「陰ながら応援してるぜ、勇者部の活動。」
「お前らがいたから俺もここまで頑張れたんだと思う。」
「お前らは間違いなく、最強の勇者、そして最強の乙女達だ。」
大橋に夕日がかかっている。
樹海化は解除され、自分の声のどこまでが彼女達に届いたのかはわからない。
しかしもう思い残す事はなかった。
これで本当に一人でやっていくことが出来る。
そう思った春信の背に
「やっと会えたね~三好春信さん~」
祠の向こうから少女の声が響いた。
「?!」
祠の裏に回るとそこにはベッドがあった。
そのベッドに横たわる包帯だらけの少女。
「乃木。。。園子!」
「流石は大赦の遣わした勇者~、私の事も知ってるんだね~」
「。。。なるほど、神様に近くなるとこんな芸当も出来るってわけか?」
「うん、ハルルンに聞いておきたいことがあってね~」
「聞きたい事?ってちょっと待て、ハルルンって俺の事か?」
「そうだよ~」
(コイツか、先代勇者の中でおかしなあだ名を広めたのは。。。)
「人の呼び名を決めるときは、もうちょっと考えろ。」
「お前だって、『乃木坂48』とか『その木何の木気になる木』とか呼ばれたらヤだろ?」
「何それ素敵~」
(ここまで無茶なのでもオッケェかぁ。。。)
話にならないと本題に戻す春信。
「大体、俺に聞きたい事ってなんだよ。」
「こんなことが出来るなら、鷲尾須美を呼んで話す方が良かったんじゃないのか?」
「うん~、わっしーには会いたかったけど…」
「私を見て『知らない人』って顔をされるのは悲しいから~」
「うぐっ。。。」
「どうしたの~?」
「なんでもない。」
(泣くなよ、僕。。。)
(彼女への同情はその行為への侮辱だ。。。)
(だから泣くなよ。。。)
「わっしーに伝えたい事は大体ハルルンが話してくれたし」
「ただ、なんでかな~って」
「何。。がだ?」
「花が咲けば散る。」
「その代わり、勇者は決して『死なない』」
「この事を話さなかったのはなぜかな~」
「ああ、そのことか」
「気づいたのさ」
「え?」
「真の勇者ってのはワガママなんだってさ」
「どういうことかな~?」
「勇者部のあの子達もお前たちと同じように、世界の為に命を賭けて戦う」
「そんな子達だ。」
「そうだね~」
「でもそこには、自分が傷ついたら、死んでしまったら」
「自分を愛してくれている人たちがどれだけ悲しむか」
「そういう想像が抜けているんだ。」
「一緒に戦う友が傷つくのは耐えられない」
「だから自分が傷つく側に立つ。」
「それは裏を返せば、自分が悲しみたくないから」
「自分を好きでいてくれる人を悲しませる」
「そういう行為なんだよ。」
「なるほど~、わがままだね~」
「大赦があのシステムを嫌悪しつつも使っているのは」
「『それでも勇者達を死なせたくない』ってワガママ」
「俺はそれでもいいと思えた。」
「え…?」
「実際に使った『満開』、あれはとてつもない力だ」
「あのバーテックスたちを蹂躙できるほどの力だ」
「それが体の一部を欠損する『だけ』で使える」
「おまけに死ぬ事はない」
「戦う者にとってこんな好都合なシステムはないって思えるぜ。」
「…」
「だが、そこに命の危険が加われば、まるで話は別だ」
「誰だって死にたくないし、好きな人を悲しませたくない」
「それをより強く実感させる為に、必要な茶番だったのさ。」
「う~ん…」
「大体、酷いもんだったぜ、乃木園子、アンタの最後の戦いは。」
「そうかな~?」
「『満開』『満開』『満開』、アレ『散華』の事、気づいててやってたんだろ?」
「まあ、なんとなくね~」
「もし鷲尾須美が記憶を失ってなかったら、どれだけ悲しんだと思うんだ。」
「それを言われると、ちょっと辛いかな~」
「銀にしたってそうだ。。。」
「~…!」
「お前ら二人を海へ放り投げて。。。」
「一人であんなに頑張って。。。」
「。。。残された。。。二人がどれだけ。。。」
「ミノさんの為に泣いてくれるんだね~」
春信は気づいていなかったが、銀の名を口にしたときから目から涙が溢れていた。
「違う!俺は。。。泣かない!」
「あんな。。。バカの為になんか。。。」
「あんな。。。死に方するような。。。バカの。。。」
「銀。。。」
「ううっ。。。」
そのまま俯いて涙を流す春信を、園子は黙って見守っていた。
・
・
・
暫くして落ち着いた春信が切り出す。
「み、みっともない所を見せたな。。。」
「いいよ~」
「そこに水差しがあるから、水でも飲んで落ち着いて~」
「私はこんなだから注いであげられないけど~」
目線で自分の体を見ながら言う。
「ぐっ」
(重い事を明るく言いやがって。。。)
「あ、ああ、すまんな。」
コップに水を注ぎ、口にする。
「ところで~」
「ん?」
「ビームやロボは開発できたのかな~?」
「ぶふぅぅぅぅぅっ!」
突然の問いかけに盛大に噴き出してしまう。
「え。。。な。。。え?」
春信は顔を真っ赤にしてうろたえている。
「ミノさんから聞いてたんだ~」
「先生以外に大赦で親しく話した人がいたこと~」
「聞いた話と全然容姿が違うから、今までわからなかったよ~」
真っ赤な顔で固まったまま、口をパクパクしている春信。
「。。。///」
「どうして。。。」
「ん~?」
「どうしてわかったんだ?」
「ん~、泣いてるのを見たらなんとなく、かな~」
「なんとなくって。。。」
(この子の鋭さもいい加減凄いな。。。)
「大赦でミノさんの事、下の名で呼び捨てにする人なんていかなったしね~」
「そ、そうか。」
「か、開発は出来なかったが。。。」
「ビームみたいな剣圧や~、あとロボ的な豪腕で決戦は勝利したんだぜ!」
真っ赤な顔で目線を泳がせながら語る春信。
苦しい言い訳だった。しかし
「そっか~、凄いね~」
園子は素直に喜んでいた。
「勇者の姿になってもらってもいいかな~?」
園子の願いに黙って頷く。
「赤射!」
ポーズを決めて叫ぶと、赤い勇者服がその身を覆う。
「セキシャ?」
「ああ、詳しくは言えないが、ポーズとキーワードがないと変身出来ないんだ、俺は。」
「そうなんだ~」
「回って見せてくれるかな~」
園子の要望に応え、ゆっくりと回る。
「変身すると髪が伸びて後ろでくくってるんだね~」
「本当にミノさんみたいだ~」
「ヤツと同じように愛してくれたっていいんだぜ?」
「あはは~、それは無理かな~」
お互いに冗談を交わす。
その後、夕日がかげるまで話をした。
決戦での戦い。
お互いの銀との思い出。
空が薄暗くなるまでのほんの少しの間だったが、二人は充実した時間を過ごせた。
「久し振りにミノさんの話が出来て楽しかったよ~」
「そうか。」
「…」
「。。。」
「これからが大変だね~」
「覚悟はしている。」
「きっといろんな人を悲しませるよ~」
「それも含めての覚悟だ。」
「勇者はワガママだからな。」
「そうか~、そうだね~」
「でも…」
沈黙
「どうした?」
「ん~ん、最後まで頑張れるといいね~」
「うん?」
煮え切らないような励ましに、思わず疑問形で肯定する春信。
待ち構えていたかのように烏帽子の仮面男達が取り囲む。
(こんなにいた?気配では数名かと思っていたのに。。。)
「待たせたね~」
戸惑う春信をよそに、仮面に話す園子。
「ハルルンは…自分で帰れるか~」
「あ、ああ。」
「てか、ハルルンはやめろ!」
「駄目だよ~勇者はわがままなんだから、一度決めたら変わらないよ~」
自分の言葉をそのまま返され、苦笑する。
「じゃあ、またな。」
「うん、またね~」
「園子様、夜風は体に障ります、早く…」
立ち去る背中で仮面たちの囁くような声が聞こえる。
もう会う事もないだろう、そう思いながら再会の言葉を交わした春信。
彼の心は既に次の戦いへと思いを馳せていた。
乃木園子との邂逅
TV第8話後半にあたる話です。
本編では友奈と東郷が呼ばれ、満開の真実が明かされますが
こっちでは既に春信がばらしちゃったので、こうなりました。
ところで、次回からメインタイトルが変わります。
「5人目の勇者」あらため「三好春信は勇者である」
突然で済みません。
私としては当初からの予定が、ここまで延びてしまっただけなんですが。
元々、タイトルも第1回の流れも、TV第3話冒頭を意識したミスリードの為だったので。
春信一人で戦う事になったここからは5人目の意味も薄れましたし。
というわけで次回、「三好春信は勇者である」
デートで春信が見る夢は!?
お楽しみに
<番外編5>
日がかげるまで語る二人
「お前らの初陣後、銀が大赦で検査受けてたろ?」
「そのときサンバルカンって特撮番組を観てたら」
「銀のヤツ勝手に俺の部屋に入ってきてさぁ」
「あれ~?でもミノさんが検査受けてたのって結構早い時間だよね~」
「え?」
「いい歳した大人がそんな時間に、なんで子供番組観てたのかな~?」
「いや、まだその時は十代。。。」
「お休みだったのかな~?」
「いや、働いては。。。」
「年中お休みだったのかな~?」
「。。。」
「無職のニートだったのかな~?」
「も。。。」
「なにかな~?」
「もう勘弁してください。。。」
『仏ノ顔ヲ三度マデトイウ名セリフヲ知ラナイノカヨ』
「お前はもう出て来んな!」
絶妙なタイミングで出てくる精霊に涙を禁じえない春信であった。
<番外編6>
「赤射!」
ポーズを決めて叫ぶと、赤い勇者服がその身を覆う。
宇宙刑事シャリバンは、僅か1ミリ秒で赤射蒸着を完了する。
では、赤射プロセスをもう一度見てみよう。
「え?」
もう一度見てみよう!
「え。。。あ。。。えと。。。赤射!」
再びポーズを決めて叫ぶ春信、いい年をして恥ずかしくないのだろうか?
目の前で女子中学生が凝視していると言うのに!
「え。。。なんでナレーションに責められてんの、俺?」
言い訳がましい春信。
しかしJC相手に恥ずかしい事をしている事実は変わらない!
『英語デイウトノンフィクション』
「ここ、なんかおかしくない?ねえ、誰かなんか言ってやった方がよくない?!」
番外編においておかしな事など日常茶飯事なのだ!
「いや、5までは雰囲気ブチ壊しになるってだけで」
「本文にあってもおかしくない話の流れだったよね?」
「今回の明らかにおかしいよね?」
ここからはそんな事を考える必要がなくなったというわけだ!
「っておい!オチもなしかよ!」
ない!