それは知る者と知らぬ者、祈らぬ物の話であった。
追記:題名変えました。中身は変わってません

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二次小説処女です!よろしくお願いします><
ゴブスレ本人が出てくる小説もっと出ないかな?と思って書きました!よろしくお願いします><
「こんなの載ってたっけ?」と聞いたら8割り方内容を言い当てられた小説です!よろしくお願いします><


刀とゴブリンの話

「ゴブリンに奪われた家宝を取り返して欲しい、ですか」

 

 女神官の真剣な声に、受付嬢ははい、と答えた。

 

「刀、と呼ばれる剣を持って帰ってくる事が今回の依頼の条件になります」

 

 何でも依頼者の祖先は遠い東の国からこの辺りに流れ着いた者らしい。

 その時、彼は世にも奇妙な「刀」と呼ばれる片刃の剣を腰に身につけていた。

 曰く、折れず、曲がらず、よく切れる。

 まさに切るためにある、と言うようなそれを、彼の子孫はずっと持ち続けてきたそうだ。

 しかし先日、依頼者の祖父がそれを持ち出してしまった。

 それはゴブリン退治のため、だった。

 

 依頼者の祖父は若い頃は冒険者だった。

 名はそこまで売れなかったが、村に戻ってこられるくらいの金は稼げる者だったらしい。

 よって彼は年老いてからも村の警護を任されていた。

 しかし彼も年だ。彼の目の届かぬ所で村の娘が拐われるのは仕方のないことだった。

 だが彼は増え続けるばかりの誘拐被害に業を煮やし、単身ゴブリンの巣へと潜っていった。

 その手にむき出しの刀を持って。

 

 その後、彼は帰ってこなくなったそうだ。

 

「…………」

 

 その話を聞いた女神官は俯き、しばらく黙っていた。

 ゴブリンから人を取り返せという依頼は山程あったが、物を、という依頼は珍しかった。

 なので依頼の経緯まで聞いてしまったが、聞くのではなかったと彼女は後悔していた。

 ゴブリンにまつわる依頼にろくな物はなかったのだ。

 

 そんな彼女を見て受付嬢は少し悲しげな笑みを浮かた。

 しかしすぐにいつもの形に口元を吊り上げ、依頼の詳細を述べてゆく。

 

「ですので今回は、洞窟を崩す、水で流すといった刀の紛失に繋がることはできません」

「っ、そうですよゴブリンスレイヤーさん! 今回はダメですからね!」

 

 女神官はそう振り返り、後ろに立っている男に言いよった。

 鉄兜を付けた薄汚れた男ーーゴブリンスレイヤーは、少し間を開けて、

 

「……ゴブリンは獲物を洞窟で振り回す。恐らくその刀とやらは折れている」

 

 と言った。すると女神官は驚いた表情で、

 

「まさか、そこまでして壊したいんですか!? 洞窟を!?」

 

 と言い放つ。それに対して彼はため息を一つついた。

 

「確認だ。刀とやらが折れていても持ち主に返す必要があるかの」

「依頼者はそう望まれていますね。どのような形であれ帰ってこればいいそうです」

 

 彼が続けた言葉に、受付嬢はてきぱきとそう返した。

 その言葉を聞いた彼は頷いてこう言った。

 

「では行こう」

 

 そういうことになった。

 

   ◆

 

 ここは薄暗い洞窟の中。

 ゴブリンスレイヤーと女神官は、例の依頼に取り組んでいた。

 ばさり、ばさりと小鬼を切り、既に風の音が聞こえない程奥まで進んでいた。

 

「ありませんね……。刀」

 

 ゴブリンの血の臭いにも慣れてきた女神官は、そんな言葉を口走った。

 彼女は刀を探しているのか、足元を中心に辺りを松明で照らしている。

 

「刀はゴブリンが持っている。落ちているはずがない」

 

 そう言って彼は迷いなく足を進める。

 彼は確信しているのだ。

 ゴブリンは武器になる物は一度は使う。あれの好奇心を甘く見てはいけないと。

 

 そうして歩いていくと、ゴブリンスレイヤーは急に立ち止まった。

 

「来た」

 

 女神官がえっ、と言う前に、それは暗闇からゆらりと現れた。

 

 それは隻腕だった。綺麗な腕の断面を、焼いたであろう跡が塞いでいる。

 それは隻眼だった。顔に入った一本の線が、一つの目を塞いでいる。

 

 そして、空いた片方の腕には、短い、片刃の剣が握られていた。

 

 それは虚ろににやりと笑うと、自ら折ったであろうその剣を前に構えて歩いてくる。

 それは小鬼と言うよりも、幽鬼に近かった。

 

「『渡り』だな……、相当手練れだ」

 

 そう言うと彼は女神官へと声をかける。

 

「灯りを持って隅によれ。壁を背にしてじっとしていろ」

「はっ、はい……」

 

 少女はいつもと変わらないその声に安心して、壁による。

 そして自らを気圧したその鬼を見て、ごくりと喉を鳴らした。

 それは隻腕隻眼と、彼につられて見てきた今までのどのゴブリンとも異色だった。

 しのばずとも音の無い足音。

 にやりと笑う顔には、しかし悪意は感じられない。

 

(まるで、あの刀みたいーー)

 

 それは名付けるなら、妄執。

 刀の全てが、小鬼に乗り移ったような姿であった。

 

「幻影だ」

 

 彼が再び声をかける。

 女神官の目を覚ますかのように。

 

「あれは手練れだが、相応に弱い」

 

 そう言って、彼と幽鬼(それ)は向かい合う。

 

 影から半歩。影から一歩。

 幽鬼はじりじりと距離を詰める。

 

 しかし彼は動かない。じっと幽鬼を見つめている。

 

 じりり、じりり。

 影から三歩、影から四歩と、幽鬼は体を前へ進める。

 

 四歩と半歩、五、五と半。

 

 後半歩で、この間合いは幽鬼の距離となる。

 しかし彼は動かない。剣を構え小盾を構え、じっと幽鬼を見つめている。

 微動だにしない小鬼殺し。

 

 東洋の言葉を借りるならばーー柳のようとでも言うのだろうか。

 

 そして、半歩。

 

「GAAAAAAAAAAAA!!!!!!」

 

 幽鬼は瞬く間に宙へ飛び、刀を振り上げ、刀を下ろす。

 それは子供の力程度では、到底不可能な速さに見えた。

 

 猿叫と共に振るわれる、強烈な一撃。

 岩をも砕きかねないような、力強く荒々しい一撃。

 目を背けかねないような、狂気の籠った一撃をーー彼は小盾で受け止めた。

 

「GYA!?」

 

 幽鬼ーー小鬼は驚いた。

 なぜだ。

 あの男はこんな風に、我が片腕を落としたのに。

 なぜだ。

 あの男はこんな風に、我が片目を閉ざしたのに。

 何故だッ!!!

 この(わが)刃はこんな物、切れぬことがあるはず無いのにッ!!!

 

「依頼者に聞いた話によると、刀とやらは刃を立てねば切れんらしい」

 

 すらり、と言う音が洞窟内にこだまする。

 

「さらに、洞窟でそれを振るには、その獲物は長すぎるそうだ」

 

 小鬼は首から真っ赤な血を溢れさせながら、男を見つめる。

 

「ならばゴブリンは折って使おうとするだろう。こいつらはそうせずにはいられない」

 

 彼は普段通りの声で女神官へと術理教える。

 

「折るために岩にぶつけたら、刃こぼれするのは当然のことだ」

 

 彼は影で中の見えない鉄兜を小鬼に向けている。

 

「だからこいつの刀は小盾でも防げる。ーーつまりこいつは、子供騙しだと言うことだ」

 

 幽鬼だった小鬼には、この男が鬼のように見えただろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、まだ終わっていない。

 

「ゴブリンスレイヤーさんっ! 危ないっ!」 

 

 女神官の声が響く。

 彼女の声は男へと、敵の奇襲を知らしていた。

 

 それはゴブリンだった。

 至って普通のゴブリンが、彼の背後へと突っ込んでゆく。

 

 その手に、折れた刀の上半分を持って。

 

 それは名付けるなら執念。

 幽鬼が仕掛けた、第二の刃である。

 

「GYAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!!!!!」

 

 小鬼は切っ先を男へと向け、持ちてのない刃を握って突き出す。

 しかし、彼はそれを予知していたかのように、刃の通り道を小盾で塞ぐ。

 

 切っ先と小盾がぶつかり合う。

 刃は小盾の金属部分、一番硬い部分に当たった。

 

 しかし、刃は食い込んだ。小盾を確かに貫こうとしていた。

 

 いける、と小鬼は確信した。小鬼は刃に力を込める。

 

 しかし何故だろう、刃がこれ以上進まない。

 しかし何故だろう、刃に力が入らない。

 

 小鬼はそれをいぶかしみ、己の手元を見て驚愕した。

 

 指がないのだ。

 刃を握っていた指が、綺麗さっぱりなくなっている。

 

 なぜだ。

 剣とは、ここまで切れる物だったのか?

 

 その思考を最後に、小鬼は絶命した。

 

   ◆

 

「俺は刀の情報収集の時、刀の鋭さや使い方を聞いていた」

 

 ゴブリンスレイヤーは二つに折れた刀を拾いながらそう言った。

 

「無論そのどれもを信じていた訳ではない」

 

 すると彼は女神官へと近き、彼女の前にそれを置く。

 

「だがその情報を元に検証し、次の一手を考えることが出来る」

「……つまり、どういうことですか?」

 

 女神官はそれを素手で拾おうとして、先程の光景を思い出してぞっとした。

 

「情報収集は基本だと言う事だ。何事もこなしていくには事前の準備が必要になる」

 

 そう言うと、どう刀を拾おうか苦闘している彼女を見ながら彼は考える。

 

 刀。危険な武器だった。

 ゴブリンがこの武器の使い方を覚えてしまうのはなるべく避けたい。

 

「……粉々に砕いて持ち主に返そうか」

「ゴブリンスレイヤーさん!?」

 

 そうして彼らは洞窟の奥へと進んでいく。

 ここに二つの死骸を残して。

 

 刀を知り、刀の狂気に囚われた者と、なまくらのみを知り、刀の力を軽んじた者。

 もしこの二体の役割が違えば、ここに転がっていたのは彼らだったかもしれない。

 

 しかしこの場はゴブリンスレイヤー、

 ーー人の幽鬼が勝った。

 

 それだけのことだった。

 

 神は賽を投げ続ける。

 いつまでもいつまでも、彼らが飽きるまでーー。

 

 

 

 


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