ありきたりな脳髄よ、今宵の月と踊れ   作:フロワ

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ダンスがお上手ね。


閑話
〜操〜


「えっと……、これでいいよね。」

 もうすっかり存在も忘れていた自分の筆箱からシャープペンシルと消しゴム、引き出しからメモ帳をとって家を出る。

ちょうど太陽が一番高い時間帯でシンプルに暑い。

「これだから夏は嫌いなのよ。」

 人に私の姿が視えなくなってからすっかり独り言が癖になってしまった。

ことあるごとに口に出してしまう。

もし戻れたら戻れたでこの癖を直すのは面倒なことになりそうだ。

「戻れなかったら……。

 やめよう。」

 んにゃ。

そういうことをいうのはやめておこう。

「受験生も『落ちる』とか『滑る』だとかは言わないもんね。

 そういえばああいうの、なんて言うんだろう。

 ゲン担ぎ?」

 ほらまた独り言。

気をつけよう。

 

おっと。

 

 危ない危ない。

トラックに轢かれるところだった。

視えないからクラクションを鳴らしてくれないんだよなぁ(当たり前)。

そういえば、

「この身体って死ぬのかな?」

 病気とかでは死ぬんだろうけど、外からの刺激、たとえば刺すだとか殴るだとか轢かれるだとかで死ぬことはあるんだろうか?

病気もガンとかの自分の細胞からなるものは患っても、ウイルスとか菌からのやつにはかからないんじゃないだろうか?

「た、試してみたい……!」

 赤信号の車道に飛び出してみたい……!

 

………………。

 

 ハッ!

危ない危ない。

そんな命に関わることを好奇心だけでしちゃいけないんだ。

落ち着いて、早苗。

フー……。

 

 でもこれはなんらかの方法で試しておきたいところだなぁ。

誰かにぶつかってみようか……?

いやでもぶつかられた側からしたら傍迷惑っていうか恐怖だよね。

そういうのはよくない。

私が怪異として広まっちゃう。

最近の日本人は都市伝説が好きだから。

 

どんっ

 

 ぼんやり考えながら歩いていたらぶつかってしまった。

わ、わざとじゃないよ。

えへ。

「も〜、危ないなぁ。

 どこ見て歩いてるんですか?」

「えっ?」

「どこの高校生さんですか?

 私はそこの中学生さんです。」

 ……どこさ。

私のことが視えるその子は赤い眼鏡のふたつくくりの少女だった。

「私の姿が視えるの?」

「見えるも何も。

 あっ、もしかしてあなた、幽霊さんですか?

 えぇ〜!

 足がある!」

 そこ?

「幽霊というかー、なんというかー。」

「まぁ、あなたが人に見えない存在ならなんでもいいですよ。

 うわぁー、すごいなぁー。

 え、どういう感覚なんですか、それ。」

 なんだろうこの子、すごいグイグイくるな。

それ以上に、どうして私が視えるの?

「それに答える前に、質問していい?」

「ダメです。

 私の質問に先に答えてください。」

 なんでさ。

「いやどういう感覚と言われても答えようがないのよね。

 まだ日も浅いし。」

「じゃあ……どうして人に見えないようになっちゃったんですか?

 はっ、なにか悪いことをしたとか……。

 そんなわけないですよね、お姉さん優しそうですもん。

 だとしたら何で……?

 もしや数日前に異世界かr…」

 

「ちょ、ちょっと待って。」

 不思議そうな顔をする女の子。

「あなたの名前は何?」

「なんでそんな……。まぁ、確かにそれは重要なことですねぇ。

 でも人の名前を聞く前に自分の名前を言ったらどうですか?」

「それはこっちのセリフなんだけど……。」

「まぁいいですよ。私は菫子ちゃんです。夏目漱石の『菫ほどな……』の菫に子供の子です。名字は宇佐美ですよ。」

 その説明が通じる日本人そんなにいないと思うんだけど。

「どうして私が視えるの?」

「あなたの名前は何ですか?」

「あぁ、ごめんね。私は東風谷早苗。どうして私が視えるの?」

「それはですねー。おそらく私が超能力者だからですよ。」

 

…………。

ハイ?

え、なにこの子、危ない子?

とは言えない自分が悲しい……。

「まぁ信じろとは言いませんけどね。今、いい顔してますよ。」

「あ、なんかごめんね。」

「いえいえ14年くらいはその顔見てきてますから、大丈夫ですよ。」

「14歳なの?」

「いえ、13歳です。」

時空が歪んでるよ。

「超能力ってどういうこと?」

「そのままですよ。

 いろいろ出来るんですよ、私。

 しかも賢くて可愛いんです。

 凄いでしょう?」

菫子ちゃん、友達いないんだろうな……。

「私について、何かわかることはある?」

「私はそういう視える系の能力は持ってないんですよ。

 基本ESP系超能力者ですから。

 幽霊とかは見えますけど。」

「そっか……。」

「でも、あなたの足くらいにならなれますよ。

 姿が視えないと不便なことも多いでしょう?

 むしろ連れて行ってください。」

「ホント?

 じゃあ、早速今から……って、菫子ちゃん学校は?」

 

「……えへ。」

「えへじゃなくて。」

まさか。

「サボりですよ。」

「今からでも行ってきなさい!」

「えぇ〜〜。大丈夫ですよぉ。

 菫子ちゃん賢いですもん。」

「そういうことじゃないの!」

その協調性のない物言いの原因は性格か?学校に行っていないからか?

どっちでもいいけど、年上として学校には行かせないと!

「行って来ないと、連れて行きません。」

「そんな親みたいな……。

 でも早苗さんがそう言うなら行ってきますよ。」

「また休日に連絡するから。

 携帯の番号教えてくれない?」

「あ、はい。

 これです。」

菫子ちゃんのスマホに表示された番号をメモして学校に送り出す。

変わった子だったな。

でも貴重な出会いだったかもしれない。

こちら側の人間にも私が視える人がいることがわかった。

ん?こちら側?

菫子ちゃんは、本当にこちら側なのかな?

 

「早苗〜。

 何そんなところでぼんやりしてるの〜?」

「あ、お母さん。

 さっき変な女の子にあったよ。

 …………あれ?」

「どうしたの?」

「いや、今さっき、誰かに会ったような……?」

「気のせいじゃない?

 誰にも会わなかったよ。」

「そう、かな……。

 あっ!小傘ちゃん!忘れてた!」

「え?何?だれ?」

「また、後で話すから!

 じゃあね!」

「忙しいわね〜。」

 

小傘ちゃんに謝らなきゃ。

なんでこんなに時間かかったんだろう。

別に誰と話してたわけじゃないのに……。

…………

よくわからないけど、とりあえず今は走ろう!

そこの角を曲がったところに……。

「小傘ちゃん、待たせてごめんね!」

ってあれ?

「小傘ちゃん……?」

ここじゃなかったかな。

「いや、ここだったはず。」

どこにいっちゃったの?

 

日が暮れるまで小傘ちゃんを探したけど、見つからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アワレネェ

 

 

 

 

 




「初めて読んだぞー」って人も
「いつも読んでるぞー」って人も初めまして〜。
一人で百鬼夜行、フロワですー。
読んでくださってありがとうございました。
不定期更新ですが、悪しからず。
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