『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!………特に冒険者カルカヤムレイさんとその一行は、大至急でお願いします!』
緊急のアナウンスにより、無苓達を含めた冒険者達が正門前に駆け付けるとそこには魔王軍の幹部のデュラハン―――ベルディアがそこにいた。
今度はその背後に配下と思われるアンデットナイト達を引き連れて来ていた。
ベルディアの前に代表するかのように無苓が前へ出て声をかける。
「何の用でしょう?」
「何の用でしょう?だと、貴様!俺との契約はどうした!?あれからも毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込むとはどういう了見だ!?」
怒鳴り声を上げるベルディアに無苓は後ろにいるめぐみんに視線を向けるが逸らされた。
だが、和真に頬を引っ張られる。
「貴様が毎日爆裂魔法を撃つせいでもう城の修復が追いつかん!!前回は契約ということで見逃したがもう我慢ならん!!貴様諸共、街の住民を皆殺しにしてくれるわ!!」
毎日爆裂魔法を撃ち込まれたベルディアは怒髪天を衝くかのように怒りを露にする。
「ちょっと待った!!」
ベルディアが配下に命令を与える寸前にめぐみんが制止の声を投げた。
「我が名はめぐみん!アークウィザードにして、爆裂魔法を操る者……!貴方の城に爆裂魔法を撃ってきたのは私です!!」
自白するめぐみん。
「……お前が?しかし、あの時は……」
「ムレイは魔法をコピーする特殊能力を持っているのです。私の爆裂魔法をコピーしてそれを貴方に撃っただけのこと。実質、私の爆裂魔法に変わりありません」
めぐみんは視線を無苓に向ける。
「ムレイ。庇ってくれたのは嬉しいです。しかし、友を危険な目に会わせて自分だけ安全なところにいることなど私にはできません」
「………人の苦労を無下にしないで欲しかったですね」
小さく息を吐いた無苓だが、その表情は笑みを浮かべた。
「まぁ、もう全面戦争しかないようですね。エアリエル」
『ええ』
精霊剣エアリエルを鞘から解き放つ無苓に続くように冒険者達もそれぞれの得物を強く握りしめる。
それを見たベルディアは。
「お前達ひよっ子の冒険者が俺に傷をつけられるものか」
「ひよっ子を甘くみていると痛い目に会いますよ?」
売り言葉に買い言葉。
ベルディアは悠然とした態度で右手を掲げる。
「お前達……街の連中を。…………皆殺しにせよ!」
その右手が振り下される。
それを合図に配下であるアンデットナイト達は一斉に襲いかかってくるに大して無苓は静かに剣を構える。
「エアリエル」
名を呼ぶ。
剣に風が纏わると無苓は風の纏った剣を横に一閃する。
「なっ!?」
剣から放たれる風の斬撃がアンデットナイト達の胴を切断してベルディアにまで襲いかかるが、ベルディアは咄嗟に剣を持って風の斬撃を防いだ。
その光景を目撃して静まる冒険者達やベルディアに無苓は微笑む。
「いくらアンデットといえど、胴体を切断されては動けないでしょう」
疲れを知らない身体、魔王の加護による神聖魔法に対しての強い抵抗を持つ。
ベルディアが誇るアンデットナイトの軍団を無苓は一撃で葬った。
「言ったでしょう?甘くみていると痛い目を会うと」
剣先をベルディアに向けて無苓は告げる。
「次は貴方の番ですよ、魔王軍の幹部、ベルディア」
『あ、ごめんムレイ。今ので力を使い果たしたからもう私限界』
「…………え?」
剣から唐突に告げられるその言葉を理解するのに無苓は数秒有した。
『いくら私でも力を無限に使えるわけじゃないのよ?今の一撃に力を込め過ぎたせいでもう私、クタクタよ………』
無苓がエアリエルを手に入れてまだ数日。
無苓はエアリエルの力を使えるが、まだ完全に制御できたわけではない。
アンデットナイト達を倒す為にエアリエルの力を込め過ぎたせいでエアリエルは限界が訪れてしまった。
それを聞いたベルディアは哄笑を上げる。
「クハハハハハハ!次は誰の番……だったか?それは貴様だ!カルカヤムレイ!!」
大剣を掲げて自ら襲いかかってくるベルディア。
そのベルディアの前に二人の騎士が立ち向かう。
「ムレイ!お前は下がっていろ!」
「この汚物は私達に任せろ!」
ダクネスとセルティが剣を持ってベルディアと対峙する。
「クルセイダーにソードマスターか!!相手にとって不足無し!!」
「防御は任せろ、セルティ!」
「なら攻撃は私がする!」
二人がかりでベルディアと戦っている間に無苓は急いで和真達のところまで後退する。
「ムレイさん!大丈夫ですか!?」
「ええ、しかし状況はよろしくない………」
心配してくれるゆんゆんに返事をして無苓は状況を把握するが正直芳しくない。
配下はエアリエルの攻撃によって全滅させることが出来たが、魔王軍の幹部であるベルディアが健在。
振り下されるベルディアの大剣をダクネスが防御してその隙にセルティが攻撃を仕掛ける。
セルティはソードマスターのスキルを攻撃重視に取得しているおかげか鎧に傷を与えて入る。
今はまだ何とか持ち堪えられるが持久戦となれば疲れを知らないベルディアが有利になってしまう。
以前の遭遇で爆裂魔法だけではベルディアは倒せれないことは把握している。
ここでめぐみんに爆裂魔法を撃ってもらいそれを
「魔法使いのみなさーん!!」
和真が魔法使い達に呼びかけ、魔法使い職は魔法の準備を始める。
その時、ベルディアは自身の首を高く放り投げる。
何かある。そう察した無苓は拳銃を取り出してベルディアの頭部に発砲。
「痛ッ!」
「そこだ!!」
頭部に弾丸が命中してその隙にセルティがベルディアの身体に一撃与える。
「おのれ……!妙なマジックアイテムを使いおって……!!」
兜のおかげか特にダメージはないベルディアは自身の首を拾う。
「ダクネス!セルティ!下がれ!魔法使いのみなさん!ゆんゆん!めぐみん!魔法で一斉攻撃だ!」
「はい!」
「わかりました!」
ウィザード達の中級魔法が放たれるがベルディアに傷は与えられない。
「『トルネード』!」
「『エクスプロージョン』!!」
続けてゆんゆんは上級魔法であるトルネードで巨大な竜巻を発生させてそこにめぐみんの爆裂魔法が放たれた。
「あんぎゃああああああああああああああああああああああッッ!!」
流石のベルディアも上級魔法と爆裂魔法のコンボに悲鳴を上げた。
だが、それでもベルディアは倒れない。
不死の如く立ち上がり、大剣を持って再び戦場を駆ける。
「おいムレイ!お前チート持ちだろう!?何とあいつを倒せる武器とは創れないのか!?」
「無茶を言わないでください。私の特典は戦闘に特化したものではありませんし、私自身そこまで戦えられるわけではないんですよ」
めぐみんの爆裂魔法でも倒せれなかったベルディアに和真は特典持ちの無苓に叫ぶが無苓は首を横に振って否定する。
「そうだ!お前、相手の過去を見通せる力があったよな!?」
「透過ですか?確かにありますがあれは戦闘には―――」
「あいつの過去を見て弱点を見つけんだよ!そうすればまだ勝ち目がある!」
「なるほど、透過」
《魔眼》の力でベルディアに使用してその過去を見る。
「水……ベルディアは水の攻撃のみ避けています。もしかしたら水が弱点かもしれません」
「よし、そうと分かればこっちのもんだ!『クリエイト・ウォーター』ッ!」
和真の叫びとともに、二人とベルディアの頭上に突然水が姿を現した。
慌てて避けるベルディアだが、二人は頭から水を浴びた。
「………不意打ちで突然こんな仕打ちとは……。や、やってくれるなカズマ、こういうのは嫌いじゃない。嫌いじゃないが、本当に時と場合を考えて欲しい………」
「冷静にはなれたが、真面目に戦い気はあるのか?」
「ち、違う!妙なプレイじゃない!あいつの弱点は水なんだよ!!」
「ダクネス!セルティさん!和真さんの言っていた通りベルディアに弱点は水です!ただの水をあんなに慌てて避けるということはそれだけ弱点ということです!二人でベルディアの動きを封じてください!ゆんゆん!すみませんが、前へ出て二人の援護を!」
「はい!」
「アリッサさんを始めとするプリーストは三人に支援と回復を!魔法使いの皆さんは水の魔法を放ってください!」
「は、はい!」
「『クリエイト・ウォーター』!『クリエイト・ウォーター』!『クリエイト・ウォーター』ッッッッッ!」
指示を出す無苓の言葉に連携を取る全冒険者。
「『ライト・オブ・セイバー』ッ!!」
ゆんゆんもベルディアに恐れず攻撃を繰り出す。
「くぬっ!おおっ?っとっ!」
だが、腐っても魔王軍の幹部。
三人の攻撃を回避しながらも水魔法を避けている。
もっと水がいる。そう思っていた時。
「水だよ水!あいつの弱点は水なんだよ!お前、仮にも一応はかろうじてとは言え、水の女神なんだろうが!それともやっぱり、お前はなんちゃって女神なの?水の一つも出せないのかよ!?」
「!?あんた、そろそろ罰の一つも当てるわよ無礼者!一応でもかろうじてでもなんちゃってでもなく、正真正銘の水の女神ですけど!水?水ですって?あんたの出す貧弱なものじゃなく、洪水クラスの水だって出せますから!謝って!水の女神様をなんちゃって女神って言った事、ちゃんと謝って!」
隣で和真とアクアが言い争っていたがアクアの口からこの状況を逆転する言葉が聞こえた。
それは和真も気付いてアクアを煽る。
「後でいくらでも謝ってやるから、出せるんならとっとと出せよこの駄女神が!」
「わああああーっ!今、駄女神って言った!あんた見てなさいよ、女神の本気見せてやるから!」
売り言葉に買い言葉。
和真の言葉でアクアの周囲に、霧の様な物が漂う。
『まずいわね、本当に洪水クラスの水を召喚するつもりよ』
エアリエルが姿を現してアクアを見てそう告げてきた。
『あのアークプリースト何者なの?というより、避難した方がいいわね。ムレイ、今回は魔王軍相手に頑張ったご褒美よ』
ふぅと息を吐くエアリエルに無苓は宙を浮く。
『疲れたからこれ以上力は使いたくなかったけどね』
無苓はエアリエルと共に空を高く飛翔する。
下を見ると不穏の空気がアクアを中心に漂るとアクアは両手を広げる。
「『セイクリッド・クリエイト・ウォーター』!」
アクアは自分が言った通り洪水クラスの水を召喚した。
ただし、冒険者含めてベルディア諸共押し流されていた。
『人がゴミのようね』
無苓はエアリエルのおかげで洪水に会うことなく水が引いてから地面に着地した。
「ちょ……ちょ………っ、何を考えているのだ貴様……。ば、馬鹿なのか?大馬鹿なのか貴様は………!?」
よろけながらベルディアは立ち上がるがそこに無苓はロープをベルディアに投げる。
「『バインド』」
「ぬうっ!」
「和真さん!一緒に奴の武器を奪いましょう!」
動きを拘束して武器を奪う為に無苓と和真は叫ぶ。
「「『スティール』ッッッ!!」」
二人の魔力を込めたスティールが炸裂。
「重た……ッ!?」
無苓の手にはベルディアが使っていた大剣。
ベルディアの武器に奪うことに成功した無苓。
「あ、あの…………」
か細いベルディアの声は和真の両手から聞こえた。
和真はベルディアの頭を奪ったことに気付き、あくどい笑みを浮かばせる。
「おいお前ら、サッカーしよーぜ!サッカーってのはなあああぁ!手を使わずに、足だけでボールを扱う遊びだよおおおおおお!」
ボールのようにベルディアの頭を蹴り込んだ。
冒険者達にボールのように扱われている間に無苓はベルディアが使っていた大剣をセルティに渡した。
「汚物が粋がるな!!」
「ぶはっ!!」
鎧を着こんだベルディアの身体に一撃入れた。
「ここまで弱っていたらもういいだろう。楽にしてやってくれ」
「おし、アクア、後は頼む」
ダクネスの言葉に和真は後処理をアクアに頼む。
「『セイクリッド・ターンアンデッド』-!」
こうして魔王軍の幹部、ベルディアはアクアの手によって浄化された。
無事に戦いが終えた無苓はほっと一息つく。
「よかった………」