城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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本日より新章 王の剣編です!

完全オリジナルストーリーでしばらく原作キャラは出てきませんが楽しんでいただけたら幸いです!


王の剣編
第39話【蛇使い】


まずは旅に出て半年後の話ーー

 

 

「だぁあ!見つんねぇぇぇえ!」

 

森の中をさ迷っていた。

 

「主よ。こんなときこそ冷静になれと、師である楠殿にも言われたであろう?」

 

俺を主と呼ぶ、この男性

 

名前は吉良村(きらむら)、通称ラムさん。

 

俺が7つの時から身辺警護役として仕えてくれている。

 

棒術に秀で槍の名手。

 

妻子持ちの優秀な戦士だ。

 

今回の旅の従者として同行してくれた1人。

 

そしてもう1人、

 

「そうですよ、翔様。いくら誰もいない森の中とはいえ、将来一国を担う者としてみっともないですよ」

 

説教をたれる曽和満姫さん。

 

一人だけ異様に大きなバックパックを背負っており、以前何が入ってるのか聞いたら乙女の秘密ですと流された事がある。

 

食料や食器、治療道具と旅に必要なものから、ネジやサイコロといった、え?それいるの?という物までなんでも出てくる不思議な鞄だ。

 

これに関しても、以前一度だけソワえもんと呼んだことがあり、その日の俺の夕飯だけ具なし、おかずなしと地味な嫌がらせを受けてから二度と呼ばないようにしている。

 

昔からどんな局面でも主の希望に添えるにと、教育を受けている為、別に重くはないらしい。

 

隠れ力持ちだ。

 

今回この2人が俺の旅に同行してくれたわけだが…

 

「…そんなこと言ったって、もう2日も森の中じゃん!」

 

旅立ってから半年経ったというのに、歴代王の墓は1つもまわれていない…

 

「そもそも、情報なし!ってどういうことだよ!」

 

というか見つからない。

 

 

歴代の王達の墓だというのに、城にあった情報は大体の場所のみ。

 

国王である父さんですら、正確な場所は知らされておらず、行ったこともないらしい。

 

 

そして、色々情報収集をしながらやっとの思いで1つ目の墓、修羅王の墓の手がかりを手にしてこの森までやって来たのだ。

 

手がかりと言っても、この森のどこか、と言うことしかわからないんだけども…。

 

 

「まあ、確かにいい加減見つかってもいい頃ですな…」

「帰りは任せてください!GPSマップがあるのでばっちりです!」

 

だが、けっきょくその日も見つからず

 

「いやー…はは、今日も野宿だな…」

「申し訳ありません。王族である翔様にこの様なーー」

「いや、いいんだよ!今回の旅は自分で決めたことなんだし!むしろ付き合わせてるのこっちだし!」

「まあまあ!たまにはこうしてキャンプも楽しいではありませんか!」

「ラムさんは気が緩すぎです!」

 

 

そして翌日

 

 

「ーーこれ、かな?」

 

そこには森の中だというのにあり得ないほど綺麗な金属で造られた建物が建っていた。

 

「恐らく、間違いないかと…扉の紋章は確かに王家の物ですし」

「にしても、やけに綺麗すぎない?修羅王って3代目だろ?…いつの時代だと思って…」

「確かに。最早、不気味ですな。主、先に入って中の安全を確かめてきてくだされ」

「ちょっとラムさん!?あなた仮にも翔様をお守りする役目だというのにーー「わかった」って翔様まで!」

「おじゃましまーす」

「だから普通に入ってかないでください!」

 

 

「良いですかお2人とも!ご自分の立場をわきまえてください!いったいどっちが主人かわかりませんよ!」

「やだなぁ曽和さん。ちょっとした冗談じゃん!ジョーク!」

「そうですぞ満姫殿。ほんのお茶目ではないですか!」

「聞・い・て・ま・す・か?」

「「…はい。申し訳ありません」」

 

けっきょく全員で中に入り、入った矢先で正座させられ怒られていた。

 

すると、

 

「ーー!?ラム!」

「はっ!」

「え?お2人ともどうしました?」

「満姫。俺の後ろにいろ」

「え?は、はい!」

 

背後からただならぬ気配を感じ、俺は賢王の剣を呼び寄せ、ラムは肩にかけていた槍を袋から取りだし、それぞれ構え、わけをわかっていない曽和さんを背中に隠す。

 

『先代賢王が認めた者だと、少しは期待していたが…まだ童ではないか。…所詮はあの甘い賢王が考えることだったか…』

 

すると、建物の奥から、鎖鎌を自在に操り、長い鎖をまるで蛇の様に体に巻き付けた男がつまらなさそうな顔で歩いてきた。

 

「…3代目国王、修羅王!」

「3代目って…何百年も前に亡くなられた方ですよ!?なぜここに!?」

 

『ふん。そんなもの所詮は肉体の寿命にすぎぬ。我々、歴代の王はそれぞれ己の武器に能力と共に魂を宿す。そうして代々受け継がれてきたのだ。貴様も既に賢王には会ったのであろう?』

 

ああ、確かに。この賢王の剣を継承された時に会っている。

 

 

 

旅に出る前に父さんが言っていた言葉を思い出すーー

 

「ーーいいか、翔。お前のその力はまだ未完成だ」

「…未完成?」

「ああ、その力を最大限使いこなせるようになる為には、各地に眠る王達の試練を突破し、お前の王としての器を認めてもらう必要があるんだーー」

 

 

なるほど。

 

どの墓にもこうして先代が待ち構えてるってわけか。

 

 

『まあよい。暇潰し程度には楽しませてみせよーー』

「「「ーー!?」」」

 

そう言って殺気を放つ修羅王。

 

俺の服を掴んでくる曽和さんが震えているのがわかる。

 

無理もない…。

 

戦いなれしてる俺とラムさんですら、気を抜けば怯んで動けなくなってしまうような程のとんでもない殺気だ。

 

剣を握る手に力が入る。

 

「ラム、満姫を頼む」

「承知しました主よ!」

 

『賢王が認めた者よ、見定めさせてもらうぞーー』

 

そう言って、修羅王ら右手を前に出すと巻き付いていた鎖鎌が勢い良くこちらに向かって飛んでくる。

 

それを剣で弾き、

 

「金属を操る能力、金属操作(メタナイト)ーー」

 

修羅王はその能力で、鉱山を読み当て、莫大な財産で領土を拡大したとされている。

 

『ほぉう、知識はあるようだな…いかにも。こうしてこの鎌を操る様は、当時“蛇使い”とも呼ばれていたな…。どれ、童。武の腕はどうだ?』

 

さらに鎖鎌を操り仕掛けてくる。

 

地を這い、攻撃をかわし回り込みを繰り返し、じりじりと追い詰めてくる様は、まさに蛇使いの名に相応しい。

 

『ふむ、なかなか当たらぬものだな。ならこれはどうだ?』

 

そう言い修羅王は指を鳴らす。

 

「な!?」

 

その瞬間、手に持っていた剣がカタカタと勝手に動きだし、剣先を俺の首に向けてくる。

 

『我を前に剣を振える者などおらぬ』

 

なんとか力で押さえ込もうにも、修羅王の能力で操られた剣は一向に止まる気配を見せず、じりじりと首へと近づいてくる。

 

戻そうにも、俺の支配権を離れていて戻せない。

 

『さて、童よ。この状況、貴様はどうする?』

 

少し首に当たり、血が滴る。

 

「翔様!ーー「来るな!」!?」

「こいつはいま修羅王の能力で操られていて、俺の意思が効かねえんだ!いつお前達に向くかわんねえ!」

 

くそ!まじでどうする?

 

このままじゃまじでやばい!

 

首が飛んじまう!

 

こんなあっさり終わっちまうもんなのかよ俺!

 

『やはり所詮はこの程度か…。賢王の目も落ちたものよ。つまらぬな…』

 

そして鎖鎌がこちらに向かって這ってくる。

 

 

賢王?

 

そうだ…

 

そうだぞ賢王…

 

「…あんたが“あの時”俺を選んだんだ…」

 

一度俺を認めたんならーー

 

「ーー黙って俺に力を貸しやがれ!!」

 

瞬間、剣が輝き、剣の動きが止まった。

 

『なに!?自力で支配権を奪い返しただと!?』

「うおらぁ!ーー」

 

そしてそのまま鎖鎌の鎖に剣を突き刺し、動きを封じ、修羅王に向かって駆け出す。

 

『ふん、だが甘い。足元ががら空きぞーー』

「ーーな!?」

 

が、長い鎖の全ての動きを封じれたわけでもなく、無慈悲に足をかけられて転ぶ。

 

「ちぃ!」

 

舌打ちをして立ち上がりながら修羅王を睨む。

 

『…どうした童。ふらふらではないか…そんな状態でまだ我に挑むか?』

「…うるせえ!俺にだって事情があんだよ!守りたいもんの為に、こんなとこで倒れるわけにはいかねえんだ!」

『…はぁ…やめだ…』

「…え?」

『もうよい、やめだ…ん?何を面食らった顔をしておる。聞こえんだか?やめだ』

「え、じゃあーー」

『…ああ、貴様を王として認めてやろう。…ふふ、ふははは!まさか我に素手で挑もうという輩が現れるとはな…なかなかに面白いぞ童!(幼さゆえ、まだ粗さは残るが…賢王が認めたのもわからなくもない…)しかし履き違えるな童!勇気と無謀は違う!精々他の者に殺られぬよう精進しろ!…貴様の目的の物はこの奥だ、好きに持って行けいーー』

 

そう言い残し、修羅王は姿を消した。

 

「はぁ…はぁ…やった、のか?」

 

緊張が解け、その場に座り込む。

 

「翔様ぁ!ご、ご無事ですかぁ!?あのまま翔様の首が飛んだらと思うと、私…私、怖かったんですからぁ!!」

 

後ろから泣きながら抱きついてくる曽和さん。

 

「主よ、ご無事で!?」

「ああ、ラムさん。なんとか、ね」

 

泣きじゃくる曽和さんの頭を撫でながらラムさんに答える。

 

「ごめん、曽和さん。これの手当て、頼んで良いかな?」

「あ!は、はい!ただいま!」

 

そして、曽和さんに切れた首の手当てをしてもらい、奥へ進む。

 

「ーーこれか…」

 

そこには、台座に横たわり、修羅王の鎖鎌を手に持つ銅像があった(FF15参照)。

 

「修羅王、あんたにも力を貸してもらうぞ!」

 

そう言って鎖鎌に手をかざす。

 

すると、鎖鎌は輝き、浮き上がり、俺の胸に突き刺さるように入る。

 

そして、透明のクリスタルの様な賢王の剣といまの鎖鎌、修羅王の刃が俺を中心に現れて消える(FF15ファントムソード参照)。

 

「「!?」」

 

それを初めて目にした曽和さんとラムさんが驚く。

 

「しょ、翔様!?い、いい、いま刺さって!ご無事なので!?」

「ん?ああ、大丈夫。無事継承された証だからー」

 

そして、目的を果たし、建物から出た瞬間、

 

「「「!?」」」

 

先程まで新品同然だった金属の建物は、ゆっくりと錆びついていき、やがて音を立てて崩壊した。

 

「…なるほど。修羅王の能力で維持していたということですな…」

「本来のあるべき姿に戻ったということでしょうか?」

「恐らくね…俺が持ち出したことで能力が解けたんだろ…」

 

そう言って、奥の方に目をやると、

 

崩れた鉄が1つも当たることなく銅像だけが神々しく綺麗に横たわっていた。

 

主が鉄が当たらぬよう仕向けたのか、鉄たちが最後の意思で主を避けたのか…

 

もはやそれを知るすべはない。

 

けど、

 

「…偉そうなわりには、案外いい人だったな…」

 

こうして、なんとか1つ目の墓、修羅王の試練を突破したーー

 

 




普段は、名前にさん付けや緩い言葉遣いの翔ですが、本気の戦闘や任務時の部下の前ではキツい命令口調に。
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