三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

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このお話には原作のネタバレ、おかしな改変が含まれます。
っていうか、今回も勇者が誰も出ません。名前しか。
誰得だ、こんな話。



第10回 笑顔のお迎え

「でゅふっ、でゅふふふ。。。」

 

初日から尻に蹴りが飛んできた。

 

「でゅふふじゃないよ!お客さんには『いらっしゃい』だろうが!」

・

・

・

「い、いらっしゃいませ。。。」

 

今日も尻に蹴りが飛んできた。

 

「もっと腹から声を出すんだよ!」

・

・

・

「い、いらっしゃいー!」

 

この日も尻に蹴りが飛んできた。

 

「どもってんじゃないよ!」

・

・

・

「いらっっっしゃいませーっっっ!!!」

 

また尻に蹴りが飛んできた。

 

「叫びゃあいいってもんじゃないんだよ!お客さんに感謝の気持ちを伝えんだ!」

 

 

毎日、必ず一回は接客の挨拶練習。

多分うまくいくまでずっと続くんだろう。

 

考えてみれば、バイトもしたことのない僕。

こんなに努力したのは初めてかもしれない。

基本セルフサービスの食堂で、調理のできない僕の仕事は限られていた。

 

だから暇さえあれば挨拶。

しかしこのチーフ、おばちゃん体型の癖に。。。

なんでこんなに綺麗にソバットを決めてくるんだ?!

まさか昔、勇者だったとか。。。

 

「バカな独り言いってる暇があったらテーブルでも拭きな!」

 

「は、はいぃ!」

(く、口に出てた?!)

 

「気合が入ってない!」

 

スパーン!

今日も食堂にソバットの音が響く。

そんなたわいのない日々が続いた。

・

・

・

「食器ここに置いとくよ。」

 

「ありがとうごさいます!」

 

「お、やっと客相手に挨拶させてもらえるようになったか。」

 

「へへ、お恥ずかしい。あ、いらっしゃいませー!」

 

「ま、料理もできるように頑張んな。」

 

「はい!」

 

食器洗いをしながら常連さんに声をかけてもらう。

(といっても施設の中の人ばかりだからほとんどが常連さんだ。)

もうソバットを食らう事もなくなった。

日に一回くらいしか。。。

 

「そういや、聞いたかい?」

「神樹館は今日遠足らしいぜ。」

 

「へえ、遠足ってなんか懐かしい響きですね。」

 

テーブルを拭いていると

これまた常連さんが話しかけてくる。

(そろそろ顔と名前くらい覚えないと失礼だよな。。。)

 

「今でもおやつは300円までなのかねぇ?」

 

「あはは、バナナがおやつに入るか先生に聞くんですね。」

 

こういうやり取りはネットによると神世紀以前からあったらしい。

人と人のコミュニケーションなんてそうそう変わらないって事だ。

 

「あの3人も今頃、楽しんでんだろなぁ。」

 

「え?3人って。。。」

 

「大赦の勇者、3人組だよ。」

 

「。。。そういうのって大丈夫なんですか?」

 

「なにが?」

 

「遠足でこの地を離れてる隙に敵が現れたら、とか。。。」

 

う~ん、と顎に手を当てて

 

「大丈夫なんじゃない?多分。」

 

「多分って。。。」

 

「だって、君も記録映像見ただろ?」

「あの3人の動き。」

「あれなら樹海化が始まってすぐに動けば四国のどこからだっていけるさ。」

 

「そう。。。なのかな?」

 

「第一、彼女たちはまだ小学生だぜ。」

「いくら世界を救うため~って言っても」

「お役目に縛られて身動きが取れないんじゃ意味がない。」

「ストレスでいざって時に実力が出せなくなっちゃうだろ?」

 

「なるほど、そういう考え方もあるのか。」

 

「世界の命運がかかった組織だから、硬くなるのはわかるけど。」

「彼女たちに存分に戦ってもらう為のサポートが俺達の仕事だ。」

「そのことを忘れずに柔らか~く考えようぜ。」

 

くねくねと両手を振りながらやわらか~くを表現している。

 

「ぷっ、そ、そうですね。」

 

「そうそう、笑って彼女たちを迎える余裕がないと、俺たちには。」

 

「迎える余裕、か。」

「今度、銀に会うときは笑ってお帰りを言ってやるかな。」

 

明るく笑う、ボーイッシュな少女の顔が思い出された。

 

「お、三好くんは銀ちゃんがお気に入りかな?」

 

「え?お気に入りって。。。」

 

「銀ちゃんも良いけど、須美ちゃんや園子ちゃんも良いよ~。」

 

「何言ってんすか、相手は子供ですよ。」

 

「君こそ何を言っているんだい。」

 

急にキリリと真面目な顔をしてくる。

 

「神世紀以前から伝わる伝承にこんな言葉がある。」

「『可愛いは正義』」

 

「ぶっ!」

 

吹き出してしまった。

ネットで以前見たスラングじゃないか。

 

「可愛いってのはそれだけで正義なんだよ。」

「まして彼女たちは本当に正義の味方だ。」

「その上、もとからあんなに可愛い!」

「もう非の打ち所がないじゃないか~!」

 

口元に手を持ってきてヒソヒソと続ける。

 

「ここだけの話、彼女たちには施設内にファン倶楽部もあるんだよ。」

 

「本当ですか?!」

 

「嘘だよ。」

 

「はあ?」

 

また普通に話し出す。

 

「まあファン倶楽部ってのは冗談だけど。」

「どの子がお気に入りとか派閥があるって感じかな。」

「あ、だからってお気に入り以外の子を貶(けな)すような事はしないぜ。」

 

「はあ。。。」

 

「今度、銀ちゃん派の奴に声かけるよう言っといてやるよ。」

 

「いりませんよ。」

 

「お堅いねぇ、心にはオアシスも必要だよ。」

 

「僕の心のオアシスは。。。」

夏凜ちゃんがいますから。

そう言いかけて口をつぐんだ。

「ちゃんと彼女を作って癒しますから。」

 

「言うねぇ。まあ、ここは女性陣も多いし、チャンスならあるかもな。」

 

そんな事を言いながら食堂から出て行った。

 

危ない危ない。

夏凜ちゃんみたいな美少女の事が知れたら、ホントにファン倶楽部ができかねないぞ。

ここでは妹がいることは黙っていよう。

まったく、大赦がロリコンの巣窟とは恐れ入ったよ。

 

笑顔でお帰り、か。

次に銀が来るのはバーテックスとの戦い後かな?

はやく来ないかな、バーテックス。

な~んてね。

無事で戻ってくるならいつでも良いや。

ビームやロボの誤解も解いとかないとな。

ガッカリするかもしれないから、お詫びに何か用意しとくか。

ああいう子だから、きっと食べ物が一番喜ぶに違いない。

チーフに、僕でもできる料理、教えてもらえるかな?

 

「チーフ!お願いがあるんですけど!」

 

次に会うのを楽しみにして、僕はチーフに教えを請うのだった。

 




明るい話なのに書いてて辛い…

あ、過去編その5です。

遂に遠足の日まで来てしまった…

原作読んでる方、読んでない方、色々思うところはあるでしょうが。

ある意味、次クライマックスです。
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