ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか 作:TouA(とーあ)
なぜかこの作品の感想ではなく、WJの銀魂の感想だけを頂いたりしましたが。ネタバレヨクナイ。まぁ私はWJ見てるから良いんですけど。 他の読者さんが・・・ね。
今話はやっとあの場所へ。そして
ではどうぞ!
「そこのお兄さん、寄ってかないかい?」
「旦那旦那!ウチで楽しんでいかないか〜い?」
「ハイハイ後で行くから後で!」
桃色の魔石灯が闇深き夜を照らし、淫靡な雰囲気を際立たせる。
銀時は一人、南東のメインストリートに足を運んでいた。
南東のメインストリートと言っても、隣接する繁華街とは違う活気がある場所に銀時はいる。
女性の殆どは半裸であり、背中や腰を丸出しにしたドレスで着飾っていてどこか蠱惑的だ。変わって男性の顔はだらしないものが多い。
「ほら、一緒に楽しみましょう?」
「どうせ来るんなら今でもいいでしょう旦那様?」
「だァァッ!離せ!俺は積極的な女は嫌いなんだよ!!」
蠱惑的な女性たちはいわゆる“娼婦”である。
街に居る男たちに魅惑的に微笑んだり、時には挑戦的に微笑むその姿は非常にしたたかだ。
勿論、銀時も例外ではなく街に居る娼婦たちに声をかけられたり、体を触られたり、体を押し付けられたりするなどのこの街における洗礼を一身に受けていた。
「今ならワカメ酒でも構いませんよ?アワビの踊り食いから栗拾いまでなんでもサービスしますよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・今度来ますゥゥゥゥ!!」
何かを振り切る様に銀時は目的地に向かって駆け出した。
魅惑的な女性に鼻をだらしなく伸ばす男たちをかき分け、視界に女が入らないように下を向いて走る。
着いた、とは言ってもある建物に隠れた路地裏であり、そこから更に進まなければならないのだが。
銀時が取り出した行灯型の魔石灯で暗い細道の路地裏を照らし、しずしずと歩き、誰にも見つかることなく
その館の五階まで音を立てずに慎重に上り、少し廊下を歩き、かすかに光が漏れる襖の中へと入る。
「よォ来たぜ、
「お待ちしておりました、銀時様」
襖の中には静かに佇む一人の
きらやかな金の長髪に、同じ毛並みの耳と尻尾。透き通る様な
「悪ィ少し遅れちまった。通りで絡まれてよ」
「構いません。それに銀時様はわたくしの為にわざわざ赴いて下さっているのです。どうして責める事が出来ましょうか」
「そうか。じゃあいつもの
「ふふ、かしこまりました」
「それで銀時様。今宵はどの様なお話をしてくださるのですか?」
「そうだな・・・ある天才の侍の話でもしようか。天狗に育てられ、生き別れた兄と共に父親の仇を討つ英雄譚。知ってるか?」
「いえ存じ上げません。どうかお聞かせください!」
「お、おう。あれは────」
銀時は春姫に向かってポツポツと語り始めた。
二人は
「────結局、英雄になった天才の侍は心底から信頼していた兄に裏切られて死んでしまいました。・・・まぁこんなところか」
「そ、そんなっあんまりです・・・うぅ・・・うぅ・・・・・・」
「ちょッ泣くな!泣かないで!お願いだから!300ヴァリスあげるから!」
英雄の悲劇に思わず涙ぐむ春姫を銀時はあの手この手で宥める。
どうにか泣き止んだ春姫に銀時は安堵するともう一度口を開いた。
「この英雄譚の中で本当にしたたかだったのは英雄の侍じゃなくてその奥さんだろうな」
「・・・どうしてでございますか?」
「その奥さんは夫を殺した兄夫婦の前で舞い踊ったのさ。自分の命を捨てる覚悟で夫への想いの唄を口にしながらな・・・」
「唄でございますか。どの様な?」
「えっと確か・・・」
『吉野山 峰の白雪 踏み分けて 入りにし人の 跡ぞ恋しき』
「綺麗な唄でございますね。そして悲しい。本当に夫を恋い慕っていたのでございましょうね」
「そうだなァ悲しくも美しい唄だ。嫌いじゃねェ」
春姫の瞳からほろりと一滴の雫がこぼれた。先程までとは違い、温かく優しい雫だった。
しんみりとした空気にお猪口に酒を注ぐ音だけが響き渡る。
「銀時様はその様なお話をどこで読まれたのですか?」
「ん?読まれたってか、聞かされたんだよ。俺の師匠がその手の話が好きでな」
「そのお師匠様のお名前は?」
「──────だ。聞いたことねェだろ?」
「はい。でも銀時様がここまで優しく在れるのはそのお師匠様のお蔭なのでございましょうね・・・」
銀時はその言葉に一瞬だけ目を見開くと、ふっと微笑んだ。
春姫はその微笑みの意味はよくわからなかったが。
「それにしてもここは静かだな。オモテとは偉く違ェ」
「別館でございますから。本館は・・・」
銀時達がいるのはある館の別館の五階の一部屋 。
異国情緒が溢れるこの街を牛耳るファミリアの
別のファミリアに所属している銀時でも正面から入れる娼婦館ではあるのだが、春姫のとある事情により裏から入らねばならなかった。
「アイシャさんがこの部屋を毎度用意して下さるんですよ。たくさん話せる様に、と気を利かして下さって・・・」
「それは向こうで聞き耳立ててるヤロウか?」
「────ッ」
スー・・・と襖が静かに開くと赤面したアマゾネスの女性が現れた。
アイシャと呼ばれた女性は黒の着物に
「アイシャさん?いらっしゃったのなら仰ってくれれば良かったのに・・・」
「いや、ついさっき来たところでねェ・・・」
「あん?お前、俺が英雄譚を語っていた時から居たじゃねェか」
「そッそれはその入りづらかったというか、感動してたというか・・・」
尻すぼみに小さくなっていくアイシャの声は銀時たちに届くはずもない。
そんな姿を見た銀時は怪訝な顔をして首を捻るばかりだ。なぜなら以前会った時はこの様な雰囲気ではなかったからである。
「なぁ春姫。どうしたのコイツ。俺が知ってるコイツはギラギラした目で男を見定めて食い漁るような女の獣だった筈なんだが。なんでこんなにお淑やかになってんの?」
「ど、どどどうしてでしょうね。わたくしにはさっぱり・・・」
何かを必死に隠す春姫に対して銀時は魚の死んだ様な目を更に腐らせていった。
赤面したまま動かないアイシャは目を泳がせている。そんなアイシャに春姫が助け舟を出す。
「ほら、アイシャさん。銀時様がわざわざ来て下さったのですから精一杯おもてなししないと」
「そ、そうだねェ・・・」
銀時を挟む様に座るアイシャと春姫は代わる代わるお猪口に酒を注いだ。
銀時の顔は相変わらず怪訝なままだ。
「ねェ怖いんだけど。両手に花って聞こえはいいけど、さっきから震えが止まらないんだけど」
「あ、アイシャさん!銀時様は震えが止まらないんですって!温かい料理を出したらどうでしょう!?」
「そ、そうだな!持ってくる」
動きがぎこちないアイシャが席を立つ。銀時は震えに加え冷や汗をかきはじめた。
暫くして、黒のお膳を持ったアイシャが再び襖を開けて入室してきた。
「アイシャさん凄いです!こんなに沢山料理が作れるなんて!日頃から銀時様の為に料理をムグッ────」
「これ以上喋るな春姫。いいな?」
口を手で塞がれ、鋭い目つきで睨まれる春姫は何度も頷いて了解の意を示した。
アイシャが銀時の前に置いた料理はどれも見栄えがよく、綺麗に盛り付けられていた。空腹をおぼえさせ、食欲をそそるには十分だ。
「アイシャさん、食べさせてあげないと!」
「お、おう。まずは“山芋鉄板”・・・あーん」
「いや、自分で食べ────」
「食え」
アイシャが作った食べ物を本人から半強制的に食べさせられる銀時は先程から表情が曇ったままだ。
アイシャは銀時の言葉を待つようにじっと見つめる。
「・・・うめェよ」
「よかっ────んんっ。次は“アスパラと鶏肉のにんにく炒め”だ。食え」
先程と同じく差し出される食べ物を銀時は口にする。
これも変わらず美味であり、銀時好みの味付けであった。
「普通にうめェ・・・」
「そ、そうか・・・じゃあ最後は“すっぽん鍋”────」
「ちょッッと待てぇぇぇぇぇぇ!!」
銀時はアイシャからのあーんを遮り、声を荒らげる。
アイシャはポカンとしたまま動かない。
「これ全部“精”のつく料理じゃねェかァァァ!」
「な、何か問題が?」
「問題だらけだよ!問題しかねェよ!」
「そ、そうか・・・・・・銀時、食べなんし♡」
「言い方の問題じゃねェェェェ!!俺にこれを食わせて何するつもりだ!」
「何ってナニを・・・」
「だァァァァ!女性がそんなはしたない事言うんじゃありませんッ!!ほら、純情な
銀時が振り向くと、そこには純情な
「おいぃぃぃぃ!!そういう所は気が利く
「まぁまぁ。これでも飲んで落ち着け」
アイシャから渡された小瓶を中身を確認することなく銀時は飲み干した。
ちょっとした苦味がある独特の飲み物に銀時は再び顔をしかめる。
「え?この飲み物何?」
「東洋の島国から取り寄せた“赤マムシ”という飲み物だ」
「結局“精力剤”じゃねェかァァァァ!!」
激昴した銀時は空になった小瓶を下に叩きつける。バリンッと割れた音が響く。
銀時はさんざん叫んだので息が荒れ、その姿を見たアイシャは肩を落とし、呟いた。
「じゃあ片付けてくる・・・・・・」
「ハァハァ待てよ。」
料理が乗る黒のお膳をアイシャが下げようとすると、銀時がストップをかける。
アイシャから強引に箸を奪い、三種の料理を口に掻き入れる。
数分もせず空になった料理を見て、アイシャは目を見開いた。
「ごちそうさん。美味かったぜ」
「あ、あぁ・・・」
そう一言だけ呟くと銀時は立ち上がり、部屋を後にしようと襖に手をかけた。
アイシャはそんな銀時の横顔をただ見つめていた。
「また来る。春姫にも伝えておいてくれ」
銀時が部屋を出て暫く経って、アイシャは銀時の落とし物に気づいた。それを手に取って銀時を追いかける様に立ち上がる。
「銀時ッ!」
アイシャが銀時に追い付いた所は裏口だった。
銀時は声に反応すると髪を乱しつつも追い掛けてくるアイシャに近寄った。
「こ、これ忘れ物・・・」
「ん?あァ・・・こっちの
アイシャから渡された物は恐らく
「
「それは何だ?」
「知らねェよ。金になるだろうと思って取っておいただけだ。サンキュな」
銀時はそう言うと、前かがみのまま夜の街へと呑まれて行った。
「アイシャさん、どうでしたか!?」
「近い近い!・・・飯は全部食べてくれたよ。美味しい・・・だとさ」
「良かったです!今まで頑張った甲斐がありましたね!御礼のつもりだったのでしょう?」
「あぁ」
アイシャの脳裏に浮かぶとある思い出。
数年前、目の前で優しく微笑む
犯人は直ぐに自分だとバレてしまい、所属しているファミリアの団長から額に一撃貰った。血が垂れ流れる中、その団長は更に追い打ちを掛けようと肉薄してきた。
その時。
その団長の横腹を思いっきり木刀で殴った酔っ払いの侍がいた。
憤慨した団長はその酔っ払いに襲い掛かるが攻撃を全ていなされ、最後に強烈な峰打ちをもらい、気絶した。
問題が解決することは無かったのだが、その酔っ払いの侍と一緒に訪れていた冒険者を装う
だがそんな出来事があったという事実を目の前で目を輝かせる
「銀時様も勿体ないですよ。こんなにアイシャさんが想って下さってますのに」
「・・・」
「『俺は積極的な女は嫌いだ!』でしたか。アイシャさんを変えた銀時様の言葉は」
「・・・・・・その言葉を銀時は酔っていて覚えてないらしいがな」
「・・・・・・・」
「何か言えよ!泣き虫!」
「ひはいへふ!はいひゃさん!」
アイシャは言葉に詰まった春姫の両頬を引っ張る。涙目になったところで流石にやめたが。
「わたくしにも銀時様のような英雄様が来て下さるといいなぁ・・・」
「ふん。男の裸を見るだけで気絶する女が何言ってんだか」
辛気臭い顔を晴らす為に、アイシャが銀時に話し相手になってくれと頼み込んだことを。
【
銀時と話している時、誰よりも可憐で恋する乙女の顔になっていることを。
二人は知らない。
一人の男が三日三晩ムラムラして悶々と過ごすことを。
はい終わりました。いかがでしたか?
寝る三十分前にこの作品を書くのですが、誤字が多い。ホントに。誤字報告してくれる方、本当にありがとうございます。
毎度恒例謝辞。
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まえがきにも言いましたがみなさんの評価と感想は本当に励みになっています。
途中で出てきた英雄は言わずもがな、でしょう。
話は変わり、私の知り合いに銀魂好きの女子がいるのですが、話によると月詠はあまり好かれていないとのことで。
え!?マジで!?って驚いたのは私だけでしょうか。
みなさんはヒロインの中で誰が好きなんでしょうか。
ではまた次回にお会いしましょう!