三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

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このお話には原作アニメのネタバレ、原作そのままの台詞、おかしな改変が含まれます。


第4回 困難の始まり

樹海化した大地に立つ友奈、樹、東郷

その視線の先、遥か彼方に複数のバーテックスの姿があった。

 

「あれ、なんですぐに攻めてこないんだろう。」

 

神樹様の加護の届かない壁の向こうに出てはならない。

四国に住む者すべてに教えられる常識であり、それは勇者も同じであった。

そのため、友奈たちはまだ敵を遠くに見守るように待ち続けていたのだ。

 

「敵さん、壁ギリギリの位置から仕掛けてくるみたい。」

 

一足早く変身して波打ち際まで様子を見に行っていた風が帰ってくる。

 

「決戦ね、皆もそろそろ準備を。」

 

「…」

 

姉のその言葉に神妙な面持ちの樹

の笑い声が響いた。

 

「あは、あは、あはははははは」

 

友奈が樹の脇をくすぐっていたのだ。

 

「な、何ですか?友奈さん!」

 

振りかえり離れる樹

 

「緊張しなくても大丈夫!」

「みんないるんだから。」

 

「あ…」

 

振り向くと東郷も微笑んでいた。

 

「はい!」

 

緊張の解けた妹を見て安心したように笑う風。

 

「よし!勇者部一同、変身!」

 

「「「はい!」」」

 

変身して立ち並ぶ4人の勇者たち。

バーテックスはその姿がはっきり見えるくらいに近づいてきていた。

 

「敵ながら圧巻ですね。」

 

「みんな、ここはアレ、いっときましょ。」

 

一歩前に出て3人に声をかける風。

3人も頷いて近づく。

 

円陣を組む勇者部の4人。

 

「あんたたち、勝ったら好きなもの奢ってあげるから、絶対死ぬんじゃないわよ。」

 

「よ~し!おいしい物い~っぱい食べよっと!肉ぶっかけうどんとか!」

 

「わ、私も…叶えたい夢があるから!」

 

「頑張って皆を、国を、護りましょう!」

 

「よお~っし!勇者部ファイトォ!」

 

「「「「オー!」」」」

 

 

その少し後方の丘の上で春信は勇者部の面々を見守っていた。

 

(なるほど、あれも魂の鼓舞、声による精神強化ってわけか)

 

「だったら僕も!」

 

「マジンガーブレード!」

 

叫びと共に右手に刀が現れる。

 

すうぅっと大きく息を吸い込み、声を張り上げる春信。

 

「やあやあ!我こそは!」

 

その声に4人が振り向く。

 

「大赦が最強の勇者!三好春信なりぃ!」

 

右手の刀をバーテックスの方へ向ける。

 

「人類の敵バーテックス!貴様らを(ほふ)る者の名だっ!」

「その身にしっかと刻み込めぇっ!!」

 

「おお!かっこいい!」

 

「あたし達を差し置いて、最強を名乗るとは、やってくれるじゃない。」

 

『別ニ強サヲアッピルナドシテハイナイ』

 

友奈と風が話していると

自らの精霊の言葉を皮切りに春信は地面を蹴り、バーテックスへと突き進む。

 

「突撃ぃっ!」

 

その言葉に脚が応えるように一気に加速していく。

 

「私たちも!」

 

「「「はい!」」」

 

それぞれが自分の戦闘距離へと飛び出す。

遠距離射撃の東郷はその場で伏せ、端末で敵の位置を把握した。

 

「バーテックスの進行速度にバラつきがある。」

「あの巨大な奴…明らかに別格の威圧感。」

「でも、まずは」

 

照準で敵を見ながら分析を始める

 

「一番槍は貰った!」

「龍ぅ翔ぉ閃んんっ!」

 

刀の峰に片手を添えるようにして飛翔する春信。

その剣圧は先頭を行くバーテックスの頭部を切り裂く。

が、バーテックスを越え、高く飛び上がっているその間にも傷は回復していく。

春信がその様子を見下ろしたとき、その傷周りを爆発が覆い、敵の足を止める。

 

「援護します。」

 

東郷の遠距離射撃だ。

 

(さすが的確!)

「龍ぅ槌ぃ閃んんっ!!」

 

降りざまに刀を返し、切り下ろすと、そのまま地面に刀を刺した。

 

「封印っ!」

 

封印の陣が展開する。

 

「すごいよ!春信くん!」

 

「他の敵が来る前にコイツを倒そう!」

 

風の指示で封印の儀の傍による勇者部の3人

尾を掲げるようにして御魂を現すバーテックス。

 

「出た!」

 

キュルルル…

その御魂が高速で回転し始める。

 

「回ってんじゃねぇ!」

 

トドメとばかりに春信は刀を投げつけるが、回転に弾かれる。

 

「よおぉっし!」

「東郷さあぁぁぁん!」

 

友奈が叫びながら御魂に飛び掛る。

春信がハッと振り向くと東郷が御魂に狙いを定めているのが目に映る。

 

(いかん、間に合うか!?)

「いや、間に合えぇっ!」

 

御魂の前に飛び掛り

 

「断っ!空っ!」

 

叫び始めると同時に友奈の拳が御魂の回転を止め、東郷が銃を撃つ。

春信は必死で東郷の弾道に刀を合わせた。

 

「光牙剣えぇぇぇんんっ!!」

 

刀の峰に当てた射撃の勢いを乗せ、刀身を振り下ろす。

御魂は真っ二つに割れ、光を散らした。

 

「ええっ!そこまでするぅ?」

 

わざわざ弾道に割り込んでトドメを刺した春信に驚く友奈。

 

『汚イナサスガ忍者キタナイ』

 

「うるさいよ。」

 

自分の精霊に批判され呟く春信。

 

(名前を叫んだだけであの連携。。。)

(しかも結城友奈が回転を止めるのと着弾がほぼ同時だった。。。)

 

「やべえよ、この子達、ものすごい勢いでレベルアップしてる。」

 

頼もしさを感じつつ、焦りを隠せない春信。

 

(僕の初陣までに彼女たちの満開ゲージはどれだけ溜まったのか)

 

「一体でも倒したらゲージ満タンじゃね?」

 

(笑えない話だ)

 

そう感じながら

 

「これ以上はさせない!絶対に!」

 

決意を声に表す春信だった。

「でも、今の敵の動き…まるで叩いてくれと言わんばかりの突出…」

 

獲物を横取りされた東郷だが、そんな事は意に介さず、敵の動きの不自然さに疑念を抱いていた。

 

その時

鐘が鳴る。

大きな大きな鐘の音。

 

「はっ、罠?!」

 

遠くから見ている東郷の目に苦しむ友奈と春信の姿が映った。

先頭の敵に誘われた2人は鐘の音に包まれていた。

当然、ただの大きな音ではない。

精神に揺さぶりをかける、常人であれば即座に発狂しかねない音波だ。

 

「なにぃ?この音はぁ!」

「まさか本当に音波攻撃を受ける日がくるとは!」

 

「これぐらい…勇者なら…!」

 

最も敵に近かった春信と友奈はその直撃に耳をおさえ、身動きが取れない。

 

「みんな!」

「あのベルかっ!」

 

狙いを定め、引き金を引こうとする東郷。

その狙いを遮るように目の前を上昇し、東郷の後ろへ潜って行く大きな影があった。

魚座のバーテックスである。

 

「狙撃がっ!」

 

完全に不意打ちだった。

これほど近くに寄られては遠くの的など狙う事はできない。

 

前線では他の2体のバーテックスも合流し、その身で音を共鳴させるように音波攻撃の範囲が広げられていた。

 

「くっああっ!」

「このままじゃ…」

 

「うああぁっ!」

 

先の2人に加え、犬吠埼姉妹も身動きが取れなくなっている。

 

「おとは…」

「音は皆を幸せにするもの…」

 

樹の目が怒りに輝く。

 

「こんな音は…」

「こんな音はあぁぁぁぁぁっ!」

 

樹が放ったワイヤーがベルに絡みつき、音を止めた。

 

「樹!」

 

その一瞬で跳躍し、2体のバーテックス相手に大剣を更に巨大化させ振るう風。

 

「まずは、お前らぁっ!」

 

2体のバーテックスは見事に真っ二つに切り裂かれる。

 

「お姉ちゃん!」

 

姉の活躍に声を躍らせる樹。

 

「しまっ。。。」

 

今度は犬吠埼姉妹の見事な連携だった。

音波攻撃にうずくまっていた春信は、そこに介入する隙すら見つけられなかった。

 

「頼りになります!」

 

無邪気に喜ぶ友奈。

 

4人が思い思いに動く。

その上、連携は完璧だ。

敵を倒しながら彼女たちに攻撃の隙を与えない、そんな事が出来るはずもなかった。

 

「よし!3体まとめて…」

 

封印をと言おうとした風の声に樹の声が被さる。

 

「あ、わ、あわわわわ、何い?」

 

ベルの音を止められた敵がワイヤーごと樹を引きずって後退する。

 

「樹ちゃん!」

 

「樹!ワイヤーをほどいて!」

 

「あ、そか」

 

ワイヤーをほどき、ほっと胸を撫で下ろす樹。

 

「このお!」

 

「待て!」

 

後退する敵、切り裂かれるも、回復しながら戻っていく2体の敵。

その動きの不自然さに春信は思わず友奈に待ったをかけた。

後退する3体は、東郷が「別格」と評した、後方に留まったままの獅子座バーテックスに近づいていった。

輝きを放つ獅子座。

その光は大きく、強くなって3体のバーテックスを取り込んでいった。

その間も東郷は近接してきた敵と交戦していた。

何発もその巨体に弾丸を撃ち込む。

しかし敵の動きをとめるような決め手に欠け、封印できずにいた。

何度目かの上昇、潜行に攻撃をあてると、敵が浮いてこなくなった。

 

「潜った?」

 

端末で敵の位置を探ると[地下潜行]の文字とともに一旦離れていく。

 

「今のうちに援護を。」

 

皆の様子を伺おうと照準を覗き込む。

 

「あれはっ?!」

 

巨大なバーテックスがその照準には映っていた。

さきほどの獅子座と、その他の敵の特徴が混じったようなフォルム。

 

「合体している!」

 

照準を通しても感じるその威圧感。

春信たちはそれを目の前にして驚きを隠せなかった。

 

「どうすんのよ!こんなの!」

 

「ふん、敵の合体シークエンスを見守るのはお約束だろ?」

 

言葉では強がっていたが、春信は焦っていた。

 

(こんなの。。。聞いたことない。。。)

 

失策だった。

結城友奈はすぐさま追い討ちをかけようとしていた。

春信はそれを止め、様子を見てしまった。

その結果、敵は明らかに強化されてしまったのだ。

 

「でも、まとめて倒せるよ!」

 

「ええっ?!」

 

友奈の能天気な発言に樹は声をあげた。

 

「確かに…友奈の言うとおり!」

 

風は気持ちを切り替え、友奈の言に乗った。

 

「まとめて封印開始よ!」

 

「!」

 

そのとき敵の正面に大きな光の輪が浮かんだ。

それは光の玉だった。大きな無数の光弾が巨体の前で円形に並んでいたのだ。

それが4人に襲い掛かる。

 

「ダッシュ!」

 

春信は叫び、光弾の軌跡から飛びのく。

他の3人も咄嗟に避けていた。

 

「こいつ、追尾するのか!」

 

着弾した光弾以外はそれぞれ近くの勇者を追っていた。

 

「加速装っ置!」

 

叫びと共に加速する春信。

しかし光弾は的確にその後を追って行く。

 

「はぁっ!」

 

大剣を構え、盾にする風。

しかしその光弾の威力と数は盾ごと吹き飛ばすのに余りあるものだった。

そのまま落ちていく風が春信の目に映る。

 

「風っ!」

 

「ああっ!」

 

反対側で光弾に捕まる樹。

 

「樹っ!」

 

「追って来るなら!」

「そのまま返す!」

 

光弾を誘導して敵にぶつけようとする友奈。

 

(その手があったか!)

 

春信がそう思った瞬間、友奈の眼前の敵が更なる光弾を放つ。

 

「えっ?とっ!」

 

咄嗟にガードする友奈。

 

「うわあぁぁぁぁっ!」

 

挟み撃ちにあい、敵の攻撃が友奈に炸裂する。

 

「やめろおぉぉぉぉぉっ!」

 

加速した勢いのまま敵に切りかかる春信。

しかし甲高い音を立て、刀は折れてしまう。

 

「チイィィィッ!」

 

振り向くと追尾してきていた光弾がすぐ後ろに迫っていた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!」

 

左拳と右手の折れた刀の柄で光弾を叩き潰そうとするが、全てを捌き切る事は出来ず、精霊がバリアのように光を放つ。

そのまま数に押し切られるように地面に叩きつけられた。

 

『致命的ナ致命傷』

 

東郷はその様子をすべて照準の中で見ていた。

 

「おのれっ!」

 

東郷は静かに叫び、敵を撃つ。

その弾は敵の装甲に当たるが、傷一つつかない。

 

「効かない?!」

 

反撃とばかりに敵が大きな光弾を放つ。

 

「はっ!」

 

避ける暇もなかった。

精霊の加護のおかげで致命傷には至っていないが、どの勇者も満身創痍であった。

意識はあったが、立ち上がる気力が湧かない。

それほど圧倒的な戦力差だった。

 

「冗談じゃ…ないわよ!」

 

大剣のガードが効いたのか、責任感からか、それでもフラフラと立ち上がる風。

その風に向かって透明な大玉が襲い掛かり、取り込む。

 

「あの水球は!」

 

春信が叫ぶ。

光弾を受け、一旦倒れてはいたが、彼には皆ほどダメージはなかった。

自分の拳と精霊ガードで受けきれないダメージはあえて戦闘に支障のでない位置で受け止めていた。

精霊の加護の強力さを信頼した上でのギリギリの策だった。

 

風が閉じ込められた大きな水玉。

 

(アレには剣や銃の攻撃は通じない!)

 

風は水球の中で大剣を振り回すが、まるで手ごたえがない。

次第に息ができずにもがき始める。

 

(まずい、下手に攻撃を受け続けると満開が!)

 

勇者の満開ゲージは敵の御魂を破壊したときに大きく溜められる。

だが、敵本体への攻撃や、敵からの攻撃ダメージによっても溜まる事を春信は知っていた。

それ故、先の防御のように避けられないダメージはどこで受けるべきか、そんな訓練も積んでいたのだ。

 

迷っている暇はなかった。

 

「ライッッッッッッッ!」

 

春信が声を上げながらしゃがみ込み、跳躍と同時に更に声を張る。

 

「ダアァッッッッッッ!」

 

頂点から蹴り下ろしながら叫んだ

 

「キィィィィィィィック!!」

 

大きな音と共に風が地面に叩きつけられた。

水球に突っ込んだ春信の蹴りは敵ではなく風を狙ったものだったのだ。

 

(結構思いっきり蹴っちゃったけど、大丈夫かな?)

 

「風…先輩!」

 

フラフラと風のそばに立ち寄る友奈。

少し咳き込みながら友奈に起こされる風が見えた。

 

(大丈夫。。。そうだな。んじゃ今度はこっちだ)

 

救出には成功したものの、今度は春信が水球に取り残されていた。

 

(突き抜けられると思ったんだが、風さんちょっと重かったのかな?)

 

ギロッ

風に睨みつけられる

 

(え?重いって聞こえた?まさか?)

 

「ガハッあんたねぇ!何もケフッ思いっきり蹴る事ないじゃない!」

 

息が整わず、まだ咳き込んでいる風。

 

(あ、蹴った事を怒ってたのか、良かった)

 

女の子に体重の事で恨まれるのは、蹴飛ばした恨みより怖い気がした。

 

(とか言ってる場合じゃないか、コレの攻略法は。。。)

 

それは2年前、先代勇者たちの初陣で三ノ輪銀が受けた攻撃。

彼はその攻略法を知っていた。

 

「吸っゴボッ 引っ!ゴボゴボッ」

 

溜め込んでいた空気を一気に吐いて叫ぶ

 

ズオォォォォォッ

 

水球から何か音がすると、少しずつその体積が減っていった

 

ズオォォォォォッチュポン!

 

春信の口元で小気味良い音を立てて水が消え去った

 

「え?一体どうやって?」

 

「ソーダ味からウーロン茶味に変わった!」

 

風の疑問に答えるように味の報告をする春信。

そう、彼は水球を勇者の力で飲み干したのだ。

コレは別に無茶でもやけくそでもなく、2年前に三ノ輪銀が考案した攻略法である。

その後の検査でも異常はなかったと記録にあるので、実行したまでなのだ。

 

『ホウ、経験ガ生キタナ』

 

「はぁ?ケフッ」

 

「ええ~、ずるい~、おいしいなら私も飲みたかった~!」

 

「カハッ、バカ言ってんじゃないわよ、コホッ」

 

咳き込みながら友奈のボケに突っ込む風。

だが、春信は気付いていた。

友奈が冗談ではなく、本気でそう思っていることを。。。

 

「本当に最強の勇者なんだな、あの子は」

 

思わず笑って呟く。

この状況でも、自然とああいう発言が出来るメンタルは本当に羨ましかった。

 

(僕みたいなメッキじゃない、本当の勇者か。。。)

 

『黄金ノ鉄ノ塊デ出来テイルナイトガ皮装備ノジョブニ遅レヲトルハズハ無イ』

 

「誰が皮装備だ」

「いちいち腹立つな、お前は」

 

自分の精霊に言われくだをまく。

 

「ふう、やっと落ち着いたわ。」

 

「戦線復帰です!」

 

「いきましょう!」

 

「まだ…やれます!」

 

「さあて、仕切りないしといくか!」

 

5人の勇者全員が再び立ち上がり戦意をあらわにする。

だがまだ、状況は予断を許さなかった。

 

 




長い…
本編で10分程度の話が、文字で描写しようとするととんでもない長さに…
できるだけ本編の流れをなぞるのを主眼に置いている為、またしても原作台詞が満載です。
その本編ではピンチになった風先輩を誰も助けられず、満開に至ったわけですが、それがなくなったということで。
ここからはオリジナル展開です。
といってもバーテックスの動きはそれほど変わらないし
友奈たちの状況は夏凜ちゃんがいない代わりに春信がいる。
彼は4人のパワーアップ、満開を防ぐ事に終始していますが、さて、どうなる事か。
次回をお楽しみに
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