三好春信は『元』勇者である   作:mototwo

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このお話には原作のネタバレ、おかしな改変が含まれます。


第7回 太陽戦隊

その後の、あの男の話を要約すると、

 

「今のくだらない自分を捨てて、社会の為に貢献しろ、お前にはその資格と才覚がある。」

 

といったところだ。

だから。。。

僕はてっきり自分が勇者に選ばれたんだと思った。

 

「こんなおデブに化け物と戦えって、そんな無茶な。。。」

 

でも勇者に選ばれるのは、神に見初められるのはいつだって無垢なる少女だ。

 

「男である俺たちは少女たちのサポートをすることしか出来ない。」

「どれだけ戦いたくてもな…」

 

言葉も表情も淡々としていた。

でも、なんとなく悔しそうに見えた。

僕を片手で軽々と持ち上げたその太い腕も、あの怪物相手では役に立たないのだろう。

 

そもそもあの3人の少女たちはなぜあんな動きが出来たんだ?

特殊な訓練?装備?選ばれたってなんだ?

神様と血でもつながってるっていうのか?

情報がまるで足りなかった。

でもそれ以上に、情報を整理する時間が欲しかった。

 

男は

 

僕がもう家に帰る必要がない事

この施設に僕の部屋が用意されている事

少しでもその気になったらこのミッションルームに来いという事

 

それを告げると、僕の事は他の人に任せて去ってしまった。

 

案内された部屋で今まで起きた事を整理していた。

部屋に着くまでの間に少しだけ話を聞けた。

 

彼女たちは神樹様に選ばれた勇者。

 

年は12歳、夏凜ちゃんと同い年だ。

 

そんな小さな子たちが戦う相手は人類の天敵、バーテックス。

 

(三角形とかの頂点とか、無意識の願望とか、そんな意味だっけ?おかしな名前を付けるもんだ。)

 

ネットでかじった知識を掘り起こしながらさっき聞いた話を思い出す。

奴らについてわかってることは5つだけ。

 

(1)人を襲う

(2)人以外は襲わない

(3)通常の兵器は、ほぼ効果なし

(4)神の力を宿す勇者なら対抗できる

(5)敵の目標は神樹。その破壊を狙っている

 

神樹様は今でもウィルスから四国を護りこの世界に恵みを与えて下さっている。

破壊される事は世界の破滅と同義だ。

 

考えがまとまる事はなかった。

 

ネットにも欠片(かけら)も情報のなかったバーテックスという名の化け物。

大方、大赦の関係者以外には洩れない様に秘匿されているんだろう。

 

だから人手が足りなくて三好なんて末席の家柄にも声がかかった。

昔の神童ぶりをこれ見よがしに(かざ)して、大赦に僕を売った両親の顔が目に浮かぶ。

 

(つまり、僕自身が求められた訳じゃないし、僕も望んで来た訳じゃない。)

 

そんな状態で『世界を守る勇者隊の一員になれ~』とか言われてもピンとこない。

 

幸い、なにもしなくても食事はきちんと日に3度用意されるらしい。

人手が足りないといっても猫の手はいらないのだろう。

本気で取り組む姿勢のないものは参加させない。

そのかわり、外にも出さない。

そりゃそうだ、世界の危機なんて外に漏れたら大変だ。

こっちからは書き込みなど外部への通信はまるで出来なかったが、部屋のPCでネット巡回も出来た。

 

三食昼寝つきでネット三昧できる。

そう考えれば悪い環境でもないや。

そんな事を考えながら『太陽戦隊サンバルカン』を鑑賞していた。

 

スーパー戦隊の中でも最後まで3人で戦い抜いたサンバルカンを選んだのは。。。

あの勇者たちの映像を観たこととは関係ない、とは言えないかもしれないかも。。。

 

そんな曖昧な事を考えながらオープニング主題歌を歌い、ポーズを決めていた。

 

「イーグル!」

「シャーク!」

「パンサー!」

 

「なにしてるの?おじさん。」

 

「。。。」

「うわあ!」

 

「うおっと!」

 

ワンテンポ遅れて驚きの声を上げた僕。

その声に驚く闖入者(ちんにゅうしゃ)

 

「なんだ、お前、ガキ?子供がなんでこんなとこに?!」

 

「そんなことより、なにしてんのさ?」

「いい歳したおじさんがこんな薄暗い部屋で」

「なになに?この映像?」

「なんかカッコいいな、コレ!」

 

「僕はおじさんじゃない、まだまだ若いんだ。」

 

「ふーん、で、コレなに?」

 

全然人の話きいてねえな、コイツ。。。

 

「これはスーパー戦隊。」

「神世紀以前に作られた特撮番組だ。」

「簡単に言うと、3人の勇者が人類の敵と戦うって話さ。」

 

「3人の勇者?!」

 

ガキの目がまるでキラリン!と音を立てたかのように煌いた。

 

「それってまるでアタシ達のことジャン?!」

 

何言ってんだ、このガキ。。。

 

「でも赤、青と来て、なんで黄色?」

 

「当たり前だろ、戦隊で3人ときたら」

「赤い主人公、クールな青、ギャグメーカーの黄色、こいつが定番なんだよ。」

 

「わかってないな~」

 

チッチッチと指を振るガキ。

 

ウゼェ。。。

 

「今のトレンドなら最後は紫!」

 

トレンドって。。。

 

「優雅な紫の少女が締めを飾るんだよ!」

 

紫なんて完全に後から出る補充メンバーじゃないか。

 

「でもアタシの色が主人公ってのは気に入ったね!」

 

ん。。。?さっきからコイツ、アタシって。。。

それに自分が主人公の色。。。?

 

「ああぁ~っ!」

 

「うおっと!」

 

大声を出して指をさす僕とまた驚くガキ。

 

「おまえ、女の子?赤い勇者の?!」

 

そう、ガキではない、少女だ。。。

僕の部屋に勝手に入り込んで失礼な事を言ったガキは、

よく見ると神樹館小等部の制服に身を包んだ少女だったのだ。

 

「そうだよ、なあんだ、気付いてなかったのか。」

「おじさんもここにいるって事は大赦の人なんでしょ?」

「なんで働きもせずにこんな薄暗い部屋で子供番組なんて見てんのさ?」

 

コイツ。。。勝手に入ってきたくせにズケズケと。。。

 

「さっきも言ったろ、僕はおじさんじゃない。まだ十代なんだ。」

 

「ええ~、でもこぉんなに中年太りジャン?」

 

自分のお腹の前で両手をポッコリという感じに動かす。

 

ホントに遠慮がねぇな。。。

 

「これはただ単に太ってるだけだ!」

 

「そーなんだ、で、なんでサボってんの?」

 

くっ。。。なんだこの言葉責め。。。こいつドSか?

こういう輩は。。。

 

「サボってるわけじゃない。」

「今もお前が言ったろ、自分達みたいだって。」

「僕は昔のヒーローの姿から今の勇者の戦いに参考になるものがないか」

「研究を重ねている最中なのさ。」

 

もちろん嘘だ。

こんなわかりやすい嘘、馬鹿にしか通用しないだろう。

だが。。。

 

「マジで?!」

 

やはりな、コイツはバカだ!

簡単に引っかかってやがる!

僕は内心、大笑いしていた。

 

「大マジだ。」

 

かけてもいないメガネをクイっとやる仕草で語る。

 

「お前たちは世界を守る勇者だからな」

「あらゆる方面からのサポートが考慮されているんだ。」

「それに子供番組と馬鹿にしたもんじゃない。」

「神世紀以前の作品には、今の作品にない底知れぬパワーがある。」

「これは神樹様の力を得た勇者のそれと実に共通点が多い。」

「それを研究し、フィードバックする事で、必ずお前たちの役に立つのだ。」

 

「す…」

「すっげぇな、あんちゃん!」

 

ワナワナと拳を震わせて感動している。

 

「じゃあ、アタシ達もこんな風に合体技でビーム出したり、巨大ロボで戦えるようになるのか?!」

 

「バッカ、おめぇ、そんな事。。。」

 

出来るわけないだろ、バーカ。

 

そう言ってそろそろバラしてガッカリさせてやろうと思ったが。。。

余りにも期待に目を輝かせる少女を見て、言いにくくなった。。。

 

「バッカ、おめぇ、そんな事当たり前だろ。。。」

「じ、時間はかかるけど、ビームやロボ的な巨腕で敵を叩き伏せるなんて。。。」

「そ。。。そのうち常識になる日がきっと来るぜ。。。タブン」

 

最後は情けなく誤魔化すような口振りになってしまった。

 

「そっかぁ、そうすれば今回みたいな苦戦はしないな、きっと!」

 

「そ、そうだな。。。」

「そ、それよりお前、なんでこんなとこに一人でいるんだ?」

「他の二人は?」

 

バツが悪くなって、ワザとらしく周りを見渡す仕草で話題を変えた。

 

「いやー、アタシら、今回初陣だったんだけどさ」

「敵の攻撃で水玉ん中に捕まっちゃって」

 

はい、見てました。

 

「武器振り回してもぜ~んぜん効かないから、飲んじゃったんだ。水玉。」

 

あれは飲み込んで消えてたのか。。。

 

「サイダー味からウーロン的なものに変わったから飽きずに飲めたんだけど」

「仮にも敵の一部を腹に入れたってんで」

「今まで一人だけこっちで検査受けてたんだ。」

 

「なんとも。。。なかったのか?」

 

「うん!な~んとも!」

 

大変なお役目の後の筈なのに。。。

あまりにも天真爛漫な笑顔を振りまく少女に、僕は引け目を感じてしまった。

 

「あ、そろそろ帰らなきゃ!」

「弟が生まれたバッカでさ」

「アタシが面倒みなきゃならんのよ。」

 

背中を向け、走り出そうとする少女。

 

「あ、お前。。。」

 

「ん、何?」

 

こちらを振り向くが、特に何か言いたかったわけではなかった。

 

さっきの嘘なんだ、ごめん。。。

 

そんな言葉も出なかった。

 

「銀」

 

「え?」

 

「『お前』じゃなくて『三ノ輪 銀』だよ。」

「ミノさんでもギンさんでも、好きに呼んでいいよ、ニヒヒ。」

 

いたずらっぽく笑う少女、その笑顔は今の僕には眩しすぎた。

 

「じゃーね!」

 

きびすを返して走り出す三ノ輪銀。

 

「ミノさんって。。。」

 

そのセンスのない、あだ名に失笑しつつ

 

「男の子みたいだって思ったけど」

「笑うと綺麗な顔立ちだったな。。。」

 

フッと笑う。

 

「まあ、夏凜ちゃんには負けるけどな!」

 

このタイミングだと負け惜しみみたいになるが、

ウチの夏凜ちゃんは本当に美少女なのだ。

 

「同い年だって言ってたっけ。。。」

 

いつか三ノ輪銀と夏凜ちゃんが出会い、仲良くなるような時がくればいいな。

美形で少年っぽい銀と美少女の夏凜ちゃんなら、お似合いのカップルになるに違いない。

 

そんな事を思った一日の終わりだった。

 

そう、これで終わっていれば綺麗な話だったのだ。

数日後、気まぐれにミッションルームに行ってみた。

部屋に入った僕をなんだか皆が見ている気がした。

 

これはアレか、場にそぐわぬデブオタの入室に怪訝(けげん)な顔してんのか?

それとも僕が自意識過剰なだけか。。。?

 

そのどちらでもない事は、すぐに判明した。

 

「遅い登場だな」

 

あの男が野太い声で責める様に言った。

気が向いたら来いって話だったじゃないか。。。

 

「博士には研究の為にも、もっと現場に来てもらわないとな。」

 

は?

 

こちらを見もせずに語り続ける。

 

「勇者システムは確かにまだまだ改良の余地がある。」

「その開発も大事な任務だ。」

 

へ?

 

やっとこっちを向いて無表情なまま言い放つ。

 

「ビームや巨大ロボを開発するんだろ、お前が。」

 

オペレーター席で抑えきれずに吹き出し、クスクスと笑ってるお姉さんもいる。。。

 

銀のやつ、話したのか!?

ここの皆があの話を知ってる?

どこまで話が広がってる?

 

は。。。恥ずかしい!

 

自分でも顔が真っ赤になって体中から脂汗が出ているのがわかる。

 

「う。。。」

 

「うん?」

 

「うわあぁーん!もう来ねーよー!」

 

飛び出した僕の背中でみんなの笑い声が響いた。

 

「勇者がビームやロボのパンチで戦うわけないだろ~。。。」

 

こんな事をつぶやきながら部屋に引きこもった僕。

みんなの前に戻るまでには数日がかかった。




はい過去編その2です。
実はこの話、後半は全く描く予定のない話でした。
ふと操作ミスで感想のページを開いてしまって。
(心弱いんで、貶されると筆が進まなくなるから全部上げてから見る気でした。)
銀が好きな方が自分以外にもいる!と思うと勝手にミノさん登場してました。
そこからは、あまりにもテンプレなやりとりで。
面白いように筆が進みました。
感想下さった方、ありがとうございます。

あ、過去編まだまだ続きます。
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