「あの、無苓さん。これは何ですか?」
アリッサが仲間に加わった次の日の昼頃にテーブルの上に置かれているガラクタのことを無苓に尋ねた。
「拳銃の部品ですよ。前回の反省を活かして今回は確実に成功させてみせます」
昨日のジャイアントトードの討伐の際に無苓は拳銃を暴発させてしまった原因を追究して新たに改良を重ねた拳銃を組み立てていた。
部品を一つ一つ創造してどこか異常がないのかを確認して拳銃という形に整えていく。
創造する際には細かいところまで鮮明にイメージしなければ繊細な拳銃は作れない。
《物質創造》の短所は詳細までイメージしなければならないということだった。
単純な物、材質、素材はイメージするだけで簡単に創れた。火薬も安易に創造できたことがその証拠だった。
ただ詳細なところまでになると鮮明にイメージしなければ前回のような失敗が起きる。
前回はどこか形に不具合が生じて暴発したと推測した無苓は今度は部品を一つ一つ創造して組み立ててから拳銃の完成に向かう。
「また暴発したらどうするんですか?」
「大丈夫ですよ。それに少々憧れていたんです、一回や二回で諦めるには惜しいのですよ」
銃刀法違反がある日本で銃を気兼ねなく撃つことは出来ない。
だが、ここは異世界。
気兼ねなく銃を撃つことが出来る。
何より男の浪漫でもある。
「だ、大丈夫です。私が治しますから……ごめんなさい、失敗を前提に話してしまってごめんなさい」
「いえいえ、その時は頼りにしていますよ」
優秀なアークプリーストであるアリッサがいるから多少の無茶は可能になった。
「すまない、待たせてしまった」
無苓達のテーブルにやってきたのは昨日無苓に声をかけて来たセルティ。
「そんなことありませんよ。ゆんゆん、アリッサさん。こちらが昨日パーティーに加わりたいと声をかけてくださったセルティさんです」
「セルティだ。昨日は君達がいないから日を改めてさせて貰った」
先日、無苓は一人では承認できないからと日を改めて貰った。
勿論無苓はセルティをパーティーに加えるつもりでいるが一人で決めるとゆんゆん達に少なからずの不満を生じさせてしまう。
なのでゆんゆん達がいる今日に来て貰った。
「我が名はゆんゆん!アークウィザードにして、上級魔法を操る者。やがては紅魔族の長となる者…!」
「そ、そうか。よろしく頼む」
ゆんゆんの名乗りに少し引いたセルティにゆんゆんは羞恥のあまり顔を赤くしてテーブルに突っ伏した。
セルティは視線をアリッサに向けるとアリッサはビクと肩を震わせる。
「ごめんなさい!私なんかが自己紹介なんておこがましいですよね!?」
「い、いや、そんなことはないと思うぞ……?」
突然謝られるアリッサに困惑するセルティは助けを求めるような視線を無苓に向けると拳銃を完成した無苓は軽く咳払いする。
「んんっ!まぁ、二人は私なんかよりも優秀なアークウィザードとアークプリーストです。気軽に名前で呼んであげてください」
「そ、そうか。それではゆんゆん、アリッサ。今日は私の実力を見て仲間に相応しいか判断して欲しい。ムレイもいいだろうか?」
「もちろんです」
新しいパーティーメンバーと共に今日はゴブリンの討伐に向かう。
異世界でも知らない者はいないメジャーモンスターであるゴブリンは群れで行動し、武器を使う。動きは速く、小柄ながら凶暴で、人や家畜を襲う。
そのゴブリンを討伐する為に森の中を進む無苓達。
森の中を進む中で無苓のスキル敵感知に反応があった。
「あちらに複数の反応があります。恐らくはゴブリンだと」
「そうか。よし、私が前衛を務める。いいだろうか?」
無苓に確認を促すセルティに無苓は頷いて答える。
潜伏を使って反応があるところまで向かうとそこには十体のゴブリンが武器を持っていた。
無苓は小声で全員に作戦を伝える。
「まずはセルティさんが正面から向かってゴブリンの注意を引き付けてください。私は潜伏スキルを使ってバインドで拘束と攪乱を行います。ゆんゆんは魔法の詠唱を行い、完成すれば私達に合図を出して教えてください。アリッサさんは私達が怪我をしたら治療をお願いします」
無苓の指示に全員は静かに頷くと先手必勝とばかりにセルティはゴブリンに向かって突進した。
「まずは一匹!」
不意を突かれて切り裂かれたゴブリンを見て他のゴブリンは武器を構える。
潜伏スキルを使っている無苓はまずは弓矢を持っているゴブリンの近づく。
「『バインド』!」
拘束して遠距離攻撃を封じる。
ゆんゆんも詠唱を唱えているなかでセルティは次々にモンスターを斬り裂いていった。
「そらそらそら!アハハハハハハハ!死ね死ね死ね!血を噴き出して死に絶えろ!!」
「………」
豹変してゴブリンを斬り裂いていくセルティに無苓は唖然とした。
いや、無苓だけでなく恐らくはゆんゆん達も同じだろう。
「汚い悲鳴を上げて醜い肉の塊となって死に晒すといい!!」
狂喜に満ちたセルティに無苓は戦闘中でありながら正直引いた。
ゴブリンに何か恨みでもあるのかと思うほどの豹変ぶりに驚く中事態は急変した。
敵感知により新たなモンスターが乱入してきた。
全身が黒い体毛で覆われた猛獣。
「初心者殺しです!逃げてください!」
茂みで隠れて魔法の詠唱を行っていたゆんゆんが無苓達に逃げるように催促する。
弱い冒険者を狩る狡で危険度の高いモンスターと言われている初心者殺し。
しかし、逃げるにしても距離が近い。
無苓は盗賊スキルである逃走か潜伏を使えば逃げられる可能性はあるがソードマスターであるセルティにはない。
「来るがいい!初心者殺し!貴様も殺してその体毛を剥ぎ取ってやる!」
煽るセルティに初心者殺しは視線をセルティに向けるが無苓は石を拾ってそれを初心者殺しに当てると今度は無苓に視線を向けた。
「幻惑」
そして魔眼を発動させて初心者殺しに幻を見せる。
そんな隙だらけな初心者殺しに無苓は拳銃を向けて
発砲音と共に発射された弾丸は初心者殺しの頭部に命中して絶命させた。
しかし、反動が予想以上に大きかった無苓は尻もちをついてしまったが暴発することなく目標目掛けて発射することができた。
練習は必要だが、大きな一歩を踏み出せれた無苓にゆんゆん達は茫然と見ていた。
「初心者殺しを一撃で……」
「凄い……」
「いったいなんなんだ?その魔道具は」
驚愕に包まれる三人に無苓は告げる。
「その事は後程。それよりも今の内にクエストを終わらせませんか?」
同じく驚愕に包まれていたゴブリンを倒してクエストを終わらせた。
クエストを終えてその報酬と初心者殺しの討伐も加わりクエストの報酬以上に貰えた無苓達は一つのテーブルに座って拳銃をゆんゆん達に見せてどういうものかを説明していた。
「凄い……魔法の詠唱もなしであの威力ならやっぱり私を捨てるのですか?」
「捨てません。昨日も言いましたがそれは私の護身用です」
拳銃の性能に自分はお払い箱と思い落ち込むゆんゆん。
「しかし、このようなものをどうやって作ったというのだ?」
「企業秘密です」
作成方法を問われたが無苓は答えない。
特典である《物質創造》で創ったと言っても信じては貰えないだろう。
「それよりもセルティさんのあの豹変ぶりは何だったのですか?」
話を変えて今度はセルティに視線が集まるとセルティさんは何とも言えない気まずそうな顔で告白してきた。
「……すまない、どうも私はモンスターを見ると頭に血が上って殺さらずにはいられなくなるんだ。ただ、安心して欲しい。人に危害を加えることは決してしない」
ああなるほどと無苓はアリッサ同様に納得した。
上級職のソードマスターが何故入って来たのか。
それはあの豹変ぶりを見れば誰もが怖がってしまうから。
「……やはり、ダメだろうか………?」
「いいえ、対象がモンスターだけなら問題ありません。二人はどうしますか?」
「わ、私もいて欲しいです。その、怖かったですけど……セルティさんの言葉を信じようと思います」
「わ、私なんかが否定するなんてことできません……」
ゆんゆんもアリッサもセルティを受け入れた。
豹変ぶりには驚きはしたけどそれとこれとは別問題だったようだ。
「い、いいのか?無理をする必要はないのだぞ?」
「安心してください。万が一に誰かに危害を加えようとしたら私がバインドで拘束しますから」
安心案を提供する無苓にセルティは本当にいいのかと困惑する。
「すぐには納得する必要はありません。取りあえずは私達のパーティーに入ってみては頂けませんか?それで残るも去るもセルティさんの判断にお任せします」
「……わ、わかった。迷惑をかけると思うがよろしく頼む」
新たなパーティーメンバーが加わって仲間が増えた無苓達。
そしてパーティーリーダーは無苓がいいと案が出て無苓がリーダーを引き受けることになった。
盗賊の刈萱無礼。
アークウィザードのゆんゆん。
アークプリーストのアリッサ。
ソードマスターのセルティ。
パーティーが結成されて今日はパーティー結成に乾杯した。
「「「「乾杯」」」」