~龍王神社 早朝~
「ぜぇぜぇ………」
「一誠、この程度でばててたら駄目だぞ」
龍王神社の長い石階段の上で、ばてているジャージ姿の一誠。その横には同じ夜叉と龍牙王が立っていた。
《この程度でばてるなんて情けない》
一誠の左手の甲が緑色に光っており、そう声が聞こえた。
「そう言うな、ドライグ。人間はな、弱いものだ。お前だって、それは知ってるだろう?」
《知ってるけど………エルシャやベルザード、他の私の歴代の宿主に比べるとなぁ》
「あのな、昔と今じゃ色々と違うんだ……ほれっ、夜叉、一誠、もう1本だ」
「仕方ねぇな、行くぞ一誠」
「おっおう……」
そうして、夜叉と一誠は石階段を下りて行く。どうやら、石階段を上がったり下りたりしている様だ。龍牙王は彼等が降りて行ったのを確認すると、鳥居の上へと昇り街の方を見降ろしていた。
何故一誠がこんな事をしているのかと言うと……
~アーシアの一件が終わった翌日~
事が終わって、何時もの日常を取り戻していた龍王神社。龍牙王は事後処理を終え、アーシアとゆっくりしようと考えていた。
「久しぶりだな、アイリ」
「本当に久しぶりね~」
高天原よりやって来た太陽神・天照大御神と銀髪の女神。
「お久しぶりです、天照様、月読様。えっと今はアイリではなく、アーシアです」
「おっそうか、じゃあ改めて宜しくな、アーシア」
「また宜しくね、アーシア」
そう言う、太陽神と月神。天照が居るのは分からなくも、ないが何故その妹神がいるのだろう?
「アーシア、こっちに天照、月読が………って何しに来たんだお前等?」
「あっダーリン!」
月読は龍牙王の姿を見ると、彼に飛び付いた。
「ぐぉ………毎度言うが、飛び付いて来るのは止めろ」
「妻を抱き留めるのは夫の役目じゃない」
「ハハハ、月読。妾なら許すが、正妻はわ・た・しだからな」
「あらっ、姉さん。正妻はわ・た・し」
―ギュー、ミシッ―
そう言って、龍牙王を抱き付く力を強くする月の女神。
「月読……」
―メキィ、メキィ―
天照は月読を軽く睨むと、天照は一瞬で龍牙王の前に移動して彼に飛び付いた。現在、天照は龍牙王の頭を抱き締める形となっている。頭から変な音がしているのは気の所為だろう。
「わっ私もします~」
アーシアも負けじと龍牙王に抱き付いている。端から見ればハーレムだ………見えない女の戦いがなければ。
―メキッ!ボキッ!―
―ミシッ!バキッ!―
「~~~~~~~」
龍牙王の顔は天照に抱き締められている為に声を出す事は出来ない。
「兄貴……ちょっといいk……」
「失礼しm……」
タイミングの悪いのことにその場にやって来た夜叉、桔梗、一誠。勿論、その様な場面を見れば固まってしまうのは仕方がない事だろう。
「……はっ……ハーレム………リアルハーレムだ。しかも美少女ばかり」
「「お邪魔しました」」
夜叉と桔梗は一誠を連れてその場を離れていった。
「~~~~~~~~~~~~(助けて~!潰れされる!)」
龍牙王の助けは届く事はなかった。
ヒロイン達が落ち着きを取り戻したことで、解放された龍牙王。
「しっ死ぬかと思った」
「あれくらいでお前は死なんだろう」
「そうね、ダーリンはあの程度では死なないわ」
龍牙王の強さを知っている彼女達なのだが、しっかりと左右から彼の両腕に引っ付いている。アーシアは流石に人前ではしない様だ。
「あのなぁ……まぁいい。気を取り直して……一誠、良く来たな」
「はっはい………」
「ぁ~此奴等は……」
「私は天照。高天原の主神で、此奴の妻だ」
「私は月読、姉さんの妹で、ダーリンの妻よ」
互いに妻と言う部分を強調している女神達。龍牙王を挟んで火花を散らし、2人から眩い光が放たれ、空間が歪み始めた。それを見ると、夜叉と桔梗は構えた。
2人は神だ………それも最高神とその妹だ。その気になれば街どころか、日本と言う国そのものを消し飛ばすなんて簡単な事なのだ。
「我の社を消し飛ばすつもりか……落ち着け」
原因は自分なのできつく言えないが、こんな事で自分の土地を消し飛ばす訳にはいかないので、落ち着かせる為に2人を尾で包む。
「悪い………熱くなり過ぎた」
「ごめんなさい、ダーリン」
「いや……まぁ……元の原因は我だし。
コホン、さて……一誠よ、今日はどうした?」
「あっ……はい、えっと……助けて頂いたお礼をと思いまして」
どうやら、命を助けられた事のお礼を言いに来たらしい。
「そう気にする必要はない。この地の子等を救うのが我の役目だ」
「それだけじゃ、ないだろ……さっさと言えよ」
彼の横にいた、夜叉がそう言う。
「でっでも……流石に畏れ多くて」
「ん?」
「兄貴、一誠が力の使い方を教えて欲しいってさ」
「ほぉ……力をね。一誠、何の為に力を求める?
確かにお前は
この地にいる限りは龍牙王が一誠に手を出させる事はないだろう。故に力を手に入れる必要はない。
「確かにドライグの力を手に入れれば、異性を引き付ける事ができるし、人を越えた力を手に入れる事ができる」
「いっ異性を引き付ける?」
「あぁ………そうらしい。まぁその人間の性格にもよるがな。だが……歴代の赤龍帝や白龍皇達は悲惨な結末を迎えている。出来ればお前にはそうなって欲しくない」
「でっでも……俺、今回の事で思ったんです………今のままじゃ、もし何か在った時に父さんも母さんも、友達を護る事ができないって。でも力が在れば」
「成程……まぁ確かに自衛程度は出来た方がいいか。それに鍛える事は悪い事ではないし……いいだろう、だがその前に一誠、ジッとしてろ」
龍牙王がそう言うと、一誠の胸の辺りに触れると、どういう原理かは分からないが龍牙王の手が一誠の身体へと入っていく。少しすると、身体から手を引き抜いた。
「???」
一誠は何をされたのか分からなかったが、自分の左手に違和感を感じた。左手を見てみると、赤い光に包まれて緑色の宝石の嵌め込まれた赤い篭手が装着された。
「久しぶりだな、ドライグ」
《出てきた早々、アンタと会うとか最悪だ》
一誠の篭手の宝石が点滅し始め、声が聞こえてきた。何故か声は叢雲牙に似ていた。この声の主こそ、一誠の
「おいおい、未だ昔の事を引きずってるのか」
《当たり前だ!お前が白いのと邪魔したあの時のこと、忘れたとは言わさんぞ!》
「なんだ、ちょっと放り投げただけじゃんか」
《あんなタコかイカ、良く分からん連中共がいる外宇宙までブッ飛ばしていてか?!白いのなんか、地獄まで堕とされたのにちょっとだと?!》
どうやら龍牙王からすればちょっとの事でも、彼等からすればちょっとの事ではなかった様だ。
「だってあの時は話を聞かずに、暴れ出したのはお前達だろう」
《ぐっ………確かに》
「それにあの時のクトゥルフの娘達にモテモテだったじゃないか」
《うおぉぉぉぉぉぉ!!やめてくれぇ~!!!思い出したくもない!!!》
余程、嫌な思い出でもあるのだろう………とても声が震えている。
「クトゥルフって……あのクトゥルフですか?」
どうやら一誠もクトゥルフの名を知っていた様だ。
クトゥルフとは「クトゥルフ神話」に登場する架空の神性……または宇宙生物の事である。一般的にタコやイカと言った様な姿で表現されている。
「あぁ、今やゲームやらで有名な連中だ。架空の存在と言われてるけど、外宇宙に存在してるぞ……まぁ……見た目はアレだけど、話せば結構楽しい連中だぞ。まぁいい……それよりお前の現在の宿主の事なのだが」
《あぁ、見てたよ。間違いなく、歴代最弱だろう……まぁ鍛えれば身を守るくらいには強くなるだろうよ》
「あぁ、お前にも協力して貰うぞ」
~回想終了~
~現在 龍王神社~
「じゃあ、ドライグの力で限界まで倍加してみろ」
「はい!ブースト!」
【Boost!Boost!Boost!Boost!Boost!】
一誠に宿る
「5回か………始めた頃は2回、それに比べたら増えたな………まぁ
「でもこれで少しはマシになったんじゃねぇか?」
龍牙王と夜叉がそう言い合う。
「あぁ……まぁ小物の妖怪くらいなら倒せるくらいだろう。じゃあ今日は此処まで……2人ともシャワーを浴びて来い。汗かいたまま学園には行けぬだろう」
「「はい(おう)」」
2人は汗を流す為に神社の中へと向かった。
「ふぅ……さてと。飯を喰いに」
―カッ!―
龍牙王も神社の中へ戻ろうとすると、雲も出ていないのに雷が彼の横に落ちた。
「刀々斎か……珍しく出てきおったか」
「ぉ~久しぶりだな、龍牙王」
現れたのは三つ目の牛の妖怪・猛々に乗った闘牙王の側近の1人、刀匠・刀々斎だった。
「実はちぃ~とばかしややこしい事になっちまってな」
刀々斎が龍牙王の耳元で何かを呟くと、彼の表情が強張った。
「まさか封印が解けたと?親父の封印を解くなど……そう簡単には」
「封印は解けてないと思うぜ。お前さんの言う様に親方様の封印が簡単に解けない筈だぁ……でもよぉ、跡形もなく消えちまったんだ」
「そうそうに消し去るべきだったな………放置していた我の責任か。しかし一体誰が」
何者かの思惑がこの地に何を齎すのか、彼等はまだ何も知らなかった。