城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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第32話【学園祭 2日目】

「いらっしゃいませ」ニコッ

 

「今日も翔は絶好調だなー!」

「お客さんもすごい列だね」

「ほとんどが翔目的だそうだよ」

「「…」」

 

静流の言葉に苦笑いしかできない葵と菜々緒であった。

 

 

「翔ーお疲れ!今日はもうあがって良いよー!」

「んー?おー菜々!もうそんな時間かー!んじゃまた見て回ってこよっかな!」

 

 

ーーとは言ったものの一人でまわるのもあれだな…

 

葵も静流も菜々もみんな俺と交代でシフト入ったしな…

 

昨日で一通り見てもまわったし…

 

「…ん?あれはーー」

 

 

「…ふぅ」

「や、お疲れのようですね、生徒会長?」

「ひゃあ!?しょ、翔さん!?」

 

おっと驚かせてしまったか。

 

「悪い卯月、驚かせて」

「い、いえ!大丈夫ですよ!翔さんも休憩ですか?」

「ああ、今日の分はもう終わったからふらふらーと…ん?ってことは卯月もか?」

「はい!奏さんに少し休むよう言われまして」

「あー奏か…」

 

昨日の夜の事を思い出す…怖かったな、奏ちゃん。

 

思い出しただけで意識が飛びそうだ…。

 

「ならさ、これからちょっと付き合ってくんない?一人で暇しててさ」

「え?あ、はい!いいですよ!」

 

 

「すいません、クラスのお手伝いなにもできなくて…」

「気にするなよ、卯月には生徒会の仕事があるんだし!それぞれに役割がある、出来ることをするばいいんだよ!」

「…ふふ」

「なんだ?いま俺けっこう良いこと言ったつもりだったんだけど?」

「いえ、すいません。ただ、やっぱり翔さんは翔さんだなって!」

「?なんだそれ?」

「気にしないでください!こちらの話です!」

 

2人で校内を歩く。

 

「あ、そうだ!卯月、良い店紹介するよ!」

 

そう言って卯月を連れてきたのは、

 

「や、花ちゃん!今日も来ちゃった」

「あ、翔さん!いらっしゃいませ!」

 

もちろん花ちゃん達のクレープ屋だ。

 

「この子の作るクレープがすっごく美味しくてさー卯月にも食べてほしくてさ!」

「そうなんですか?それは楽しみです!」

「そ、そんな大したものじゃないですよ!」

 

そう言いながら俺達2人分のクレープを焼き始める花ちゃん。

 

どうやら修は休憩中のようだ。

 

ちぇ、今日もからかい倒してやろうと思ったのに。

 

「はい、どうぞ!出来ましたよ!」

 

そんな事を考えているとクレープが完成した。

 

お金を払い花ちゃんにお礼を言って店をあとにする。

 

「ほい!卯月!俺の奢りだ!」

「え?そんな、悪いです!払いますよ!」

「いいよ別に、いま付き合ってもらってるお礼!受け取ってくれ」

「…わかりました。ありがとうございます!」

 

どこかまだ納得のいかない様子だが受け取ってくれる卯月。

 

「あ、美味しい!」

「だろ?この絶妙な焼き加減がなんとも言えないだろーー」

「ふふ」

 

花ちゃんのクレープの良さを語っていたら笑われた。

 

俺なんか今日笑われてばっかじゃね?

 

「翔さん凄く楽しそうですね!」

「そうか?まあ、学祭とか初めてだし少し舞い上がってはいたかも…変だったか?」

「いいえ!むしろ楽しんでもらえてよかったです!葵さんも言ってましたよ?こんな楽しそうな翔さんは久しぶりだって…」

「葵が…?また余計な心配をかけさせたかな…」

「でも葵さん凄く喜んでましたよ!私も楽しんでもらえたなら生徒会長として嬉しいですし!」

「そっか、ありがとな卯月!」

「はいです!」

 

それからしばらく校内を散策した後、全体を見たいと言う俺の願いのもと、屋上へと来た。

 

「にしても、ほんとすごい賑わいだなー!」

「そうですね!今年は特に賑わってるかもです!」

「はい!今年は翔さん達、王家のご兄弟が最も在校する年ですからね!」

「なるほどね、それで一目見ようと集まるわけだ…」

「…そういうことになりますね」

 

二人で苦笑いを浮かべる。

 

「なあ卯月。会場の人達さ…あの人達、卯月の目にはどう見える?」

「え?えっと…みなさん楽しそう、です」

「ああ、そうだな。俺もそう思う。俺はこんな笑顔を護っていきたいんだよ」

「え?」

「…人を笑顔にする人と、その笑顔を護る人がいると俺は思うんだ。今回ならするのが生徒達で、護るのが生徒会の仕事だと俺は思う。ならそれを国に例えたとして、国を豊かにして国民を笑顔にするのが国王の仕事だ。なら護るは誰だと思う?」

「うーん…護るのも国王、でしょうか?」

「正解。国王にはその両方の責任がある。だけど俺は兄弟達にそんな重い責任を背負わせたくはない、だから俺が護ればいい、そう思うんだよ」

「…でしたら翔さんが王になればいいじゃ…?」

「まあ、確かにそう言われたらお仕舞いだけどね。…俺はそんな大した人間じゃないんよ…」

「…?」

「あー話し込んじゃったな…適当に忘れてくれ!ってことで、そろそろ戻るかー」

 

そう言って話を切り上げ卯月を急かすように立ち上がる。

 

と、その時目の前で立ち上がった卯月はふらついて転びそうになった。

 

「!?卯月!」

 

俺は咄嗟に卯月の腕をつかみ自分の方へと抱き寄せ、

 

「おい!大丈夫か!?」

 

慌てて安否を確認する。

 

「…は、はい。すいません。急に立ったから少し立ちくらみしちゃって…」

「そ、そうか?無理だけはすんなよ?」

「はい!大丈夫ですよ!」

「…ほんと、よかった」

「はい!心配してくれてありがとうございます!」

 

そう言って笑顔を見せる卯月。

 

「!?」

 

なんだこの気持ち…この感じ、この前のバス停と同じ?

 

「…あの…それで、翔さん…/////」

「え?どうした卯月?顔赤いぞ!やっぱりどこか具合が!?」

「い、いえ!その…もう大丈夫ですので…その…もう、離しても…/////」

 

そう言われ初めて気づく。

 

俺達のいまの格好は端から見れば抱きついているような状態だ。

 

「ーー!?ご、ごめん!/////」

慌てて腕を離し、卯月から離れる。

 

しまった!いくら咄嗟だったとは言え、卯月は女の子だもんな…やってしまった。

 

「…/////」

「…/////」

 

沈黙。

 

これほどまで長くツラいと感じた時間は初めてだ。

 

と、そこへ、

 

「あ!いた!翔発見!翔、お店がすごい混んじゃってさ、あげく翔はどこだとか騒ぎになっちゃって!悪いけどいまから出てくれない!?」

 

菜々が現れた。

 

菜々ナイス!助かった!

 

こいつが来てくれたおかげでこのキツい沈黙から解放された。

 

今日だけはこいつが天使に見えたわ。

 

「そ、そうか、なら仕方ないな!わ、悪い卯月。そう言うことらしいから俺行くわ!/////」

「え、あ、はいです!頑張ってください!/////」

「どうした二人とも?なんか顔赤くない?」

「「/////!?」」

「き、気のせいだろ!そんなことより、ほら早く行くぞ菜々!」

「え?あ、うん!」

 

そう言って俺は菜々を連れて急いで逃げるようにその場をあとにした。

 

ーーーーーーー

 

1人取り残された屋上にて

 

 

「…///// 」

 

まだ顔が熱い…。

 

「卯月!おい!大丈夫か!?」

 

翔さんはいつも私の体調を気づかってくれる。

 

さっきみたく自分のことのように顔を真っ青にして。

 

それは素直に嬉しいけど申し訳なくもある。

 

私は体が弱い。

 

だからこそ気持ちだけでも強くあろうと思っている。

 

翔さんの腕の中で思った…

 

翔さんって、こんなたくましい体つきだったのか、と

 

もちろんここまでの体を作るのに相当な努力や覚悟があったんだろう…。

 

翔さんはいつも真っ直ぐに前を見つめていて、目的のために努力する。

 

だからこそ、そんな心も体も強い翔さんは私の憧れあり、友達として誇らしくもあった。

 

 

それなのに…なんで、

 

「…俺はそんな大した人間じゃないよ…」

 

あの時の翔さんはどこか悲しげで遠い目をしていたんだろうーー

 




次回は明日です!
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