城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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翔と葵の誕生日です!


第35話【誕生日】

冬休みに入り、クリスマスイブ。

 

俺と葵の誕生日でもある日のこと。

 

 

「…ふぅ」

 

毎朝の日課のランニングから帰宅し、シャワーを済ませ自室に戻る。

 

「あ、翔君おはよう!」

「ん?ああ、おはよう葵」

 

ちょうど葵も起きたとこらしい。

 

「下はもうすでに大騒ぎだぞ…」

「ふふ、みんな良い子達だからね」

 

例のよって他の兄弟達はサプライズパーティーの準備をしてくれている。

 

クリスマスイブということもあって、クリスマスパーティーの準備とうまく隠せているつもりらしい。

 

「手伝おうとしたらいらんと言われた」

「毎年の事だよ」

 

本当に良い子達だ。

 

その後、葵とリビングに行き、みんなの準備を見守っていると、

 

「あー!どうしよう!!そういえばみんなで交換する用のプレゼントまだ買ってない!」

 

岬が叫んだ。

 

わざとらしいな…

 

「でもこの寒空の下、1人で町まで行くのはちょっとなー…」

 

準備が出来るまで俺と葵を外に連れ出したいんだろうな…

 

「そうなのか?ならちょうど良かった岬。俺と葵もちょうどいまからその買い物に行こうと思ってたんだ。…な、葵?」

「うん!そうだね!岬も一緒に行こっか!」

 

葵も俺の意図を理解し笑顔で答える。

 

「ほんと!?ありがとう2人とも!」

 

にしても、絶望的な演技力だな…。

 

 

そして、外出の用意を済ませ、バス停にて、

 

「もうちょっと厚着してくればよかった…」

「マフラー貸そうか…?」

「ダメお姉ちゃんだって寒いでしょ!」

「…なら交代交代で使う?」

「もく!私のが若いんだからこれくらい平気だよ!」

「そんなに変わりませんっ」

 

岬と葵でそんな会話がなされていた。

 

ぷふぅ、葵ちゃん、遠回しに歳だってよ…。

 

「翔君?帰ったらお話ししましょう?」

「…はい」

 

でました葵の黒い笑み。

 

なんで俺の心読めるんだよお前…。

 

「学園祭は色々あってお話しできなかったからその分も一緒にお話しする?」

「いえ、今回は遠慮しておきます…」

 

二度と逆らうのはやめよう…。

 

「ちなみに俺も寒いなー、と…」

「ふーん、だから?」

「…いや…その、実は俺寒がりで冬嫌いでして…」

「知ってるよ?だから?」

「…俺とはマフラー交代交代は…」

「…?」

 

とどめの無言の圧力。

 

終始笑顔なのが余計にツラい。

 

マジで二度と怒らせないようにしよう…。

 

 

そしてデパートに到着。

 

「あー決まらないよぉ!」

 

叫ぶ岬。

 

今日はよく叫ぶな…。

 

どうやら俺達のプレゼントで迷っているようだ。

 

しゃーない…助け船を出すか。

 

そう思い葵も見ると、葵も同じ考えだったらしく頷いて近くにあった猫の抱き枕を手に取る。

 

「あ、この抱き枕ボルシチみたいで可愛いなー!こういうのがあったら落ち着いて寝られるかもなー」

「お、本当だな!」

「翔君は何か良さそうなのあった?」

「んー、俺はさっきの店で見てたマフラーが欲しかったかな…ただ、今日はもう手持ちがないから諦めることにしたよ」

 

もちろん手持ちがないというのは嘘だけど…。

 

そこまで話して2人でチラッと岬を見る。

 

うまく伝わればいいけどな…。

 

 

「手袋にした!」

 

おっと…伝わりづらかったか?

 

まあ、岬が選んでくれたものなら俺はなんでも…。

 

「んじゃそろそろ帰ーー「あー買い忘れがあった!」るか?」

 

ほんと今日はよく叫ぶな。

 

けど、ここ店内だからほどほどにしなさい。

 

「すぐ戻るから2人は先に下行ってて!」

 

あーそういうことね…。

 

そう言って上の階へ上がっていく岬。

 

 

「おっと、俺達も買い忘れるとこだったな…」

「うん!そうだね!」

 

「これなんてどうかな?」

「お、可愛いな。うん、いんじゃないか?」

 

葵と2人で買い忘れていた物を選んでいると、

 

「…すまん、葵。会計かわりに頼んで良いか?後から俺の分返すから」

「え、いいけど…どうしたの?」

「いや、ちょっとね…すぐ戻るから!」

「あ、ちょっと!?」

 

そう言ってその場を後にする。

 

まさかとは思うけど…

 

気のせいで済めば良いんだけどなーー

 

ーーーーーーー

 

「…トイレかな?」

 

走り去っていく翔君を見ながらそう呟く。

 

今回のこのお金も別に私が出すのに…。

 

いつも私や兄弟達に出してもらってばっかだし。

 

けどそんな事言ったら、2人で買うって約束しただろ、とか怒るんだろうな…そういうとこ頑固でまめだし。

 

そんな事を考えながらお会計を済ませる。

 

すると、

 

「お前ら全員動くなぁぁぁあ!」

「出口は押さえた!妙な真似はしない方が身の為だぞ!」

 

広場の方で騒ぎが起きる。

 

 

強盗!?

 

 

咄嗟に店員さんと共にレジの下に隠れる。

 

 

もう…せっかくみんながお祝いの準備してくれてるのに…。

 

なんとかしたいけど、記録されて事を大きくしたくないなぁ…。

 

そう思い監視カメラに目をやる。

 

 

でも、あのタイプは録音機能は付いてなかったはず。

 

カメラの死角でやれば大丈夫かな?

 

「お前ら上の階を制圧しろ!」

 

ーー!?上には岬が!

 

こうなったらやるしかない!

 

「待ってください!」

「あ、葵様…!!」

 

目の前に飛び出した私の姿を見て驚く強盗達。

 

「…あなたもついてないな…抵抗しなければ危害は加えない。しばらく大人しくしといてもらえるか?」

 

そう言って銃を構える強盗。

 

本気だ…けど

 

「我々は本気だ。葵様といえどーー「少し黙ってもらえますか?」」

 

私の能力の前ではそれも意味をなさい。

 

「あなた達、武装を解除して」

 

私の言葉に武器を落としていく強盗達。

 

あーあ、やっちゃったな…。

 

「あなた達、他に仲間は?」

「はい、下の階を制圧した際に5名ほど待機させてあります」

 

まさかとは思ったけどやっぱりまだいたか…どうしよう。

 

と、そこへ。

 

「そいつらならもう大丈夫だぞ」

 

翔君がその残りの5名であろう人達を引きずりながら現れた。

 

「翔君!?」

「いやーまさかとは思ったけどさ、地味に下が騒がしいし、微かに火薬の臭いもしたから行ってみたら、この様よ。俺、こういうこともあろうかと常に五感は研ぎ澄ませてるから?」

 

笑いながら冗談っぽく言ってみせる翔君だけど、

 

騒ぎ?私には何も聞こえなかった。

 

研ぎ澄ませるって言ってもそこまでたどり着くのにも努力はあったはず。

 

理由はわかる。

 

私達を守るためだろう。

 

本当にこの人は私達を守る為にどれ程までに努力してきたんだろう…どれ程までに自分を犠牲にしてきたんだろう…。

 

いくら意思の疎通が完璧でも、相手の気持ちが理解できたとしても、

 

それだけは計り知れない。

 

ほんと、敵わないな…。

 

 

その後、能力で強盗を追い返し、目撃者の記憶を消した。

 

もちろん警察を呼んで後の処理は任せた。

 

ーーーーーーー

 

「いやー、にしても葵が能力使うとはな…」

「仕方ないでしょ?上には岬がいたんだから!」

 

ベンチに座りながら葵と共に岬を待つ。

 

「家族を守りたい気持ちは私も一緒なんだから!」

「…!?ああ、そうだな」

 

真っ直ぐこちらを見つめる葵。

 

言いたいことはわかる。

 

1人で黙って無茶だけはするな、か。

 

「これからはちゃんと相談するとするよ…」

「そうしてください!ほんと、今日のお話は長くなりそうだね!」

「…ほどほどに頼む」

「んー、考えとく!」

 

そう言って意地悪そうに笑う葵。

 

 

「ほら…」

「え?なにこれ?」

「何って俺からの誕生日プレゼントだけど?いらないなら別にいいけど?」

「え?ほんと!?ありがとう!開けてみて良い?」

「…どうぞ」

 

俺が渡したプレゼントの箱を開ける葵。

 

「ーーこれって!?」

 

中身は青い薔薇の装飾がされた髪飾り。

 

「たしか花言葉はーー「神の祝福、奇跡」そうそうそんな感じ。俺達が兄妹ってだけならまだしも双子として産まれたのは凄い事だと思うしな!まあ後は普通に似合うかなと…」

「嬉しいよ!ありがとう!大事にするね!!」

「ああ、気に入ってくれたならよかった!」

 

「じゃあ、はい!私からはこれね!」

「え?」

「いつもお世話になってるお兄ちゃんに!」

 

そう笑顔で小さい箱を渡してくる葵。

 

「え、あ、ありがとう!」

 

予想だにしてなかった不意打ち。

 

その箱を開けると、2つの青いリング状のピアスが入っていた。

 

そう、いまさらだけど俺は左耳の耳たぶに2つピアスの穴があいている。

 

学校ではちゃんと取っているし、

 

なんであいているかとかも、ちゃんとした理由があるのだが、それはまた今度話すとしよう。

 

にしても、

 

「まじか!ありがとう!」 

 

素直に嬉しい。

 

「ちょうどそろそろ買い換えようと思ってたんだ!つけてみて良い?」

「うん!」

 

もらったピアスに付け替える。

 

「どう、かな?」

「うん!ばっちり!やっぱりそれ選んで正解だった!」

「そうか!本当にありがとう!嬉しいよ!」

「大袈裟だなあ」

 

そう言って2人で笑い合う。

 

そして、しばらくして岬が来て、俺達は帰路についた。

 

 

「あ、ちょっと待ってて!」

 

最寄りのバス停で降りたところで岬がそう言い、携帯を取りだし何か打ち出す。

 

大方、そろそろ帰る報告かな?

 

「…葵」

「うん!」

 

名前を呼んだだけで俺の言いたいことを理解した葵は鞄の中からある物を取り出し、それを岬の首にかける。

 

「え?お姉ちゃん、これって…」

 

そう、ある物とはマフラーだ。

 

あまりにも寒そうだった上、俺達の為に風邪を引かれても嫌だったので、俺と葵で選んであの時買っておいたのだ。

 

もちろん買うかという話し合いをせずとも、同じ考えに至りお互い理解し合っていたのは言うまでもない。

 

「俺達から岬にだけ特別プレゼントだ」

「みんなには内緒ね」

 

そう言って俺は岬の頭を撫で、葵はマフラーを巻いてあげる。

 

 

そして、ようやく帰宅。

 

「ただいまー!ちょっとここにいて!!」

 

そう言ってリビングへ行く岬を見ながら2人で微笑む。

 

しばらくして、オッケー指示が出たので2人でリビングに入ると、

 

「「「お兄ちゃん!お姉ちゃん!!お誕生日おめでとー!!!」」

 

家族みんなが俺達の誕生日を祝ってくれた。

 

 

欲張りかもしれないけど…

 

こんな幸せ者の俺(私)が

 

今宵1つだけ望むことがあるとすれば…

 

高価な物や、地位や名誉なんてものより

 

「「葵(翔君)」誕生日おめでとう!!」」

 

ずっとこうしていられたな、と願わずにはいられないーー




すいません

もう1話投稿するつもりだったのですが少し遅れてまして

30分にはもう1話投稿します!
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