三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

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このお話には原作アニメのネタバレ、おかしな改変が含まれます。



第19回 サツキとバラと牡丹

「陰ながら応援してるぜ、勇者部の活動。」

「お前らがいたから俺もここまで頑張れたんだと思う。」

「お前らは間違いなく、最強の勇者、そして最強の乙女達だ。」

 

大橋に夕日がかかっている。

樹海化は解除され、自分の声のどこまでが彼女達に届いたのかはわからない。

しかしもう思い残す事はなかった。

これで本当に一人でやっていくことが出来る。

そう思った春信の背に

 

「やっと会えたね~三好春信さん~」

 

祠の向こうから少女の声が響いた。

 

「?!」

 

祠の裏に回るとそこにはベッドがあった。

そのベッドに横たわる包帯だらけの少女。

 

「乃木。。。園子!」

 

「流石は大赦の遣わした勇者~、私の事も知ってるんだね~」

 

「。。。なるほど、神様に近くなるとこんな芸当も出来るってわけか?」

 

「うん、ハルルンに聞いておきたいことがあってね~」

 

「聞きたい事?ってちょっと待て、ハルルンって俺の事か?」

 

「そうだよ~」

 

(コイツか、先代勇者の中でおかしなあだ名を広めたのは。。。)

 

「人の呼び名を決めるときは、もうちょっと考えろ。」

「お前だって、『乃木坂48』とか『その木何の木気になる木』とか呼ばれたらヤだろ?」

 

「何それ素敵~」

 

(ここまで無茶なのでもオッケェかぁ。。。)

 

話にならないと本題に戻す春信。

 

「大体、俺に聞きたい事ってなんだよ。」

「こんなことが出来るなら、鷲尾須美を呼んで話す方が良かったんじゃないのか?」

 

「うん~、わっしーには会いたかったけど…」

「私を見て『知らない人』って顔をされるのは悲しいから~」

 

「うぐっ。。。」

 

「どうしたの~?」

 

「なんでもない。」

(泣くなよ、僕。。。)

(彼女への同情はその行為への侮辱だ。。。)

(だから泣くなよ。。。)

 

「わっしーに伝えたい事は大体ハルルンが話してくれたし」

「ただ、なんでかな~って」

 

「何。。がだ?」

 

「花が咲けば散る。」

「その代わり、勇者は決して『死なない』」

「この事を話さなかったのはなぜかな~」

 

「ああ、そのことか」

「気づいたのさ」

 

「え?」

 

「真の勇者ってのはワガママなんだってさ」

 

「どういうことかな~?」

 

「勇者部のあの子達もお前たちと同じように、世界の為に命を賭けて戦う」

「そんな子達だ。」

 

「そうだね~」

 

「でもそこには、自分が傷ついたら、死んでしまったら」

「自分を愛してくれている人たちがどれだけ悲しむか」

「そういう想像が抜けているんだ。」

 

「一緒に戦う友が傷つくのは耐えられない」

「だから自分が傷つく側に立つ。」

 

「それは裏を返せば、自分が悲しみたくないから」

「自分を好きでいてくれる人を悲しませる」

「そういう行為なんだよ。」

 

「なるほど~、わがままだね~」

 

「大赦があのシステムを嫌悪しつつも使っているのは」

「『それでも勇者達を死なせたくない』ってワガママ」

「俺はそれでもいいと思えた。」

 

「え…?」

 

「実際に使った『満開』、あれはとてつもない力だ」

「あのバーテックスたちを蹂躙できるほどの力だ」

「それが体の一部を欠損する『だけ』で使える」

「おまけに死ぬ事はない」

「戦う者にとってこんな好都合なシステムはないって思えるぜ。」

 

「…」

 

「だが、そこに命の危険が加われば、まるで話は別だ」

「誰だって死にたくないし、好きな人を悲しませたくない」

「それをより強く実感させる為に、必要な茶番だったのさ。」

 

「う~ん…」

 

「大体、酷いもんだったぜ、乃木園子、アンタの最後の戦いは。」

 

「そうかな~?」

 

「『満開』『満開』『満開』、アレ『散華』の事、気づいててやってたんだろ?」

 

「まあ、なんとなくね~」

 

「もし鷲尾須美が記憶を失ってなかったら、どれだけ悲しんだと思うんだ。」

 

「それを言われると、ちょっと辛いかな~」

 

「銀にしたってそうだ。。。」

 

「~…!」

 

「お前ら二人を海へ放り投げて。。。」

「一人であんなに頑張って。。。」

「。。。残された。。。二人がどれだけ。。。」

 

「ミノさんの為に泣いてくれるんだね~」

 

春信は気づいていなかったが、銀の名を口にしたときから目から涙が溢れていた。

 

「違う!俺は。。。泣かない!」

「あんな。。。バカの為になんか。。。」

「あんな。。。死に方するような。。。バカの。。。」

「銀。。。」

「ううっ。。。」

 

そのまま俯いて涙を流す春信を、園子は黙って見守っていた。

暫くして落ち着いた春信が切り出す。

 

「み、みっともない所を見せたな。。。」

 

「いいよ~」

「そこに水差しがあるから、水でも飲んで落ち着いて~」

「私はこんなだから注いであげられないけど~」

 

目線で自分の体を見ながら言う。

 

「ぐっ」

(重い事を明るく言いやがって。。。)

「あ、ああ、すまんな。」

 

コップに水を注ぎ、口にする。

 

「ところで~」

 

「ん?」

 

「ビームやロボは開発できたのかな~?」

 

「ぶふぅぅぅぅぅっ!」

 

突然の問いかけに盛大に噴き出してしまう。

 

「え。。。な。。。え?」

 

春信は顔を真っ赤にしてうろたえている。

 

「ミノさんから聞いてたんだ~」

「先生以外に大赦で親しく話した人がいたこと~」

「聞いた話と全然容姿が違うから、今までわからなかったよ~」

 

真っ赤な顔で固まったまま、口をパクパクしている春信。

 

「。。。///」

「どうして。。。」

 

「ん~?」

 

「どうしてわかったんだ?」

 

「ん~、泣いてるのを見たらなんとなく、かな~」

 

「なんとなくって。。。」

(この子の鋭さもいい加減凄いな。。。)

 

「大赦でミノさんの事、下の名で呼び捨てにする人なんていかなったしね~」

 

「そ、そうか。」

「か、開発は出来なかったが。。。」

「ビームみたいな剣圧や~、あとロボ的な豪腕で決戦は勝利したんだぜ!」

 

真っ赤な顔で目線を泳がせながら語る春信。

苦しい言い訳だった。しかし

 

「そっか~、凄いね~」

 

園子は素直に喜んでいた。

 

「勇者の姿になってもらってもいいかな~?」

 

園子の願いに黙って頷く。

 

「赤射!」

 

ポーズを決めて叫ぶと、赤い勇者服がその身を覆う。

 

「セキシャ?」

 

「ああ、詳しくは言えないが、ポーズとキーワードがないと変身出来ないんだ、俺は。」

 

「そうなんだ~」

「回って見せてくれるかな~」

 

園子の要望に応え、ゆっくりと回る。

 

「変身すると髪が伸びて後ろでくくってるんだね~」

「本当にミノさんみたいだ~」

 

「ヤツと同じように愛してくれたっていいんだぜ?」

 

「あはは~、それは無理かな~」

 

お互いに冗談を交わす。

その後、夕日がかげるまで話をした。

決戦での戦い。

お互いの銀との思い出。

 

空が薄暗くなるまでのほんの少しの間だったが、二人は充実した時間を過ごせた。

 

「久し振りにミノさんの話が出来て楽しかったよ~」

 

「そうか。」

 

「…」

 

「。。。」

 

「これからが大変だね~」

 

「覚悟はしている。」

 

「きっといろんな人を悲しませるよ~」

 

「それも含めての覚悟だ。」

「勇者はワガママだからな。」

 

「そうか~、そうだね~」

「でも…」

 

沈黙

 

「どうした?」

 

「ん~ん、最後まで頑張れるといいね~」

 

「うん?」

 

煮え切らないような励ましに、思わず疑問形で肯定する春信。

待ち構えていたかのように烏帽子の仮面男達が取り囲む。

 

(こんなにいた?気配では数名かと思っていたのに。。。)

 

「待たせたね~」

 

戸惑う春信をよそに、仮面に話す園子。

 

「ハルルンは…自分で帰れるか~」

 

「あ、ああ。」

「てか、ハルルンはやめろ!」

 

「駄目だよ~勇者はわがままなんだから、一度決めたら変わらないよ~」

 

自分の言葉をそのまま返され、苦笑する。

 

「じゃあ、またな。」

 

「うん、またね~」

 

「園子様、夜風は体に障ります、早く…」

 

立ち去る背中で仮面たちの囁くような声が聞こえる。

もう会う事もないだろう、そう思いながら再会の言葉を交わした春信。

彼の心は既に次の戦いへと思いを馳せていた。

 




乃木園子との邂逅
TV第8話後半にあたる話です。
本編では友奈と東郷が呼ばれ、満開の真実が明かされますが
こっちでは既に春信がばらしちゃったので、こうなりました。

ところで、次回からメインタイトルが変わります。
「5人目の勇者」あらため「三好春信は勇者である」
突然で済みません。
私としては当初からの予定が、ここまで延びてしまっただけなんですが。
元々、タイトルも第1回の流れも、TV第3話冒頭を意識したミスリードの為だったので。
春信一人で戦う事になったここからは5人目の意味も薄れましたし。

というわけで次回、「三好春信は勇者である」
デートで春信が見る夢は!?
お楽しみに


<番外編5>
日がかげるまで語る二人

「お前らの初陣後、銀が大赦で検査受けてたろ?」
「そのときサンバルカンって特撮番組を観てたら」
「銀のヤツ勝手に俺の部屋に入ってきてさぁ」

「あれ~?でもミノさんが検査受けてたのって結構早い時間だよね~」

「え?」

「いい歳した大人がそんな時間に、なんで子供番組観てたのかな~?」

「いや、まだその時は十代。。。」

「お休みだったのかな~?」

「いや、働いては。。。」

「年中お休みだったのかな~?」

「。。。」

「無職のニートだったのかな~?」

「も。。。」

「なにかな~?」

「もう勘弁してください。。。」

『仏ノ顔ヲ三度マデトイウ名セリフヲ知ラナイノカヨ』

「お前はもう出て来んな!」

絶妙なタイミングで出てくる精霊に涙を禁じえない春信であった。



<番外編6>

「赤射!」

ポーズを決めて叫ぶと、赤い勇者服がその身を覆う。
宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。
では、赤射プロセスをもう一度見てみよう。

「え?」

もう一度見てみよう!

「え。。。あ。。。えと。。。赤射!」

再びポーズを決めて叫ぶ春信、いい年をして恥ずかしくないのだろうか?
目の前で女子中学生が凝視していると言うのに!

「え。。。なんでナレーションに責められてんの、俺?」

言い訳がましい春信。
しかしJC相手に恥ずかしい事をしている事実は変わらない!

『英語デイウトノンフィクション』

「ここ、なんかおかしくない?ねえ、誰かなんか言ってやった方がよくない?!」

番外編においておかしな事など日常茶飯事なのだ!

「いや、5までは雰囲気ブチ壊しになるってだけで」
「本文にあってもおかしくない話の流れだったよね?」
「今回の明らかにおかしいよね?」

ここからはそんな事を考える必要がなくなったというわけだ!

「っておい!オチもなしかよ!」

ない!
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