~龍王神社~
「わぁーい」
「もふっもふっ」
境内の真ん中に立つ龍牙王の身体に昇っている銀髪の男の子と尻尾を触っている巫女服の女の子。
それを見て、慌ててる二人の母親らしい巫女達。
「別に構わんさ、陽菜だって小さい頃は尾で遊んでたしな」
男の子の名は、
銀髪、金眼で、赤い羽織を着ている。犬夜叉の生まれ変わりであり、龍牙王が龍眠より目覚めた日に産まれた赤子だ。何故、妖力を失った筈の犬夜叉の血族なのに銀髪、金眼なのか……龍牙王によれば先祖帰りだそうだ。因みに着ている羽織は犬夜叉が着ていた火鼠の衣を直した物だ。
女の子の名は、
名前から分かるように、桔梗の生まれ変わりである。桔梗の生まれ変わりだけあって、霊力はかなり強い。夢中で龍牙王の尾を触っている。序でに言うなら、この街の神社の1つ龍神神社の巫女……つまり桔梗の妹・楓の子孫に当たる。
この二人、今は前世の記憶はないものの仲がよい。流石、前世では夫婦だけの事はある。そして二人は龍牙王が見えているので、懐いている。
龍牙王自身も、弟とその嫁の生まれ変わりとあっては目にいれても痛くないほど可愛い。子供の居らぬ彼にとっては、弟達の血族が、そしてこの地に生きる人間が自分の子供の様なものである。故に龍眠をギリギリまで延ばしてでも、この地に生きる人々を護った。そして現在は見守っている。だからこそ、この50年……大変な時期に眠ってしまっていた事を彼は後悔していた。
「相変わらず子供には甘いな」
そう声が聞こえ、そちらを見ると鳥居の方から着物を着たグラサンの男が歩いて来た。
「街の様子はどうだった?」
「特に変わりない。我は疲れたので休む」
「それにしても………マ〇オだな、お前の姿って」
「マ〇オ?」
「何でもない、忘れてくれ。叢雲牙、元に戻ってくれ」
龍牙王が男の事を何故か叢雲牙と呼んだ。そして男は光り出すとその姿を黄泉の剣へと姿を変える。剣となった叢雲牙は龍牙王の手の中に納まった。叢雲牙を背に背負う。
「あにき!その剣なんだ!?カッコイイ!」
「夜叉、これがカッコイイのか?」
「変身できるってカッコイイ!」
龍牙王はそれを聞くと、夜叉を降ろして人間よりは大きいサイズの狗の姿へとなり、お座りの格好をしている。
【我も変身できるぞ】
「犬だ!」
夜叉は大きな狗の姿に興奮し上に乗って遊んでいる。桔梗はキラッキラッとした目をしながら、狗となった龍牙王を見ている。桔梗は神社の社務所に走って行く……しかし直ぐに戻ってきた。その手には市販で売られている様なドッグフードを入れた皿を持っている。
それを見た、母親巫女達は顔を青ざめさせている。確かに狗に変化しているものの、相手は神。
当の
「待て」
【ワン】
「お手」
【ワン】
そう言って大人しくお手をする
「食べてよし」
その合図で皿の上のドッグフードをペロリと平らげた。
「ドッグフード、うまいのか?」
夜叉はドッグフードの味を聞いている。
【近頃のドッグフードは美味いな。昔に陽菜に喰わされたのと比べると随分と良くなった】
どうやらドッグフードを食べるのは初めてではないらしく感想を述べた。桔梗は狗となった龍牙王を撫でており、夜叉は身体の上で飛び跳ねている。
悪い事をすれば叱りはするが、基本的に子供のする事は何でもOKな龍牙王である。
~夜~
龍王神社の神殿で寝転んでいる龍牙王、彼の前には陽菜が正座していた。
「ぐぅ~……かぁ~」
「すぅ……すぅ……」
食事を終え、風呂に入ると龍牙王の尾に抱き着いて眠ってしまっている夜叉と桔梗。どうやら遊び疲れた様だ。
「今日も子供達と遊んで頂き、ありがとうございます龍王様」
「構わんよ、我も楽しかったしのぅ」
陽菜にそう言われると、龍牙王はそう返す。
「それにしても……子供と言うのは成長が早い。ついこの間まで赤ん坊だと思っていたのに、もう走り回るほど成長している。フフフ」
自分の尾の中ですやすやと眠っている夜叉と桔梗を見て、2人が寒くない様に尾で包み込んだ。
「龍王様……貴方様から見て2人はどうでしょうか?」
「どう……とは?」
「2人はこの地を護っていけるでしょうか……儂にとって曾孫である2人は目に入れても痛くない可愛い子等です。ですが、2人はこの地の守護者としては優し過ぎると思います」
「お前の時も言ったが、役目を継ぐかどうかを決めるのはこの子等だ。役目を継がないと言うならそれで構わん、今の時代はこの子等にとって生きにくいのかもしれん……この子等が唯人として生きていくと言うなら、それでいい」
「ですがそれでは……」
陽菜は今まで続いてきたこの地を護る役目を放棄するなど、考えた事もなかった。何故なら龍神たる龍牙王の弟の血に連なる一族であり、この地を代々護ってきた。役目を継いできた者達もそれに誇りを持っていた。村の人々も彼等も龍牙王を崇め、役目を継いだ者達に感謝していた。
だが近年に科学の発展と共に信仰は失われている。夜叉や桔梗達の様に妖怪やこの世ならざる者達を視る事のできる者達は気味悪がられることもある。
龍牙王はこれまでずっと見てきた………犬夜叉と桔梗、楓の子孫達。どの様な時代であっても変わらずに自分に仕えてきた彼・彼女達……今でも鮮明に皆の事を思い出せる。もし、彼等の血と意志を継ぐ夜叉達が苦しむのであれば継ぐ必要はないと考えている。
「決めるのはこの子達だ………まだこの子等が役目を受け継ぐ歳まで時間はある。その時まで我は待とう」