三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

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このお話には原作アニメのネタバレ、原作そのままの台詞、おかしな改変が含まれます。



第3回 固める決意

「うぃーす」

「わわわ忘れ物~♪」

 

軽妙な鼻歌と共に扉が開かれる勇者部部室。

 

「あなたは!」

 

春信だった。

 

「どうしてここに?」

 

「言ったろ、忘れ物だ、お前らに言い忘れた事があってな。」

 

「どうやってここまで入ってきたの?部外者は校内に入れないはず。」

 

「これさ」

 

胸元の『来校者証』をヒラヒラさせ、

ピッと懐から、なにやらカードを取り出す。

 

「大赦の身分証だ。コイツがあれば大抵の所はフリーパスさ。」

 

事務所でも丁寧すぎるほど丁重に対応されていた。

一人で行けるから、と案内を断るのにも数分かかったほどだ。

 

「スッゴーイ!これって映画館とかもフリーパスとか?」

 

物怖じせずにカードに顔を近づける友奈。

 

「あ?ああ、多分いける。。。かな?」

 

「コレ欲しい!」

 

突然手に取ろうとする友奈をギリギリでかわし

 

「やらん!大体、コレは本人以外使えんわ!」

 

焦って懐へ戻す。

 

(いかん、この子のペースに乗せられると話が進まん!)

 

「そう、これは大赦の正式な勇者である俺だから支給されたんだ。」

「オミソの君たちには必要ないのよん。」

 

「正式な勇者…」

 

「そういえばなぜ今このタイミングで?」

「どうして最初から来てくれなかったんですか?」

 

東郷が小首をかしげ聞いてくる

 

(あれ。。。?)

 

「主人公は最後に登場するもんだろ?」

「ま、大赦は2重3重に万全を期して、お前たちの戦闘データも得ようとしたんだろうけどな。」

「俺の勇者システムは対バーテックス用に最新の改良を施されている。」

「その上、お前らトーシロとは違って、戦闘の為の訓練も受けてきている!」

 

両手をかざし

 

「ビームサーベルだっ!」

 

叫びと共に両手に刀が現れる。

その刀を振りかざし、見得を切る春信

 

「はぁっ!」

 

「室内で刃物は危ないですよ。」

 

「ビームサーベルじゃないっ!」

 

「躾甲斐のある男子は嫌いじゃないわ。」

 

「なんだと!」

 

(おかしいぞ。。。)

 

「あぁ~、ケンカしないでぇ」

 

「ふん!まあいい」

 

(前は険悪だった筈なのに、皆の当たりが柔らかい?)

 

「とにかく、お前らにやる出番はない、さっさと端末を返して勇者をやめちまうんだな!」

 

「そっか、よろしくね、春信くん!」

 

「なんでよろしくなんだよ!」

「それにいきなり下の名前呼びかよ!」

「しかも君付けかよ!」

 

「え…嫌だった?」

 

「『さん』を付けろよ、デコ助野郎!」

 

「誰がデコ助だぁ~っ!」

 

風が横から笑顔で突っ込む

 

「そうじゃなくて!」

「勇者やめろって言ってる相手によろしく、っておかしいだろ!」

「こないだみたいに怒って張り倒しに来てもいいだろ!」

「なんでそんなにのんびりしてんだよ!お前ら!」

「そんなんで大赦の勇者やれるとホントに思ってんのか!」

「って、俺の精霊食ってんじゃねぇ!」

 

春信の精霊が友奈の精霊にかじられていた。

 

『破壊力バツ牛ン』

 

「お前も簡単にかじられてんじゃねえよ!」

「精霊の管理ぐらいちゃんとしとけぇっ!」

 

一気にまくし立てて息を切らしている春信を見て口々に話す

 

「ねっ、やっぱりそうでしょう!」

 

「本当だ…すごい勢い…」

 

「なかなかのツッコミよね」

 

「我慢できずに一気に出し切ってるみたいです」

 

「???」

 

困惑する春信に

 

「このあいだの話をしてて、皆で思ったんだ」

 

「え?」

 

「キミってなにか無理して嫌われようとしてるんじゃないかってね」

 

「ハ、ハン!そんなバカな。。。」

 

「私の占いにも、悪い人だって出なくて、その代わり未来に死の危険を抱いてるような」

 

「勝手に占って不吉な事言うなよ!」

 

「嫌味を言うときの声に力が感じられないんです、まるで台本を読んでるみたいな」

 

「ソ、ソンナコトハナイデスヨー(棒)」

 

「それに比べて、ツッコミのときの勢いと表情!」

「そうそう!」

「キレが違いますよね。」

「ホントは優しい人なのかもって…」

 

(4人で勝手に話し出しちゃったよ。。。)

 

春信は頭をかきながら、何か話のきっかけを作ろうと部室内に目を配る。

 

(『春の勇者部活動』。。。これだ!)

 

バンッ

壁に貼ってある編集中の勇者部新聞に手を叩きつけると、4人が春信の方を向く。

 

「勇者部の活動か、立派なもんじゃないの。」

 

「なあに?また嫌味でも言おうとしてんの?」

 

「嫌味じゃあないさ。」

「他の部活の助っ人から町の清掃、幼稚園や養老院の慰問、果ては仔猫の貰い手探しまで。」

「それらを恥ずかしがらず、勇んで行う者たちの部活。」

 

「そうよ、大したもんでしょ!」

 

腰に手を当て胸を張る風。

 

「ああ、大したもんだ。」

 

素直に褒める春信に顔を見合わせる4人。

 

「それでいいんじゃないか?」

 

「「「「え?」」」」

 

振り向く4人に

 

「勇者部部活動、それだけで十分立派なもんじゃないか、平穏な日常を謳歌して守ってる。」

「そこに命懸けのバーテックス退治なんて付け足す必要ないんじゃないか?」

 

「でもそれは」

 

「犬吠埼風、前にお前は自分の『役目で、理由』だって言ったな。」

 

3人が風の顔を見る。

 

「あの時と同じ事を聞くぞ。」

「その理由は妹や後輩たちを命の危険に晒すに値するものなのか?」

 

「それは…」

 

目を逸らし顔を歪ませる風に追い討ちをかけるように言葉を続ける。

 

「俺なら妹を危険に巻き込むなんて出来ないね。」

 

「あ、アンタに何がわかるって…」

 

「俺にも妹がいる。」

「妹は勇者の適性を持ち、5人目の勇者となるべく訓練も受けてきた。」

 

「「「「?」」」」

 

春信の意外な言葉に4人の中に動揺が走る。

 

「もし俺が勇者になっていなかったら、ここに立っていたのは妹だったろう。」

「それが嫌で、俺は必死の特訓の末、勇者になったんだ。」

「でも、妹が無事になっても、同じ年代のお前たちが戦ってるなんておかしいだろ?」

「俺は、お前たちにも大赦の勇者をやめて欲しいんだ。」

 

それまでとは一転して、優しく包み込むように話す春信に4人は見入っていた。

 

「今まではバーテックスに対応できるのが勇者となった少女たちしかいなかった。」

「でもこれからは違う。」

「俺が第1号となってデータを集めれば、第2第3の男の勇者が現れるだろう。」

「もう、お前たちが無理をして、命懸けの戦いに赴く必要なんてないんだよ。」

 

「だから。。。差し出せ。その勇者端末を。」

「それを返してしまえば、バーテックスの戦いはお前たちの時間軸から消えてなくなる。」

「他の学生たちと同じように、知らない間に戦いが始まって終わっている。」

「それを気にする事も、気付く事もないんだ。」

 

4人に優しく手を差し出し、端末を渡す事を促がす春信。

 

(勝った!)

(この話の流れなら、例え「もっと戦いたい」と思っていたって端末を返すはず!)

(素直な彼女たちがこの流れに逆らってわがままを言うはずがない!)

 

春信は内心、口角が上がる思いだった。

あとはそのまま待てば彼女たち自身の手で端末を手放してくれる。

そう思った刹那

 

「でも、なんだかおかしいよ。」

 

(結城友奈!)

「。。。なにがおかしい?」

 

出来る限り心の動揺を抑え、にこやかに問いかける。

 

「だって、それって何も知らなかったときの話です!」

 

「だから何がだ?」

 

「私たちは知ってしまった。バーテックスの事を。」

「人知れず戦ってきた勇者がいた事を。」

「そして春信くんはこれからも一人で戦い続ける事を。」

「なのにそれを知らなかった事になんてできない!」

 

(やはりこの子か。。。この子を説得できなければ、他の子たちも。。。)

「だから言っただろう、俺は第1号だ。一人じゃない、これから続いてくる男たちが。。。」

 

「でもそれってまだいないんですよね!?」

 

「く。。。いや」

 

「そうよ!もしいるんなら私に端末を返すよう、大赦から話が来てるはず!」

 

風も友奈の言に乗ってくる。

 

「ならば戦友を一人、戦へ赴かせる訳にはいきませんね。」

 

東郷が

 

「わ、私も…あんな不吉な占いの出た人を放ってはおけない…です。」

 

樹までが

友奈の言葉で4人全員の意思が戦いに赴く事に結束していく。

 

「さ、さっきも言ったろう、勇者部活動だって立派な。。。」

 

「同じです!」

 

友奈がキッパリと言い切る。

 

「私たちは今までの勇者部の活動だって、本気で取り組んできました!」

「それは命懸けで戦うのと同じくらい勇者の気持ちなんです!」

「だから、バーテックスと戦ってるのも勇者部の活動!」

「困っている人を助けるのが勇者部なら、一人で戦う春信くんを助けるのも勇者部の仕事です!」

「だから…」

 

友奈は春信に深々と頭を下げてお願いした。

 

「私たちから勇者の仕事を取らないでください!」

 

犬吠埼姉妹も立ち上がって、東郷も車椅子の上で頭を下げる。

 

「「「「お願いします!」」」」

 

「お、俺は別に困ってるわけじゃ。。。」

 

『モウ勝負ツイテルカラ』

 

言いかけて、精霊に言葉をはさまれ、春信は溜息をついた。

 

(無理か。。。)

(結城友奈、彼女を納得させられるかどうかが、この説得の肝だった。)

(この子には適わないなぁ。。。)

 

「今日は帰る。」

 

「それじゃあ!」

 

顔を上げて明るく笑いかける友奈たちに釘をさす

 

「別に認めたわけじゃないからな。」

「機会があればお前たちには大赦の勇者を辞めてもらう。」

 

「ありがとうございます!」

 

(聞いちゃいねぇ。。。)

 

完全敗北だ。

そう思いながら春信は讃州中を後にするしかなかった。

負け戦だったが、さわやかな気持ちにさせられる、そんな気分だった。

少女たちは春信ひとりが戦う事を憂いて、新たに戦う意思と結束を固めたのだ。

 

(嬉しくないわけがない。)

(でも。。。)

 

さわやかな気持ちとは裏腹に足取りは重かった。

 

(これでますます彼女たちは戦いに迷いなく赴いてしまう。)

(それは最悪のシナリオへの片道切符だ。)

 

それだけはさせない、それだけは防いでみせる、そう誓う春信の懐で端末が叫び声を上げた。

 

「バーテックス!」

 

見る見るうちに樹海化する世界。

その中で春信は叫んだ。

 

「勇者!」

「変んんっ!」

「身っ!!」

 

ポーズを決め、端末に触れてジャンプする春信。

その姿は花びらに包まれ、樹海化した大地に再び足を下ろすときには勇者服を身に纏っていた。

 

「参上!勇者ハルノブ!!」

 

またしても決めポーズをとり、叫んだ。

 

「俺一人で決めてみせる!ぶっちぎるぜぇ!!」

 

その視線の先、遥か彼方に複数のバーテックスの姿があった。

 

 




はい、閑話休題っていうのかな?
決戦前に春信と友奈たちを日常の中で会話させる為のお話。
原作での第3話本編に相当するので、なんとなく前後したみたいに見えますが。
時間軸的にはちゃんと前の話の後です。

そろそろ春信が何かするたびに既存のヒーローの台詞を叫ぶ事にイラついてる人もいるかと思いますが。
やめろと言われてもこれはやめません。
男である彼が勇者になれた事につながる設定ですので。
精霊が夏凜ちゃんのときと全く違う語彙なのもその為です。

次は最初の決戦、友奈たちの満開まつりがあった回です。
今回の話で結束を更に固めた4人と
4人が戦う事をよしとしない春信と
夏凜ちゃんが勇者でないこのお話ではどうなっていくのでしょうか。
それではまた。
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