~一誠side~
―俺は先日彼女に殺されかけました。彼女は人間でなく堕天使と呼ばれる存在だったらしい、彼女は俺に宿る
結構なトラウマなんだが……良い事も在った。それは龍王さまに直に会えた事だ。龍かと思っていたけど人間の姿をしていた。夜叉や日暮さんによると、アレも龍王さまの姿の1つで龍の姿もあるらしい。
この街についても色々と話を聞いた。身近な人々の殆どが妖怪だと言うのがかなり驚いた。
魚屋のおっちゃん、おばちゃん。
八百屋のお姉ちゃん。
駄菓子屋の爺ちゃん、婆ちゃん等々、小さい頃から世話になっていた人達が妖怪とか結構びっくりした。
聞けば聞くほど、驚きの連続であるが………あの憧れのリアス先輩や生徒会長が悪魔だと聞いた時は固まってしまった。なるほど、あの巨乳は人外の……と納得した。何でも龍王さまは悪魔を嫌っているらしい。
夜叉達には恐らく接触してくるだろうから気を付ける様に言われている。何か在った場合は、彼等も動くらしい―
「兵藤君……ちょっといいかな?」
そう言って俺に声を掛けて来たのは木場祐斗……イケメン許しまじ。
「えっと確か木場だったよな……俺に何か用か?」
「うん……部長……リアス・グレモリー先輩に君を呼んでくる様に頼まれてね」
「ぇ……あぁ……分かった」
夜叉と日暮さんに視線を向けると頷いた。どうやら接触してもいいらしい。
「それと天龍くんと日暮さんもいいかな」
予想外に木場は夜叉達にも声を掛けた。
「……あぁ、いいぜ」
「私も構いません」
「ありがとう……もう1人の天龍君は?」
「兄貴は家の用事でな……この所は学園に来てない」
「そう……」
こうして俺達はオカルト研究部に向かう事にした。
女子達が「一×祐!?」「祐×一よ!」「リアス先輩が毒牙に!?」等々と言っていた。
~side out~
~オカ研部室~
この部屋の主…リアス・グレモリーとその傍に控える副部長・姫島朱乃………彼女達に対峙する様にソファーに座っている夜叉、桔梗、一誠。夜叉は今にも襲い掛かりそうな雰囲気を放っている。
「初めまして、私の名はリアス・グレモリー……横に居るのが副部長の姫島朱乃よ」
「あっ……はい!宜しくお願いします!」
リアスと朱乃の胸に視線を集中していた一誠がそう返事を返す。
「もうお分かりでしょうが、私達も自己紹介をしておきましょう。
私の名前は日暮桔梗……龍王神社・龍神神社の巫女です。隣にいるのが天龍夜叉……龍王神社の現神主です。
今日は何用でしょうか、悪魔の方々」
桔梗がそう言うと、リアス達は少し驚いた様な表情をしていた。
「私達を悪魔と知っているという事は貴方達も此方側の人間なのね……なら話が早いわ。先日、その兵藤一誠が襲われているのを目撃したわ。
偶々……本当に偶然に堕天使の結界を発見し、入ってみるとその子が襲われていた。でもそこにある存在が現れた。
白銀の髪、3本の尾、3本の剣を携えた男……剣圧だけで堕天使を退けた。只者ではないのが分かった………彼を連れていく際に此方にも気付いていた様だけど……『此処は私の管轄地』…けど私の知る限り、この土地にあんな存在はいない筈なのよ」
リアスの言葉に反応して夜叉が動こうとするが、桔梗に制されて止まった。
「それは貴女が知らぬだけの話………あの方はこの地を統べる御方です。古よりこの地を護り、生きる者達を護る慈悲深き神………我等が仕える龍神です」
「ではあの者がこの地の土地神?」
「その通りです………その前に1つ御伺いしたのですが?」
「どうぞ」
「お前達、悪魔は誰の許可を得てこの地を己が地だと言う」
桔梗から霊力が溢れ、オーラの様に身体を覆う。
「「「!?」」」
「我等も、我等が主も、お前達がこの地を管理する事など認めていない」
龍牙王は過去の一件から悪魔を忌み嫌っており、それを知っている桔梗達………故に彼女達の発言が許せなかった。
この地は永く龍牙王と先人達が護り、育んできた土地だ。多くの命が、想いが染み込む地を悪魔が自分の管轄地だと言った。それを許せる筈はない。
「どう言う事かしら……私達、悪魔はこの地の神の許可は得てこの地で活動をしているわ」
「はぁ!?そんなこと、ありえねぇ!」
夜叉がリアスの言葉を否定する。
「どうしてそう言えるの?」
桔梗はこのままでは夜叉が余計な言いそうなので、少し落ち着かせた。夜叉もそれを理解したのか、何も言わなくなった。桔梗も自らを落ち着かせると、少し考え始めた。
「……我等が主はとある理由から悪魔を嫌っております。本来であれば一歩たりとも悪魔をこの地に入れたくない筈ですが……事情があり、それができない故に悪魔がこの地に踏み入る事を見過ごしていると言うのが我等の状況です」
「………では私達が虚偽を言っていると?」
「少なくとも我等はそう考えている……悪魔が自分達の種族へと転生させる
それは貴女達がよく理解している筈だ……
それを貴女がした訳ではないのは、貴女の後ろの眷族達を見れば分かる………悪魔がそれを行ったのは事実。そう簡単には信じる事はできない」
「ッ!」
「故に私は問います………異国の魔よ。お前達はこの地に害を成す我等の敵か?」
「……………っ………いいえ、少なくとも私達はこの地に害成す事はないわ」
それを聞くと、桔梗は自分の霊力を抑え何時も通りに戻る。
「………そうですか……今はその言葉を信じ此処で争う事はしません。どうやら事は……私や貴女では判断できぬ状況になっている様ですね。私は我等が主にこの話を持って帰りましょう………あの方が怒り狂いそうな内容ですが………致し方ありませんね」
桔梗は座っていたソファーから立ち上がると、そのまま部屋を出る為に扉の方に向かう。後に夜叉と一誠が続いていく。夜叉はともかく、一誠はこの場に居づらくなったらしい。
「なんとか、我等が主には話し合う様に進言してみます………話し合いが終わるまで、貴女方は下手に動かない事をお勧めします。恐らく、この土地に古くから居る方々は悪魔に良い印象はないでしょうから」
桔梗はそれだけ言うと、夜叉達と共に出て行った。
「………朱乃、直ぐにお兄様に連絡を。それにソーナにも……この件は私達の一存では決められないわ。それと暫くの間、外出は控える様に……彼女の言葉が本当であるなら危険よ」
「分かりました……それにしても予想以上に事態は大変な事になってきましたわね」
「えぇ………でも私達が考えている以上の事になりそうね。兵藤一誠の件以来、この地を『何か』が覆っている………多分これは悪魔にとって致命的なものよ」
一誠の件以来、龍牙王は本格的に動き出した。この地の総てを監視する為に、力の一端を解放した。彼の力は駒王の地を覆い尽くしていた、リアス達はそれを感じていた。
「恐らくこの地を覆うのは真の『神の力』……私もそれを感じていました。この力の主は強力な神………幾度か神社の近くに行き確認しましたがこれほど力は感じませんでした。恐らく力を隠していたのでしょう………それが出来るという事はかなり格の高い神なのでしょう……それこそ、魔王様クラスの」
「「なっ!?」」
元巫女である朱乃の言葉を聞き、驚いているリアスと祐斗。しかし朱乃は勘違いしていた………彼の神は魔王と同等なのではない。
「急いで動いた方が良さそうですわね」
朱乃はそう言うと、その場を後にする。
(でもこの力……何処かで……未だ母様と共に居た時に感じた事がある様な………今は私のすべきことをしないと)
朱乃は頭を振り、切り替えると再び動き始めた。