狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第14巻 学園生活

 ~駒王街 山奥~

 

 

「【風の傷】!」

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!」

 

 駒王街の山奥で龍牙王は己が土地で悪事を働く醜い怪物に向かい鉄砕牙の必殺技である「風の傷」を放った。「風の傷」を受けた怪物は悲鳴を上げ、バラバラになってしまった。

 

 

「ぐがっ……こん……なはず……じゃっ……なか……たのに」

 

 頭部だけが残り、怪物がそう言う。龍牙王はそれを見て、鉄砕牙を振り上げ、怪物に対して振り下ろしその命を絶った。

 

 

「……」

 

 龍牙王は鉄砕牙を振り、血を払うと変化を解き鞘に納めた。だが敵を倒したと言うのにその表情は晴れない。

 

 

「兄貴、そっちも終わったか?」

 

 声が聞こえ、そちらを向くと刀を二振り持った銀髪の少年と弓を持った巫女が此方に向かって歩いてきた。

 

 

「あぁ……夜叉も桔梗も怪我はないか?」

 

 

「あぁ」

 

 

「はい……それにしてもこの所、多いですね」

 

 この少年達こそ、夜叉と桔梗が成長した姿だ。そして桔梗がそう龍牙王に言う。

 

 

「はぐれ悪魔……元々は人間や妖怪や魔物が悪魔に転生した者達。そして主に棄てられたか、力に飲まれ気に触れ狂ったか。確かにこの所は奴等も多い、かと言ってこの街を完全に結界で閉ざす事はできぬからな。こうして倒していくことしかできない」

 

 

「確か結界で閉ざすって言うのは、気の流れも止めちまって、街全体の気が悪くなるからだっけ?」

 

 龍牙王の言葉に夜叉がそう聞いた。

 

 

「そうだ。土地神である龍牙王様がこの街の気を管理しているからこそ、街の気が安定している。だが部屋と同じで、換気しなければ気が淀み、悪くなる」

 

 夜叉の言葉に桔梗がそう答え、話していると龍牙王はその様子を懐かしそうな眼で視ている。500年前の2人の前世の事を思い出しているのだろう。

 

 

「フフフ……おっともうこんな時間だな。2人は社に戻り休め、朝から学園だ」

 

 

「面倒だな……第一勉強なんてして意味あるのか?」

 

 

「夜叉。確かに学校での勉強が全てではないが、『学生』という時期は一刻しかない。友人と遊び、恋をする、勉学で苦悩するなどは良き思い出となる。我はお前達のその時を堪能して欲しいのだ」

 

 

「兄貴の言う事は偶に難しいな………まぁ一誠達と遊ぶのは楽しいけど……そういや明日は体育があったな」

 

 

「そう言えばそうだな」

 

 

「ならっアイツ等を縛り上げておこう。着替えを覗かれちまう」

 

 

「フフフ、お前は優しいな夜叉」

 

 

「べっ別にお前の為じゃねぇよ!俺が嫌なだけだ!俺は帰る!」

 

 夜叉は顔を真っ赤にしながら神社に帰って行く。桔梗はそれを見て笑みを浮かべ、龍牙王に一礼すると夜叉の後を追った。

 

 

「全く、アイツは相変わらず素直じゃない。あぁいう所は前世()と変わらんな……さて我はもう1度、街を見てから戻るとしよう」

 

 龍牙王は夜叉と桔梗を見送ると、空へと舞い上がり街を見まわるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~朝 駒王学園前~

 

 

「ふぁ~……眠ぃ」

 

 

「夜叉、襟がおかしくなっているぞ」

 

 2人はこの街にある駒王学園の制服に身を包んでいる。

 

 眠そうに欠伸をしている夜叉の乱れた制服をその手で直している桔梗。それを見て、周りの登校している男子生徒達は夜叉に対して嫉妬の目を向けている。女子生徒は黄色い声を上げている。

 

 

「夜叉、桔梗」

 

 

「あっ兄貴、それにチビ共」

 

 夜叉と桔梗が声のした方向を見てみると、髪が短い龍牙王と白い2人の少女と、少女に抱き着いている女性が立っていた。

 

 

「誰がチビですか……おはようございます、桔梗先輩」

 

 

「夜叉、桔梗……おはよう」

 

 

「おはようございます、龍牙お……龍牙くん、白音、神無」

 

 

「おはよう。それにしても熱いわね、御二人さん」

 

 

「うんうん、黒歌の言う通り……熱い熱い。まだ夏は遠いんだけどなぁ」

 

 恐らく人間に化けている龍牙王はそう言うと、手で顔を扇いでいる。

 

 龍牙王……この学園では天龍 龍牙と名乗っており夜叉とは親戚と言う事になっている。まぁ実際に血は繋がっているが。

 

 白い少女達は天龍 神無と天龍 白音。白音はかつて龍牙王が助けた猫魈の姉妹の妹だ。残り2人は天龍 黒歌。黒歌もまた龍牙王が助けた猫魈の姉妹の姉である。

 

 

「おっとイチャつくのもいいが、そろそろ行かないと遅刻だぞ」

 

 龍牙王がそう言うと、皆もはっとして学園へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―さて、まずは状況を説明しよう。

 

 我が何故、人間に化けて学園に通っているかと言うと……記憶が曖昧になっているが、原作の悪魔達が此処に通っているからだ。夜叉と桔梗に手を出されるのは困る……2人ともしっかりしてるから問題ないだろうが……悪魔の駒は強制的にでも転生悪魔にできるからな。それと暇潰しだ。

 

 次に黒歌達は我が保護して、我が眷族となった。眷族と言っても転生悪魔の様な物ではなく……何と言えばいいのか、神使の様な物だ。とはいっても名だけのものだがな。

 

 神無の紹介はしてなかったか。奈落の分身の神無と似ているが全くの別人、とある山奥の忘れ去られた社に中にあった神鏡に宿る神だ。偶々通りかかって我が眷族として地を管理するのを手伝って貰っている。因みに神楽の方は、同じ社で見つけた扇子の付喪神だ。

 

 いやぁ、2人に力をやって実体化した時はびっくりしたなぁ……奈落の分身に似てるから、個人的には2人は好きなキャラだったのでいいが。

 

 3人が学園に通っているのかと言うと、我だけでは夜叉達は守れても、もしもの時に他の者も護れない可能性もある。後、3人には人と接して欲しいという個人的な願いもある。神楽は?

 

「制服なんて着れるか!足元がスースーする!大体、スカート短すぎだろ!」だそうで、入学を拒否した。確かにアイツの洋服ってズボンかロングスカートだな。一度「色気ねぇ」と呟いた時は本気で怒られたが……。

 

 因みに、夜叉と桔梗、我と黒歌は現在2年、白音と神無は1年である。エロガキ……もとい主人公の兵藤一誠とは同い年、同じクラスである。松田と元浜と共に女子の着替えを覗くので、我と夜叉で縛り上げるのが日課になっている。今の所、我等の正体は悪魔共にバレてないので問題ないが……夜叉達に手を出しやがったら、天下覇道の三剣の力を嫌と言う程味あわせてやる。

 

 

 おっと、そろそろアイツ等が覗きに出る時間か……縛り上げにいこうっと。我が土地の子供と言えど覗きは駄目だよ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こらぁ!三馬鹿共!大人しくお縄につきやがれ!」

 

 

「テメェ等!覚悟しろ!」

 

 

「やべぇ!龍牙と夜叉だ!逃げろ!」

 

 

「「おう!」」

 

 縄を持った龍牙と夜叉は今日も三馬鹿を追い掛けるのであった。


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