ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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私の想像した三倍はお気に入りや嬉しい感想が来たのでモチベーションが上がりました。

ではどうぞ。


ロキ・ファミリア

《ダンジョン 18階層》

 

 

「ハァハァ・・・よし、着いたな。」

 

 

 ダンジョン18階層。

 それはダンジョンの中でも冒険者が初めて訪れる安全階層(セーフティーポイント)であり、とりわけこの階層は別名『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』とも呼ばれるほどの美しい地形が広がっている。

 

 

「さて・・・と。フィンたちはどこだ?」

 

 

 銀時はダンジョンを疾走し、ここ18階層にまで辿り着いていた。

 周囲を見渡し、ロキ・ファミリアの遠征組が居ない事を確認すると或る目的地に向かって歩き出した。

 銀時が目指した場所は『リヴィラの街』と呼ばれる冒険者が経営している街である。

 街には武器屋や道具屋以外にも魔石等を換金する買取どころも存在する。同時に物価がかなり高いが。

 

 

「お!旦那じゃないですか!安くしときますよ!」

 

「旦那!いい酒入りましたよ!」

 

「旦那!ポーションどうですかい!」

 

「「「旦那!!」」」

 

「うっせぇ!!ならず者ども!!破産するわ!!」

 

 

 リヴィラの街の冒険者兼商人にとって銀時はイイカモであった。

 酒で酔わせ、ノリと勢いで物品を買わせ、ロキ・ファミリアにツケるのだ。勿論、酔った銀時は何も覚えておらず、団員に絞られることは珍しくない。

 同時にリヴィラの街の人達にとって銀時は気軽に話せる良き友であった。Lv.という冒険者にとっての隔絶とした差の中で、全くと言っていいほど感じさせない銀時の無気力でだらしない性格と金に汚く、図々しい一面を誰一人として嫌う者など居なかった。

 

 

「お?ボールスじゃねえか」

 

「あぁん?なんだ腐れ天パ」

 

 

 銀時が声をかけたのは緊急時に街全体を取り仕切る立場にある【Lv.3】のボールスだった。

 事実上、街の大頭(トップ)のボールスは声をかけてきた銀時に怪訝な表情を見せる。酒癖の悪い銀時はボールスに迷惑を掛けることが多いのだ。

 

 

「ロキ・ファミリアの野営地を知らねェか?」

 

「何か知りたいなら()()()()()()()に従え」

 

「はぁ〜。上層で手に入れた魔石全部だ」

 

「・・・南端の森林だ」

 

「結局、いつもんトコか。あんがとよ」

 

「フンッ」

 

 

 銀時が回りくどいことをしているのには理由がある。

 ロキ・ファミリアの副団長に会わないようにする為である。正確にはその副団長に会わずにこっそり遠征組に合流する為である。

 

 名は《リヴェリア・リヨス・アールヴ》【Lv.6】

 

 彼女は王族(ハイエルフ)であり、迫力はさながら性格面からロキ・ファミリアの母の様な存在である。

 勿論、副団長だけあって名実ともに実力は折り紙付きだ。二つ名は《九魔姫(ナインヘル)》。

 いい加減な性格である銀時も彼女の意見主張には反抗できない。というより恐怖が刻み込まれている。

 

 銀時は野営地にこっそり近づいてた。

 木々に隠れながら野営地に近付き、せっせと働いていた或る青年に声をかけた。

 

 

「ラウルーラウルー」

 

「ん?・・・あ!銀さん!」

 

「バカヤロウ!声が大きい!」

 

「すみませんっす!」

 

 

 ラウル・ノールド【Lv.4】

 性格は真面目だがどこか貧乏籤を引かされてしまうなど、気苦労が絶えない青年だ。団長であるフィンからも中層でのパーティの指揮を任されるほどの信頼を得ている。

 だからといって目立った容姿や業績はなく、ついた二つ名は《超凡男(ハイ・ノービス)》。

 

 ラウルは人目をはばかって、銀時に近づいて行った。

 二人は木陰に隠れ、口を開いた。

 

 

「皆の様子はど、どうだ?」

 

「リヴェリアさん、カンカンっすよ。ただでさえ近寄り難いのにもっとヤバイっスよ」

 

「oh、ジーザス・・・・・・」

 

「ジーザス?と、とにかく、早く合流して謝らないと」

 

 

 神が話す言語を銀時は使うがラウルは判らない。

 状況を見てラウルは合流するのが吉だと思い、立ち上がった。だが、銀時はラウルの袖を引っ張り、もう一度座らせた。

 

 

「何いってんだラウル」

 

「へ?だって合流しないと・・・」

 

「バカヤロウ!合流したら怒られんだろうが!」

 

「自業自得でしょうが!今になって何言ってんスか!」

 

「ハンッ。考えてみろラウル。この状況、どう考えてもお前が俺を庇っているようにしか見えない。最初に俺を見つけた時点でフィンに報告しなかったお前は俺と同罪だぜ?一蓮托生、運命共同体だ」

 

「外道!あんた外道だよ!!最初から巻き込むつもりだったスね!」

 

「ガーハッハッハ!!」

 

 

 銀時の高笑いとラウルの慟哭が森林に響く。

 銀時は暫くしてラウルにある策を提案した。

 

 

「まぁそう言うなラウル。タダとは言わねぇ」

 

「・・・・・・何スか?」

 

「遠征から戻ったら女紹介してやるよ」

 

「まままままマジっスか!」

 

「リヴェリアから雷を落とされるのとお前に女を紹介するのを秤にかけると圧倒的にお前だからなぁ」

 

「若しかしてあんな事やこんな事をし放題ッスか?」

 

「おう。勿論だ」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「「グヘヘヘへへへへ」」

 

 

 合意した二人は互いに手を握りあった。加えて気持ちの悪い笑みを浮かべ、頭の中はピンクに染まりきった。

 妄想に囚われた二人は背後から近づく人物に気付かなかった。

 

 

「何やら楽しそうな話をしているな?私も混ぜてはくれないか?」

 

「駄目だ駄目だ。これは男と男の話なんだよ。女が入り込む隙なんざねぇよ。そして男と男の約束は時に命よりも重い」

 

「そうッスよそうッスよ!俺たちは────あ」

 

「大体なぁ女は男の秘密を知りたがり過ぎなんだよ。お前達にも秘密がたくさんあるだろうに。というか秘密しかねぇだろうが。化粧の下とか、服の下の秘境とか」

 

「銀さん銀さん」

 

「なんだよラウル。俺は今熱くなってんの。不平不満が爆発してんの」

 

「後ろ後ろ。後ろっス」

 

「だからなんだよ。これだから女は・・・・・・・・・リヴェリアさん?」

 

「これだから女は・・・続く言葉は何かな?銀時」

 

 

 二人の背後にいたのは件のリヴェリアだった。

 リヴェリアは頭に青筋を浮かべ、満面の笑みを二人に向けている。しかし、目は全く笑っていなかった。

 銀時とラウルの顔が真っ青になり、体がガタガタ震え始める。

 

 

「えぇっと・・・・・・これだから女は秘密を着飾って美しくなると言いますか、なんといいますか・・・」

 

「ふむ。銀時、言い残したことはあるか?」

 

「ま、待ってくれ!ラウルも同罪だろ!」

 

「あんたホント最低ッスね!!男の約束はどこにいったんスか!!」

 

「バカヤロウ!!そんなの()()の前じゃ無価値なんだよ!男の約束より自分の命だ!ポーションより糖分だ!!」

 

「誰がママだ」

 

「ぶへらッ!!」

 

 

 リヴェリアの杖術による横殴りを頬にもらい、銀時は数メートル吹き飛んだ。

 ラウルは開いた口が塞がらず、ただピクリと動かない銀時を眺めていた。

 

 

「ラウル」

 

「ひゃい!」

 

「銀時をフィンの元まで連れていけ」

 

「りょ、了解ッス!」

 

 

 

 

✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕

 

 

 

「こ、ここは・・・・・・」

 

「目が覚めたかい?銀時」

 

 

 目覚めると天幕の中だった。銀時はゆっくりと体を起こして声が聞こえてきた方向へ体を向けた。

 そこには幼い姿をしながらも、声には威厳と風格を感じられ、物腰や佇まいはリヴェリアに勝るとも劣らない。

 

 団長 《フィン・ディムナ》【Lv.6】

 

 指揮官として優秀でありながら戦闘能力も非常に高い。

 付け加えるのならファミリアの最初の入団者でもあり、オラリオの女性冒険者の中でも一位二位を争う人気者だ。二つ名は《勇者(ブレイバー)》。

 

 

「お灸を据えようと思っていたけれど・・・その様子だとリヴェリアにキツイのをもらったようだね」

 

「反省してます・・・」

 

「ならいい。宴のお代だけ出してもらう事にするよ」

 

「フィンさまァ〜♡」

 

 

 損失した武器とポーションの代金をチャラにしてくれたフィンに銀時は感謝の眼差しを向ける。

 まぁ本当はフィンの少しばかりの同情があったのだが銀時は知る由もない。

 

 

「それにしても強烈なモノをもらったのぉ銀の字。まぁ愛のムチだと思えばいいじゃろう」

 

「どこに愛があるんだよ。ムチよりも飴をくれ。飴を。俺ァ甘党なんだよ」

 

 

 銀時に声をかけたのは巨漢のドワーフだった。

 

 《ガレス・ランドロック》【Lv.6】

 

 豪胆な性格に加え、オラリオにおいて一位二位を争う力と耐久の持ち主である。ロキ・ファミリアの最古参の一人である。二つ名は《重傑(エルガルム)》。

 ちなみに、昨夜銀時と飲んでいたのもこのドワーフだ。

 

 

「そういえば銀時。アイズに会ったかい?」

 

「いや、会ってねぇが・・・どうかしたのか?」

 

「アイズも少しムスッとしていたからね。リヴェリアほどじゃないけど」

 

「・・・・・・・・・・・・マジで?」

 

「マジだよ」

 

「マジじゃ」

 

「はぁ・・・ちょっくら行ってくるわ」

 

 

 銀時は手を振りながら天幕を出た。

 残ったフィンとガレスはお互いに顔を合わせ苦笑した。普段は怠惰そのモノだが人一倍責任感が強いのが銀時という男だった。

 

 

 

 

✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕ ✕

 

 

 

「アイズ」

 

「銀ちゃん・・・・・・」

 

 

 銀時の声に振り返った少女は蒼色の軽装に身を包み、肌はきめ細かいと同時に瑞々しい。繊細な顔立ちは遠目から見てもわかるほど整っている。透いた輝きを宿す瞳は髪の色と同じ金色だ。

 

 《アイズ・ヴァレンシュタイン》【Lv.5】

 

 オラリオ最強の女剣士と名高い彼女は休憩中の今でも素振りを一人で行っていた。小さな努力から積み重ねていき、一級冒険者となった彼女の二つ名は《剣姫》。

 

 

「今は休憩中だろ?体、休めとけって」

 

「・・・・・・いつきたの?」

 

「あー少し前だ。悪いな心配かけて。誰も起こしに来てくれないから寝過ぎちまったよ」

 

「起こしに行ったのに起きなかった」

 

「あん?何だって?」

 

「別に。銀ちゃん、少し付き合って」

 

 

 アイズは腰を落とした。

 瞬間、アイズは疾風となって銀時に殺到する。

 

 

「やっぱりこうなるか・・・」

 

 

 銀時は“洞爺湖”と彫られた木刀を抜刀し、アイズと相対した。

 アイズが放つ一閃を銀時はこともなげに弾いた。アイズは止まる事を知らず、地面ギリギリを滑空する様に突き進む。

 袈裟斬り、逆袈裟、刺突。閃光といっても過言でない剣閃の嵐が銀時を襲う。

 銀時は木刀を剣閃に合わせる様に振るう。アイズの斬撃全てを最低限の力でいなす。

 アイズは斬り上げ、横薙ぎの様に側面や下方からの剣閃を織り交ぜる。自分の持ちうる戦技を駆使し銀時に殺到する。

 だが其れらを銀時は()()()()()()、全て弾き、斬り払った。

 

────────其処には。

 

 自分の技が研鑽されていくこと、自身の器が今昇華している事に確信を覚え、笑みを浮かべる《剣姫》と。

 

 羽虫を払うが如く繰り出される技を相殺し、全てを無に返す《夜叉》の姿があった。

 

 

(しめ)ェだ」

 

「────ッ」

 

 

 銀時の渾身の斬り上げにアイズは愛刀“デスペレート”を弾き飛ばされた。“デスペレート”は宙で二、三度回転し近くの地面に突き刺さった。

 アイズは衝撃に震える手を抑えながら銀時に問いかけた。

 

 

「どうしたらそんなに強くなれるの?」

 

「俺ァ強くなろうとしたんじゃねぇ。護りてぇもんを護る為に強く在ろうとした。ただ・・・そんだけだ」

 

 

 銀時は木刀を腰に携え、歩き始めた。

 アイズは慌てて突き刺さった愛刀を取りに行き、銀時の横に並ぶ様に走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《坂田 銀時》 【Lv.6】

 

 二つ名《白夜叉》

 

 

【 力 】:S 902

【耐久】:C 648

【器用】:B 762

【敏捷】:A 866

【魔力】:I 0

【狩人】:C

【拳打】:B

【魔防】:C

【剣士】:A

【寸断】:A

 

 

 《魔法》

 

 

 

 《スキル》

 

最後の侍(ラストサムライ)

 

 ・【魔力】を0にし発動。

 ・持ちうる全ての武器に【不壊属性(デュランダル)】等を付与。

 ・【魔力】以外のアビリティを高補正。

 

武士道(マモルベキモノ)

 

 ・護るべきモノが存在する限り発動。

 ・状況に応じてアビリティ補正。最大ニ段階の引き上げ。

 

【夜叉】

 

 ・瀕死時発動。

 ・────────────。

 

 

 

 




お読みいただきありがとうございます。お気に入り登録や感想とても嬉しいです。

補足。
フィンたちは銀さんが18階層に来ていた事を知っていました。理由はツンデレ狼の嗅覚です。



疑問なんですが・・・皆さん、実写化どう思います?

感想、評価お待ちしてます。ではまた次回。

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