狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第17巻 土地神としての日々

 ~数年後~

 

「こらっ!痛い!髪を引っ張るな!尾の毛を毟るな!

 

 身体にぶら下がるな、落ちたらどうする!」

 

 

「あらっあらっ駄目ですよ、龍牙王様に失礼しては」

 

 子供達の玩具と化している龍神様を見て、他の子供達と薬草を取っているアイリ。

 

 アイリに心を気付かされてから、龍牙王は人間達とよく接する様になった。赤ん坊が泣いている時にあやす為に狗の姿を見せてからというもの、子供達に懐かれている。子供達が怖がらない様に青年だった姿を、少年の姿に変えたりと本人も満更ではないようだ。

 

 

「うがぁぁぁぁぁ!いい加減にしろぉぉぉぉ!」

 

 

「きゃぁぁぁ!龍王さま、おこったぁ!」

 

 

「「「おこったぁーー!」」」

 

 

「にげろーーー!!!」

 

 逃げ回る子供達を追い掛ける龍牙王。

 

 

「ぜぇぜぇ……子供って……なんでこんなに…体力ある……んだ!?」

 

 子供達を捕まえると、肩で息をしている龍牙王。神でも活発な子供達の相手はかなり体力を使うらしい。

 

 神さえも疲れさせるとは、恐るべき子供の体力だ。

 

 

「「「「たべられる~」」」」

 

 

「誰が食うか……全く…アイリ、そろそろ戻るぞ」

 

 

「はい、では皆……戻りますよ」

 

 

「「「はぁ~い!」」」

 

 アイリに言われて、素直に返事を返す子供達。

 

 

「お前等、アイリには素直だな………一応、我は神だぞ。アイリより偉いのだぞ?」

 

 

「ぇ~だって龍王さま、何時も屋根の上で座ってるだけだもん」

 

 ―グサッ―

 

 

「アイリ様、忙しいのに龍王さま、寝てただけだし」

 

 ―グサッ―

 

 

「お日様、出てるのにお酒飲んでた!」

 

 ―グサッ―

 

 

「「「「それに龍王さまより、アイリ様の方が綺麗で優しいもん!」」」」

 

 

「そっそんな事、ありませんよ。龍牙王様は」

 

 

「もう知らぬ……尻尾も触らせてやらん、狗にもならぬ」

 

 

「「「「龍王さま、ごめんなさい!龍王さまは凄く優しいです!」」」」

 

 

「現金な奴等め……子供の内はそれでもいいか。良い事をすれば褒め、悪い事をすれば叱る…………子供を育てるのは難しいものだ」

 

 そう言いながら、狗へと変化する。

 

 

「フフフ、では皆さん還りますよ。龍牙王さまに乗せて頂きましょう」

 

 

「「「「はぁ~い」」」」

 

 アイリと子供達は狗へと変化した龍牙王の上に乗った。

 

 

【では戻るぞ……皆、しっかり掴まっていろよ!】

 

 そう言い、龍牙王は空へと駆け上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~龍牙王の社~

 

 日はすっかり落ち、この社の主・龍牙王は空を見上げていた。夜空には雲1つなく沢山の星が輝いている。

 

 

「龍牙王様、どうかなさいました?」

 

 

「星を見ていた………明日は雨だな」

 

 

「雨?こんなにも晴れているのにですか龍牙王様?」

 

 

「風に雨の匂いが混じっている………少し荒れそうだな」

 

 

「そうですか………」

 

 

「どうした?」

 

 何やら不安そうにしているアイリの顔を龍牙王は覗きこむ。

 

 

「いぇ……最近、何やら不安でして」

 

 

「不安………案ずるな、この地には我がいる。我がいる限り、お前にも、子等にも手を出させぬから安心しろ」

 

 そう言うと、自分の尾を彼女に巻き付けた。アイリはモフモフな暖かい尾で包まれているため、少し安堵した様子だ。

 

 

(この胸騒ぎは一体なんでしょうか?)

 

 

「今日はもう休め………夜も遅い」

 

 

「はい……ではお休みなさいませ」

 

 

「あぁ……お休み」

 

 龍牙王はアイリにそう言うと、社の屋根の上へと上がった。屋根の上に乗ると突然、眠気が襲いかかり、その場に膝を付いた。

 

 

「今回は早いな。だけど未だだ……せめてこの地が安定するまでは眠る訳にはいかん」

 

 眠気を振り払う様に首を振ると、立ち上がると村を見降ろした。まだまだ

 

 

「龍眠は逃れられない。今回ばかりは半龍半妖の我が身が呪うぞ……一度完全に眠ってしまえば数十年は眠ってしまう。その間、此処の護りは守護狗達だけじゃ………天照達に頼むか。どちらにしても天岩戸を借りなきゃならんし……明日、行ってみるか」

 

 そう呟きながら、視線を再び夜空を見上げようとするが……覚えのある匂いを嗅ぎ取り、溜息を吐くと匂いのする方向に向かい駆け出した。

 

 

 

 

 

 ~???~

 

 

「レドラ様」

 

 

「おぉ、爺か。それで例の噂は?」

 

 

「はい、確認してまいりました。凄まじい力の秘めた土地でございました……ただ、あの土地には凄まじい力を持つ者が居りまして……ですが噂では伝説の裁龍神が治める地だとか」

 

 

「裁龍神……ぁあ、あの噂の龍神か」

 

 

「はい……なので少し様子をみた方が」

 

 

「フン、噂や伝説には尾ひれがつくものだ。伝説の龍神を倒したとなれば私の株も上がる……それに所詮は神など純血悪魔であり、アスタロト家の次期当主の座を約束された私にはとるに足らん存在だ……ククク……アハハハハハ!」

 


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