城下町のダンデライオン~王の剣~   作:空音スチーマー。

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イフの異名を

鬼の子 → 悪童

に変更しました。

変わっただけで特に意味や物語には関係ありません。


第63話【特訓】

「ーー輝。ほんとに良いの?ここで…」

 

 

今日は輝の誕生日。

 

皆と同じように時間潰しに好きなところに連れてってあげると言ったんだけど…

 

「はい!僕は兄様みたく強くなりたいんです!」

「…だからってここかぁ…はぁ…」

 

輝の要望で連れて来たのは、

 

「んあ?なんだよ翔、今日は子連れか?」

「わあ!可愛い!四男の輝くんだよね?何歳?お菓子食べる?」

 

王の剣の訓練場だ。

 

この櫻田城には俺達兄弟の特殊能力を計るための部屋や暴走期間であまりにも症状の酷い者を隔離する部屋がある。

 

その部屋は勿論俺達の能力にも耐えれるような特殊な素材で出来ている。

 

そして、この王の剣のメンバーのみが使用する訓練場。

 

この場所も同じく特殊な素材で出来ている。

 

特殊能力部隊というだけあり、俺も含め、メンバーも眷属器も用いることで特殊能力を使用できる。

 

その為、この場所ではその訓練も行えるようにしてあるのだ。

 

 

それにしても…

 

「お前達あまり輝で遊ぶなよ…それとお菓子は俺も食べる」

 

偶然居合わせたイフとリヴァにおもちゃにされて、おどおどしている輝を助け出す。

 

「あ、やっぱり翔くんも食べるんだ」

「お前どんだけ甘いもん好きなんだよ」

「ほっとけ…」

 

それから少しお茶をして良い感じに輝が2人に馴れてきたところで本題に入る。

 

「それで、輝。今日は本当にこんなとこでいいのか?」

「はい!僕も修行して兄様みたいな強い人間になりたいんです!だから僕を鍛えてほしいんです!」

「輝くんはなんで強くなりたいの?」

「それはもちろん大切なものを守るためです!」

「へぇ、どっかの誰かさんそっくりだな…さすが兄弟ってか?」

「ほんとよねぇ♪どこかの誰かも昔はこんなに無邪気だったのかしら?」

「…お前らほんと帰れよ…」

 

外野を放置して輝の修行を開始する。

 

「まあなんだ。やるからには甘くないぞ?途中で投げ出すのも良いけど、その場合二度と教える事はない。…それでも本当にやるか?」

「…」

 

俺の問いに黙り込む輝。

 

少し厳しいかもしれないが、無理に厳しい環境に飛び込む事もない。

 

輝も含む兄弟皆が自分の思うように生きれるように俺がいるのだから…。

 

まぁ、その為に誰かを王にすると言っている時点でそれは最早矛盾でしかないんだけどな…。

 

「…それでも、僕はやります!大切なものを守るために!」

「…!?」

 

真っ直ぐに俺の目を見てそう言う輝。

 

そんな輝の姿に昔の自分を重ねて見えた気がした。

 

だからだろうな…

 

「わかった。なら俺に教えれることは教えるよ」

 

応援してあげたいと思ったーー

 

 

ーーあれから動きやすい服装に着替え、用意されて岩の前に立つ。

 

「いいか輝。去年の人形のゲームの時にも見たけど、お前能力の使い方にはムラがありすぎる」

「…むら?ですか…?」

「ああ。…そうだな、試しにその岩を能力を使って人差し指で突いてみな」

「はい!」

 

俺に言われた通りに岩を人差し指で突く輝。

 

すると、岩は弾けるように砕け散った。

 

「…ま、そうなるよな。それがムラだ。輝は能力を全身に使いすぎなんだ…」

 

そう言いながら闘王の籠手を呼び寄せる。

 

「たとえ同じ能力だとしても、能力の使い方次第でーー」

 

先程の輝と同じように能力を使い岩を人差し指で突く。

 

「ーー!?」

「こんな事も出来る」

 

その岩は、砕いた輝とは別で俺の人差し指の分だけすっぽりと穴が開いていた。

 

「す、凄いです兄様!どうやったんですか!?」

「仕組みは簡単だよ。ただ岩を突く人差し指のみに能力を発動させただけ。ほら」

 

次々と岩に穴を開けていく。

 

「けどこれは口で言うのは簡単なようで実際は繊細で難しい作業だ。…ちなみにそこのアホもこれが出来るようになったのはついこの間だ」

「言うなよ!」

 

俺の言葉に即反応するイフ。

 

これはイフの雷にも同じことが言える。

 

常時雷を放出し続ける今までのイフの能力の使い方ではすぐにバテてしまっていた。

 

しかし、能力を欲しい時、欲しい量、欲しい場所にのみ発動させることで持続時間、強度をあげることに成功した。

 

ちなみな、茜の重力制御の能力も同じだ。

 

「ようは輝がいつも飲んでるジュースと同じさ。ペットボトルのジュースを一気に飲み干すのと少しずつ、飲みたい量だけコップに入れて飲むのとじゃ時間のかかり方が違うだろ?」

「なるほど!」

「まあいきなり俺と同じ様に一点のみの発動は無理だと思うから、まずは…これだ!」

「…ベンチプレスですか?」

「そう、その通り。よく知ってるな。けど、これは輝の能力を使ったときの力では持ち上げれない重さに設定してある」

 

とりあえず輝をベンチプレスに寝かせ、説明を続ける。

 

「これを少しでも動かせれる様になれば、第一段階クリアだ。試しにやってみな?」

「はい!ふんっ!!…だ、だめです…」

 

能力を使った輝でもびくりともしない。

 

「そりゃそうさ。いま欲しいのは腕と胸の筋肉。主に上半身だ。輝の能力は無意識に全身に平均的にまわるようになっている。けどいまは下半身への不要だ。上半身に意識を集中させな。それが出来れば今まで下半身に行っていた力も上半身に加えられて自然と力が増して、これも持ち上げられる。…さ、もう一度だ!」

「はい!兄様!」

 

その後、何度か挑戦するも、なかなかうまくいかず、少し休憩をする事にした。

 

「兄様はどうやって力のコントロールに成功したんですか?」

「俺?んーそうだなぁ、俺の場合はーー「やめてけ、四男坊」…なんだよ、イフ」

「こいつを参考にするだけ無駄だ。翔は感覚や気合い、精神論やってるようなもんだ」

「失礼だなぁ…まあそうだけど…」

「じゃ、じゃあ僕はどうしたら!?」

「ようはイメージだ。俺の場合、得意の弓と同じ感覚でやってる。自分の体そのものを的だと見立てて、雷は矢だ。射ちたい場所に矢を射ち込む、それを感覚にしている」

「なるほど!」

「へー」

 

イフはそういう感じでコントロールしてたんだ。

 

初耳。

 

でも普通、自分が矢、とかならわかるけど…的なんだ…。

 

まあイフらしいな。

 

「だからお前も自分の好きなもの、得意なものに自分を見立ててやってみればいい。まあようは思い込みだな」 

「…結局は精神論じゃねえか」

「…」

 

 

「ーーなぁ、それならイフが輝に教えてみたらどうだ?」

「なんで俺なんだよ…!?」

「ついこの間まで、同じことをしてたんだ。いまの説明を聞いててもちょうどいいんじゃないか?それに人に教えることによって得られるものもあると聞くぞ。…俺は生徒がダメダメすぎてなにも得られなかったけど…」

「教師の教えが悪かったんだよ!!」

 

俺の言葉に自分のことだと察したイフが反論してくる。

 

んなこと言われても、ねえ…?

 

「格闘技とか戦闘面は俺が教えるしさ」

「そもそも、俺じゃなくて。こいつがいいかどうかの話じゃーー「是非!お願いします!先生!!」…先生…」

 

無邪気な輝の言葉に少し考え込むイフ。

 

「先生か…良いだろう!けど俺もやるからには厳しくやるぞ?だが安心しろ!俺は最後までお前を見捨てない!なんたって“先生”!だからな!」

「はい!」

「それと返事をする時は、はい、先生!と言うように!それじゃあ休憩は終わりだ!再開するぞ!」

「はい、先生!」

 

そう言って、輝を引き連れていくイフ

 

「「単純だなぁ(ねぇ)」」

 

先生と言うこと称号がやけに気に入ったのであろう嬉しそうなイフを見てリヴァとハモる。

 

「それじゃあ、よろしく頼むわ“先生”」

「大きな怪我だけはさせちゃだめだよー“先生”」

「お前らからかってんだろ!?」

 

こうしてイフ先生による輝の修行が始まったーー

 

 

「まあ、なんだ…。さっきあぁは言ったが、あいつが気合いや感覚でなんでも出来るのはとんでもない集中力があってこそだ…。でなきゃ、自分のものでもない歴代達の能力をほいほいと使いこなせるわけない。ま、その集中力を身に付けれたのもあいつが並外れた努力を積み重ねてきた結果だーー」

 

 

「それにしても意外ねえ…」

「なにが?」

「イフくんがけっこう面倒見良かったんだなって」

「そうか?あいつは昔からあーだよ?口では悪く言うけど、いつも人を気遣っている。曽和さんが誘拐された時もそうだったけど、ほっとけないんだよあいつは。けど素直じゃないからいつも人知れず努力して弱音を見せないーー」

 

 

「「あいつは誰よりも努力してる凄い奴なんだ!」」

 

 

「…先生は兄様が大好きなんですね!僕も強くてカッコいい兄様が大好きです!」

「何聞いてたらそうなるんだよ!?まあ、そうだな…確かにカッコいいわな…。さ、無駄話はここまでだ、始めるぞ!」

「はい、先生!」

 

 

「ふふ、ほんと似た者通しだね2人は!」

「は?どこがだよ!?俺はあんな短気じゃねぇよ!」

 

 

こうして、1日が過ぎていったーー

 

 

帰り道ーー

 

「ーーうぅ、結局少しも動かせませんでした…」

「まあ、そんなにすぐに習得できるものでもないさ。少しずつ感覚をつかんでいけばいいよ」

 

輝と手を繋ぎながら今日の事を振り返っていた。

 

「でも、先生の言っていたイメージはもう少しで掴めそうな気がするんです!」

「的と矢ってやつか?」

「はい!やはりジャッカルを解放しなかったのが間違いでした!」

 

そう言って右手を抑え込む素振りをする輝。

 

ジャッカルとは輝の右手に宿る力の事で普段は危険だから封印しているのだ。

 

というのは、輝の設定で、力のコントロールが不安定な輝と母さんの約束で、普段は能力を使わないように約束をした結果、出来上がった子供ならではの設定だ。

 

あ、そうだった…

 

「それなら!輝、これは俺から誕生日プレゼントだ!」

「え!本当ですか!?ありがとうございます!」

 

そう言って輝に渡したのはオレンジ色の石の装飾がされた金色のブレスレットだ。

 

毎朝毎朝、必死に手の甲に封印の証をペンで書いてるからな、いい加減手も汚れるし、大変だろうからこの日のために用意したのだ。

 

「いいか、輝。このブレスレットにはな、そのジャッカルを抑え込む術式が施されている」

「なんと!?」

「だからもうその手の甲の封印は不要だ。このブレスレットをしている限りな!」

「本当ですか!兄様!ありがとうございます!」

「ああ、けどちゃんと風呂とか学校の体育の授業とか邪魔になる時は外すんだぞ?大丈夫、これは普段身に付けていれば少しの間外したとしても効果は持続される!兄ちゃんとの約束な?」

「わかりました!」

「うん、よろしい!」

 

そう言ってもう一度手を繋ぎ家へと向かう。

 

「兄様!僕考えたんですけど、右腕のジャッカルを解放するつもりでやれば右腕だけに能力が使えるかもしれませんね!」

「ほーう、なるほどな!今度試してみると良い!」

「はい!」

 

輝も自力で自分なりの答えを出したか。

 

案外いまの案はうまくいくかもな。

 

輝は鍛えれば強くなるだろうな…。

 

望む限りは鍛えるつもりだけど、その力が人に振るう機会がないように、俺達がこの国の平和を守っていかなきゃな…。

 

その小さな腕にしたブレスレットが抑える輝の力が解放される日がないことを願って改めて自分の意思を強くしたーー

 

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