狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第33巻 復活、大妖怪・飛妖蛾!

 ~冥界 中央研究領 上空~

 

 ー瑪瑙丸により解かれた時代樹の封印。

 

 朽ちた飛妖蛾の肉体、しかし残った膨大な妖力は継承の儀式により息子・瑪瑙丸に引き継がれようとしていた。

 

 研究施設を丸々飲み込んだ時代樹と瑪瑙丸。彼等は周囲から魂を奪い、更に強大な存在になろうとしていたのであった。

 

 これを倒すべく、龍牙王さまやその御一同が冥道を通り冥界へ向かうのであった。

 

 がみょん、がみょんー

 

 

【冥道残月破!】

 

 継承の儀式を行っている瑪瑙丸の上空に開いた冥道。そこから現れた龍牙王とその一同、そして魔王達やリアス・グレモリーやソーナ・シトリーといった悪魔達。

 

 

「チッ、もう儀式が始まってたか」

 

 龍牙王は下にある変貌した時代樹を見た。

 

 

「兄貴、あれが飛妖蛾って奴なのか?」

 

 

「いや、我の知る飛妖蛾はもっと違った形だった」

 

 

「龍牙王さま、時代樹の目指して集まってくるあれはもしかして」

 

 アーシアは時代樹に向かい集まってくる光球を指差す。前世の巫女としての知識がある為に、あれが何なのかが分かっていた。

 

 

「周辺に存在する生命の魂だ………まぁ周囲に存在するのは悪魔だ、故に悪魔以外に在り得ぬだろうがな。それで冥加、アレはまだ完全体ではないな?」

 

 龍牙王が自身の肩に乗っている蚤妖怪・冥加にそう訪ねた。

 

 

「はい、そうですじゃ。まだ完全に終わっておりません……………あの龍牙王様、そろそろこれを外して頂けませんか?」

 

 冥加は臆病な性格で何時も直ぐに逃げ出すが現在、龍牙王の髪で縛られており逃げる事が出来なかったのである。何故、冥加が此処に居るのか、かつての飛妖蛾と闘牙王の戦いを目撃したであろう者だから龍牙王に連れて来られたらしい。

 

 

「離すのはいいが………此処は表層とは言え冥界の一部だ。我から離れると魂がどうなっても知らんぞ」

 

 

「嘘ですじゃ!この冥加、龍牙王様と共に飛妖蛾に立ち向かいますぞ!」

 

 どうやら死にたくない様だ。

 

 

「それで……親父は奴とどう戦ったんだ?」

 

 

「ぇ……そっそれは……そのぉ……」

 

 

「………逃げたのか」

 

 

「でっですが!親方様にしても、龍牙王様にしても、無茶ばかりし過ぎなのですじゃ!」

 

 

「はぁ……全く……夜叉、冥加を預っておけ」

 

 髪ごと冥加引っ張ると、冥加を夜叉に預けた。

 

 

「お前達は下がっておけ………どうなるか、分からんからな」

 

 龍牙王はそう言うと、手に持っていた天生牙を鞘に納め、代わりに鉄砕牙を引き抜いた。そして継承の儀式を行っている、瑪瑙丸の元へと向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在、時代樹と融合し、継承の儀を行っている瑪瑙丸。彼は紫色の巨大な繭に包まれた状態になっている。

 

 龍牙王は繭の高さまで降りてくると、鉄砕牙を向けた。

 

 

「チッ……一足遅かったか」

 

 そう言うと、龍牙王は直ぐにその場から離れ、繭から距離を取る。次の瞬間、繭にヒビが入り出した。

 

 

「さて……これからどうしたものか」

 

 

《おおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!》

 

 繭の中から現れたのは巨大化した瑪瑙丸が現れた。

 

 

「………」

 

 

《フハハハハハハ!!!まさか、目覚めて直ぐに貴様に出会おうとは……どうやら、運は私に味方しているらしい!》

 

 

「………」

 

 

《流石の貴様も、この我に力に恐怖したか!》

 

 

「ん~……えっとどちら様?何処かで御会いしました?」

 

 

《……なに?私の事を知らぬと?》

 

 

「あっ思い出した………飛妖蛾の息子の………め……め……め」

 

 

《そうそう》

 

 龍牙王は「め……め……め」と呟き続けている。

 

 

「ぁ~喉まで出かけてるんだけどな………め…………名前なんだっけ?」

 

 

《瑪瑙丸だぁ!……いや継承の儀式を終えた今、名は飛妖蛾になるが私の事を忘れただと!?あれだけの屈辱を与えておいて!!!》

 

 

「我、何かしたか?」

 

 

《我が剣を避け、その直後私を踏み台にしたではないか!!!》

 

 

「ぁ~……そういやそんなことしたな。でも戦時だったし仕方ないだろ」

 

 

《戦の最中である故にそれに関しては何とも思っていない》

 

 

「じゃあ何を?」

 

 

《あの後、幾度も貴様の元に向かっても私を無視し続けたではないか!!!》

 

 

「………居たっけ?」

 

 

《(ブチッ)死ねぇぇぇぇぇぇぇい!!》

 

 瑪瑙丸………もとい新たなる飛妖蛾は額の水晶から紫色の妖気の奔流が放たれた。妖気の奔流は真っ直ぐ龍牙王へと向かう。

 

 

「ふっ………おぉぉぉぉ!」

 

 龍牙王は妖気の奔流を鉄砕牙で受け止めると、別の方向へと弾き飛ばした。

 

 

「ふぅぅぅぅぅ………いい。クククククク………ハハハハハハハハハ!!!」

 

 龍牙王は突然、笑い始め、その表情は歓喜に満ちていた。

 

 

「成程、神族クラスの力は久しぶりだ………戦いはこうでないとな」

 

 そう呟きながら、鉄砕牙を鞘へと納める。これからの戦いだと言うのに、彼は何故剣を納めたのだろう?

 

 

「うぅぅ………グオオォォォォォォォォォ!!!」

 

 龍牙王の白目が血の様に紅く染まると、全身から凄まじい妖気が溢れ出した。そして、その身を巨大な白銀の狗の姿へと変化させた。

 

 

【他人など牙は不要!戦いは己が牙と爪をもって行ってこそだ!オォォォォォ!!】

 

 

《来い!忌まわしき狗の一族よ!我等が一族の命運をかけて、いざ!》

 

 

【《勝負!》】

 

 狗へと変化した龍牙王(闘牙王の息子)飛妖蛾の力を継ぎし者(飛妖蛾の息子)、古より居る大妖怪達の戦いが今、始まった。




・瑪瑙丸(めのうまる)


 飛妖蛾一族の唯一の生き残り。

 父親である飛妖蛾と共に封印されていたが、瑪瑙丸だけ数百年前に封印を解かれた。しかし父親の肉体は滅び、その力を受け継ぐ為には闘牙王の封印の牙に邪魔をされていた。

 当時それを破壊できる力を持つのは龍牙王の叢雲牙か殺生丸の鉄砕牙のみだけだった。だが両者とも協力などする筈がないのが分かっていたので、大陸へ戻り修行を行っていた。

 そして20年前に駒王の地にやって来た、使者だった悪魔を操り契約書にサインをさせた。総ては父・飛妖蛾の封印へ目を向けさせない為の作であった。それから20年は潜伏し、此度継承の儀式を執り行い、飛妖蛾の力を継いだ。龍牙王曰く、瑪瑙丸が数百年大陸で修業していたからか、その力は神族クラスへと上がっているらしい。

  

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