今回に関してはあの世界の話だけど、まるで「ゆゆゆ」じゃありません。
とにかく、あのミッションルームでは何もすることがない。
入る事は許可されているが、何かをしろと言われることもない。
初出勤で何の指示もされずに放置される新入社員ってこんな感じだろうか?
大体、この大赦の施設で僕が知ってるのは自分の部屋とあのミッションルームだけ。
機密保持の為に外には出られないと言われたが、中をうろつくなとは言われてない。
何をするにもまず、情報だ。
ネットで検索してもここの話なんて出てこない。
だったら足で情報集めだ!
探検気分で施設内をブラついてみた。
色んな施設がある。
各人の個室や開発室にオフィスはもちろん、食堂、トレーニングルーム、医療ブロックにサウナや野球くらいできそうな広さの運動場まであった。
もっと秘密基地然とした施設なのかと思ったが、
出入り禁止区域がそこかしこにあるくらいで、普通の会社と同じような感じがした。
普通の会社に勤めたことないけど。。。
出入り禁止区域近くにはあの人たちもいた。
僕らが知ってる、いわゆる『大赦の人』たちだ。
仮面に烏帽子の格好で、必要以上に言葉を発しない。
多分、偉い人たちなんだろうけど、正直不気味でお近づきになりたくはない。
見てきたことを頭の中でまとめながら、僕は食堂に来ていた。
今までは部屋に運ばれる食事を食べるだけだったが、
広い食堂にはたくさんの人たちが思い思いの食事を取っていた。
そうだ、まずは部屋から出て生活していこう。
そう思ってこっそり他の人の様子を見て、注文のしかたを探った。
なんとか人にまぎれて注文したAセット。
僕がここに来て、初めて能動的に得た食べ物だ。
くだらない一歩かもしれないが、ヒキオタの僕にとっては大きな一歩だ。
よく噛みしめて食べよう、そう思ったとき。
「よう、新人ちゃん、確か三好の子だったっけ?」
馴れ馴れしく声をかけてきたのは、見知らぬ男性。
なんとなく2枚目半なイメージのチャラそうな男だった。
「何いきなり話かけて来てるわけ?」
そう言おうかとも思ったけど、気を悪くされると怖いので、
「はい、よろしくお願いします。」
と言った。
つもりだった。
でも実際に出た言葉は。。。
「は、はい、でゅふふふ」
だった。。。最悪だ。
これはキモオタ認定されてイジメられる。。。!
そう思ったが
「なに?緊張しちゃってる?大丈夫よ、とって食ったりしないから。」
と気さくに返してくれた。
この人もいい人だ。。。
「す、すいません、大赦の人って思うと、き、緊張しちゃって。。。」
「あ~、わかるよ、俺も初めはそうだったもん。」
「でも、俺たち末席の者なんて単なる下っ端」
「ただのベンチャー会社員と変わんないって。」
確かに、みんな結構ラフな格好で食事している。
施設の雰囲気だとスーツとか着ててもおかしくないのに。
「あの仮面さんたちなんかはエリート意識満々で」
「食事姿も見せたことないけどね。」
ああ、やっぱりあの人たちはエリートなのか。
「大体、三好家もある意味、大赦の系統だし」
「ここにいる以上君も大赦の人、だよ。」
にこやかに話を進めてくれる。
こういう人がクラスの人気者になるんだろうな。。。
チャラそうとか思ってすみません。。。
「ま、困った事があったら誰にでも聞いてみればいいさ。」
「仮面さんや黒服さんは別として」
「ここではみんなが仲間意識もってるからさ。」
「そ、そうなんですね。。。」
ここだ!頑張れ僕!
「あ、あの。。。」
「ん?」
「あ、あの。。。僕。。。」
言いよどむ僕の言葉をだまって待っててくれた。
「あの、僕、ここに連れられて来たけど、何をしろとも言われなくて。」
「なにかしなきゃって思うんだけど、何をしたらいいのかわからなくて。」
「それで、あの。。。」
一気に言ってみたが、あとの言葉が続かない。。。
「仕方ないか」
小さくそう言ったあと、優しく話してくれた。
「そうかい、それはね。」
「自分で見つけなきゃいけないのさ。」
自分で。。。
「ここに来る連中は基本なにかのスペシャリストだ。」
「来る事が決まった時点で何をすべきか考えてきている。」
僕は違う。。。
「でも時々、君のように何も知らされず連れて来られる人もいる。」
「どういう理由かは人それぞれだろうけど」
「ここで何をするかは、自分で自分の適性を見つけて」
「勝手に決めてしまうんだ。」
勝手にって。。。
「そんなの、何もしないままいたらどうするんですか。。。」
無駄飯食いが増産されたら困るはずなのに。。。
「そうだね、そんな人が増えたら困る事になる。」
「でも、不思議とここでは誰もが何かを見つけて何かをするんだ。」
そんな都合のいい話が。。。
「実際、君だって、何かをしようと思ったから部屋を出たんだろう?」
あ。。。
「ここは勇者のサポートをする施設だ。」
「そしてサポートする形には色々なものがある。」
「勇者と直接関わってサポートする人たち」
「そんな人たちをサポートする人たち」
「さらにそんな人たちを…ってね。」
優しい顔が少し厳しい、真面目な顔になる。
「俺たちは人知れず、世界の為に戦う少女たちを知ってしまった。」
「どういう形でもその支えになりたい。」
「そう思うのは別に悪い事じゃないよな。」
一転してニカっと笑うその顔は、自分のやるべき事を持つ自信の表れなのか。。。
「できることからやればいいさ。」
「それを受け入れられるだけの懐がここにはあるから。」
そういってお兄さんは空になった食器を持って去ってしまった。
僕は少し冷めたAセットをガツガツと平らげると、食堂の厨房に入っていった。
「あ、あの、すみません!」
声をかけると中のおばちゃんが忙しそうに応える。
「空の食器はあっちの棚だよ!」
僕が食器を持ったままなので勘違いされたらしい。
「ち、違うんです!」
「ぼ、僕を。。。」
手を止めてこちらを向いてくれた。
「ぼ、僕をここで使って下さい!」
我ながら、単純だと思った。
食堂で話を聞いてそのまま厨房に飛び込むなんて。
でも、ナデシコでもテンカワアキトが料理人から仕事を始めてたじゃないか。
ロボに乗る気なんてないけど、僕だって!
「料理はできないけど。。。皿洗いでもなんでもやりますから!」
他の人も手を止めて僕を見ていた。
つかつかとおばちゃんが近づいて
「アンタの体型で着れる制服はここにゃないよ。」
「あ。。。」
ダメ。。。か。。。
「話は回しとくから明日から来な。制服はそのときに渡すよ。」
「。。。え?」
「言っとくが、自分から言い出したからにゃ容赦はしないよ。」
「ビシビシ鍛え上げてやるから覚悟しな!」
物言いはきついけど、優しい。
肝っ玉母ちゃんみたいな人だ。
「チーフ、何色にしますかね?」
奥の男性が声をかける。
おばちゃん、ここのチーフだったのか。
「尻の青いガキみたいだからね、青でいいよ。」
どうやら制服の色の話らしい。
なんだか気風が良くて、ホントにナデシコの料理長みたいな人だな。
「ただし言っとくよ。」
ギロリとにらんでチーフが言う。
「お残しは許さないからね!」
あ、ナデシコじゃなくて忍たま学校だったか。。。
明日からここで働く。
あしたから頑張る!みたいでなんか不穏だけど。
僕のここでの本当の生活が始まろうとしていた。
あ~過去編その4です。
やっと前に進む意思を見せた春信くん。
内容があまりにもあんまりなんで、ナデシコって言わせちゃいましたよ。
半分やけくそです。
なんだか予定になかった話がどんどん間に入っていく…
サクサク読めるSS目指してたのに、まるで本筋に入っていけない。
普段文章書かないから構成力が…
いや、次こそは!
というわけで次回もよろしく。