ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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遅れてすみません!

投票の結果“6”となりました。


5番のリヴェリアとは僅差でした。


たくさんの御応募ありがとうございました!!

・・・ですが先にベルと銀時の会話をいれます。四巻に入る大事な会話になりますので。


ではどうぞ!!







女の一番の化粧は笑顔

午前09:00《城壁上》

 

 

「【ファイアボルト】ッ!!」

 

「ふわぁ〜」

 

 

 欠伸をする銀時に走る稲妻の如き火炎が宙を翔ける。

 銀時は片手を突き出し、火炎を握り潰す。少し熱かったのか手をブンブン振る。

 

 

「やっぱ火力が足りねェなぁその魔法」

 

「うぉおおお!!」

 

 

 間髪入れず、ナイフを二刀持ち、嵐の様な怒涛の斬撃を繰り出すベル。

 銀時は最低限の身のこなしで躱していく。攻撃に隙が出た瞬間、指を引き絞ってベルにデコピンを放つ。

 

 

「〜〜〜っ!」

 

 

 仮にもLv.6のデコピンである。痛くない訳が無い。ベルは目尻に涙を浮かべながら再度突進する。

 

 

「よっ」

 

 

 銀時は突進してくるベルに向かって、上段の廻し蹴りを放つ。

 ベルは蹴りを躱そうと身を屈める・・・が。

 

 

「甘ェ」

 

「げふっ!」

 

 

 銀時は股関節を内旋させることで蹴りの軌道を変えた。いわゆる突き返し蹴り(ブラジリアンキック)である。それによって躱せる筈だった蹴りは側頭部に直撃。ベルは弧を描く様に飛んで行った。

 

 

「もうちょい性格悪くなって意地汚さを覚えりゃ・・・いや、ベルにはこれ以上無理な話か」

 

 

 更に斜め上の心の成長を期待する銀時であったが、ベルに限ってそれは無理だと思った。

 

 

「おいベル、ポーションいるか?」

 

「・・・」

 

 

 城壁に体を預けているベルに銀時は近付き問い掛ける。反応が無いことから気絶しているのだろうと────刹那。

 

 

「【ファイアボルト】!!」

 

「っ!」

 

 

 ベルは限界まで意識を殺し、ゼロ距離からの【ファイアボルト】を放った。

 銀時は咄嗟に顔を手で守るが少し遅い。

 

 

「あ、ちょっすみません師匠。頭が更に天パに・・・」

 

「・・・フンッ!!」

 

「げふっ!」

 

 

 無慈悲なる拳骨にベルは本当に気絶する。銀時は手櫛で髪の毛を直そうとするが一向に直らない。

 

 

「こういう奇襲は学んでんだなぁ・・・しっかし直らねぇ!もぅいい知らん!寝てやらァ!!」

 

 

 

────一時間後。

 

 

 

「師匠起きて下さい。師匠?」

 

「あと五分・・・」

 

「起きて下さいって!」

 

「うっせぇなぁ、あと十分・・・」

 

「増えてるっ!?もぅ師匠ォォォォォ!!」

 

「あぁもぅうっせぇ!起きたっつうの!!」

 

 

 ベルは銀時の耳元で叫ぶ。飛び起きた銀時は少しだけ怒りを顕にする。

 

 

「もう少し寝るつもりだったら、師匠のすね毛を一本ずつ抜くつもりでした」

 

「サラッとえげつないこと言うんじゃねぇっ!誰が教えたんだそんなもん!」

 

「こうしたら直ぐ起きるって師匠が言ってましたよ?以前にガレスさんにしたって・・・」

 

「そうですね!俺ですね!」

 

 

 ベルの返しに反省する銀時。少しずつ()()()()()()()ベルに銀時は焦りを覚えた。

 

 

(思えばコイツを夜連れ回したり、余計な入れ知恵したのが悪かったのか。純粋過ぎて全部鵜呑みにしてやがる・・・コイツんとこのロリ巨乳やらサポーターに何て言われる事やら)

 

 

 やらかした事を反省し始める銀時。だがもう時は既に遅かったことに気付くのは暫く後の事だった。

 

 

「はぁ、今日はもう終わりにしてパフェでも食いに行くか」

 

「ほっ本当ですか!?行きたいです!」

 

 

 先程までのブラックな感じとは違い、少年染みた満面の笑みを浮かべるベルを見て銀時は少しだけ安心した。

 

 二人は並んで行きつけの店に向かって歩き始める。周りからすれば本当に兄弟にしか見えないのだ。そんな中、ベルは銀時にかねてから聞きたかったことを尋ねた。

 

 

「あの師匠・・・」

 

「ん?」

 

「────“必殺技”ってどう思います?」

 

 

 真剣な顔をして真っ直ぐ見つめる赤い瞳に銀時は吹き出しそうになった。

 

 

「・・・そうだな。男なら誰もが憧れるよなぁ」

 

「そうなんです。以前、師匠がヴァレンシュタインさんに“必殺技”を授けたって言ってたじゃないですか。もし良ければ僕にも・・・と思いまして」

 

(アイズの“必殺技”は酒の勢いで付けたとか言えねぇ・・・)

 

 

 ベルのマジトーンによる相談に銀時は頭を捻る。しかし適当な物しか浮かばない。何せ銀時は自身の“必殺技”というものを持っていないからだ。

 

 

「お、俺ァ“必殺技”はベル自身が考えた方がいいと思うぜ?ほら、自分が()()()()()言葉を並べた方が気合いが入るし・・・」

 

 

 銀時は全部弟子にぶん投げた。ベルはベルでその意見にうんうん頷いている。だが少しだけ寂しい顔をしたのを銀時は見逃さなかった。

 

 

「あ〜そうだな・・・“必殺技”の前の“必殺技”なら付けてやらん事もない」

 

「“必殺技”の前の“必殺技”?」

 

「そう!“必殺技”を繰り出す前に一回入れる技だ。そうしたら“必殺技”をやり易くなるだろ?」

 

「なっなるほど!さすが師匠!!是非お願いします!!」

 

「“必殺技”の“前”の“必殺技”。名付けて────」

 

 

 ベルは喉をごくっと鳴らした。銀時は溜めて溜めて一気に言い放った。

 

 

「────前の必殺技(アバンストラッシュ)!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《とあるカフェ》

 

 

「「あ・・・」」

 

「銀時さんにクラネルさん!」

 

 

 行きつけの店に辿りついた銀時とベルは、向かい側から来た女性二人と鉢会った。その女性は“豊穣の女主人”で働く“シル・フローヴァ”と“リュー・リオン”だった。

 

 

「偶然ですね!シルさんとリューさんもパフェを食べに来たんですか?」

 

「えぇそうなんです。ミアお母さんに午前中だけ休みをもらって・・・そうだっ!クラネルさん、二人でランチに行きましょう!」

 

「え、いやまだ10時半ですよ?それにパフェを食べに来たんじゃ・・・」

 

「つべこべ言わずに!行きましょう!」

 

 

 シルはベルの手を取り駆け出す。振り向き様に親指を立てていたが、リューや銀時は何の事か全く理解出来なかった。

 

 

「じゃあ折角だし入るか」

 

「私は帰ります。シルが居ないのなら意味がないので。お一人でごゆっくりどうぞ」

 

「そうか。俺の人生、この店で最後のパフェになるかもしれねぇってのにひとり寂しく食うのか・・・」

 

「・・・な、なにを」

 

「あーあ・・・遠征の前の最後ぐらい誰かと一緒に食いたかったなぁ・・・・・・」

 

「・・・さ、最後だなんて縁起でもない。で、ですがまぁこのままだとサカタさんが可哀想なので少しだけなら、つ、付き合ってあげます」

 

「じゃあ決まりだな。入るぞ〜」

 

「ちょっ手を引っ張らないで下さい!」

 

「いだだだだっ指折れるっ!折れるから離して下さいっ!」

 

 

 リューの言葉を無視して勝手に入ろうとした銀時にリューは憤慨し・・・いや羞恥で顔を赤く染めながら反撃する。

 

 店員に案内され、向かい合わせに座る。リューの顔は未だに赤いままだ。

 

 

「宇治抹茶パフェとコイツに苺パフェ。あ〜コイツのは生クリーム多めで頼まぁ」

 

「何勝手に頼んでいるのですか!私の意見は!?」

 

「ん?以前来た時これが一番好きだったじゃねぇか。違ったか?」

 

「なっ!!」

 

「ハイかしこまりました。少々お待ち下さい」

 

 

 更に顔を赤らめるリュー。銀時は何故リューが顔を赤らめているのか理解出来なかった。

 少ししてリューは銀時に問いかけた。

 

 

「なぜそんな昔の事を覚えているのですか・・・」

 

「一番記憶に残ってっからだよ。お前さんはいっつも仏頂面のくせにパフェ食う時だけは目を輝かせて幸せそうな顔すんだから。だからよ、俺はパフェ食う時はお前さんと食う時が一番美味しく感じるぜ?」

 

 

 そう言って銀時は少年の様な満面の笑みを浮かべた。リューは先程以上に顔を赤らめる。例えるなら茹でタコだ。

 

 

「宇治抹茶パフェと苺パフェ生クリーム多めでございます。ごゆっくりお楽しみください」

 

 

 ドンッと二つの巨大パフェが机に置かれる。

 銀時の宇治抹茶パフェは抹茶のゼリーや抹茶アイスをはじめ、照り輝く白玉やとても甘い小豆がどっさり乗っており、人から見れば胸焼けする代物だ。

 リューの苺パフェも負けず劣らずである。透明な器からは沢山の苺や満遍なく生クリームも入っていることが確認出来る。頂上にはバニラアイスがあり、その周りを花が咲くようにカットされた苺が乗っている。

 

 

「さぁて食うか・・・ん?食わねぇの?」

 

「いえその・・・この流れで食べるとサカタさんに負けた様に感じるので・・・・・・」

 

 

 エルフという種族のちっぽけなプライドである。意地、と言った方が正しいのかもしれない。銀時の天然ジゴロに振り回されっ放しのリューは何としてもゆずれないよく分からない意地があった。

 

 

「大体、私は少し付き合うと言っただけです。なのにあなたは勝手にこんなに大きなパフェを────」

 

「アイス溶けんぞ?」

 

「いただきます」

 

 

────何を迷っていたのか。

 と、言わんばかりにリューは無言で苺パフェを食べ始めた。銀時もそれに釣られて食べ始める。二人に共通することはとても幸せな顔をしていることだ。

 

 そして先に食べ終えたのは・・・リューだった。

 

 

「さ、さすがにお腹一杯になりますね・・・」

 

「はやっ!どんだけ食べたかったんだよ。量で言えばお前の方が多かっただろうが・・・」

 

「む・・・それは私のせいではありません。この美味しいパフェのせいです」

 

 

 銀時の言葉に少しだけムスッとするリュー。リューはスプーンをふりふりしながら苺パフェに責任転嫁する。

 

 

「クリーム付いてんじゃねえか」

 

 

 手を伸ばし、リューの頬に付いていた生クリームを指で優しく取る。銀時はそのまま生クリームが付いた指を自身の口に咥えた。

 

 

「ん、甘ェな」

 

「なっなっ何をしているんですかっ、こ、こんな不埒なマネを公衆の面前でっ!もうっ!!」

 

「おいおい、どこが不埒なんだよ。まさか照れてんの?ウブだねぇ・・・」

 

 

 顔を赤らめ憤慨するリューに対して、銀時はただニヤニヤするだけだ。

 

 

「あ、貴方(あなた)って人はいつもそうだ!いつもいつもそうやって私をっ私をっ!」

 

「はぁ・・・」

 

「なんでため息をつくのですかっ!つきたいのは私のほ────」

 

「ほらよっ」

 

「んぐっ!?!?」

 

 

 言葉を遮る様に、銀時はリューの口に抹茶アイスと小豆が乗ったスプーンを突っ込んだ。

 突然の出来事に目を白黒させるリューだったが、口の中に広がる優しくも甘い味だけは感じることが出来た。

 

 

「俺が苺パフェの生クリーム食べたから、俺の宇治抹茶パフェを寄越せって言いたかったんだろ?わかってるわかってるって」

 

「〜〜〜〜〜〜っ!ちっ違っ私が言いたいのは────」

 

「美味ェだろ?」

 

「・・・美味しいです、けど」

 

 

 美味ェだろ?と満面の笑みで再度問い掛ける銀時にリューの言葉は尻すぼみに小さくなっていった。反比例する様に心臓の音は大きくなっていたが。

 

 

「けど?」

 

「な、何でもありませんっ!早く食べてくださいっ!」

 

 

 真っ直ぐ見つめる銀時の目に思わずリューは目を逸らしてしまった。今日こんなに暑かったのか、とリューは銀時が食べ終わるまでひたすら自問自答を繰り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜食った食った。満足満足」

 

「・・・あれから苺パフェ頼んだのですから当たり前ですよ」

 

 

 帰り道。

 銀時はリューを“豊穣の女主人”まで送り届けていた。とは言え本人達にその自覚はないのだが。

 

 

「サカタさん」

 

「ん?」

 

「冗談でもこれが“最後”なんて言わないでください」

 

 

 リューはカフェに入る前の銀時の言葉に言及した。その目と声は心の底から言っていると分かるほど真っ直ぐ銀時の心に響いた。

 

 

「なぁに?リューさんもしかして俺のこと心配してくれてんの?やだなぁ銀さん照れちゃう!」

 

「心配ですよ。心配に決まってるじゃないですか!!」

 

 

 それでもおちゃらけた言葉を返す銀時にリューは今度こそ憤慨した。それは銀時が今まで見たことがない表情だった。

 

 

貴方(あなた)はいつもそうやって皆を安心させようと自ら“道化”を演じるから・・・心配になるんですよ!イヴィルス掃討(あ の と き)も貴方は私を、()()()をそうやって安心させて一人で勝手に突入したじゃないですか!!」

 

 

 十五年前からオラリオに訪れていた暗黒期。オラリオに闇派閥(イヴィルス)が蔓延っていた時代。多数のファミリアがその闇派閥(イヴィルス)の対処に当たっていた。

 リューはその時の銀時の行為を言っているのだ。

 

 

「貴方は私達を護ろうとしてボロボロになるまで一人で戦って・・・」

 

 

 リューが在籍していた【アストレア・ファミリア】はリューと主神を残し壊滅した。リューはそれから私怨による報復で闇派閥(イヴィルス)の残党を殺害して回った。

 ギルドがその事実を隠蔽してた為、銀時にその情報が回ってきた時はすべてが終わっていて、リューが要注意人物(ブラックリスト)に載った後であった。

 

 銀時がその時、衝動的に自身の顔を思いっきり殴ったことは極少数しか知らない。だが相談してくれなかった事を寂しく、哀しく、そして悔しく思ったことは銀時以外知り得ていない。

 

 

「私はあの時から、貴方がボロボロの姿を見るのが嫌になったんだ。あの日、私怨に駆られた日も貴方にだけは知られない様にギルドを脅して・・・貴方は私がしている事を知れば止めに来る事は分かっていたから!そして貴方が私の代わりに犠牲になることも想像出来てしまったから!私は────」

 

「わぁったよ。約束してやる」

 

「え・・・」

 

 

 銀時はリューの頭に優しく手を置き、撫でた。そして優しくも強い言葉でリューに宣言した。

 

 

「絶対ェ生きて帰ってきて、お前んとこの店で最高の酒を呑むって約束だ。あいつらの命をしょってんだから、この約束も、お前の想いも、丸々全部しょってやらァ。だからリュー、泣くんじゃねぇ」

 

 

 銀時はリューからこぼれ落ちる雫を指で拭う。それは生クリームを取った時より優しくあった。

 

 

 

「・・・ではお待ちしてます。“豊穣の女主人”でサカタさんの帰りを。心から」

 

 

 

その時。

 

たった一人に向けられた笑顔は。

 

天然ジゴロの腐れ天パ侍でさえも思わず顔を背けてしまうほど。

 

美しく。

 

可憐で。

 

愛おしい。

 

万人を自然に破顔させる最高の笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




書いた私が言うのも何ですが・・・



この二人に“ジャスタウェイ”投げつけてもいいかな?いいよね?



皆さんも感想欄にて“ジャスタウェイ”を投げ付けてくれたら嬉しいです。

さて、リューがどうして銀時に対してこんな感情を抱いていたのかを明らかにした一話でした。


私達の代わりに傷つく貴方を見たくない。なぜなら私は・・・


これが結論です。リューも自身の気持ちに気付きました。これからどうなっていくかはお楽しみに。


ではまた次回にお会いしましょう。次回は早く更新できるよう頑張ります!!

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