上の餌」とみなしたのだ。
傲慢な3番目が真竜の一端を下位次元生物に説いたのは、後にも先にも人類が初めてであった。
星という大地に種を蒔き、育て、刈り取る。ある者はそれを放牧といい、ある者はそれを収穫といい、ある者は――真竜はそれを殺戮と呼んだ。高次元生物である真竜にとって、地球と人類は“自分たちが大事に大事に育ててきた家畜”そのものであった。
真竜が人類を襲ったのは、文明が成熟した――即ち、人類という種族の刈り入れ時だったためである。「真竜に喰らわれることは、下位生命体の宿命である」と言い切った3番目に対し、人類は叫んだ。「そんな運命、お断りだ」「自分たちがお前を食ってやる」と。
得物を振り上げて竜へ襲い掛かる人類は、さながら“牧場主に反旗を翻した家畜”である。ペットは激怒し、家畜とみなした人類に襲い掛かった。長い戦いの果てに、勝利したのは人類だった。真竜たちが目を丸くするそれは、文字通りの下剋上。しかも成功だ。家畜が牧場主に判定勝ちしたのである。
因みに、フルボッコにされたペットは「人類を食えないのが非常に口惜しい」と捨て台詞を吐いて、すごすごと退散してきた。
奴がリベンジマッチと称して出向き、世代交代した“狩る者”をオードブルにしようとして逆にオードブルにされるまで、5000年の時間を必要とする。
この出来事を皮切りに、真竜は――特にカーチャンは、人類へと目を付けた。
次に人類へ喧嘩を売ったのは、“悪食”と名高い銀ぴかの変人・5番目である。好きなものは腐りかけの果実と食い残された骸、好みの
5番目もまた、金ぴかと同じように人類を滅亡寸前まで追いつめた。追いつめておいて敗北した。金ぴかと違ったのは、銀ぴかが文字通り“刈り取られる側”に回ったことだ。銀ぴかの敗因は「味付けに拘りすぎたため」という間抜けなものであったが、人類はこの間抜けさを見逃さず、容赦なく穿ったのだ。
「ああ、なんてスバラシイ!」
カーチャンは歓喜した。必ず、かの人類をセブンスドラゴンとして開花させなければならぬと決意した。この作戦を、カーチャンはCode:VFD(Vicarius Filii Dei/ラテン語で“神の子の代理”)と名付けたのである。
カーチャンは1番目の真竜から心臓を1つ貰うと――因みに、1番目の真竜は心臓を1つ取っ払った程度で死にはしない――、早速行動を開始した。決行の
まず、カーチャンは人間に擬態し、キャラを大幅に変え、自身にアリー・ノーデンスという名前を付けた。人類の業を目の当たりにしたショックでニートしていた研究者を唆し、自分の持つフロワロの毒を地球全土にばら撒かせたのである。結果、世界には竜斑病という病が溢れた。
竜斑病はカーチャンにとってのランク付けである。カーチャン自慢のフロワロは、“狩る者の適性がない人間を死に至らしめ、狩る者としての適性を持つ人間の能力を爆発的に成長させる”という特性があった。
そして、狩る者を探す手段を得るため、方々手を尽くした。成長は愉悦を地で行くアリー・ノーデンスの経営方針は、一部の社員からブラック企業と詰られる有様であったらしい。カーチャンにはブラック企業の何が悪いのか分からぬ。カーチャンは「成長し続ける」ものを愛する真竜だからだ。
業績を上げて利益を稼ぎ、アメリカの会社を大きくして、嘗て唯一制竜権を有した地・日本――ムラクモ13班が活躍した地・東京へ進出。共犯者である研究者/技術顧問が開発したゲーム――狩る者判定機――を使い、真竜になるべき人類の統合者を待ち続けたのだ。アリーの予測通り、統合者足り得る狩る者は、セブンスエンカウントに足を踏み入れた。
後は、真竜が蔓延る各時代へ狩る者たちを送り出し、他の真竜たちを狩らせた。真竜を5体狩ったのを見計らって、人類への躾け――剪定を行った。残されたのは、カーチャンが選んだ“狩る者”と、軍隊が造り出した“狩る者”。セブンスドラゴン候補の戦いに勝ち残ったのは、カーチャンが選んだ“狩る者”であった。
彼らはカーチャンの期待に対し、見事に応えてみせた。ここまでくれば、カーチャンの計画は達成されたも同然。故に、カーチャンは“狩る者”に心臓を捧げ、辞世の句――祝福を残して消えていったのだ。
後々になって、『人類はセブンスドラゴンになることなく、宇宙を再構成し直した』ことを知った。なんと、愛し子たちはカーチャンの想定を超えてしまったのだ。滅びの運命を覆し、人類という種族のまま、新たなステージへ足を踏み出したのである。
「ああ、愛おしい! 愛おしすぎて、滅茶苦茶に引き裂いてしまいたい……!!」
カーチャンは歓喜した。これ以上ないくらいに歓喜した。嬉しすぎて、つい、面々に挑戦状を出してしまう程に。支払いは13班持ち、お値段は300円。DLC『アリーのデスマーチ』はリーズナブルであるが、強化帝竜ラッシュは裏ダンジョン以上に歯ごたえがある。興味がありましたら是非ご購入を。
勿論、愛しい“狩る者”――13班たちは、カーチャンが出した挑戦状を軽く乗り越えた。メインディッシュのVFDも喰らい、本気を出したアリーをも倒して見せた。13班の成長を肌で感じられたことは、この上なく幸せな時間だった。あっという間に終わってしまうことが悲しいと思うくらいには。
満足したカーチャンは、どこか別の紡ぎへと旅立とうとした。愛し子たちに別れの言葉を述べようとしたとき、突如世界が崩壊したのである。眼前に広がるのは炎の海。自分が愛した人類は、地球上から消滅していた。どこを探しても、愛しき子たちはどこにもいない。
カーチャンは慌てて調べた。どうしてこんなことになってしまったのかを。真竜の力を行使し、カーチャンは理由を知った。
現在西暦2100年で、人類の統合者たる人物の先祖が活躍したのが2020年代だ。真竜来襲以前に人類が消えてしまったということは、人類の統合者に連なる系譜を持つムラクモ13班は“存在しない”ことになるから、人類の統合者も“存在しない”ということになる。5000年先まで続く未来、愛し子の存在は否定されてしまった。
犯人は、遠い昔、とある王が生み出した魔術式だ。太古に生み出され、現代となっては光射さぬ場所で跋扈する“魔術”は、真竜にとって『人類が有する文明』の扱いに入る。あくまでも扱いは『文明』なので、極点の捕食者に至るべき統合者には成り得ない。
カーチャンが手塩にかけて育てた13班の成長が、13班の存在が、彼らが選び取った進化が、剪定の場に立つ資格すらない
それ故、カーチャンは激怒した。必ず、かの
「――私は取り戻す。我が愛し子を、あの子たちが生まれ落ちるはずの未来を」
カーチャン――否、第2真竜ノーデンスは、地の底から轟くような声で宣言した。嘗て「人類をセブンスドラゴンとして目覚めさせる」と宣言したときのように。
当時と違うのは、第1真竜アイオトの仮面に映るノーデンスの顔には一切の笑みを浮かべていないことと、この場には自分たち以外に
腰まで伸びた銀髪の髪を紫の髪紐で束ね、無地の燕尾服――上着もジャケットもワイシャツもズボンも、すべて上質な高級生地でできている――を身に纏った青年は、心底面倒くさそうな顔をしながらうつらうつらしている。
「……だからって、さぁ。セブンスドラゴンとは違う“何か”に至った究極不完全生命体の権化を、わざわざ
「だってキミ、ヒマでしょ? 見たい夢が叶ったから、後はまどろみに沈むだけなんだもの」
使えるものは何だって使う。それが、ノーデンスがアリー・ノーデンスという人間として生きていた頃に学んだ教訓だ。旧時代の命であるとはいえ、真竜の序列2位は伊達じゃない。別の
「ね、なぜ旅に出るの?」
「怒ってるからさ」
「アンタの真顔が悍ましくて、ちっとも安心できません。目が座ってるけど、何するつもり?」
「バルバトス12時間、フラウロス17時間、フォルネウス24時間、サブナック26時間、ハルファス38時間、アモン43時間、アンドロマリウス62時間」
「……それは、何?」
「どこかの紡ぎで死んだ
「もうアンタ躾け程度で済ますつもりないだろ。俺に声をかけて殲滅戦挑もうと画策するあたり、蹂躙する気満々だろ」
「何を言ってるんだい? 当たり前でしょう。真竜を否定したキミにだって、少しは、わかっている筈だよ。……もう、これ以上は言わない。言うと、気障になる。ね、私と旅に出るよ」
アリーは青年の首根っこを引っ掴んで無理矢理引っ張った。潰れたカエルみたいな声を上げ、青年は渋々立ち上がる。アイオトも小さく頷き立ち上がった。
今のやり取りで、青年は第1真竜と第2真竜がグルであることに気づいたらしい。嫌そうにため息をついた後、左手を天に掲げた。
満天の星で埋め尽くされた空間に光が差し込む。天に広がったのは、どこかに存在するであろう紡ぎの世界だ。13班が消失する原因となった世界である。
そこから見えるのは、緑のシルクハットを被った紳士の後ろ姿だ。真竜としての能力が、モップ頭をシルクハットから溢れさせ得た紳士が原因であると告げていた。奴は何が楽しいのか、声高に叫んでいる。非常に煩い。
アリーは誰の許可を取ることなく、誰の制止を受けることもなく、紡ぎの世界に飛び込んだ。奴の背後に立つ。真竜としての威圧感マシマシだったのが原因らしく、紳士が即座にこちらへ振り向く。奴が瞬きする一瞬の時間で真の姿を曝し、奴が何か叫ぶより先に、速攻嘴で啄んだ。
◆◆◆
「ぎゃあああああああああああああああ!!」
「あーあ。アイツ、臓物ぶちまける程度で済むかねぇ」
悪夢に等しい光景(要するにR-18G時空)を眺めながら、超越者は口元を抑える。真竜が齎した運命を覆した超越者ではあるが、感性と道徳観は人間と同じである。多少、真竜たちの掲げる循環に
そのため、「ムカ着火ファイヤーインフェルノォォォ!」を地で行く
砕けちゃいけないものが砕ける音が響く。引き千切られちゃいけないものが千切れる音も響く。水が弾ける音が響く。スプラッタショーなんて比喩表現は生易しい。粘土でもこねるかのように、ノーデンスは男を弄んでいた。
幸いなのは、「話の方向性がギャグだから、多分ふわっとした感じで処理してくれる」ということか。おそらく、あの紳士が幾らノーデンスから折檻されたとしても――本人が望もうが望むまいが――すぐに復活するだろう。
そんなことを考えていたら現実になった。つい先程まで色々と“散らかしていた”紳士が、何事もなかったかのように飛び起きる。紳士はノーデンスに何かを言おうとしたが、ノーデンスは奴の発言を認めない。間髪入れず、紳士は鍵爪で頭を押さえつけられた。「おぐぅ」とくぐもった声が響く。
彼の首が変な方向に曲がったのも、砕けちゃいけないものが砕けるような鈍い音がしたのも、きっと気のせいであろう。紳士が何か言おうとする度に、ノーデンスは嘴や鍵爪で紳士をどついた。現状にテロップをつけるなら「ノーデンス の ついばむ! いちげき ひっさつ!」だろうか。
「あ、デバフで麻痺入った。……おっえ」
超越者は己の限界を察知し、そっと視線を逸らす。その先に、この惨状を見つめる人々の姿が目に入った。銀髪の女性は虚空を見上げたままブツブツと何かを呟いているし、夕日色の髪を束ねた少女と黒髪黒目の青年は(控えめに言って)スプラッタショーに釘付けだし、大盾を持った少女は顔を真っ青にして小刻みに震えていた。
狂気一歩手前の面々の肩を叩き、超越者は無言のまま首を振った。銀髪の少女は相変らず天を仰いでいるし、他の3人はますます困惑の色を強める。超越者も元は人間だから、彼らの気持ちは痛いほどよくわかった。実際、超越者自身も倒れそうだ。
『――彩羽、律治、マシュ! 所長と一緒に、今すぐそいつから離れるんだ!』
「へ?」
『そこにいる執事風の奴とフードを被って杖を突いている奴、レフを襲ってる生き物から、アルテミット・ワン並の反応が出てる!』
どこからか声が聞こえてきた。切羽詰ってはいるけれど、なんだかゆるふわしていて頼りなさそうな青年の声だ。超越者がまだ人間だった頃、共に2020年代を駆け抜けた戦友を思い出す。
上司にして初恋の女に裏切られ、技術者なのに利き手を失い体が不自由になって、後に「自分のミスを挽回する」ためにサイボーグと化した、我らが親愛なるムラクモの最終総長
2020シリーズではありったけの不幸を背負いながらも竜戦役を駆け抜けた男だ。彼の頭脳と開発に助けられなければ、人類の勝利はあり得なかったであろう。80年後のU.E.77年では、サブイベントで2020の系譜を感じさせる役回りになっていたか。
しかし、それだけではない。奴は裏ダンジョンのボス・ブラスターレイブンとして13班の前に立ちはだかる。2020シリーズの裏ボスを務めた人類戦士タケハヤと比較すると、自己回復無し・ブレスは吐かない・戦術がシンプル(自己強化で火力上げ⇒高威力攻撃orランダムな複数攻撃)・攻撃力はやや低めだ。
自己強化からの一撃は、下手すると一発600~700程の体力を持っていかれる。13班員のHP最大値は500なので、ブラスターレイブンの攻撃は、文字通り“キチガイ”と言えるだろう。2021から80年経過しているということは、キリノの実年齢は108歳となっている。これで、必殺技名が『レイブンシュート』や『レイブンパンチ』。もう何も言えなかった。
……今、「人類戦士タケハヤの方が4桁ダメージを叩きだす“キチガイ”ではないのか?」とツッコミを入れるのはやめてほしい。
ひとしきり旧友へ思いを馳せつつ、超越者は青年の言葉に対して首を傾げた。彼の言う“アルテミット・ワン”とは何なのだろう。しかも、彼の言葉からして、自分たちは相当な危険物扱いされているのではなかろうか。
「アルテミット・ワン……!? 人類では勝利し得ない存在と呼ばれる“星の具現者”が、どうしてここに……!?」
「いや、俺は人類なんですけど」
『嘘をつくな! お前のような人類がいてたまるか!!』
大盾を持つ少女の言葉に弁明しようとした超越者であるが、声だけの青年によって派手に否定された。泣いてるのと怒ってるのが混ざったような声だった。
「……アルテミット・ワンが何を意味しているかは知らんが、私とあそこで怒り狂ってるノーデンスは、お前たちから見れば高次元生命体と言えるだろうな」
「こ、高次元生命体……!?」
「我は第1真竜アイオト。星という畑に命の種を蒔く者だ。あそこで怒り狂っているのは第2真竜ノーデンスで、命を育む者。真竜とは命を育み進化を促す存在にして、命と文明の捕食者だ」
「ちょ、ストップストップ!」
こちらのことを“人類では勝利し得ない存在”認定してきた奴らに対し、『真竜が何たるか』を説くなんて逆効果でしかない。
だが、アイオトはそんなこと思いつきもしないのだろう。幼子に語り聞かせるが如く、粛々と言葉を続ける。
超越者は慌ててアイオトを止めようとしたが、奴は無視して語り続けた。
「星という大地に種を蒔き、育て、刈り取る。ある者はそれを放牧といい、ある者はそれを収穫といい、
『っ、みんな! やっぱりこいつらは危険だ! 離れ――』
「真竜が喰らうのは、“熟成した文明を持ち、繁栄を極めた種族”だ。命がそこに到達するまでは手助けする。だが、その中には、
「先輩、所長を連れて下がってください! サーヴァントとして、貴方方だけは絶対に守り抜いてみせます!」
『ダメだマシュ! いくら疑似サーヴァントのキミでも、あいつらにはひとたまりも――』
「真竜たちもまた、いずれ目覚めるであろう7番目の竜に喰われる運命になる。7番目の竜は特別で、一個宇宙終焉と創成する力を有するのだ。かくいう私も、嘗ての宇宙で7番目として目覚めた命。それ故に、命という種を蒔く役割を担っていた。それは、人類にも当てはまる」
「――え?」
「所長!? 前に出ちゃだめです!」
「……ねえ、それ、どういう意味?」
「それ、俺も気になる」
「彩羽先輩!? 律治先輩も危ないですから下がって!」
「第2真竜ノーデンスは、人類を7番目の竜として目覚めさせる計画を立てた。計画は順調に進み、あと少しで人類が第7真竜として目覚める所まで至った。だが、滅亡への袋小路にいながらも、人類は足掻いた。足掻いて足掻いて、統合される際に溝を作った。竜としての側面であるVFDと人類の側面である狩る者に別れた7番目の命は、己の至るべき進化の形を巡って最後の戦いを始めた。結果、人類の統合者がVFDを屠り、世界統合の際に『竜のいない世界』を、『誰もが望む究極のハッピーエンド』を願った。そうして――人類の統合者は因果律を改変することによって、すべての竜を狩り尽した。己の住まう宇宙には、竜という高次元生命体すべてが
『「「な、なんだってぇぇ!?」」』
「嘘でしょう!? そんな、そんなことって、……文字通りの魔法じゃない!」
「もうこれわかんねぇな」
超絶怒涛の展開に、4人とナビゲーターが悲鳴を上げる。御伽噺もびっくりするレベルの話であることは百も承知だが、ところがどっこい、正真正銘の実話だ。……最も、証拠を見せろとせがまれた場合、人類の屍累々になった有明へご案内しなくてはならないが。
あの世界は永遠に時間が止まったままなのだろう。ウラニアやエーグル、ブリジルドやサイラス、ナギリ、ジュリエッタとナグモ、ヨリトモとミオの死体は、変わることなく残されているに違いない。
死体すら残せず消えてしまった受付嬢の双子――チカとリッカ、自身の存在意義に喧嘩を売ったユウマの姿が脳裏に浮かんだ。超越者がひっそりと「切り捨ててきたもの」を悼んでいたとき、
「――そうして、今、あそこにいる男こそ。その偉業を成し遂げた“人類の統合者”、その権化だ」
『「「「えええええええええ!?」」」』
「おいちょっと待て! 俺まで巻き込むんじゃない!!」
被害がこちらにまで飛び火した。爆弾を押し付けて爆発させたくせに、アイオトは以後沈黙を保つ。対して、入れ替わりで4人とナビゲーターが阿鼻叫喚になった。
いくら人類の統合者と言えども、人類を纏めることができるかと言われればNoである。
超越者だって人間だもの、万能なわけがない。そんな簡単なことも、真竜にしてみれば理解不能なことのようだ。
火に油を注いで爆竹を投入したような現状をどう治めるべきか。泣きたいのを我慢して試行していたとき、突如地面が揺れた。
「それでは、私はお暇させてもらうとしよう。そろそろこの空間も、私の精神も危ない」
声の主はモップ頭にシルクハットを被っていた紳士のものだった。彼の言葉から何となく嫌な予感がして、第2真竜がいた方に視線を向ける。そこには、モザイク必須な“何か”がびったんびったんと跳ねまわっていた。悲劇的なビフォーアフターである。
発声器官が失われているにも関わらず、声の出どころはモザイクの塊だ。嘶く第2真竜から逃れるように、モザイクの塊は消滅した。どうせ
「ちっ、逃がしたか」
アリー・ノーデンスの姿になった彼女は、忌々しそうに舌打ちした。開眼から半眼になっているあたり、それなりに八つ当たりができたのだろう。納得はしていないようだが。
超越者は半ば寒気を感じながらも、ひと段落ついたことに安堵する。そして、(控えめに言って)スプラッタショーを強制視聴させられてしまった4人とナビゲーターへ視線を向けた。
わあわあ騒ぐ3人とナビゲーターの騒がしさとは打って変わって、銀髪の少女が怯えるように身を震わせる。金色の瞳には、死に対する明確な恐怖が滲んでいた。
「嘘、嘘よ。私が死んでいるなんて嘘。で、でも、私、マスターになれなくて、レイシフトが……じゃあ、私はやっぱり? ここから出たら、消滅するの?」
「……もしもし?」
「やだ。いや、消えたくない。まだ誰も私を認めてくれないのに……まだ誰にも認められていないのに……! 死にたくないよ……!!」
――嗚呼。
『……はは……。俺、死ぬんですよね? ……分かっていたけど、覚悟だってしていたけど……やっぱり、嫌だな……』
『――やっと、貴女の隣で生きるのに、相応しい命になれたと思ったのに』
『やっと、……みんなに認めてもらえて。……俺自身だって、そう、認めることが、できたのに――!!』
誰かに認めてほしかったと願い続けた小さな子どもが。自身の存在価値を見つけられず遠回りをした挙句、惚れた女を泣かせて消えていくような奴だった男が。何度も紡ぎを経ていくうちに、己の存在意義に喧嘩を売るまでになったことを思い出した。
(――ああもう、ヤケだ!)
故に、その叫びを無視することだけは、どうしてもできなかった。
途方に暮れる女性の手を取った。
女性は酷く面食らった様子でこちらを見上げる。
「な、なに!?」
「願え」
「え……?」
「死にたくないと、生きたいと、諦めたくないと願うんだ。自分だって何かを成したいんだと、何かを成すことができるんだと、信じるんだ」
女性は縋るような眼差しでこちらを見つめる。超越者は躊躇うことなく頷き返した。幾何かの沈黙を経て、女性もまた頷いて目を閉じる。
祈るように組まれた手に、力が込められた。彼女の生存欲求を受け止めながら、超越者は力を行使した。
超越者の足元を起点にして、白い花が咲き始めた。歪んでいく世界とは対照的に、超越者には美しい銀河のきらめきが見える。
最高の終わりを求め、何度真竜を喰らったのだろう。誰も知らない地獄を駆け抜けた英雄たちが、彼らと共に戦い抜いた各時代の魂たちが、報われるような優しい世界を願って。
旅を終えたのはつい最近。願いをかなえるためにエントロピーを使ったとはいえ、超越者は数多の世界を渡り歩いた規格外である。過剰なエントロピーが残るのも当たり前だった。
(最初は、それが尽きるまで
理想の終わりを手にするまで世界を超えることを選んだ理由を思い出し、越境者は苦笑する。
“彼らの笑顔が見たかった”という祈りと願いが、自分たちを突き動かしたのだ。なら、女性の悲鳴に手を差し伸べるのは当然のことだった。
キラキラ輝く欠片をひとつ。小指の爪程度の大きさであるソレを優しく拾い上げて、超越者は小さく囁いた。
「――キミの生死に関する因果をひっくり返すくらいなら、ノーリスクでやれるからな」
『――レイシフト、開始します!』
世界が暗転する。視界が黒く染まる直前、眩いばかりの白い光が弾けた。
―――
【おまけ】
(もしも、アリーが乱入した方法が『こちら』だったら)
「ねえ、本当に本気?」
「当たり前でしょ。何度も言わせないでほしいな」
眉間にしわを刻んで、超越者は問いかける。アリーはバッサリと言い切った。そうして、アイオト共々、厳重に閉じられた扉の前に立つ。
ここは人理保証機関フィニス・カルデア本部。辺り一面の銀世界にいるにも拘わらず、アリーの格好は、東京の有明で着るような――少なくても、この雪山では無謀なレベルの――薄着であった。
自分たちが飛んだのは、人理焼却が始まる数時間ほど前。アリーと楽しい仲間たちご一行は『カルデアから招集がかかったマスター』という名目でここにいた。超越者の経歴的な意味で、“自分たちが人間社会に溶け込む”程度の因果律改変はお手の物である。
何の苦もなく施設の門前に転移した一同であるが、自分たちは今、門のセキュリティ的な意味での問題にぶち当たっていた。なんとこの門、塩基配列まで見るのだという。元から人間である超越者ならば、何の問題なく通ることができるだろう。
だが、アリーとアイオトはドラゴンだ。人類の敵である。外見がいくら人間に等しいと言えど、塩基配列が人間と同じでない限りは締め出される。
下手したら騒ぎになり、人理焼却阻止どころではなくなってしまうだろう。むしろ、人理焼却の犯人に塩を送るような形になるかもしれない。
越境者はハラハラしながら2人を見守る。ややあって、アナウンスが響いた。
『双方の塩基配列、ヒトゲノムと確認』
「――えっ?」
『双方の霊基属性、善性・秩序と確認』
「――えっ?」
『双方ともに指紋認証、生体認証、遺伝子認証クリア。魔術回路の測定……完了しました』
「――えっ!?」
『あなた方を、霊長類の一員であることを認めます』
「えええええええええええええええええ!?」
呆気なくセキュリティを突破し、施設内へと消えていくアリーとアイオトの背中を成す術なく見送る。私設の扉が閉まった後で、超越者は思い切り扉を殴りつけて絶叫した。
「ここのセキュリティガバガバじゃねーか!」
『塩基配列確認。霊基属性確認。各測定完了。あなたを霊長類の一員だとは認めません』
「なんでだよ!? おいマジふざけんな! おかしいだろコレ!!」
疾走感のあるギャグが書きたかった。反省と後悔はしていないが、戦々恐々とはしている(2回目)
オルガマリーと超越者に親密フラグが立ち、カルデア職員と魔神柱一同に阿鼻叫喚フラグが立ち、採集決戦へのフラグが立ちました。この世界軸では「愛と希望の物語」ではなくて、「カーチャン怒りの鉄槌(尻拭いは超越者)」になりそう。
そして、ノーデンスとアイオトが秩序属性だったのには、上に括弧して(真竜にとっての)という言葉がつきます。つまり……?