ある森の奥の小屋にとても仲の良い四人の少女が暮らしていました。
両親は早くに死んでしまい、その家には少女たちしか住んでいません。
それでも彼女たちは楽しく暮らしていました。
両親が遺してくれた楽器とともに。
ある日、少女のうちの一人が町に買い物に出ようと森を歩いている時。
ふと呟きました。
「なんだか、不思議と寂しいな。
「みんなと一緒にいるのにどうしてだろう。
「きっとここでの日々では何も起こらないからだわ。
「映画みたいな日々が送れたらな。
「何かが起こったらな。」
そう呟いてからしばらくして、異変が起きました。
少女が歩いても歩いても森の外に出られないのです。
「おかしいわ。道は一直線だから間違えていないはずなのに。」
少女は違和感を抱えながらも真っ直ぐ進みます。
やがて日も傾き始めます。
木々に囲まれた森はとても暗く、少女は不安になりました。
「仕方ないわ。今日のご飯はなくなっちゃうけど、命のほうが大切だわ。一日くらいじゃあ死なないでしょう。」
少女はそう言い、振り返りました。
すると少女が今まで歩いてきた道はなく、木々が生い茂るだけです。
もう一度振り返ると、少女が行くはずだった道もありません。
四方八方を木々に囲まれ、途方に暮れた少女は呟きました。
「どうなっているの……。」
ーコチラニオイデ。ー
そんな姿の見えない声が聞こえました。
「誰、誰なの?誰でもいいから、私を家に帰して!」
その声に向かって少女は叫びました。
無意識のうちに、声に近づきながら。
ーアナタノノゾミヲカナエマショウ。ー
声はそう答えました。
「あなたの名前は何?姿を現して!」
木々に向かって少女は叫びました。
ーワタシハマジュツシメリー、キョウカイヲアヤツルモノ。ー
「メリー?あなたが、私を家に帰してくれるの?」
少女は必死になってまた叫びます。
不気味で不安で、声は震えていました。
ーワタシハアナタノノゾミヲカナエル。アナタヲヒニチジョウヘト。ー
「それって……どういうこと?」
その日から四人の少女のうちの一人、レイラ・プリズムリバーは姿を消しました。
残された三人の少女たちは彼女を必死で探しました。
しかし、その少女たちもほどなくして姿を消しました。
家にあった楽器たちとともに。
人々はこの奇怪な現象を『幻想入り』と名付け、
この話を『魔術師メリー伝説』として語り継いできました。
あなたも非日常を望むのならば、呟いてみてください。
きっと『魔術師メリー』はあなたを連れて行ってくれるでしょう。
幻想へと。
初めましての方も、初めましてじゃない方も、とりあえず初めまして。
読んでくださってありがとうございます。
不定期更新ですので、あしからず。