「ーー!」
少しの睨み合いの末、始めに動いたのは羽原。
木刀を引きずりながらイフに向かって駆け出す。
イフもすかさず銃を撃ち出す。
しかし、飛んでくる弾丸を全てをかわし、弾き、一気に間合いを詰めていく。
「ちぃ!ーーてあれ?出なくなった!弾切れ?」
そして全て撃ちきったイフの持つ銃を弾く。
「ーーな!?」
「…話にもならない」
反動で思わず尻餅をついたイフの眉間にすかさず剣先を向けて不敵に笑う羽原。
…
……
「「「…弱…」」」
「ーー!?っかたねえだろ!銃なんか使ったことねえんだかーーらっ!」
俺達の言葉に反論しつつも、羽原に足をかけ、ひるんでいる隙に銃を拾い直すイフ。
「…そんな言い訳君に説明しよう。その銃の総弾数は15発。手元のボタンみたいのあるだろ?それ押すとマガジンつう弾が入ってるのが出てくる。そいつに新しい弾を装填するも良し、新しいマガジンと取り替えるも良しだ。常に替えのマガジンを持つようにしとけ!」
そう言ってアタッシュケースから銃と一緒に入っていた替えのマガジン4つを投げ渡す。
「…なるほど。これか…そういうことだな…よし、理解した」
「後は弓と一緒だ。普段通り、落ち着いて構えて、よく狙って射ぬけ」
そこまで言って曽和さんとラムさんに道場の人達を安全なところに運び、手当てするよう頼む。
俺も手伝おうと思ったが、ラムさんに主として見届ける義務があると言われた。
そうだな。
主として部下に命令したんだ、見届けてやんなきゃ失礼だよな、イフ。
「「ーー!」」
両者一斉に駆け出す。
先ほどと同じように銃を撃つイフ。
「…同じことをしても無駄ーー」
「ーーするかよ」
「!?」
しかし、先ほどの無駄な連射とは違う。
狙って撃ち込まれた弾丸は、相手の額のみを捉え、かわされた先すらも先読みして撃ち込む。
そうしてジリジリと羽原の退路と体力を奪っていく。
この一瞬で物にするイフもそうだけど、それを全てかわす羽原も、2人共とんでもない集中力だ。
「ちぃ!」
しかし弾切れでリロードの隙ができる。
2丁拳銃のリロードだ。
普通より時間と隙ができる。
それを見逃す羽原ではなく、再び間合いを詰めようと駆け出すが、
「ーーなめんな」
イフが両腕を下に勢いよく振ると、袖口から替えのマガジンが出てきて、腕を上に戻す勢いで、そこまま手を使わず空中でマガジンを取り変えた。
「「な!?」」
これには見ていた俺も羽原も驚く。
んな、あほな!
人間業じゃねえな。
どんな集中力と飲み込みの早さだよ!
完全にあの2丁拳銃をものにしている。
本当に今日初めて触ったのかよ。
「もらい」
そして驚いている羽原の一瞬の隙をついて、弾丸を撃ち込む。
「!?ーーちぃ!」
額めがけて飛んでくるそれを間一髪でかわそうとする羽原だが、完全にはかわしきれず、左肩に直撃。
殺傷能力はないものの、ちゃんとした威力はある。
頭に当たれば突然気絶ものだし、痣にもなるだろう。
あの左腕はしばらく麻痺して上がらないだろうな。
「ーーうらぁあ!!」
しかし、傷み顔を歪めながらも足は止まらない。
「ちぃ!ーー!?」
舌打ちをしてもう一度撃ち込もうとするイフだが、一気に間合いを詰められ、右手の銃は後ろに弾かれ、左手の銃は手から離れはしなかったものの銃口を下へ向けられた。
そして、羽原は右手を振り上げ、木刀をイフの頭に振り下ろそうとする。
まずい!
そう思い、武器を出そうと手を前に出そうとしたとき、
「ーーあほ、黙ってみてろ」
俺の行動を止めるように、下を向いた銃を撃ち出した。
その撃ち出された弾丸は地面でバウンドし羽原の右足の太ももを捉えた。
「ぐぁ!?」
「な!?跳弾!?」
思わず膝をつく羽原。
その隙に弾かれた銃を取りに走るイフ。
持っていた銃を向ければ勝てたと思うかもしれないが、
その銃に弾丸はもう入っていない。
いまので撃ちきってしまったのだ。
イフも羽原もそれをわかっている。
弾かれた銃に残る最後の1発。
それを拾ったら最後、勝負が決まるーー
ーーイフ(俺)の勝ちだ!
そう俺もイフも思っていた。
のに、
おいおい!まじかよ!?
なぜ動ける!?
立ち上がりイフに迫る羽原。
あの至近距離で跳弾を受けたんだぞ!?
もちろん、近ければ近いほど威力はあがる。
出血もする。
片腕片足でそんなに血を流して
いくらなんでも無茶すぎる!
理性なんてものはとうになく。
もはや彼を動かすのは闘争本能のみ。
勝利への執着心?
力を求める執念深さが成せる技か?
彼をあこまでさせる理由はなんだ?
イフが銃を拾い振り返る。
しかし、もう目の前まで追い付いている羽原。
「がぁああっ!」
「んな!?(ボキッ…ってぇ!」
羽原の横凪ぎを左腕で受け止めるイフ。
「…やっと捕まえたぞくそが」
「!?」
そして、痛む腕でそのまま木刀を握り、木刀を銃口と羽原の間に引っ張り。
「もういい。寝てなーー」
「ーー!?(パンッ!」
撃ち込まれた最後の弾丸は、羽原の木刀をへし折り、羽原の額に直撃した。
木刀を間に入れて、威力を殺したか…。
あの距離じゃいくらなんでも致命傷だった…。
それをわかっていたのか。
相手の武器を破壊し、命令通り相手を止めた。
闘いながら相手の事まで考えて配慮してみせた。
俺の思想通りの制圧。
それをイフはやってみせたのだ。
…やっぱり、お前に声をかけて正解だったな。
気絶した羽原を、ガードして痛めた左腕を抑えながら見るイフを見て俺はそう思ったーー