ダンジョンに天パ侍がいるのは間違っているのだろうか   作:TouA(とーあ)

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高評価、お気に入り有難うございます。

いつのまにかお気に入りが300を超え、感想がたくさん届き、嬉しい限りです。

遅れましたがどうぞ。


冒険者依頼

《50階層》

 

 

 「暇だなァ〜」

 

 「そうか」

 

 

 銀時はリヴェリアと共に50階層に待機していた。50階層は18階層と同じく安全階層(セーフィーポイント)である。

 他の主要メンバーは冒険者依頼(クエスト)により51階層の『カドモスの泉』に向かっていた。

 

 冒険者依頼(クエスト)

 読んで字の如く、冒険者に対しての依頼、その総称のことを指す。

 特殊な材料を必要としている生産系の【ファミリア】やオラリオの商人、迷宮都市を運営しているギルドなどダンジョンでしか取れない素材を求める人々が依頼主であり、その依頼を受注した冒険者は依頼を達成しその見返りとして報酬を得るのだ。

 そして今回のクエストは、銀時たち【ロキ・ファミリア】が懇意にしている医療系のファミリアである【ディアンケヒト・ファミリア】からのものだ。内容は51階層に存在する『カドモスの泉』から要求されたかなりの量の泉水を採取してくるというものである。

 

 ダンジョンでも珍しい51階層は迷路のような形をとっており、小回りが利く少数精鋭が望ましい。よって同時に二か所の『カドモスの泉』から泉水を取るために二つのパーティーが組まれた。・・・なのだが。

 

 

 「一班のメンバーどうにかならなかったのあれ」

 

 「私に言うな。正直不安だがティオネが引っ張ってくれるはずだ。私達はここで彼らの帰りを待とう」

 

 「はいよ」

 

 

 各班の割り振りはこうなっている。

 

 一班にはティオナ、ティオネ、アイズ、レフィーヤ。

 二班にはフィン、ガレス、ベート、ラウル。

 

 一班のレフィーヤと二班のラウルを除けば第一級冒険者だ。

 オラリオ最高位の魔導士であるリヴェリアは50階層(ここまで)来るのに長文詠唱の魔法を使い精神力を大幅に消費したので回復させるために留守を任された。

 何故か分からないが銀時も残された。

 

 

 「暇だなぁ」

 

 「ならば誰かと代わってもらえば良かったではないか。一班に混ざれば刺激的な時間を送れたはずだろう?」

 

 「刺激的とかいうレベルじゃすまねェよ。命幾つあっても足りねェわ」

 

「問題ないだろう。既に死んだ魚の様な目をしているではないか」

 

「誰が死んだ魚の目だ!」

 

 

 銀時とリヴェリアが口喧嘩をしている光景は【ロキ・ファミリア】にとって珍しくはない。付け加えるならば銀時がリヴェリアに叱られている姿を見るのも珍しくはない。

 

 

 「なんだあれ!!」

 

 

 二人は団員の声で我に返った。

 団員が指さす方向を見てみると傾斜面の岩璧・・・つまり50階層と51階層の大穴から()()がよじ登って来ていた。

 

 

 「芋虫?見たことあるか?銀時」

 

 「ねぇよ。新種だろうな・・・てか多ッ!!」

 

 

 よじ登って来ていたのは全身の色を黄緑色に包み、膨れ上がった緑の表皮にはところどころ濃密な極彩色が刻まれていた。見るからに毒々しい。無数の短い多脚からなる下半身は芋虫の形状に似ていた。

 芋虫型の新種は視認するだけで十はいた。徐々にキャンプのある一枚岩に近づいてくる。

 

 

 「総員戦闘体制!キャンプを守れ!弓を扱える者は前線に!盾も忘れるな!」

 

 「「「はい!」」」

 

 「銀時は矢から零れた新種を斬れ!持ち場から離れる事は許さん!」

 

 「了解。さァてやりますかね」

 

 

 新種のモンスター達は多脚を使い、一枚岩に張り付いてよじ登って来た。

 前線に居る団員はモンスターを限界まで引き付け、矢を放つ。大したダメージはないが体勢が崩れ、何匹か巻き込み下へと落ちていく。

 

 

 「うわっ!!」

 

 「どうした!・・・・・・・・・おいおいマジかよ」

 

 

 悲鳴を上げた団員の元へ銀時が向かうと、団員の装備していた盾が溶けていた。銀時はそれをみて目を見開いた。

 

 

 「リヴェリア!奴らは腐食液を使う!下に落ちたモンスターを見てみれば矢も溶けてやがる!」

 

 「武器破壊か!面倒な・・・・・・」

 

 

 リヴェリアの新たな指示により、ギリギリまで引き付けるのではなく安全面を考慮して防衛に徹した。

 だが間違いなくジリ貧であることは誰の目にも明らかだった。

 銀時も矢から零れたモンスターと相対していた。腐食液を避けつつ、モンスターの多脚を斬り、体制が崩れたところを崖から落とすことに専念した。腹などを斬れば体内から腐食液が飛び散る事が分かっていたからだ。

 

 

 「リヴェリアさん!矢が残り少ないです!!」

 

 「構わん!放て!!」

 

 

 モンスターによる腐食液を盾で防いで捨てるの繰り返しも限界を迎える。次の一手を探さなくては全滅することは目に見えていた。

 

 

 「てめぇら!ここにある木を使え!!」

 

 

 団員が振り向くと銀時が()()()()()()()()()()()()()()()()が木の山を作っていた。矢がなくなっても一時しのぎにはなる量はあった。

 

 矢がなくなると団員は銀時が運んできた木をモンスターに向かって投擲し始めた。

 

 

(あれ・・・これ木というより角材?)

 

 

 投擲した団員たちがそう思い始めたのも無理はない。銀時が運んで来たのは森で切ったような木ではなく、大小違いはあるが綺麗に整えられた角材だった。

 どこかで持った事のある感触と重量が団員たちに違和感を覚えさせたが目の前に蔓延るモンスターから注意を削ぐ事は出来ない。

 

 

 「助かったぞ銀時!その木はどこから持ってきたのだ?」

 

 「ん?ちょっと離れたところにまとめて置いてあったから丁度いいやと思ってよ」

 

 

 銀時が指し示した場所をリヴェリアは目で追った。そこはキャンプのすぐ隣だった。

 

 

 「あれはテントを立てる時に必要な角材だ馬鹿者ッ!!!」

 

(何やってんだアンタァァァァ!!)

 

 

 団員の意見が一致した瞬間であった。

 銀時はそうなの?という疑問を顔全体に浮かべている。新たにモンスターを突き落とすと指揮を取るリヴェリアに向かって大声で声をかけた。

 

 

 「まァまァそう言うなよ。物を惜しんで死んだら意味ねェだろ?」

 

 「ママじゃないリヴェリアだ!」

 

 「ンなこと言ってねぇよ!耳クソ詰まってんの!?」

 

 

 戦場でもいつもと変わらない二人の声を聞いて団員たちは気が引き締まる。駄目なふたりを見ると自分がしっかりしなくては、と思うのだ。

 

 

────疾風。

 

 

 芋虫型のモンスターの大群を横殴りする様に一つの銀閃が走る。

 団員からどよめきの声が広がるが、直ぐに収まった。そして爆発的に士気が上がる。

 

 

 「ようやくか・・・最後だ!気を抜かず持ち堪えろ!!」

 

 

 銀閃を走らせるアイズは次々とモンスターを屠り、灰へと変えていく。遅れて、ベートやティオナやティオネが駆け付け、遠方からはレフィーヤの魔法が飛来する。

 

 

 そして────轟き、折り重なる詠唱。

 

 

 「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に(うず)を巻け】」

 

 

 戦場を一望出来る岩場に、エルフの団員を中心とした魔道士達が一斉砲撃の準備をする。

 

 

 「【閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪(ふぶ)け、三度の厳冬────我が名はアールヴ】!」

 

 

 先頭に立つリヴェリアの詠唱完成を皮切りに、魔道士たちが続々と魔法の行使過程を終える。複数の魔法円 (マジックサークル)が展開される中、魔力の連なりが『今すぐ退避しろ』とばかりに下で戦うアイズたちへ警鐘を鳴らした。

 蜘蛛の子を散らす様に、第一級冒険者たちがモンスターとの戦闘を切り上げて離脱する。

 

 

 「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」

 

 

 氷、炎、雷。多種の攻撃魔法が雨あられとなって大地へ着弾する。

 体液を撒き散らし、モンスターたちが粉々に砕け散り、あるいは燃えて感電していく。無数の爆発が連鎖し、魔法の残滓が周囲を舞った。

 

 

 「あらかた片付いたか・・・」

 

 「お疲れさん」

 

 

 全魔力を注ぎ足元がふらつくリヴェリアに銀時は()()()()()。断じて柔らかい感触を楽しむ為ではない。

 勝利と脅威が立ち去ったことにより空気が弛緩し、全員の空気が和らぎ始めた。

 

 

 「────!?」

 

 

 突如、50階層に音が轟いた。

 木をいっぺんにへし折る、遠方から轟く破砕音が。

【ロキ・ファミリア】の誰もがその方角を振り向き、武器を再装備し臨戦態勢に纏い直した。

 

 どれほど待ったか。

 

 大した時間はもしかするとかかっていないのかもしれない。だが長く感じた。

 油断なく音源の方角を見つめていた銀時たちの視界にそれは現れた。

 

 

 「あれも下から来たってか?」

 

 「51階層は迷路の筈だが・・・・・・」

 

 「ぶっ壊してきたんだろうよ。よっぽど俺達に会いたかったらしい」

 

 「冗談にしては笑えないな・・・」

 

 

 およそ6(メドル)あるその巨体に全員が驚愕に顔を引きつらせた。いや、大きさだけではない。その姿形も異形だったのだ。

 先ほどのモンスターと同じく芋虫を連想させる下半身は変わらない。ただ、小山のように盛り上がっていた上半身は滑らかな線を描き、人の上体を示していたのだ。

 扇に似た厚みのない扁平上の腕には二対四枚で、後頭部からは何本も垂れ下がる管の様な器官がある。

 濃厚な色彩が及ぶ顔面部分には鼻も目も口もないが、線の細さから女性のものを連想させた。が、大きく盛り上がった腹部が女性的な要素を全て台無しにしていた。

 

 

 「あの腹、何溜めてんの?幸せ?」

 

 「私達を天へと還す絶望だろうな」

 

 

 あの腹の途轍もない量の腐食液がまき散ればどれだけの被害を周囲に及ぼすが想像に難くない。

 下で戦っていたフィンの決断は早かった。それは遠征組の団員の命を守る責任があるからだった。

 

 

 「総員、撤退。速やかにキャンプを破棄し、最小限の荷物を持ってこの場から離脱する」

 

 「おい、フィン!逃げんのかよ!」

 

 「あのモンスターをほっとくの!?」

 

 

 フィンの意見にベートやティオナが噛み付く。第一級冒険者としての矜恃が、何より【ロキ・ファミリア】としての責任と誇りが、眼前のモンスターを野放しにすることを許さなかった。

 

 

 「僕も大いに不本意だ。でも()()()()()()()()()()()()、かつ被害を最小限に抑えるにはこれしかない。月並みの言葉で悪いけどね」

 

 

 フィンは表情を消して、金髪金眼の少女に向き直った。

 

 

 「アイズ、君が討て。十分に距離をとったら信号を出す。それまで時間を稼いでくれ」

 

 「わかった」

 

 

 アイズは女体型のモンスターに向き直った。

 フィンに制止の声がかかるが一喝し鎮める。ラウルにリヴェリアに撤退の合図を出させ、離脱する。

 

 

 「団長!援護だけでも・・・」

 

 

 アイズを尊敬するレフィーヤだからこそ最後の最後まで取り縋った。その姿を見て第一級冒険者の殆どは悲痛の表情を浮かべた。

 

 

 「大丈夫だ」

 

 「え?」

 

 

 その声に反応したのはフィンなのだが、その顔には笑みが浮かんでおり、レフィーヤは少し驚いた。反対され、怒られると思っていたからだ。

 

 

 「()()()が向かっているよ、絶対ね」

 

 「あの男って・・・」

 

 「オラリオ1馬鹿な侍だよ。今頃、アイズを護るために刀を抜いているはずさ。だから安心しなよ」

 

 「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「右のほっぺどうしたの?赤くなってるよ?」

 

 

 「これか?ママの胸にHIT&AWAYしたら紅葉(もみじ)の判子を押されたんだよ。いちち、手加減しろよなホント」

 

 

 「む・・・・・・」

 

 

 「と、とにかくやるか」

 

 

 「うん」

 

 

 「これから見せますは《剣姫》の《白夜叉》の(つるぎ)の舞。そのデカイ図体で味わいな化け物」

 

 

 

 

 

 

 

 




三話終わりました。いかがでしたか?
リヴェリアは銀時のせいで少し性格が変わってます。ハッハッハッ!


先週のWJで()()()が帰って来てうぉぉぉ!となり、今週のWJでやっぱりあの人も空知の子供だったんだなぁと思いました。アニメはどこまで行くんでしょうね。


実写化について《鬼兵隊》のビジュアルがでましたね。
意外としっくりきたのは私だけでしょうか?
菜々緒さんのまた子は半端じゃなかった!
堂本さんの高杉も普通にカッコ良かったし。
長澤まさみさんのお妙は可愛いけど胸あるのでなしの方向で。もう一度いう。可愛いけど。


あともう一つ。
感想欄などにハーレムでいいんじゃないの?とかなりの意見を頂きました。
実際、プロット上どっちにでも出来るので問題ありませんが。・・・すこし考えますね。


次回は原作主人公との出会いと打ち上げ。

感想と評価をお待ちしてます。ではまた次回に。

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