ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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前回の話で銀さんが『清純キャラ』について語っていました。

そうです。食戟のソーマの『田所恵』の事を言っていました。わかった方すごいです!

なぜその田所ちゃんにしたかというとティオネと声優が一緒なんですよね。それにも気付いた方もいらっしゃいました。いやホントすごい。


今回のサブタイは読めば何の意味かわかります。まぁ言うより見てもらった方が早いかと。


今回は久しく過去篇から。ではどうぞ!





P K R

 

『銀時、桜を見た事がありますか?』

 

『んぁ?当たり前だろ。春になりゃそこら中に咲いてらァ』

 

 

 墨汁を垂れ流した様な純黒の空に平然と佇む望月。

 銀髪の少年と壮年期後半の白髪と黒髪の入り交じる男性が縁側に座り、語り合う。

 

 

『では(すべ)ての木が、桜という山を見た事は有りますか?』

 

『・・・ねぇな。え?そんな山あんの?』

 

『えぇ有りますよ・・・そうですね、(ようや)く私達の部隊が正式に認められたのですから、時期になれば皆で見に行きましょうか』

 

『それ・・・いいな。酒とか飯とか一杯持っていこうぜ!』

 

『君は()だ未成年でしょう銀時。()しや、隠れて呑んでいるんじゃないでしょうね?』

 

『そ、そんな訳ないじゃないですかぁ〜アハハ、アハハハハハハハハハ・・・・・・』

 

 

 冷や汗を滝のように流す、遠き日の銀時。

 男性は呆れたように嘆息し、夜空を見上げ呟いた。

 

 

『────空は繋がっている。だが見る事が出来る者と出来ない者がいる。だから約束しよう。共に空を見上げる、其の日の為に』

 

 

『・・・一体なんだよその言葉。(いくさ)の前に必ず鼓舞の為に使ってるが、俺にゃあどーも意味が違うく聞こえんだよなァ』

 

『・・・流石ですね銀時。(これ)()()との約束の言葉です。()い換えるなら私の誓いの言葉でもあります。・・・(いず)れ教えますよ』

 

『別に知りたい訳じゃねぇ・・・』

 

 

 男性は銀時に優しく微笑み、どこか遠くを見る様な目で再び夜空を見上げた。

 銀時はその横顔を見ながら、自身の“師”について考えた。

 

 

如何(どう)かしましたか?銀時』

 

『んにゃ、何もねぇよ』

 

『そうですか。では久し振りに英雄潭でも語りましょう。今日は十倍もの軍勢に討ち勝った英雄の話を────』

 

『お、俺はもうガキじゃねぇ!もう寝る!』

 

『銀時ッ、明日は朝一で居合いの特訓ですからね!・・・・・・はぁ』

 

 

 銀時は立ち上がると自身の部屋に向かって歩き始めた。

 その後ろ姿に声をかけた男は苦笑いのまま短く息を吐くと目を瞑り、過去と未来に思い馳せた。

 

 

『────時計は決して左には回らない。銀時、貴方(あなた)は私の最後の希望なんです。だからもう少し、私の我侭(わがまま)に付き合って下さい』

 

 

 男性の力のない笑みは誰にも見られることはなく、呟きでさえも誰にも届かず、雲一つ無い夜空に吸い込まれ、消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「─────さん」

 

 「ん・・・・・・」

 

 「────銀さん」

 

 「んぁ・・・・・・」

 

 「起きて!銀さん」

 

 「んだよ・・・るっせぇなぁ・・・まだおネムの時間なんだよ・・・・・・」

 

 「・・・もぅ仕方ないなぁ」

 

 

 銀時の自室。

 なかなか目覚めない銀時にしびれを切らした女子はサングラスを取り出し自身に付けると、銀時の顔に徐々に口を近付け────そして。

 

 

 「ドゥルルルルッ↗ドゥルルルルッ↘ドゥルルルルットゥドゥルルルル〜ドゥルルルルッ↗ドゥルルルルッ↘ドゥルルルルッティドゥルルルル〜ドゥルルルムギュッ!?!?」

 

 「何してんだテメー」

 

 

 額に青筋浮かべてる銀時の右手に頬を挟まれているのは、サングラスを掛けたティオナだった。

 

 

 「おはヨございます。髪切った?」

 

 「切ってねぇよ!寝込みに何、悪質なイタズラしてんだテメェは!!」

 

 「怒んないでよぉ・・・大体、何回揺さぶっても起きない銀さんが悪いんじゃん!起こさなかったら私がリヴェリアに怒られるんだよ!」

 

 「ぐ・・・・・・ったく、お蔭で嫌な夢見たぜ」

 

 「へ?嫌な夢?どんな夢?」

 

 「あーいや、何でもねぇよ。ほら、着替えっから出てった出てった」

 

 

 半ば強引にティオナを外に押し出した銀時はささっと着替えて共に食堂へ向かった。

 朝食の時間帯のピークを少し過ぎたとはいえ、食堂はまだ混みあっていた。空いている席も僅かだ。

 

 

 「おばちゃん、宇治銀時丼一つ」

 

 「はいよ!」

 

 

 いつも通りに宇治銀時丼を頼んだ銀時はいちご牛乳を片手に空いた席を探す。一番近くにあった手頃な席に着くと、真向かいの人物が声を掛けてきた。

 

 

 「遅いぞ銀時」

 

 「へぇへぇ悪ぅござんした。以後気をつけまーす」

 

 

 真向かいに座っていたのはリヴェリアだった。その口調からは怒気が混じっていることが伺えた。

 

 

 「嘘でも少しは気持ちを込めて言ったらどうなんだ?あと糖分は控えろ。さすがに体に悪い」

 

 「オメーは俺の母ちゃんか。それに俺ァ糖分取らにゃやってられねぇんだよ」

 

 

 紅茶を口に運ぶリヴェリアと宇治銀時丼を口に運ぶ銀時。品性というか育ちの良さが明確に分かれている。

 

 

 「私たちはオラリオのトップを張るファミリアだ。どこに行っても【ロキ・ファミリア】という肩書きが付き纏う。素行の悪さが衆目に晒されればファミリア全体に迷惑が掛かる。わかっているのか?」

 

 「わぁーってるよ。そうカリカリすんなよ。そんなにビビらせてぇんなら、その髪、バリカンで刈り上げて襟をピンッとした方が凄みが増すぜ?」

 

 「私は別に貴様をビビらせたい訳ではない!!【ロキ・ファミリア】であり、【Lv.6】である自覚を持てと言っているのだ!あと、刈り上げか唐揚げか知らんが髪型を変えるつもりは毛頭ない!」

 

 「俺はどこが一番とかどうでもいいんだよ!もういっそのこと一番でも〇〇(ピー)、二番でも〇〇(ピー)、ナンバーワンも〇〇(ピー)、オンリーワンも〇〇(ピー)でいいじゃねぇか!」

 

 「言いわけないだろう!馬鹿なのか貴様は!・・・あー馬鹿だったな!昔から貴様は何も成長していない!小さい頃はまだ愛らしくて許せたが今は唯のマダオだ!」

 

 「うるせぇぇぇ!俺ァ童心を忘れねぇことによって人生を楽しく生きてんだよ!」

 

 「大体、このファミリアは問題児が多過ぎる!休息を取れと言ったのにダンジョンに向かうアイズ(バーサーカー)や自身の性欲を抑えきれず他のファミリアに処理用のアイテムを依頼するティオネ(ドM)、ギャンブルで全額失った上に、年中甘い息を吐き続ける銀時(マダオ)、それに貯蓄しているマヨネーズが毎晩無くなったりと、お前達は私を過労死させたいのか!!」

 

 

 ヒートアップする二人の会話に対して、周囲の反応は冷めたものだった。寧ろ、また始まった。飽きないなぁあの人たち。程度の認識だった。

 それからと言うもののリヴェリアの愚痴は止まることなかった。そして遂に銀時の堪忍の尾が切れた。

 

 

 「大体な、テメーはアイズやらに『甘えろ』なんぞ言ってるが、そんなお堅い雰囲気のヤローに甘えれるかっつうの。可愛いぬいぐるみが好きです(ハート)ぐらいの属性つけて言えってんだ」

 

 「・・・・・・ふぇっ」

 

 「・・・え?何その反応。まさか、ぬいぐるみ抱き締めて寝てますみたいなそんな感じ?」

 

 「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 

 「・・・あーなんか悪い。か、可愛いとこあんだなお前」

 

 「・・・・・・もうリヴェリアおウチ帰る!」

 

 

 脱兎の如く食堂を走り去ったリヴェリア。

 銀時はバツが悪そうに顔をしかめるが、直ぐにニタァと悪い顔を浮かべた。

 

 

(どっちもガキじゃん!あとリヴェリア様可愛い)

 

 

 っとまぁ周囲の反応はこんな感じである。

 リヴェリアの愚痴に身に覚えがある者は今日から控えようと心に誓った。銀時を除く、であるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「銀時のバカ者・・・」

 

 

 リヴェリアの自室。しっかりと施錠したその部屋にリヴェリアは()()()()()を抱いてベッドに座り込んでいた。

 

 

 「あんな(ミナ)の前で言わなくても良いではないか・・・」

 

 

 リヴェリアが銀時の指摘された様にぬいぐるみを抱えて寝ることになったのは理由がある。

 それは十数年前、言うならば銀時と出会って少し経った時の話だ。

 

 銀時が【ロキ・ファミリア】に加入し、一年半でLv.2に上がった時の話だ。それはもう物議を醸したことをリヴェリアは昨日の事のように思い出せる。

 

 

────ミノタウロスを一人で倒した!?

 

 

 そう銀時は危険を顧みず、中層の浅層まで潜ったのだ。まぁ正確にはギルトの職員やリヴェリアの注意を聞かずに適当に下層に潜った、なのだが。

 

 そこでLv.2に成り立てであろう四人のパーティーと遭遇。命からがら逃げ出していたそのパーティーは銀時にミノタウロスや他のモンスターをトレインして上層へと帰還した。

 

 銀時は望んだ事では無かったとはいえ『殿(しんがり)』を任された形になった。『殿(しんがり)』は銀時の血が滾り【夜叉】としての記憶を取り戻すには十分な程の戦場効果を発揮した。

 

 ミノタウロスや他のモンスターを次々と屠り、銀髪に血を浴び、ダンジョンを駆る姿は正しく【夜叉】だった。

 

 

────なぜこの様な無茶をした!!

 

────俺が殺らなきゃ何人も死んだ。そんだけだ。

 

 

 当時、世話役だったリヴェリアでさえもこのザマだった。何を言おうにも、ぐうも言わせぬ正論で黙らせた。

 

 リヴェリアも感情では銀時が正解であることをわかっていた。だが理屈ではそう判断はできない。自身の立場があったというのもある。

 

 早い話、【Lv.1】である銀時がミノタウロスや他のモンスターを一つの戦闘だけで狩った話が【ロキ・ファミリア】や他のファミリアに広まれば間違いなく自信過剰の冒険者が死地に赴く事になる。上位の属する【ロキ・ファミリア】は【Lv.1】でさえも腕に自信がある者が多い。銀時と同じ道を辿り、早く【Lv.2】になろうとミノタウロスの対峙することは想像に難くない。

 

 だからリヴェリアやフィン、ガレスはこの話をロキと要相談し伏せた。銀時は一年半という短い期間でレベルアップした理由を周知されなかった。

 

 神会(デナトゥス)で銀時の二つ名が決まる時、ロキは銀時がレベルアップした経緯を他言しないように他の神々を脅した。だがその畏怖や忌避、()()()()もあって付けられた二つ名は【白夜叉】。神々には誰一人としてその二つ名に反論することもなく満場一致であった。

 

 

────こら、大人しくしろ!

 

────いってぇなぁ・・・

 

 

 銀時はそれからというもの一人でダンジョンに潜り、多数の怪我を負って帰ってくる事が多くなった。たとえ強引にパーティーを組ませても、いつの間にか姿を消して一人で中層へと潜って行った。

 その度にリヴェリアは銀時を甲斐甲斐しく世話をした。怪我の治療や骨を折って帰った時は食事の世話など、それはもう母と子の関係に近いものだった。

 

 そんなある日のことだ。

 リヴェリアの自室でいつもの如く、銀時の世話をしていた。銀時も最初は嫌がっていたがこの時になっては不承不承ながら受け入れていた。

 

 

────おい、銀時?

 

 

 銀時は疲れ切っていたのか糸が切れた様にリヴェリアのベッドで爆睡した。

 遅い時間ではあったのでリヴェリアが銀時を銀時の自室まで送るわけにもいかなかった・・・そして。

 

 

 銀時を抱き締めて()()()()()()()()()()()

 

 

 思えばこれが始まり。

 暖かく丁度良い大きさの銀時を抱き締めて寝てしまったのが始まりだった。朝になればリヴェリアが先に目を覚ますので、その時に銀時を自室へと運んだ。

 

 それからというものの銀時が疲れ果てて寝てしまえば、リヴェリアは銀時を抱き締めてベッドに入るのだ。日頃の憎たらしい雰囲気とは真逆の子供らしい雰囲気にやられたというのもある。とにかくリヴェリアは()()()()()()()()()()

 

 勿論、そんな事は長くは続かない。銀時だって成長する。リヴェリアの世話になることも少なくなる。思春期、と簡単に言えばそうであるし、ダンジョンを経験するにつれて怪我をすることも少なくなる。

 

 だが銀時は離れて行っても、どうしても()()()()が欲しくなるのがリヴェリアだった。なぜか癖になってしまったあの感覚をもう一度この手に、と。

 

 だからリヴェリアは『ぬいぐるみ』へと手を伸ばしたのだ。あの時の銀時と同じぐらいの大きさのぬいぐるみを抱き締めて寝るようになった。あの時ほどでないが、銀時の代役としては十分であった。

 

 

 「言えない・・・こんなこと言えるものか」

 

 

 どこか銀時に似たぬいぐるみを抱えたリヴェリアはギュッと抱き締めて一人呟いた。

 

 

────早く素直になればいいのに。

 

 

 焼き芋を食べた時に団長であるフィンに言われた言葉。

 本当に素直になれたらどれだけいいのだろうとリヴェリアは想う。

 

 

 「副団長としての立場が・・・いやこれは詭弁だな」

 

 

 周りからの期待や信頼、エルフの王という肩書きのせいにする事で、この話題から目を逸らしてきたことを今になって後悔する。もう後戻りはできないレベルにまできているのだ。

 

 だからこそ、一人でいるこの時ぐらいは本音を吐露しても許されるだろう。リヴェリアは自身が思うままに口を動かした。

 

 

 「甘えたい・・・」

 

 

 自身の口から出た言葉にリヴェリアは頬を赤らめて、ぬいぐるみに顔を押し付ける。ムームー!と言葉にならぬ声が自室に響き渡る。

 

 

 「・・・私がそう言えばお前はどんな顔をするのだろうな・・・・・・銀時」

 

 

 少しの期待と不安が胸中を渦巻く。

 だが見てみたいという感情がそれを押し退け、頬を緩ませた。

 

 いい年して乙女のような顔をするリヴェリアは、くすぐったそうに微かな笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 




はい終わりました。いやー書いてて楽しかった!こんなにニヤニヤしながら書いたのは初めてかもしれない。

今回の話で、2話で載せた銀時のステータスの中で、【耐久】がなぜ低いのかが理解出来たと思います。そういう事です。

あと題名の意味です!↓


(ポンコツ) (カワイイ) (リヴェリア)


という意味ですね。やべぇ今回やり過ぎた。消されるかもしれない笑


そして毎度恒例謝辞。

『ただ幸せな世界を望む』さん、『はちみつれもん@』さん、『stop08』さん、『自由奔放主義者』さん、最高評価ありがとうございます!!

『ごぼごぼ』さん、『しゅうゆ』さん、『四葉志場』さん、『intet1234』さん、『弥未耶』さん、『フェニックス天庵』さん、高評価ありがとうございます!!


最高評価と高評価を五十名以上の方が入れてくれる。もうほんと嬉しい。感謝感激!!



話は変わりますが・・・。


https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=147098&uid=106761


↑のリンク、私の活動報告でこの作品の番外編のアンケートを取っています。

今のところ6番のリューとのデートが多いです。しかし今回の話でリヴェリアの票が多くなるかなぁと思ったりなんたり。

全部書いて、という意見もありましたが私を殺す気ですか。いつこの作品が終わることやら。まぁそう思ってくれるのは嬉しいですけど。

訂正したい方は訂正してご投票ください。あと一票だからな!!二票入れてる奴訂正しろい!!


ってことでまた次回。感想評価お待ちしてます!

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