樹海でバーテックスを迎え撃とうとしている勇者部の4人
「来た!」
「あれが5体目…」
「落ち着いて!ここで迎撃するわよ!」
「1ヶ月ぶりだからちゃんとできるかな…」
「え、えっとですね、ここをこう、こう!」
「ほうほう!」
「ええーい!『なせばたいてい何とかなる!』四の五の言わず、ビシッといくわよ!」
「「は、はいぃっ!」」
「勇者部ファイトォ!」
「「おーっ!」」
久々の出撃にとまどう友奈と樹に活を入れる風
そのとき、バーテックスの上空から何かが降り注ぐように突き刺さる
突き刺さった何かが爆発したかのようにバーテックスの頭部にダメージを与えた
「東郷さん?」
「…私じゃない」
また上空から何かが降ってきた。
「ちょろいっ!」
人だ。人が空から急降下しつつ何かを投げ付けていたのだ
再びバーテックスに当たった攻撃が爆発を起こす
「封印開始!」
続けて放った刀がバーテックスの足元に突き刺さり、封印の陣でカウントダウンが始まる
「まさか一人でやる気っ?!」
バーテックスの口らしきものからコアが出てきた次の瞬間
コアが煙幕のようなものを噴き出す
「ガス…?」
「なにこれぇ?!」
「見えない~」
口々に出る友奈たちの戸惑いの声を尻目に、コアに飛び掛っていく人影
「そんな目くらまし!」
「気配だけでも!」
斬ッ!!
その一撃で真っ二つになるコア。
「殲…滅…!」
『確定的ニ明ラカ』
その人と精霊の言葉と共にバーテックスは光を放ち、砂となって崩れていった。
ガスが消え、友奈たちの前に仁王立ちで姿を表した赤い装束の…
おそらく勇者であろうその人に話しかける
「え~と…誰?」
気の抜けたような友奈の問い掛けに答えるでもなく
「揃いも揃って、ぼーっとした顔してんなぁ」
溜息混じりに言葉を続ける
「こんな連中が神樹様に選ばれた勇者とはな。」
「あのぉ~」
「なんだ、ちんちくりん」
「ちん…?!」
友奈の言葉のまま、戸惑いを隠せない3人のもと、東郷も合流する。
4人に向かってあらためて自己紹介する赤き勇者。
「俺は三好春信。大赦から派遣された、正真正銘、正式な勇者だ。」
「5人目?!」
「それも男の子?」
「おいおい、どう見ても俺の方が年上だろ?男性って言えよ。」
男の子、男性…
そう、目の前にいる赤い装束の勇者は誰がどう見ても男なのだ。
「そんなバカな!神樹様に選ばれる勇者は清らかな乙女のはず!男が勇者候補にいたなんて聞いた事もないわ!」
「それだけ俺が特別って事さ。ラノベにもよくあるだろ?」
「なぜか女子にしか適性のない筈のシステムにたった一人適性を持った男が主人公って」
「ラノベ?」
「しかもそれが最強の適性者になっちまうわけだ」
「ラノベ…」
「さっきの戦いを見ても判るだろう?」
「一人でバーッテックスの封印を軽々こなしちゃう、まさに最強の勇者誕生ってわけよ」
「ねえ、ラノベって…何?」
「そこかよ!」
「ラノベに引っかかんのかよ!」
「人の話聴けよ!」
「ラノベ重要じゃねーよ!」
「だぁ~って~、聞いた事もない単語がいきなり出てきたら誰だって気になるでしょ。何か深い意味があるのかなって…」
「『ラノベ。ライトノベルの略語。神世紀以前のティーンズに流行した、漫画感覚で気軽に読める小説の形式。しかしそのジャンルは学園ものからファンタジー、SFと多岐にわたり、その言葉だけで内容を示唆するのは難しい。』といったところでしたっけ?」
「「「おお~!」」」
拍手して東郷に感心する友奈たち
「さすが東郷さん!色んなことに詳しいね!」
「いいえ、詳しくはないわ。ただ言葉として意味を知っていただけ。読んだ事もないし。」
「だから!」
「いつまでもラノベに食い付いてんじゃねーよ!」
「ただの例えだから!」
「ラノベについて言及したいんじゃないんだよ!」
じーーーー
登場時と打って変わった、激しい突っ込みを放つ5人目の勇者を4人がジト目で見つめる。
「コホン、兎に角だ。」
軽くなった空気に気付き、咳払いをする
春信は一旦感情を抑え、低い声で話を続けた
「最強の勇者たる俺が顕現したからには君たちはもう用済み、お払い箱、お疲れ様でした、ポイってわけ。」
「「「「えぇ~っ?!」」」」
「お前たちごとき、いてもいなくても今更どーでも良いってことよ。」
「まあ、それこそラノベよろしく、主人公の周りにいるハーレム要員として残りたいってんなら歓迎しても良いぜ?」
「おっぱいさんに、おでこ姉妹に、ちんちくりん、可愛いラインナップじゃないの。」
「戦闘じゃあ、な~んの役にも立たないけどなぁ!」
「!」
パシッ!
一瞬だった。
彼の言葉に平手打ちを放った東郷。
しかしその手は彼の左頬に届く寸前にかわされ、右手で受け止められていた。
「いきなりご挨拶だな。。。」
受け止められた右手の力を抜こうともせず、東郷は彼を睨みつけていた。
「私たちは、護国の為に命懸けで戦う覚悟を持ってここに立っているんです。侮辱する事は許しません。」
物言いこそ落ち着いてはいるが、東郷の怒りは明らかだった。
自分より、友奈たちを馬鹿にされた事が腹立たしいのだ。
「ふん、まあいいさ」
彼が一歩下がって手を離す。
「どうせここからは俺の独壇場だ。」
「全てのバーテックスは俺が倒す。」
「お前らに出番はねえよ。」
サアァァァァァッ
話している内にも樹海化が解除されつつあった。
「勇者を続けるつもりなら、今まで以上に覚悟を決めておく事だ。」
「活躍の場はやらねぇけどな。」
ザアァァァァァァァッ
学校の屋上
また神樹さまの力でここに戻されたらしい。
三好春信を名乗った少年の姿は見当たらない。
別の場所に転送されたのだろう。
「なんなのよ!アイツは!言いたい放題言ってくれちゃってぇ!」
「でも、本当に強かったね。一人でやっつけちゃうなんて。」
「どれだけ強くっても、周りの事を考えられない奴なんてサイテーよ!」
「まったくです。自分が優れているからといって、他人を見下すような態度は受け入れられません。」
「う~ん、でもなんかちょっと面白い感じもしたんだよねぇ。」
「「「え?」」」
「ほら、ラノベ?だっけ?あの話のときなんかみょ~に親しみやすかったし…」
「せっかく強いんだから、仲良くなって一緒に戦えればいいのになぁ…」
「友奈、アンタって子は…」
呆れながら笑う風。
「ふぇっ?!何かおかしな事言いました?わたし?」
「ふふっ、言ってないわよ。友奈らしいなって。」
「友奈さんらしいですよね。」
「友奈ちゃんは友奈ちゃんって事ですね。」
「ふぇっ?ふぇっ?!ふぇっ?!どういうこと?!」
「ま、目的は同じ、バーテックスを倒して国を護る事なんだし、戦っているうちにアイツのいいとこも見つかるかもしれないし。」
「そうですね、相手の事をよく知らないまま決め付けるのは、それこそチームワークの乱れを生みます。」
「友奈さんが仲良くなれるって言うなら、なんとかなりそうな気がします。」
「大体、あんな軽妙な突っ込み入れてくる奴がなんであんな…」
すっかり毒気を抜かれた3人が今後の事を話している間も、友奈一人キョロキョロと3人の顔を見渡すのだった。
大橋上
「ふう。。。」
「なんとか、シミュレーション通りに終わったな。。。」
「?」
手足が震えている。
「ははは、今になって震えがきたよ。」
ドサッ
地べたに座り込み、柱にもたれかかる。
「僕は上手くやれたんだろうか。」
『寿命ガストレスデマッハ』
三好春信はたった今終わった戦闘
そしてその後の勇者たちとのやり取りを振り返った。
(勇者システムを使った初陣)
(体もよく動いたし、刀も思い通りに出せた)
(精霊の守りを使う事もなく、順調に封印の儀を済ませた)
(そして自己紹介)
「驚いてたなぁ、みんな」
「いきなり新しい勇者、それも男が来たってんだから当然か。。。」
「ついラノベを引き合いに出してしまったな。。。」
「思わず突っ込みを入れてしまった。」
「クールで嫌味な奴を演じきる筈だったのに。。。」
『時既ニ時間切レ』
「でも。。。」
怒りをあらわにして平手打ちを放った少女の顔が頭をよぎり、心が痛んだ。
「挑発はうまくいったのかな、結構険悪なムードになってたし。」
『怒リガ有頂天』
(あの調子で戦っていけば、彼女たちも僕と一緒に戦おうなんて思わないだろう)
(その上で自分たちが必要ないと思えるくらい僕が活躍できれば。。。)
「彼女たちを勇者という名の呪いから解き放てるかもしれない。」
その瞳からは先程迄あった怯えの色が消え、強い意志の光が放たれていた。
『ドチラカトイウト大反対』
「。。。お前、実は意味ちゃんとわかってて言ってるだろ?」
自分の精霊の言葉に水を指され愚痴るように呟いた
「ほんっとにあったまいいな、お前は!」
嫌味で言った言葉だったが
『ソレホドデモナイ』
その赤い精霊は春信を見るでもなく、答えるのだった。
はい、『ゆゆゆ』のスピンオフです
まあ、二次創作ではたくさんあるであろう、男勇者の物語です
一応、なぜ彼が勇者となれたのかも書いていきますが、基本オリジナル設定です
原作はアニメ、『鷲尾~』の小説とコミック1巻、ネットの4コマ漫画くらいしか見てないかな
アニメ見てたら大赦の人間って、一言も喋らずに園子にかしずいていたり、
犬吠埼夫妻の死を、仮面のあの格好で自宅まで報せに来たりと、
人間味に欠けるところがあったので
中には勇者たちの境遇に泣いてる人もいるんじゃないかと
そんな気持ちから妄想が広がった次第です
出来るだけ再放送のペースに合わせて書いてくつもりなので、よろしければお付き合いください