「あ、お帰りなさいムレイさん―――――ダクネスさんはどうして顔が赤いんですか?」
ギルドの酒場に戻るとゆんゆんが迎えの言葉を送るとダクネスの顔が赤くなっている事に気付いて尋ねた。
「うむ、実はあああああああああああああああああああああああああああッッ!?」
「ダ、ダクネス!?どうしたんだ!?」
突然悲鳴というより官能的な声を出すダクネスにセルティは心配して慌てて駆け寄る。
「ダクネス、急に悲鳴を上げてどうしたんですか?大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ……ああ、問題ない」
恍惚な表情を浮かべているダクネス。
無苓は微笑みながらそうですか、と返答する。
その際に和真とクリスは無苓の後ろに隠しているスタンガンを見てしまい、顔を青ざめる。
ちらりと無苓と目が合うと無苓は表情を変えることなく微笑んだ。
余計なことを言えばわかりますね?
無言でそう言っている無苓に和真とクリスは青ざめながら何度も首を縦に振った。
それを確認して無苓はダクネスに耳打ちする。
「ダクネス。先ほどの事を誰かに言ったらわかっていますね?また『スティール』で貴女の下着を奪い取って五十エリスで売り払います。その先を想像してください」
自分の下着で自分の名前を呼ばれながら変態の欲情を満たす為に妄想の産物にされてしまう、ダクネスの下着。
汚らしい男が自分の下着を持ってはぁはぁと息を荒くしているその姿を妄想してしまったダクネスは身を抱き、震わせる。
「たまらん……ッ!」
妄想で悦ぶダクネスに無苓は続ける。
「たまりませんか……ダクネスは想像以上の変態汚れ騎士なのですね。なら、和真さんに頼みなさい。どうか私を仲間という性奴隷として扱ってくださいと。私が見る限り和真さんは相当の鬼畜外道の男です、貴女との相性も十分でしょう」
ぼそぼそと話す無苓と話す度に息を荒くするダクネス。
そんな二人にゆんゆん達は首を傾げるとめぐみんが和真にスキルを覚えられたか尋ねると和真は不敵に笑った。
「ふふ、まあ見てろよ?いくぜ、『スティール』ッ!」
右手をめぐみんに突き出してスキルを発動させる和真の手にはパンツが握られていた。
「……なんですか?レベル上がってステータスが上がったら、冒険者から変態にジョブチェンジしたんですか?………あの、スースーするのでパンツ返してください……」
「カ、カズマさん、最低です……」
「ち、違う!?おかしいな、奪えるものはランダムのはずじゃ……!?」
慌ててめぐみんのパンツを返すが周囲の女性達の視線が冷たくなった和真に熱い視線が向けられる。
「なんとう鬼畜外道!ムレイの言う通りだ!カズマ、どうか私をパーティーに入れてそれ以上の辱めを受けさせてくれ!得意分野なんだろう!?」
「違うわ!!変なこと言うんじゃねえよ!ほら、ギルドの女性達の視線が冷たくなっちまっただろうが!?」
ダクネスの言葉を全力で否定して全力で弁明する和真に無苓は右手をゆんゆんに突き出すとそれを見てゆんゆんは一歩後退した。
「ム、ムレイさん……その手はなんですか?」
「………」
尋ねるゆんゆんに無苓は微笑みを崩すことなく近づくとゆんゆんも下がる。
「ま、まさか私もめぐみんみたいなことしませんよね?ムレイさんはそんなことしませんよね?」
「………」
一歩近づく、一歩後退する。
「ど、どうして何も言わないんですか?え、まさか本当に……!ムレイさん、止めてください!キャッ!?」
スカートの裾を押さえて後退するとバランスを崩して後ろに転倒するゆんゆん。
そんなゆんゆんに無苓は手を差し伸ばして立ち上がらせる。
「大丈夫ですか?ゆんゆん。というより私は手を突き出しただけでゆんゆんは私が何をすると思っていたのですか?」
「え……?」
「もしかして私も和真さんと同じようにゆんゆんのパンツを奪おうとすると思ったのですか?それなら悲しいです。ゆんゆんにとって私は変態扱いなのですね」
悲し気に話す無苓にゆんゆんは慌てふためく。
「ち、違いますよ!私はムレイさんのことちょっといじわるだけどとても優しい人って思っていますから!」
「ありがとうございます、ゆんゆん」
頭を撫でて礼を言う無苓は自然と口角が上がる。
ギルド内で他者から無苓はどのような人物と思われているのかという印象を周囲に与えることで自分の株を上げる。
和真とダクネスのやり取りの後で行ったためか予想以上にその成果は出た。
半分近くはゆんゆんをからかいたいという遊び心だったが。
「「………」」
同じパーティーメンバーからの冷ややかな視線は気にせずゆんゆんの頭を撫でる。
その時。
『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
街中に大音量のアナウンスが響く。
「緊急クエスト?ゆんゆん、何か知っていますか?」
「えっと、キャベツですね」
「はい?」
答えてくれたゆんゆんの言葉に無苓は自分の耳を疑った。
隣にいる和真もキャベツの正体がわからずめぐみん達に聞いている。
「キャ、キャベツの収穫時期なので……冒険者は疾走するキャベツを捕獲するんです」
「なるほど………」
疑問を抱いている無苓にアリッサが教えてくれるが正直理解できない。
キャベルが疾走?
足でも生えるのか?と思っていると冒険者ギルドの外で飛び回る緑色の物体、キャベツがそこにいた。
「………流石は異世界」
予想斜め上の展開に無苓はそう述べた。
そしてキャベツ一玉一万エリスという破格の報酬だった。
取りあえず。
「ゆんゆん、セルティさん、アリッサさん!乱獲しますよ!!」
《物質創造》で巨大な網を創ってキャベツを乱獲することにした。
「カズマ!私達も行くわよ!ムレイ達に負けていられないわ!!」
「俺、もう馬小屋に帰って寝てもいいかな」
呆然と和真はそう呟いた。
無事にキャベツ狩りを終えた無苓達は取り立てのキャベツを使った野菜炒めを食べている。噛み応えのあるシャキシャキ感がキャベツの新鮮さを促す。
「それにしてもセルティさんはキャベツ相手ですと豹変しないのですね」
「あ、ああ、モンスター限定なんだ」
モンスターを見ると殺戮凶に豹変するセルティだったがキャベツが相手だと最高の攻撃力を誇る《ソードマスター》として活躍していた。
「………それでゆんゆんはまだ落ち込んでいるのですか?」
「うぅ………また負けた……」
めぐみんにどちらがより多くキャベツを収穫できるか勝負を申し込んだゆんゆんだが、めぐみんのあざとい手口によって負けた。
というより、ゆんゆんが負けるように無苓が仕掛けた。
めぐみんにキャベツの一部を渡す代わりに一度爆裂魔法を見せてもらうという取引を持ち込みめぐみんはそれを了承。
結果、めぐみんは勝利した。
ゆんゆんは二人の間で行った取引のことは知らずに敗北を認めてしまった。
「まぁ、同じ街に住んでいるのですからいつでも勝負ができるではありませんか。次に勝てるように前向きに努力していきましょう」
「ムレイさん………ッ!」
励ましの言葉に目を輝かせるゆんゆん。
「今回一番頑張って頂いたのはアリッサさんですね」
「ふえ!?そ、そんな………私なんかが一番だなんてありえません!!収穫量も全然ですし…………」
「収穫量ではなくアリッサさんは私達を支援魔法で強化、更には他の冒険者が傷を負えばすぐに回復魔法をかけて助けていた。自分の為ではなく他の人の為に頑張っていました。私はこれはとても凄いことだと思いますよ」
「そうだな、ムレイの言う通りだ。今回のMVPはアリッサだ」
「そうだよ!アリッサちゃんが一番活躍していたよ!」
「―――――――――――ッッ!!」
褒めまくる三人にアリッサは顔を真っ赤にしてテーブルの下で蹲ってしまった。
照れ隠しなのだろうと三人は和やかに微笑みながら本人が落ち着くのを待つ。
「しかし、ムレイは私達の事をよく見ているな。私は自分の周囲の事で精一杯だったぞ」
「私も遠くから見ていましたがムレイさんほど見れなかったです」
「このパーティーのリーダーなんですから皆さんの事はしっかりと見ていますよ。例えばセルティさんは先日、前に使用していた防具が着れなかったことに落ち込んでいたり」
「な、何故それを!?」
「アリッサさんは普段は着ていない可愛らしい服をゆんゆん達に見せたらいいですのに」
「―――――ッ!?」
「ゆんゆんは……」
びくりと肩を震わせるゆんゆんは無苓が何を言ってくるのかに警戒すると無苓は申し訳なさそうに言う。
「夜はもう少し静かにしましょうね。大丈夫です、性欲は人間の三大欲求の一つですから」
「あああああああああああああああああああああああああああああッッ!!違う、違いますから!!」
テーブルから身を乗り出して涙目で掴みかかってくるゆんゆんに無苓は微笑みを崩さない。
「夜の慰めが必要なら私の部屋に来ますか?」
「行きません!!」
無苓はめぐみんがゆんゆんをいじめる理由がわかった気がした。