狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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今回は殺生丸の回想です。

時代的には

幼き頃:千数百年前の話

成長後:犬夜叉が産まれて数年の間の話

となってます。


第6巻 殺生丸

 西国を治めた大妖怪・闘牙王とその妻・御母堂。

 

 2人の間に男の子が産まれた。それこそが次男・殺生丸だ。両親は殺生丸を見て確信した、この子はいずれ闘牙王を超える大妖怪になると。

 

 幼き殺生丸は歩ける様になると、何をするにも父の後をついて回った。恐らくこの頃から最強である父に憧れていたのだろう。そんな殺生丸の前に1人男が現れた。殺生丸はその男に父と同じ面影を見た。姿形だけではない、その溢れんばかりの巨大な力まで父と同じだ。

 

 

「殺生丸、この者は腹違いのお前の兄だ」

 

 母にそう言われ、龍牙王をジッと見ている殺生丸。

 

 

「あにうえ……」

 

 

「我は長く生き過ぎて兄と言われても実感ないが……まぁ宜しく頼む、殺生丸」

 

 

「まぁアイツの事だから、そう言う風にしたには意味があるのだろう」

 

 闘牙王はそう言う、アイツとは龍牙王の母の事だ。

 

 

「いや、違うね。ありゃ、我が困っているのを見て絶対に楽しんでやがる」

 

 

「そんな訳……ないとも言い切れんな、アハハハハ」

 

 笑い合う父と兄、幼き殺生丸はそれを見て何故か腹が立った。この兄という者に、父を取られた様な気がしたのだ。

 

 別にそう言う訳ではないのだが、子供心にそう思ってしまったのだろう。可笑しい話ではない、子供は親に認められ様とするものだ。なのに、突然現れた兄と名乗る父に似た者は誰よりも認めて欲しい父上に認められていた。それは言葉で言わずとも幼き殺生丸にも理解できたのだ。

 

 そんな、気持ちを抱えながら殺生丸は何かと構ってくる龍牙王にそっぽを向く。

 

 

「殺生丸、遊ぼう」

 

 

「わたしはそんなに子供ではありません」

 

 遊びに誘ってきた龍牙王にそう言って去る。

 

 

「今日は1人であろう、兄が添い寝してやろう」

 

 

「けっこうです」

 

 1人で寂しく寝るのを忍びなく思った兄が誘うが、行ってしまった。

 

 

「一緒に風呂へ」

 

 

「ゆあみはひとりでできます」

 

 

「では兄が修行を」

 

 

「ちちうえにならうのでけっこうです」

 

 

「殺しょ」

 

 

「ちちうえ~」

 

 事あるごとに構おうとするが、悉く避けられる龍牙王。

 

 

「御母堂………我、何かしたか?」

 

 

「はてさて……最近では妾にもあの調子だ。全く可愛げのない…誰に似たのやら」

 

 龍牙王は「それは貴女でしょう」と言おうとしたが、にっこりと笑う御母堂を見て直ぐに言葉を呑み込んだ。

 

 例え龍神であろう母には勝てない……曰く「言ったら殺される」だそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーどうして、あんな変な者が兄なのだろう。事あるごとに私と関わろうとする。父上に似たあの者は、似てはいるが性格は異なる。父上はあんなにもだらしなくないし、酒に酔って裸踊りなどしないー

 

 これまで殺生丸は龍牙王を見ていた。飯を喰ったと思えば寝る、だらしない顔で……ふざけた様な顔をして日常を送る。酒に酔ってどんちゃん騒ぎの上に衣を脱いで踊り出す。酷ければ朝から酒を飲む。

 

 しかも最も尊敬する父親とそっくりな者がするのだ。許せる訳がない、絶対に父親はそんな事はしない…と思っているのは殺生丸だけでなのだか……

 

 実際には闘牙王と龍牙王は似ている姿形だけでなく、性格、普段の何気ない動作まで似ていた。これは龍牙王が長い間、闘牙王に憧れ追い続けた結果と前世の影響である。元々の性格が闘牙王に似た者であったのだろう。唯、殺生丸の中で美化され過ぎているだけなのである。

 

 

 

 

 

 それから少し経っても、相変わらず殺生丸と龍牙王の仲は良くない。

 

 だが、2人の距離が縮まる出来事が起きた。

 

 大陸より、異国の妖怪が日ノ本に攻めて来たのだ。闘牙王は勿論、龍牙王だけでなく、日ノ本に全域の妖怪が集結し異国の妖怪と戦うという大きな合戦だ。

 

 幼き殺生丸も共に行きたいと行ったが、戦を経験するにはまだ幼な過ぎた為に置いて行った。しかし殺生丸は隠れて着いていった。唯、父親に認めて貰いたいという子供心で……。

 

 異国の妖怪達は確かに強かったが、雑魚は闘牙王と御母堂の血を引く殺生丸がその幼き爪で引き裂くのは簡単な相手だった。しかし、大将クラスになればまた別の話だ。そのか弱い爪が届く訳もない。

 

 幼き殺生丸は虎の様な妖怪の手に掛かりやられそうになる、目を瞑ってしまうが何時になっても痛みが来ない。目を開いて見ると、自分の前に龍牙王が立っていた。

 

 龍牙王は片手で妖怪の爪を止めていた。

 

「我が弟に手を出すな、雑魚が」

 

 

【ナニィ、我ガ一撃ヲトメタ!?】

 

 

「その姿……窮鬼か」

 

 

【貴様何者ダァ!ブルワァァァ!】

 

 窮鬼は腕に力を込め、爪で引き裂こうとするが腕な全く動かない。

 

 

「我は龍牙王……貴様等にこの日ノ本は渡さん!」

 

 龍牙王は窮鬼の腕を弾き飛ばし、大きく後退し小さい殺生丸を抱える。

 

 

「殺生丸!歯をくいしばっておけ!ガアァァァァ!」

 

 龍牙王の目が真っ赤に染まり、凄まじい妖気と共にその姿を巨大な狗へと姿を変える。龍牙王は母から龍の姿と力を、父からは狗妖怪の力を受け継いだ。

 

 白銀の毛並みに、鋭い牙と爪、窮鬼を超える巨大な身体。その姿に幼き殺生丸は掴まっていた。

 

 

【ガアァァァァ!】

 

 狗となった龍牙王はその牙で簡単に窮鬼を噛み砕く。それからはほぼ一方的に龍牙王の牙と爪で異国の妖怪達が蹂躙されていった。それは日頃のだらしない生活をしている姿からは全く予想できなかった。

 

 

【ウォォォォァン!】

 

 異国の妖怪達の屍の山の上で雄叫びを上げる龍牙王。

 

 その蹂躙の全てを幼き殺生丸は見ていた。人間であれば恐怖するところだが、妖怪である殺生丸は違う。父に次ぐ最強を目の当たりにした彼は、兄を始めて尊敬した。そして何時か父と兄を超えようと志すのであった。

 

 しかし、無断で着いて来た殺生丸はこの後に闘牙王からキツイお灸を据えられる事になったのは言うまでもなかったが、今の彼にとってそんな事はどうでもよかった……なんせ、父以外に憧れる存在が出来たのだから。

 

 それから、殺生丸は一変し龍牙王の後を着いて回ることになった。そして手を組んだ龍牙王と御母堂により修行と称した着せ替え人形になったり、成長した本人にとって恥ずかしい思い出となったのはまた別の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 成長した殺生丸は、その血に従い力を求めていた。

 

 だがかつて目指した父は人間等という弱小な存在を助け死に、兄もとある事件でかつての様に力を出さなくなった。

 

 

 ー父上……何故人間等を…それほど人間に価値があるというのですか?

 

 兄上、貴方もだ。人間の女の為にその身を幼くし、守っている。何故人間等という弱き存在の為にそこまで出来るのですか?ー

 

 自分が目指した最強達、父は人間の女の為に死に、兄は人間の女の為に力を封印した。もう自分が目指した最強達はいない……もう超えるべき目標はいない。

 

 正確には認めて欲しかった最強である父も兄もいないと言う事だ。兄は生きているが、かつての兄ではない腑抜けた存在だ。

 

 故に殺生丸は父の力の象徴である天下覇道の剣を求めた。それを手にし、使いこなす事は父に認めて貰えると同じ意味だと考えたからだ。

 

 そして殺生丸は龍牙王の元に向かった。現在、父の形見である鉄砕牙と叢雲牙は龍牙王が持っている。それらを手に入れる為に…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーバチィ!バチッ!ー

 

 しかし現実は簡単に行かない、龍牙王により鞘から引き抜かれ地面に突き立てられた鉄砕牙の結界に阻まれた。鉄砕牙は父の牙、鉄砕牙に否定されたのは父に否定されたも同じだ。殺生丸は幾度も鉄砕牙を抜こうとするが結果は同じ。

 

 鉄砕牙には意志があり、扱うには人を慈しむ心がなければならない。今の殺生丸に人を慈しむ心などある訳がない。

 

 結界に阻まれ、膝をついてしまった時、父の言葉を思い出した。「お前に守るべきものはあるか?」と。

 

 そんな殺生丸を見て、龍牙王は鉄砕牙を鞘に納めると、自分の尾の中から一振りの剣を取り出し、殺生丸の前に突き立てる。

 

 

「コイツは闘鬼神、鬼の牙から打った物だ。まずはコイツで自分を鍛えろ、そして親父の言葉の意味を考えろ」

 

 龍牙王はそれだけ言うと去っていく。殺生丸も立ち上がると闘鬼神を手にして兄の去った方向を見つめていた。今は力を封印しているが、龍牙王こそは自分が超えるべき最大の壁だと再認識した。

 

 

 ー兄上…何時か必ず、貴方を超えて見せるー




~不思議空間~

無言で幼き頃の殺生丸の話を見ていた奈落とその分身達。


「あの殺生丸にもあんな頃が……」


「何か気持ちわりぃ」

等とそれぞれ反応している。


ーどうだったかな、神楽ー

ぼっーとしている神楽に話し掛ける作者。しかし、反応がない、しかも鼻血出てる。

全員の視線が突き刺さり、我に帰った神楽は慌てている。


「べっ別にアタシは殺生丸を見て興奮した訳がじゃねぇ!」


「神楽、誰も聞いてないのに」


「はっ!?」

神無に言われ顔を真っ赤にする神楽。


ー仕方ない、そんな神楽には特別サービス。そこで笑っている奈落達を倒したら、龍牙王撮影の幼き頃の殺生丸様写真集を上げようー


「ななななな…べっ別に欲しくないけどやってやる。奈落達には本編での怨みがあるしな」

やる気になった神楽は扇子を構える。奈落達も勝てると思っているのか?と言う風な態度だ。


ー因みに此処では、お前らは人間と同じだから……能力使えないよー

作者の声を聞いて


「ふざけるな!」


「人権…妖権の侵害だ!」

等と抗議している。しかし、奈落は竜巻に巻き込まてしまう。


「ちょっと待て、能力使えないんじゃ」


ー俺、女の子には優しいんだよ~。それに……ー


「「「それに?」」」


ーゆ・え・つー


「「「この下衆がぁぁぁぁぁ!」」」

こうして、犬夜叉と桔梗を引き裂こうとした悪達は竜巻により滅んだのである。




・殺生丸写真集「せっくん、可愛い」

撮影者:龍牙王・闘牙王

監修:御母堂様

・内容

龍牙王の知識と能力を結集し造り出したカメラにより撮影された殺生丸の写真集。

因みに当然、本人に許可などとっていない。産まれた直後から龍牙王と闘牙王により撮影され、御母堂様により監修された一品。

限定百冊生産されたが、見つかり次第殺生丸により処分された。現在残っているのは、御母堂様と龍牙王の保存・永久保存・観賞用の計6冊と数冊のみ。

殺生丸は美しく、強いため、女性妖怪の間では人気は高いので全財産を賭けてでも手に入れようとする品である(笑)。

龍牙王、御母堂共に何時か殺生丸に嫁や子供が出来た際には是非とも見せてやろうと企んでいる。

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