三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

11 / 28
このお話には原作のネタバレ、原作そのままの台詞、おかしな改変が含まれます。



第11回 おいしいご飯とまずい飯

チーフに教えてもらった、はじめての料理。

白飯を塩で握っただけのにぎり飯。

清潔にさえすれば素人が作ったものでもそこそこおいしい。らしい。

 

まさか教えを請うたその日にバーテックスが出るとは思わなかった。

またモニターで見れるらしいので、先におにぎりを作って持って行こう。

戦いが終わったらすぐに渡しにいけるように。

 

食堂からミッションルームに向かう途中で色々想像する。

 

笑って「お帰り」っておにぎり渡すんだ。

あのときはドヤ顔しか見せられなかったからな。

接客で鍛えた笑顔を見せ付けてやる。

おにぎり食ったら喜ぶかな?

アイツ、デリカシーとかなさそうだから

平気で「不味い」とか「下手くそ」とか言いそうだな。

 

足がピタリと止まる。

 

いらない、とか、誰?とか言われたらどうしよう。。。

一度会っただけの、見た目おっさんらしいし。。。

忘れてたり、そんな怪しい物いらないとか。。。

 

いや!

そんな事気にしない!

 

また駆け出す。

 

僕は彼女たちをサポートするって決めたんだ!

忘れられてるなら、あらためて自己紹介だ!

食堂で働く事になった三好春信です!って

たとえその場で捨てられたって気にしない!

 

。。。いや、流石にそれは気にする。

 

でもそんなこと銀はしない!

きっとご飯は大切にする子だ!

 

あ、逆に他の子たちの分がないと気にするかも。。。

3個包んでるから皆で分けてもらうか!

 

そんな事を考えながらミッションルームに入っていった。

 

「。。。?」

 

なんだかいつもより緊張感っていうか、空気が重いような。。。

いつもだって談笑しながら見てるようなものじゃないけど

今日は特に。。。まるでお通。。。

 

「!? 上から何か来る!!」

 

モニターから叫び声が聞こえた。

3人の勇者に降り注ぐ光の雨。

矢のような攻撃を武器で防ぐ銀と乃木園子。

鷲尾須美も乃木園子の武器の影に避難している。

そこに

 

「うぁぁぁあああああっ!!」

 

バーテックスの横なぎの攻撃でふっとぶ3人。

 

「3体。。。?」

 

そう、バーテックスが3体、画面に映っている。

 

(3対1でやっと余裕が出てきたばかりなのに)

(いきなり3対3だなんて!)

 

そうではなかった。

3人が吹っ飛ばされたあと、よろよろと立ち上がったのは銀1人。

乃木園子と鷲尾須美は倒れたままだ。

 

(1対3。。。!)

(こんなの無理だ。。。)

(勝てっこない。。。)

 

周りを見渡しても誰も何も言わない。

あの黒服の男がじっとモニターを見つめている姿が見えた。

 

「な、なあ。。。」

 

声をかけるが、見向きもせず、モニターを凝視している。

 

「あ、あれは無理だろ。。。」

「どう見ても一時撤退の状況だろ。。。」

「撤退って言ってやれよ」

「あんた達、大人だろ!」

「子供があんな死にそうになってんのに、まだ戦えって言うのかよ!」

「あんたらが言わないな。。。」

 

口の辺りが急に熱くなって僕はすっ転んでいた。

 

「うろたえるな。」

 

男に殴られたのだ。

 

「勇者に撤退はない。」

「勇者が負け、神樹様が破壊されれば世界は終わる。」

「貴様も知らんわけではなかろう。」

 

「うっ。。。」

 

そんな事、知ってる。。。

でも。。。

 

「で、でも、勇者たちが戦闘中に死んだら同じ事じゃないか。」

「負けない為にも一旦体勢を立て直すとか、指示を。。。」

 

「指示はできない。」

 

「なんでっ。。。」

 

「安心しろ。」

「世界は終わらなかった。」

「勇者たちは勝ったんだ。」

 

「え。。。?」

 

何を言っているんだ?

 

「樹海化は時空をゆがめる神樹様の奇跡。」

「バーテックスが現れ、樹海化した時点で世界の時間は止まる。」

「もし勇者が負け、世界が終わっていれば、今この時間に我々は存在しない。」

「我々は勇者が勝ち、戦闘が終了した時点で勇者端末からのデータと報せを受け、戦闘があった事を知る。」

「今のこの映像は端末のデータで構成された記録映像だ。」

 

そう。。。なのか。

 

「なんだ。。。」

 

腰を落とし、それならそうと早く言ってくれ

そう言おうとした時

モニターから再び叫び声が響いた。

 

「ぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいん!!!!」

 

銀を呼ぶ少女の叫び声。

モニターの中では

銀が大橋の上から二人の勇者を放り投げていた。

 

(なに、何やってんだ。。。銀?)

 

斧を拾い

 

「…いっとくかァ!!!!!!」

 

叫びと共に矢のような勢いで飛び出し、敵の一体に斬りかかる銀。

二体目の攻撃は斬りかかった敵の体で防ぐ。

三体目の攻撃は斧で受け止め、そちらに斬りかかる。

 

(すごい。。。!)

 

二体目がまた光の矢を放つ。

当たった!そう見えたが、銀の勢いは止まらず、三体目を攻撃し続ける。

他の二体からの攻撃も何度か当たっているように見える。

しかし銀の猛攻は止まらない。

 

「化け物にはわかんないでしょう、この力!」

「これこそが!」

「人間様の!」

「気合ってやつよ!!」

 

三体目だけではなく、他の二体にも攻撃を繰り出す銀。

しかし、手数はまるで減っていない。

むしろ押し返していってる。

 

「このまま…出て行けぇぇぇ!!!!」

 

(いける!このままいけるぞ!銀!)

 

そう思ったとき、光の矢に足を貫かれ、銀がバランスを崩す。

 

「!」

 

思わず目を逸らした。

 

「~~~~~~~~~~!!!!!」

 

しかし銀は叫び続け、斬りかかり続けていた。

 

敵は下がりつつも攻撃を続ける。

赤い勇者服がどんどん血に染まる。

 

(ホントに、ホントに銀は勝ったのか?勝って無事に帰ってきたのか?)

 

不安に周りを見渡すが、誰もモニターから目を外さない。

 

敵が三体とも壁の向こうへ逃げたあとも

銀は暫くの間、勢いあまって斧を振り続けていた。

 

その手が止まり、壁の向こうを睨んだまま待つ銀。

樹海化はまだ解けない。

 

その後ろから、やっと回復したのだろう、乃木園子と鷲尾須美が駆け寄る。

静かな空間で二人の足音と息づかいだけが聞こえる。

 

「銀!!!!」

 

「ミノさんが追っ払ってくれたんだね、凄い、本当に…凄いよ~」

 

「もう樹海が解けるわ。戻ったら病院にいかないとね…!」

 

「…ミノさん…?」

 

「…銀、どうしたの?」

 

「銀…? 銀!?」

 

樹海化が解けて映像が終わった。

 

 

 

 

「。。。なあ、どういうことだ?」

 

「…」

 

男は黙っていた。

 

「何を聞いてるのか、わかってんだろ!」

 

「三ノ輪銀は…」

「心停止状態で戦闘を終え、集中治療室へ運ばれた。」

 

「治療室って事は、助かるんだよな!」

 

「運ばれた時点で、手の施しようがなかったそうだ。」

 

周りで嗚咽を漏らす声が聞こえる。

 

僕は部屋を飛び出した。

 

医療ブロックへ行き、集中治療室を探す。

探すまでもなかった。

人だかりができていた。

静かな人だかり。

時折、嗚咽を漏らす声がする。

その奥に。。。

 

二人の少女が泣いていた。

一人の少女が眠るベッドにすがり、泣いていた。

 

僕は。。。

近づく事も見守る事もできずに部屋に帰った。

 

部屋でにぎり飯をむさぼり食った。

 

「不味い。。。」

「こんな不味い飯、食ったことないや。。。」

「銀に。。。やらなくてよかった。。。」

「銀。。。」

「銀。。。」

 

泣きながらにぎり飯をむさぼり食った。

 

 

 

 

 

 




過去編その6
でした。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。