ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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オイ皆さんジャスタウェイ投げる方向間違えてますよ?


作者にに投げんじゃねぇ!!


次投げた奴、パトリオットミサイルの刑な。


では第二章どうぞ!


※今回は第二章のプロローグ的な回なので少し短いです。





第二章 その刀、木刀につき
いざ行かん!遠征へ!!


 

 

「うしっ行くか」

 

 

 遠征当日。

 いつも通りの天パ。いつも通りの服装。いつも通りの木刀。だが一つだけいつもとは少し違う点が。それはいつも以上に真っ直ぐな瞳をしている事だ・・・死んだ魚の様な目をしている事には変わりないのだが。

 銀時は部屋から出ると、近くにある団長のフィンの私室に入った。勿論、ノックなどしていない。

 

 

「フィン、邪魔するぞ・・・悪ィマジで邪魔だったっぽいな」

 

「大丈夫。今終わったからね」

 

 

 フィンは『フィアナ』という小人族で信仰されている架空の女神に祈りを捧げていた。だが銀時が入ってくる頃には終わっていたらしい。

 銀時に続いて、リヴェリア、ガレスとフィンの私室に入室する。

 

 

「さて、と最終確認をしようか。ガレス」

 

「物資を含め、不備はない。問題なしじゃ」

 

「ありがとう。リヴェリア、皆の様子は?」

 

「鍛錬漬けで体の調子だけが懸念材料だったが問題ない。皆きっちり仕上げてきている。・・・あぁただ昨日に甘い物を取り過ぎて胸焼けし、寝込んだ大馬鹿者がいた様だがどうやら大丈夫そうだ。なぁ銀時?」

 

「誰だよそんなアホは。まぁ取り敢えず、今日の休息の場でのツマミは柿ピーでお願いします。甘い物は遠征から帰って来た後でいいや」

 

「遠回しに認めているんだけど、敢えてツッコまないでおいてあげるね。とにかく皆、万全の様で何よりだ」

 

 

 互いに情報を交換し合い、着実に士気を高めていく。貫禄、というのに相応しい顔付きだ・・・ひとりを除いて。

 

 

「とうとうここまで来た。男神(ゼウス)女神(ヘラ)が残した未到達階層への挑戦。これを超えれば改めて僕等の名は世界に轟く」

 

 

 そう語るフィンの目には揺るぎない意志が見て取れた。その姿を見つめるリヴェリアは口を開く。

 

 

「もう十分ではないか?お前のことを知らない者はもういないさ」

 

小人族(パルゥム)には《勇気》という名の光が必要だからね。僕が世界に知られていても他の同族の名声や活躍は聞こえてこない。だから僕は進むよ。何が待ち受けていようとね」

 

 

 覚悟を語る小さな冒険者に周りの皆は呆れ顔を浮かべる。銀時は鼻に小指を突っ込みながら言う。

 

 

「肩の力抜けっつうの。ザウスだっけ?フェ(ピー)だっけ?んなもん関係ねぇよ。せっかくの()()の冒険なんだ、楽しまねぇと」

 

「ハハッそうだね。あと銀時、次に僕の部屋で鼻くそ飛ばしたら指斬り落とすから」

 

「ういうい、気ィつけま~す」

 

 

 全く反省してない銀時にフィンは溜め息をつく。だがいつもの事なので直ぐに切り替えた。

 四人はふっと笑みを交わし合う。

 

 

「一発、景気づけに何かやるか。銀の字、主の祖国の景気づけを教えてくれんか」

 

「お、それはいいね。何かあるかい?」

 

「頼むからマトモな事にしてくれよ」

 

 

 ガレスが提案し、フィンとリヴェリアがそれにノる。銀時は少し思案して口を開いた。

 

 

偉大なるダンジョン(グ ラ ン ド ラ イ ン)に行く為に、一つの樽の上に全員が片足乗せて目標を言い誓い合う“進水式”────」

 

「進むのはダンジョンであって海じゃないから無理だよ。それに樽なんて僕の部屋には無いし」

 

「ん~じゃあ“魂”のこもった“刀”を自分の胸に突き刺して名前を────」

 

「儂ゃまだ死にたくないので却下じゃ」

 

「これはどうだ?一つの“錠”と人数分の“鍵”を用意してこう誓いやぁいい────“愛を永遠に(ザクシャインラブ)”と」

 

「なぜ景気づけに貴様と永遠の愛を誓わねばならんのだ!!そういうのはちゃんとした場でゴニョゴニョ・・・

 

 

 尻すぼみに小さくなっていくリヴェリアの声は誰にも届く事は無かった。

 そんな時、フィンの部屋の扉がまた開いた。

 

 

「何や何や!楽しいそうなことやってるやん?ウチも入れてぇや!」

 

 

 四人の中に主神であるロキも加入した。そして銀時は最後の一つの案を出した。

 

 

「“心中立て”でいいだろ」

 

「「「心中立て?」」」

 

 

 “心中立て”とは約束の厳守を主とした男女の誓いである。だが銀時は詳しいことは知らず、ただ約束を厳守するという約束だけに重きを置いていた。

 大体は遊女が客に買われる際、または永遠の愛を誓う際に行われるものだ。かなり昔は遊女の小指を切り落として相手の男性に渡すという物であったが、今は髪の毛を指に結びつけるというのが主流である(※この世界では)

 

 

「おい銀時。私は何週間とある遠征の間、皆の髪の毛を指に巻き付けるのは反対だ。流石に抵抗がある」

 

「まぁ陰険エルフは仕方ないじゃろう。おい杖を振り上げるな!」

 

「じゃあこうしたらええやん!ウチの髪なら朽ちることもないしええやろ?その代わり、ウチに皆の髪の毛を一本ずつ頂戴!つまり主神(ウチ)に“誓う”ってことやな」

 

 

 それなら、とリヴェリアはギリギリ妥協した。フィンやガレスは髪の毛を、銀時は鼻毛を・・・としたところでリヴェリアに殴られ髪の毛を抜き、それぞれが丁寧にロキの指に結び付けた。

 ロキは四本抜き、四人に渡した。各々が小指に主神の髪の毛を結んだ。

 

 

「ウチに誓いを立てェ!フィンは団長として遠征組を指揮して皆の安全を護ること!リヴェリアは魔法で敵をぶっ飛ばして皆を護ること!ガレスは団の“盾”として若い子供たちをちゃんと護ること!銀時は団を誇るゴキブリ並の生命力を駆使して皆を護ること!えぇな!?」

 

「ロキさんロキさん、俺だけ酷過ぎやしやせんか?」

 

 

「ええな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中央広場(セントラルパーク)

 

 

「サカタさん」

 

「ん?アスフィじゃねぇか」

 

 

 中央広場(セントラルパーク)には、遠征をあと数十分先に控えた【ロキ・ファミリア】に叱咤激励を送ろうと何十人ものの冒険者や神がやって来ていた。

 アスフィ・アンドロメダもその一人である。他の面々とは目的は違えど銀時に渡す物があった為、やって来たのだった。

 

 

「できましたよ、注文の品」

 

「おっマジか。助かる」

 

 

 銀時はアスフィにある物をヘルメス経由で頼んでいた。遠征に持って行くからそれまでに、と。

 

 

「この物の発動は“音声認識”です。その文字を感知した瞬間から五秒のカウントが始まりますので、お気を付けて。御武運をお祈りしています」

 

 

 アスフィは銀時に一枚の紙を渡した。その紙の上には丁寧な字で文字が書かれてある。銀時はその紙を懐にしまうとアスフィに感謝を伝え、別れた。

 

 

「銀時」

 

「アイシャ・・・」

 

 

 次に銀時に訪れたのは歓楽街を牛耳るファミリアに所属しているアイシャだった。いつもの格好とは違い、着物は着崩しておらず、ただ上品だった。

 

 

「アンタの事だから心配には及ばないだろうけど、一応ね。春姫からの言伝も預かってるし」

 

「ん、何だ?」

 

「『無事に帰って来て今回の遠征の出来事をお聞かせ下さい!』だとよ。私も最上級のお•も•て•な•しを用意して待っとくよ」

 

「嫌な予感しかしねぇが楽しみにしてらァ。春姫にもそう伝えておいてくれ」

 

「わかった。帰ってきた時に()()()をきちんと取れるよぅ、よく働いて来る事だねェ」

 

 

 アイシャは舌なめずりをした後、銀時と別れた。銀時の腕には鳥肌が立っていた。

 

 

「銀時さん!」

 

「シルじゃねぇか。どうした?」

 

 

 次に声を掛けてきたのは“豊穣の女主人”で働くシルだった。抜け出してきたのか制服のままだ。

 

 

「ミアお母さんから餞別としてスルメを貰いました!どうぞ!」

 

「助か・・・る?まぁあんがとさん」

 

「あの銀時さん。本当はリューも誘ったんです。でもリューは頑なに行こうとしなくて」

 

「まぁ昨日の今日だからな。しゃーねぇよ」

 

「それでもですよ!『別れは昨日に済ませました。私はここでサカタさんを待つ義務がある』って言って聞かないから・・・」

 

「気持ちだけで十分。帰って来た時の宴会の準備、宜しくな」

 

「はいっ!承りました!!」

 

 

 営業スマイル全開のシル。それはもう銀時でさえも溜め息をつかざるをえなかった。

 各自が知己との別れを済ませ、フィンの号令を待っていた、その時。

 

 

「ぎーーんーーとーーきぃぃぃぃぃ!!!」

 

「ぶへっ!ろっロキ!?」

 

 

 ダッシュで駆け寄り、銀時の腰に抱き着いたのは主神であるロキだった。

 周りの団員はその様子に目を見開いている。だがフィンやガレス、リヴェリアはその光景を見ても動じなかった。

 

 

「お、おいロキ?ホームで待つんじゃなかったのか?」

 

「無理無理!!そんなん無理ィィ!」

 

「子供か!神の威厳もへったくれもねぇなっ!いい加減に子離れしやがれ!!」

 

「嫌や!!銀時は皆を護るからいッッッつも傷だらけで帰って来るやんか!不安なんよォォォ行かんといてよォォォ寂しいよォォォ!!」

 

「めんどくせっ!ウチの主神めんどくせっ!!」

 

 

 銀時の腰に抱きつくロキは子供のように泣きじゃくった。

 その光景を見たことがない者は激しく動揺し、見たことがある者は溜め息をついた。

 

 

「・・・やはり出たか。ロキの悪癖」

 

「はぁ、士気に関わるからやめて欲しいのが本当なんだけど・・・こればっかりは仕方ないか」

 

「じゃな。好きなだけ甘えさせておけ」

 

 

 リヴェリア、フィン、ガレスはなぜロキがこの様な状態になっているかわかっていた。遠征に参加する団員は三人の会話に自然と耳が傾く。

 

 

「僕達と銀時の初めての遠征もあんな感じだったなぁ・・・まだ小さかった銀時にああやって抱き着いてた」

 

「私達がロキの眷属になった時は既にいい大人だったからな。子供という子供が加わったのは銀時が初めてであったから、注がれた愛が重いのは分かっていたが・・・」

 

「最近は治まってきたと思っておったが・・・我慢の限界でよく分からん母性愛が爆発したんじゃな。まぁ銀の字が上手く治めるじゃろ」

 

 

 冷静に解析する古参の三人であるが、周りの団員はそわそわして落ち着かない。それも無理はないだろう。

 

 

「だァァァァもうっ!ほらロキ、指出せ!」

 

「グズッグズッ・・・指ぃ??」

 

 

 ロキは“心中立て”した手を差し出した。

 銀時はロキの手の小指と自身の指を絡ませた。お互いの髪の毛が綺麗に絡み合う。

 

 

「“心中立て”ってのァもう一つあんだよ」

 

「・・・なんやぁ?」

 

「“指切り”ってのがな。行くぞ」

 

 

 銀時は片方の手をロキの頭に置いた。ゆっくり撫でて言葉を紡ぐ。

 

 

「指切りげんまんっ嘘ついたら針千本の~ますっ指切ったっ!」

 

「・・・ふぇっ?」

 

「俺の故郷の約束事を護らせる魔法の唄だ。ロキに誓った約束は決して破らねェ。周りが死にかけて約束を破りそうになったら俺が全部護ってやらァ。俺ァ腐っても侍だ。一度約束したら絶対に約束は護りきってやんよ。だから安心してホームで待ってな、ロキ」

 

「うん・・・うんうん!待っとく、待っとくな!!」

 

 

 涙を強引に服の袖で拭いたロキは目を腫らして、笑った。

 一同に落ち着いた空気が流れる。緊張で凝り固まっていた空気が弛緩した。いい具合に緩み、フィンは苦笑いした。そして────。

 

 

「────総員、遠征を開始する!」

 

 

 部隊の正面でフィンが声を張り上げた。ロキから作られた空気が再び締まっていく。

 

 

「君達は『古代』の英雄にも劣らない勇敢な戦士であり、冒険者だ!大いなる『未知』に挑戦し、富と名声を持ち帰る!!」

 

 

 フィンはある神物を・・・未だに銀時に撫でられているロキを指差した。

 

 

「犠牲の上に成り立つ栄誉は要らない!!全員、この地上の光と泣き虫な主神に誓ってもらう────必ず生きて帰ると!!」

 

 

 各々が拳を握り締める。頭上に広がる蒼穹にしばしの別れを告げる様に、泣き虫な主神を安心させる様に、フィンは息を吸い込み────号令を放った。

 

 

 

「遠征隊、出発だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





ここから第二章がはじまります。プロローグ的なこの一話、如何でしたか?


ロキをやっと出せた。やっとロキを・・・ロキを・・・感涙。


今回は“ジャスタウェイ”大丈夫でしょう。多分。皆さんで判断してください。


では毎度恒例謝辞。

『@ファイブズ』さん、『花京院セイラ』さん、『GUNO』さん、最高評価ありがとうございます!!

『元金』さん、『ナンナ』さん、『F215SS-I』さん、『ゼオン』さん、『フィーエル』さん、『テレビス』さん、高評価ありがとうございます!!


これから第二章ですがお付き合いください!本当にありがとうございます!!


ではまた次回!!ベル君回にて!

感想評価、よろしくお願いします!!

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