ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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リハビリがてら書いたifルートです。本編とはまっっったくこれっっっぽっっちも関係ありません。

銀さんもいません。その代わり破壊神がいます。

あ、破壊神はビルスの方じゃないよ?セルの方だからね?

まぁ息抜き程度にどうぞ。シリアス兼1話完結型です。





if ダンジョンに銀さん以外のキャラがいるのは間違っているだろうか
if ダンジョンに破壊神がいるのは間違っているだろうか


 

 

《迷宮都市 オラリオ》

 

 この世界で唯一の『ダンジョン』と通称される地下迷宮を保有する、否、迷宮の上に築き上げられたこの街に、夢を持って足を踏み入れる人間は多い。

 地位や名誉の獲得を夢見る者、一攫千金を夢見る者、運命の出会いを夢見る者、その姿は人によって様々だ。

 それぞれがそれぞれの大望をもって神の家族(ファミリア)となり、冒険者となる。

 

 そのオラリオの中心部では【ギルド】と呼ばれるものがある。

 ギルドとは、迷宮(ダンジョン)を管理し、それに潜る冒険者に出来るだけ()()()()()()に諸知識や様々な情報を提供、公開しており、冒険者の探索のサポートを全般に行っている。加えて冒険者が持ち帰った魔石やドロップアイテムを買い取ったり、オラリオに住む一般市民の意見も聞いたりしているので、実質オラリオの都市の管理している組織と言っても過言ではないのだ。

 

 そのギルドのトップを張っているのは【ウラノス】というこの地上に初めて【神の恩恵(ファルナ)】をもたらした男神である。

 ウラノスは余計な諍いを防ぐ為にギルドの職員達には()()()()()()()()()、【神の恩恵(ファルナ)】を刻んではいない。付け加えると表舞台にも姿を現す事も無い。

 

 故にギルドの最高権力者は“ロイマン・マルディール”という齢150を超えている男のエルフとなっている。

 ロイマンは高貴なエルフであるにも関わらず、1世紀以上居座っているそのポジションのお陰で連日連夜豪遊し尽くし、その下腹はたぷんたぷんと揺れている。醜く太ったその姿のせいでオラリオ中のエルフから“厚顔無恥”と忌み嫌われている。プライドが人一倍高いエルフという種族だからこそ、というのもあるが。

 

 ()()()の最高権力者はロイマンであることは変わりない。

 先に述べた様にギルドはオラリオ全体の管理、即ち治安保持も担っている。治安保持とは言ってもギルドの私警がいるわけでは無く、ギルドに登録しているファミリアがギルドの司令のもと警備に駆り出されるのである。【ガネーシャ・ファミリア】という私警に似たものもあるが、それは個人で動いでいるだけである。

 

 この場合、ギルドの最高権力者であるロイマンが指示を下すのかと思えばそんな事はない。寧ろロイマンはそういう暴力沙汰は不得手である。無論、ウラノスでもない。

 

 では誰がひと癖ふた癖ある冒険者をまとめ、総括するのか。

 結論から言おう────“破壊神”である。

 何を以って其の男が破壊神と呼ばれ出したのか。理由は至極単純であり、其の男が出動すれば敵はおろか其の建物さえも()()()()()()()()()()()()

 

 今宵は久方振りのギルドとトップのファミリアの会合。

 何が起こるか、誰もが分からなかった。ただこれだけは言える────地獄のひとときが始まったのだと。

 

 

 

 

 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕

 

 

 

 

 

「定刻になりましたので定例会を始めたいと思います。司会進行は私、エイナ・チュールが務めさせて頂きます。宜しくお願いします」

 

「うん、有り難う。【ロキ・ファミリア】団長の“フィン・ディムナ”だ。宜しく頼むよ」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】団長の“シャクティ・ヴァグマ”だ。五月蝿い主神が来たいとほざいていたが連れて来なくて正解だったようだ。宜しく頼む」

 

「【フレイヤ・ファミリア】は欠席ですか……」

 

 

 団長の二人とエイナは一人の男へと顔を向けた。

 大体、オラリオのトップファミリアの団長が顔を合わせる事が異質で異常であるのだ。だがこの三人は判っていた。()()()()()()()()()()()()()()()ということを。

 男は三人の視線に気付くと口を開いた。声音は周りのピリッとした空気に似つかわしくない素っ頓狂で明るい声だった。

 

 

「みんんなしてェオジさん見てどうしたんだいィ?オジさんそんなに見られたるァ恥ずかしいんだけどォ」

 

「松平公、僕達の自己紹介は終わったのでしていただけるなら…と」

 

 

 ギルドの【破壊神】────本名“松平片栗虎”。

 まるで暗殺屋の様なグラサンにピリッと着こなしている黒が基調の背広に漆黒のコート、煙草。どこからどう見ても悪人ヅラで、取り締まるより取り締まられる方である。

 

 

「ぬぁんだって?あー自己紹介ね自己紹介。その前によォフィン、お前さんの後ろに居るあんちゃん初顔なんだが、誰なんだでぃ?」

 

「ぼっ僕ッスか!?」

 

「お(めェ)さんしか居ないだろあんちゃん。3秒以内に自己紹介しないとドタマぶち抜く……はぁい(イ〜〜チ)

 

 

────バンッ!!バンッ!!

 

 

「2と3はッ!?」

 

「知らねェなそんな数字。男は1だけ覚えときゃ生きていけるんだよォ」

 

「まぁまぁ松平公落ち着いて。彼は僕の後釜にするつもりである“ツッコミ役(ラウル・ノールド)”です。経験を積ませる為に連れて来ました。僕共々宜しくお願いします」

 

「なんでィそういう事か。せっかくむさ苦しいロイマン(お と こ)からエイナ(かわい子)ちゃんに変えたっつうのに男が増えてたからホストクラブにでも迷い混んだのかと思っちまったじゃねェか」

 

((あ、それで今日はロイマンじゃないのか))

 

 

 フィンとシャクティはほぼ同時にそう思った。今までの進行はロイマンが行っていたからである。こういう身勝手なところも松平片栗虎を松平片栗虎たらしめる所以である。

 

 

「ゴホンッ!そろそろ進めても宜しいでしょうか?」

 

「お〜ゴメンねェ、エイナちゃん。今度ご飯奢ってあげるかるァ、それで許してくんない?」

 

「結構です。進めますね」

 

(お偉いさんなのに受付嬢に拒否られてショボンってしてるっス!何なのこの人!?ホントにギルドの【破壊神】なの!?)

 

 

 ラウルは聞いた噂とは全く違う松平の小さな背中に驚いていた。そしてそれに動じた様子も無く、寧ろいつも通りで良かったと、先程よりも緊張が和らいでいる団長らに驚いた。

 

 

「えぇっと……“闇派閥(イヴィルス)”の残党がオラリオの中に潜んでいる可能性があります。以前の松平公の指揮による掃討戦、最後の【疾風】の活躍により九割が片付き、残り一割がオラリオ外へ逃げたというのが今迄の報告だったのですが……」

 

「ここからはこの一連を調べ直した私が話します。私達【ガネーシャ・ファミリア】は一週間程前に起きたある事件…【金品、及び下着の強奪事件】を調べました。すると【 闇派閥(イヴィルス)】が使っていた手口と殆ど同じ、いえそれ以上に狡猾に綿密に犯罪が行われていました」

 

「目的は……手口が同じことから推測するに復讐、かな」

 

「えぇ恐らく」

 

 

 頭の回転が早い団長達の会話にラウルは付いていけない。

 それは松平とエイナにも言えることではあったが。いや松平は聞いているかどうかも怪しい。

 そう思ったラウルは松平に質問を投げかけてみた。

 

 

「松平公はどう思うッスか?」

 

「あぁん? パンツに付いたウ○コが何だってェ?」

 

「一言も言っとらんわ!!話ちゃんと聞いて下さいッス!」

 

「いやラウル、松平公の仰る通りだよ」

 

「え?だ、団長?」

 

「ほら【闇派閥(イヴィルス)】の残党だと決定付ける証拠の写真だよ」

 

 

 フィンから手渡された証拠の写真には『ウ○コのついたパンツ(+ハエ)』が写っていた。

 

 

「ホントにウ○コ付いてたァァァァ!!……でも何でこれが証拠になるんスか?」

 

「【闇派閥(イヴィルス)】の頭は私達、【ガネーシャ・ファミリア】や【ロキ・ファミリア】や【フレイヤ・ファミリア】の第一級冒険者達が()った。頭を失った【闇派閥(イヴィルス)】の下級構成員達は蜘蛛の子の様に散り散りに逃げ回っていたのだが一定の集団を作り上げるとダイダロス通りの建物に立て篭ったのだよ」

 

「そ、其れでどうなったんスか……?」

 

「今も調査中なのだが、ダイダロス通りの建物には私達が知り得ていない()()()()があったらしくね。成り立ての冒険者を捕まえては人質にして立て篭ったのだ。だから手を出せずに困っていた……だがそこで誰もが思い付かない様な指揮を下し、人質を救出したのが松平公だ」

 

 

 シャクティの言葉の裏には尊敬の念が滲み出ていた。フィンもシャクティの言葉に頷いている。ただエイナだけが苦い顔をしていたが。

 ラウルはシャクティの続きの言葉を待った。

 

 

「松平公はまず【闇派閥(イヴィルス)】の連中が要求する食事に全てに“下剤”を盛った」

 

「…ん?」

 

「次にその建物の水道管を破壊。トイレを使えなくしたのだ」

 

「……ん?」

 

「最後は独断で単身で突入。とんでも奇襲に連中は壊滅」

 

「………ん?」

 

「その建物に残ったのは『ウ○コのついたパンツ』だけだった」

 

「ウ○コもらしただけじゃねェかァァァァ!!それをわざわざ御丁寧に今回の犯罪の証拠にしたの!?残党馬鹿ばっか!!馬鹿ばっかッスよ!!」

 

「勿論、ウ○コの臭いが残らない様にオジさんはちゃんとその建物を塵一つ残さず消してあげました。テメェのケツも拭けねェ野郎にはなりたくなかったからなァ」

 

「ウ○コだけにってか!?上手くないんスよ!破天荒にも程があるわ!!」

 

 

 きちんと調べる前に松平が塵一つ残さずその建物を消してしまってせいで、死亡確認が取れなかったのも事実なのだが。その建物以外にいた残党は【疾風】が処理した。

 フィンとシャクティは恐らく数人は今も尚見つける事が出来ていない地下通路で逃げたのだと睨んだ。それ以外に考えようがない。

 

 

「それで今回の対策なんだけど────」

 

「会議中失礼します!緊急事態です!!」

 

「ど、どうしたのミィシャ?」

 

「【 闇派閥(イヴィルス)】です!【闇派閥(イヴィルス)】の残党がオラリオ全ての()()()()()()()を占領したとの報告が!!」

 

「く、クリーニング屋?」

 

「あと『松平を出せ!』と叫んでるとのことです!」

 

 

 唐突な出来事にラウルとエイナは混乱した。

 だがそれでも静かに厳然と佇む大物が三人。眼光は先程よりも数倍鋭利だ。

 

 

「フィン、シャクティ」

 

「「はい」」

 

「俺ァ俺を呼んでる奴のとこに行く。テメェらは団員連れて他のクリーニング屋に急げェ……久方振りの大仕事だァァ!テメェら死ぬ気でやるェェェェやァァァアアア!!」

 

 

 

 

 

 ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕

 

 

 

 

 

『ラウル、君は松平公に付いて行くといい』

 

 

 フィンの、上司の言葉でラウルは【破壊神】に付いていくことになった。

 ハッキリ言って面倒事を押し付けられた気しかしないラウルはあからさまに不機嫌な顔をしている。嫌な予感しかしないのだ。

 

 

「オォォイ!松平ァァァアアア!!」

 

 

 占領されている、オラリオで一番大きなクリーニング屋に着いたところを見るやいなや【闇派閥(イヴィルス)】の残党はクリーニング屋の屋上から松平に向けて怒声を放った。

 

 

「…」

 

「聞いてんのかコラあ゛ぁ゛ん゛!?」

 

「…」

 

「無視かゴラァあ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!?」

 

 

 松平は残党の言葉に返事をくれず、ただひたすらにその占領されたクリーニング屋を見ていた。その瞳はその先のことを見据えている様に思える。

 

 

「テメェる゛ァァァァ!」

 

「…な、何だコノヤロー!!」

 

 

「ウ○コ行って良い?」

 

 

「「先に行っとけやァァァァ!!」」

 

 

 残党だけでなくラウルまでツッコんだ。

 松平は少しだけもぞもぞしている。かなり限界が来ているのだろう。ラウルは分かりたくないところを分かってしまった。

 

 

「テメェらが前フリもなくテロ起こしてっからウ○コ行きそびれたんだよ馬鹿ヤルォォォォイァ!!」

 

「前フリしてテロ起こすバカがどこに居るんだあ゛ぁ゛ん゛!?」

 

(うん、残党が正しい)

 

 

 冷静に心の中でツッコむラウル。松平の言葉は全く筋が通っていなかった。勢いだけで押し込んでいる様なイメージである。

 残党は声を大にして今まで心の奥底で燻っていた想いを松平にぶつけた。

 

 

「大体なぁ!!テメェが先の籠城戦の時に俺達が要求した食料の中に超強力な下剤を盛り込んだ事が今回の発端だって分かってんのかあ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!?」

 

「あ゛ぁ゛?」

 

「テメェの下剤のせいで暫くトイレに閉じこもりっ放しだった俺達はケツ穴の締まりがユルユルになったんだよ!!少し力んだだけでプリっとウ○コが出ちまうんだよ!!分かってんのかゴラあ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!?」

 

(もういっそ哀れッス……)

 

「だからテメェらクリーニング屋占領してんのか。クソつけたパンツを洗ってもらう為に」

 

 

 松平はしみじみと呟く。

 ラウルは残党のことを思うと少しだけ目頭が熱くなった。

 

 

「松平ァ!これが何だか分かるか!?」

 

 

 残党がポケットから取り出した物は女性用のパンツだった。大人びたものではなく少し愛らしさが残ったパンツだ。

 

 

「テメェの娘のパンツだ!!ヒャッハー!!さっきウ○コもらした仲間にわ履かせるぞゴルァ!!」

 

「知らねェな」

 

「はぁ!?テメェの娘のパンツだろうが!!洗濯物とかで見るだろうが!!」

 

「だから知らねェつってんだよ。栗子のパンツは俺のと別々に洗えって家政婦にも言いつけてある。思春期の娘を持つお父さん舐めんじゃねェェェェェエエ!」

 

(金銭と下着を盗んでいるのは……ア○ルが緩いからなんスね)

 

 

 ラウルの目尻から雫がひと粒流れ落ちた。前が見えない。どうしてなのかラウル自身も分かっていなかった。

 松平の重い覇気にたじろぐ【闇派閥(イヴィルス)】の残党。何か言い返そうと口を開くが、言葉に出す前に松平がバズーカを向け、鋭くも温かい眼光で射抜いていた。

 

 

 

「良いかァァァァ!父親の役目なんざたかが知れてらァ!ガキなんて(かかあ)さえいりゃ立派に育つんだよ!親父は家に金を入れれば後は用無し、何の役にも立ちゃしねェんだァ!」

 

 

 

「やれる事と言えばいい事したときゃめいっぱい褒めてやること、悪い事したときゃしっかり叱ってやること……それ位だァ」

 

 

 

「その拳骨こそがオラリオの【破壊神】、てめーらオラリオ(ク ソ)共のクソ親父たる俺の役目だァァァァ!」

 

 

 

「「「あ…あぁ……あぁ……!」」」

 

 

 

「てめーらに3秒猶予を与えてやらァ、オラリオの明日の為に生きるか、オラリオの明日の為に死ぬか、どっちか選べィやァァァ!!」

 

 

 

「はぁい(い〜〜ち)……」

 

 

 

「お、俺達はッ!!」

 

 

 

 

 

─────ドォォォォオオン!!

 

 

 

 

「2と3はァァァァァァ!?」

 

 

「知らねェなそんな数字。男は1だけ覚えときゃ生きていけるんだよォ…… 」

 

 

 

 そう吐き捨てると松平は帰るべき場所へ足を向けた。

 ラウルはその光景を見て唖然としつつも、松平のことを改めて破天荒で型破りで【破壊神】であることを認識した。

 

 

─────ラウルが見た居るべき場所へ帰る男の偉大な背中が伝えるものは。

 

 

─────もっこりしたズボンを支えながら、煙草の匂いを漂わせたその巨大な背中が伝えるものは。

 

 

 

─────天下のクソ親父の威厳、それだけだった。

 

 

 

 






紛れもないシリアスでした。


私はとっつぁんが好きです。銀魂の人気投票はとっつぁんと銀さんに入れてます、大体ですが。


お蔵入りにしてた一話でしたが、楽しんで頂けたのなら嬉しいです。


こんな調子で一話完結型で銀魂のキャラをダンまちの世界にぶち込んだ一話をこれからも時折届けたらと思います。

このキャラのやつが見たいってものがあるなら感想欄にて。

では次は本編で会いましょう!感想や評価をお待ちしてます

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