「さあて、仕切りないしといくか!」
風のピンチを救い、今度はこちらの番とばかりに声を上げる春信だが、状況は芳しくない。
1体の敵を倒したものの、敵はもとよりその犠牲を計算していたかのように攻め立て、合体まで果たす。
合体バーテックスの光弾攻撃は手数・威力共に勇者たちのそれを上回っている。
東郷の射撃や春信の刀で傷一つつかない装甲。
攻撃を当てた相手への反撃の素早さ。
どれをとっても有利な条件はない。
その上、いまは地中に潜っているが、魚座のバーテックスも健在だ。
(どこから攻めればいいんだっ。。。)
春信は自分の肩にある花の装飾を見た。
初めて勇者となったときは白かったサツキの葉。
いまはそれが5枚とも赤く染まっている。
満開ゲージは満タンだった。
(しかし。。。)
(戦いはここで終わりじゃない)
(今後の事を考えると。。。)
(それにあの子達に『満開』『散華』を見せるのはっ)
考えている一瞬の間に友奈が飛び出していた。
「うおおぉぉぉぉぉぉっ!」
「勇者パーンチ!」
大きく振りかぶって拳を突き出す。
迎え撃つように光弾を放つ合体バーテックス。
「うりゃうりゃうりゃうりゃ!」
飛んでくる光弾を拳と蹴りで撃ち落していく友奈。
しかしその反動で敵まで攻撃が届かない。
(すごい。。。)
さきほどの攻撃では挟み撃ちを受けた友奈だったが、今度はそのまま着地した。
敵に攻撃が届いていないとはいえ、大進歩だ。
「もう一回!」
叫んで跳ぼうとするところに光弾が集中した。
咄嗟にガードする友奈。
「根っ性っ!」
大きな音を立てて友奈にぶつかる光弾の雨。
歯を食いしばって耐える友奈。
その間にも第2波第3波が風、樹、春信に襲い掛かる。
「クロックアップ!」
叫ぶと春信の脚が加速し、光弾から距離をとる。
そのまま状況確認のため皆を見渡す。
根性で耐え続けている友奈。
大剣で光弾を払い落としている風。
ワイヤーで光弾を逸らそうとする樹。
東郷のそばではまた、うお座のバーテックスが飛び上がっていた。
それぞれで応戦しているが、確実にダメージは蓄積されている。
(僕は。。。何をしている。。。)
(あの子達を守るために勇者になったんじゃないのか?)
(逃げてるだけで、なんにもできてないじゃないか!)
「!」
考えている隙に回りこむように飛んで来た光弾の挟み撃ちに遭う。
『一瞬ノ油断ガ命取リ』
「うるせえ!」
「ダンガイブレードッ!」
叫びと共に両手に現れた刀で正面の光弾を切り裂いていく。
(迷ってる場合じゃない!出し惜しみはなしだ!)
「もってけ!泥棒っ!」
「満っ!開いぃぃぃっ!」
叫びと共に光が春信の体を包み、減速する。
後ろから追って来た光弾が全て命中し、大爆発を起こす。
「春信くん!」
光弾の攻めに耐え続けていた友奈が叫ぶ。
しかし爆煙の中から姿を現したのは
「腕ぇ?!」
そう、腕だった。
巨大な赤い鎧をつけたような腕。
その手にはその大きさに見合った、巨大な刀が握られていた。
「今の爆発でノーダメージとはな。。。」
自らの姿とその周りについた装備を見渡す春信。
赤い勇者服は白い装束へと変わり、それを護る様に赤く巨大な腕が2対、4本の刀を構えていた。
その間にも勇者たちに光弾の雨を降り注ごうとする合体バーテックス。
春信は左腕の2本の刀を振った。
「烈風斬!」
刀から目に見えるほどのエネルギーを持った剣圧が放たれる。
剣圧は光弾をかき消し、そのまま合体バーテックスに炸裂する。
うなりを上げて倒れこむ合体バーテックス。
「なるほどな。。。」
(『満開』。。。恐ろしいほどの力だ。)
(さっきまで、まるで敵わないと思っていた相手に、正面からぶつかっていける余裕がある。)
視界の端に東郷に襲い掛かろうとする、魚座バーテックスが見えた。
「十文字斬りぃっ!」
左の刀一本を水平に薙ぐ。
その剣圧でバーテックスの体が砕けるように切り裂かれる。
封印もなしに剥き出しになった御魂が見える。
次の瞬間、御魂は縦に切り裂かれ、光を放っていた。
もう一本の左腕が縦に薙ぎ、剣圧を放っていたのだ。
「封印もなしに倒してしまうなんて…あ、何?ハッ!」
驚いている東郷の目の前に精霊が端末を取り出す。
画面上を高速で移動する双子座のマーカー。
猛スピードで走るそのバーテックスの向かう先にあるのは
「神樹様に近い!」
「このバーテックス、何故気づかなかった?!」
「こいつ…小さくて速い!」
照準を合わせ、敵に向かって連射する東郷。
「当たらない?!」
「このままじゃ神樹様が!」
「ゲッタービイィィッムッ!」
春信が左腕の刀2本を力任せに振る。しかし
「軽やかにかわした!」
剣圧はそのまま神樹の方へ飛んで行く
「しまった!」
しかしなぜかそのエネルギーは神樹に届く前に四散する様に消え去ってしまう
「そういうことか。。。」
春信はほくそ笑んだ
(ドラグスレイブと同じ理屈か、勇者の力では神樹や樹海を傷つけられない!)
「ならば!」
今度は2本の右腕を振りかざし、叫ぶ。
「ニードル。。。ミサアァイルッ!」
渾身の力を込め、水平に薙いだその刀からは小さな刀の形をした光弾が無数に放たれた。
初めはそのフットワークで避け続けていたバーテックスが、次第に逃げ場を失い、光弾の刃にその身を晒される。
当たった箇所が削れるようにバーテックスの体を小さくしていき、小さな御魂が現れる。
尚も無慈悲に降り注ぐ刃の雨に、御魂は跡形もなく砕かれ、光が拡散した。
「後はお前だけ。。。」
そう言って振り向こうとしたとき、2対の腕と刀が消え、春信は元の勇者服に戻っていた。
「っと、時間切れ?」
「春信さん!」
『メイン盾キタ!』
東郷の声に振り向いたところに何かの衝撃を受けた。
(バカな!見えなかっただと?!)
前線では既に合体バーテックスが立ち直り、攻撃を繰り出していた。
精霊の護りはあったが、無警戒に攻撃を受けて春信は吹っ飛んでいた。
「ここに来て隠し玉か?」
見えてさえいれば、たとえ直下弾でもある程度は避ける自信があった。
しかしそれは”見えない攻撃”などではなかった。
攻撃が”見えなかった”のだ。
立ち上がってすぐに春信は気付いた。
いま、自分の左目が機能していないことを。
(これが『散華』。。。!)
続いて迫ってくる光弾を切り落とそうと刀を振るが、いくつか打ちもらし、またしても吹き飛ばされる。
片目が見えないせいで、遠近感が狂っているのだ。
「ぐあぁっっ!」
(なまじ片方が見えるから!)
春信は思い切って目を閉じた。
(見えなくても気配を探る訓練くらいしてきた!)
「回天剣舞!」
春信の双剣は迫り来る光弾を悉く切り裂く
「見える、見えるぞ!私にも敵が見える!」
春信は気付いていなかったが、神樹様の加護は失った機能にも働いていた。
目を閉じる事でその加護をより感じられたのだ。
むしろ両目で見ているときよりも視野が拡がるようにすら感じていたのだ。
春信は光弾を切り裂きながら感じていた
自分の満開ゲージが見る見るうちに溜まっていくのを。
(もう一度『満開』を!)
春信は大きく叫ぶつもりだった。
しかし声が出なかった。
戦いの
覚悟はしていたが、そのショックと恐怖は想像以上のものだった。
その恐怖が彼の声にストップをかけたのだ。
「くっ!」
いつの間にか攻撃が止み、春信は何か不穏な気配を感じていた。
目を開くとその右目にはとんでもないものが映っていた。
「なに?あのいかにもヤバそうな元気っぽい玉は…」
風たちの目の前で合体バーテックスは光弾を空中のある一点に集中させ、大きな火球へと育てていたのだ。
全員の驚愕の中、火球はゆっくりと近くにいた風に向かって落ちていく。
「いけない!」
「お姉ちゃん!」
東條、樹が叫ぶ。
風はまた大剣を大きくして盾として構えた。
「勇者部一同ぉ!封印開始ぃっ!!」
(自分ひとりで受け止めてその間に封印させる?!)
「無茶だ!あんなの俺の『満開』でも受け止めきれるかどうかっ?!」
(僕が二の足を踏んだせいでっ!)
「真空っ!」
火球へ向かって飛び掛る春信。
「竜巻旋風脚!!」
空中で繰り出す回し蹴りは風をはじいた後、火球にも2発3発4発と叩き込まれる。
「またっ?!」
今度は身を翻して着地した風。
そこに怒号が飛ぶ。
「勇者部一同で封印するんだろうがぁっ!」
その勢いに一旦気圧されるが、すぐに自分たちのやるべき事に取り掛かる。
「わかりました!」
「了解!」
「はい!」
「あとで覚えてなさいよ!」
合体バーテックスを取り囲み、封印の儀を始める勇者部の4人。
火球には自分の蹴りなどまるで効かない。
それがわかっている春信は刀を交差させて受け止め、叫ぶ。
「俺様の満開にっ!」
「酔いなあぁぁぁぁぁぁっ!」
その叫びに応え、再び赤き2対の巨腕が現れる。
「2回もっ?!」
4本の刀を交差させて火球を受け止めるが、ジリジリと押し切られそうになる。
(早く。。。早く封印を!)
封印の陣が展開され、カウントダウンが始まる。
(今だっ!)
「野牛シバラク流!
『コレデ勝ツル!』
繰り出された4本の刀の攻撃が巨大火球を爆発させる。
その爆風は封印中の4人も飛ばされずにいるのがやっとという勢いだ。
「うぐっ!はぁっ!」
爆発の中心にいた春信が地面に何度か叩きつけられ、満開が解ける。
「春信くん!」
「春信さん!」
「三好さん!」
「春信!」
「手を。。。休めるなあぁぁぁぁぁっ!!」
思わず振り返りそうな4人に活を入れる。
「…うん!」
そのまま封印を続ける4人。
そして
合体バーテックスから現れる御魂を見た勇者部の面々の顔が強張った。
「え…ええぇぇぇぇぇぇっ!?」
巨大な、あまりにも巨大な御魂だった。
「何から何まで規格外すぎるわ…」
その上その位置は遥か上空にあった。
「大き…すぎるよ…」
「あんなもの、どうやって…」
そう、遥か上空、その御魂は成層圏すら越えた位置にあった。
「最後の最後で…」
各々から諦めに似た声が漏れる。
(こんな。。。くっそぅ。。。)
誰もがどうしようもない、そう思いかけたとき。
「大丈夫!」
(結城友奈。。。!?)
「御魂なんだから」
「今までと同じようにすればいいんだよ。」
(大赦の認める。。。)
「どんなに敵が大きくったって」
「諦めるもんか!」
(神樹様の認める最強の勇者。。。)
「勇者って」
「そういうものだよね!」
(『阿呆じゃよ』)
(『結城友奈のように阿呆になればいいんじゃ』)
(精霊の声。。。)
(違う、この声はあの時の。。。)
「友奈」
「友奈さん」
「友奈ちゃん」
諦めかけていた3人の目に希望の光が灯る。
その時
「はあぁっ!はっはっはっはっはっはぁ!」
「「「「え?!」」」」
「そのとおぉぉっりっ!」
春信だった。
春信がどう見てもボロボロの状態で
仁王立ちで腕組みをし、高笑いしていた。
(神樹様。。。)
「何があっても諦めない!」
(後悔も諦めも。。。)
「どんな困難もやり遂げる!」
(すべて終わった後ですればいい。。。)
「例え無理でも押し通る!」
(そうですよね。。。)
「立ちはだかる壁は越えるんじゃねぇ!」
(彼女の護った世界と。。。)
「ぶち壊して突き進むのよ!」
「なんか最後の方、無茶苦茶言ってない?」
馬鹿みたいに叫び続ける春信に思わず突っ込む風。
(僕の大切なものを守るため。。。)
「無理を通して道理を蹴っ飛ばす!」
(彼女たちには挫ける勇者の姿なんて見せられない。。。)
「それが俺たち勇者団だろ?!」
「団じゃなくて勇者部です…」
「それに春信さんは部員でもないですしね。」
樹や東郷まで口をはさむ中
「そうだよね!私たち、勇者だもんね!」
友奈だけがテンションを上げていた。
「そうよ!その為の神樹様の力!そしてぇ!」
(だから。。。皆で見てて下さい。)
「ぅ俺のぅ!」
「満開ぃっ!!」
三たび満開する春信。
ボロボロだった体と勇者服は白い装束に包まれ回復していた。
「また?!」
「一度に三回も?」
「その力なら!」
「いっけぇ!」
「しっかり封印しといてくれよ!」
力を溜め込むようにしゃがみこむ春信。
「スクランブル。。。」
「ダアァッッシュッ!」
叫び声を残し、一瞬で天高く飛び立つ。
「デビルウィィングッ!」
遠くで声が響き、更に加速していく春信。
そしてそれを見送る4人。
「それにしても…」
風が切り出す。
「どうしてでしょうね?」
東郷も応える。
「三好さんってどうしてあんなに…」
樹も気づいたようだ。
「ん?ん?ん?」
友奈だけがわかっていない。
「「「バカみたいに叫ぶと強くなる。」」」
クスクスと笑う3人。
「そんなの決まってるよぉ!」
3人が友奈の方を見る。
「カッコいいから!」
そう言うだろうと思っていた3人は苦笑いをしながら顔を見合わせていた。
そのとき
「「「「!」」」」
合体バーテックスが封印を解こうと樹海を侵食していく。
「速い!」
封印に再び集中するが、勢いは止まらない。
樹の精霊が現れ、端末を見せる。
その画面上の漢数字が見る見るうちに減っていく。
「拘束力が…なくなっちゃう!」
「踏ん張りどころよ!勇者部ファイトォ!」
「「「「オー!」」」」
・
・
・
加速を繰り返し、地球の丸さが見えるほどの位置まで昇りつつある春信。
静かな、音のない世界
通常であれば温度の低下や空気の薄さにやられてしまうところだろう。
だが、満開のおかげか、何の苦もなくここまで来れた。
「超常スマッシュ!」
最後の加速を終え、御魂の表面が見える距離まで近づいていた。
その表面から
「何か来る!?」
御魂の表面の一部が歪むと共に、無数のキューブ状の物体が降り注いでくる。
「御魂からの攻撃だと!」
(どこまで規格外の事をやれば気が済むんだ!)
(だが!)
「バスタァッ」
「ビイィィィィィィィィッムッ!」
赤い剣圧がキューブをなぎ払うように撃ち落とし、御魂の表面に当たる。
「まだまだぁ!」
「エクス!」
「カリバァーッ!!」
今度は円錐状の剣圧が先程と同じ場所に突き刺さり
御魂の表面に小さな傷が入る。
「そこだぁっ!」
「超電磁!」
「スピーンッ!!」
4本の刀を束ね、ドリルのように回転して突き進んでいく。
巨大な御魂の中をどこまでもどこまでも…
ガキン!
突き進んだ先で回転が止まり、刀が折れる。
「硬てぇ!」
周りの瓦礫が再生するように春信を固めていく
「何?!」
完全に固められ、身動きが取れなくなる春信。
「こんな。。。」
力を込めるが、手足は動かせない。
「ポーズで。。。」
満開の腕もおかしな格好に固められている。
「やりなおしを。。。」
「やり直しを要求するっ!!」
張り上げた声と共に固められた瓦礫がはじける。
「俺の!」
折れた刀を握ったまま、満開の腕で硬い御魂を殴る。
「歌を!」
4本の腕が殴る、殴る、殴る、殴る
「聴けぇっ!」
叫びがそのまま硬い壁を砕くように、殴った部分が崩れていく。
そしてそのまま突き進んでいったコアの中心部。
そこに光るもう一つのコアがあった。
「これで終めぇだ!」
4本の腕が柄を捨てる。
「ばあぁくねつ!」
そのまま光るコアに腕を伸ばす
「ゴッドォ!」
包み込むように4つの
「フィンガアァァァァァァァ」
押しつぶすように握っていく
「ァァァァァァァァァァァァァッ!」
叫び続ける春信
コアがついに光を散らし、砕ける。
コアの破壊と共に巨大な御魂に大きなひびが走り
粉々に砕けながら光へと散っていった。
「どうだぁっ!神樹さまぁっ!」
「おいしいとこ、ぜぇ~んぶ!」
「持っていってやったぜぇっ!!」
散っていく光を見ながら右拳を振り上げ、勝利を確信し叫ぶ春信。
満開は既に解け、赤い勇者服のまま地上へ向かってゆっくりと落下していく。
次第に落下速度を増していく体。
「このまま大気圏で燃え尽きちゃうのかぁ。。。」
『オイ、ヤメロ馬鹿』
精霊が現れ、春信の下へ潜ってバリアを張る。
「そっか、お前がいたんだったな。。。」
『アマリ調子ニ乗ッテルト裏世界デヒッソリ幕ヲ閉ジル』
「そうだな、気をつけるよ。。。」
「。。。」
「さっき。。。」
「お前たちのご主人様の声が聞こえたよ。。。」
「いや、思い出したのかな。。。」
「どっちでもいいかぁ。。。」
バリアを張る精霊に身を任せ、目を閉じた。
既に加速による加熱は始まり、バリアからはみ出た勇者服の端を焦がしていた。
(熱いな。。。)
バリアがあるとはいえ、この熱と加速で地表にぶつかれば、無事ですむとは思えない。
(死なないにしても全身黒こげとか)
(地表に当たった衝撃で体がバラバラとか)
(それとも流石に死んじゃうのかな。。。)
熱と摩擦による轟音しか感じなくなった頃
ガンッ
何かが響いた。
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ガンッ
ガンッ
どんどん音の感覚が短くなる。
(何かがバリアにぶつかっている?)
ガンッガンッガンッガンッガンッ
地上では東郷が超遠距離射撃で春信と精霊を守るバリアを狙い撃っていた。
「このままなんて…させません!」
(この距離を。。。)
(気のせいか?落下の加速が鈍ったような。。。)
気のせいではなかった。
ほんの僅かずつではあったが、バリアに当たる弾丸の圧力で加速は抑えられていたのだ。
しかしその速度は既に流星の如く。
加速の抑制だけではどうしようもなかった。
だが
ガクンッパァンッ
何かに一瞬受け止められたような衝撃とそれを突き抜けるような音。
バリアの周りに緑に光る網が散っていた。
樹がその届くギリギリの距離で展開したワイヤーの網だった。
落下の勢いにすぐ破られてしまうが、何度も何度も展開する。
「止まってえぇぇ!」
その横では風が大剣を一杯まで巨大化させ構える。
「止まれぇっ!」
大剣を団扇のように振り回し、風を起こす。
ゴオォォォォォ
風は突風になり、遂には竜巻となってバリアの光を包む。
自分を助ける為に少女たちが必死の抵抗をしてくれている。
(僕にはまだ。。。帰れるところがあるんだ。。。)
春信の目尻に涙が浮かんだ。
(こんなに嬉しい事はない。。。)
かなり落下の勢いが収まった春信と精霊が地面に叩きつけられるその直前。
「勇者パーンチ!」
(え?)
友奈の拳がバリアの展開していない横っ腹に突き刺さり、春信の体がくの字に曲がる。
どんがらがっしゃーん!
そう例えるしかないような音を立てながら転がり跳ねる春信の体。
(最後のは。。。いらなかったんじゃないかな~?)
転がり続けてボロボロになった春信の
ピクピクと
「やったわね、みんな!全員無事!完全勝利よ!」
(無事じゃねーし。。。)
「まさに勇者部みんなの力ですね!」
(いや確かにそーだけど。。。)
「よかったぁ…」
(よかぁないよ。。。)
「特に最後の勢いをとめた友奈ちゃんの拳!」
(友奈ちゃんが止めたのは。。。)
「いやぁ、みんなのが凄かったよぉ。」
(勢いじゃなくて僕の息の根。。。)
遠のく意識の中で突っ込む春信。
このときのことを後の結城友奈の報告では、
「拳が当たる瞬間、目に涙を浮かべて嬉しそうな顔をした春信くんの顔がハッキリ見えました。」
「助かってものすごく嬉しかったんだと思います!私もとっても嬉しいです!」
とされていたそうである。
一段落です。
一応断っておくと、息の根止めたとか言ってますが、春信くん死んでません。
…どうしてこうなった?
ギャグ落ちで締めるつもりなんて全くなかったはずなのに、綺麗にまとめようとしたらこうなっていた。
何を言ってるかわから(ry
さて、実はここまでは自分が書きたかった部分に繋げる為に必要なので書き足した部分です。
その為、TV本編に近い形でしか描けませんでした。
次からは過去編。
三好春信がなぜ勇者になったのか、なれたのか、
どちらかというと繊細で天才なイメージの彼がなぜバカみたいに叫びながら戦うのか、
完璧超人と謳われる彼の転落人生と発起を描く話となります。