狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第42巻 代償

 ~冥界 都市ルシファード~

 

「………すまない、グレイフィア。どうやら私達は疲れている様だ」

 

 

「そっそうだよね……疲れてるよね、私達。ぁ~ソーナちゃんを抱き締めて癒されたい」

 

 

「私もリーアたんとミリキャスを抱き締めたい」

 

 四大魔王はこのルシファードで会談をしていたが、グレイフィアより報告を聞いた。そして内容があり得ない事だった為に自分達は疲れていると判断し、現実逃避を始めた。

 

「残念ながら夢でもなければ、幻でもありません。皆様、お気を確かに御持ちください」

 

 

「嫌だぁ!もう魔王止める!家に引きこもる!」

 

 ファルビウムは現実を受け止めきれず叫び出した。

 

「そっそれで彼はなんと?」

 

 

「まっまさか悪魔と全面戦争とかじゃないわよね?」

 

 魔王達は(龍牙王含む)日本神話VS悪魔の全面戦争を想像した。守りに徹したとしても1日保つかどうか…………それだけは何としても避けなければならない。

 

「そっそれが…………『純潔悪魔の小僧が我が地で暴れても困る。恐らくこのまま放置すると我が地に害を成す可能性がある、本来であれば小僧の存在ごと消して悪魔も滅ぼしている所だ』」

 

 龍牙王の言葉をそのまま伝えるグレイフィア。それを聞いて、魔王達の顔から血の気が引いていく。

 

「『しかし報復され、地に被害が出るのは御免だ。なので貴様等に選択肢をやろう。

 

 1.ライザー・フェニックス(小僧)の処刑、2.悪魔と我との戦争』」

 

 

「「「「ッ!!!」」」」

 

 未来ある若い純血悪魔の命を取るか、戦争をするか。天秤に掛けてどちらに傾くかは言うまでもない。

 

「『その3.ライザー・フェニックス(小僧)と、小僧が侮る人間と妖怪を勝負させる。その結果、勝てば無罪放免、負ければ………』」

 

 

「まっ負ければどうなるんだ?」

 

 

「そっそれがそのある条件を絶対に飲めという事です」

 

 

「条件?」

 

 

「日本における悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の使用禁止と悪魔の駒(イーヴァル・ピース)の詳細情報とサンプルの提供。もし、ライザー様を処刑するにしてもこの条件は飲んで貰うとの事です」

 

 

「なっ!?」

 

 限定的とは言え悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の使用禁止、これはどうにかなるにしても、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の詳細情報と提供と言うのは拙い。悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は悪魔の数が極端に減少した事で危惧して開発した物、万が一にでもこれが他に出回れば大変な事になる。

 

 その種族に対応する様に改造する事も出来れば、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)に対する対策法を編み出す可能性もあるからだ。

 

 龍牙王の今回の目的は悪魔の駒を手に入れる事と悪魔達に力を示す事だ。

 

「もし従わない様なら…………天下覇道の剣の力を見る事になるとの事です」

 

 

「すっ直ぐにライザー君を呼び出してくれ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ~数十分後~

 

「サーゼクス殿、この度は息子がご迷惑を掛けた様で」

 

 ライザーと共にやってきた1人の男、彼はフェニックス卿。現在のフェニックス家の当主であり、ライザーの父親だ。

 

 現在ライザーは部屋から出されており、この場にいるのは四大魔王とその眷属、フェニックス卿だけである。

 

「えぇ……フェニックス卿、我々も正直困惑していますが、今回の件は悪魔全体の未来に係わる事です」

 

 

「はっ?」

 

 フェニックス卿はサーゼクスの言葉の意味が分からなかった。

 

 彼は今回、息子が呼び出されたのは婚約者であるリアスとの問題を起こしたと思っていたからだ。

 

「申し訳ない、サーゼクス殿。言葉の意味がよく分からないのだが……」

 

 

「この場での話は必ず内密に。我等、四大魔王の名の元に厳命します」

 

 サーゼクスや他の魔王達の真剣な顔を見て、フェニックス卿は事の重大さを改めて認識した。

 

 そしてサーゼクスが話を進めるにつれ、血色の良かった顔から血の気が消え、顔が真っ青になってしまった。

 

「でっ……では息子が負けた場合は」

 

 

「悪魔の駒に関する情報とサンプルの提供。ライザー君の事は入ってないが……万が一もある」

 

 

「なっ……何と言うことを……」

 

 

『おい、俺を何時まで待たせる気だ!』

 

 

『もう少しお待ちを』

 

 

『ふざけるな!』

 

 

「構わないよ、話は終わった。入りたまえ」

 

 扉が勢いよく開き入ってきたライザー。彼は完全に不機嫌になっている。訳の分からぬ者にやられ、上から物を言われた。貴族であり、ゲームで勝ち進み、現在絶好調の彼にはこれ以上の屈辱はない。

 

 彼はまだ自分の置かれた状況が分かっていない。

 

「これは、魔王様方がお揃いd『バキッ!』ぐぁ!」

 

 ライザーは殴り飛ばされた。

 

「父さん、何を「この大馬鹿者が!!!」」

 

 フェニックス卿がライザーを殴り飛ばしたのである。詳細は説明出来ないものの、息子が仕出かした事は知らぬ事とは言え悪魔の存在そのものを危険に晒した。父親としても平然とは居れはしないだろう。

 

「フェニックス卿、そのくらいで」

 

 

「しっしかし」

 

 

「御気持ちは分かりますが、今は話が先です」

 

 

「……分かりました」

 

 

「ライザー君。いきなりで、困惑しているだろう。でも、これは極めて高度な政治的な問題だ」

 

 

「どういう事です?」

 

 

「君が襲い掛かった者は、リアスがいる駒王の土地の神なんだ。

 

 勿論君は知らなかった事だろう。君が手続きも踏まずに乗り込み、無礼を働いた事にお怒りでね」

 

 

「だから、どうだと言うのですか?たかが、極東の島国の神でしょう?力で黙らせればいいではありませんか」

 

 

「事は政治的な問題、無礼を働いたのは此方側だ。

 

 そして、彼の神はかなり有名な神でね。日本の主神や神々に顔が利く。此処まで言えば分かるね?

 

 日本神話との政治問題に発展する」

 

 

「魔王ともあろう方々が揃ってどうしたのですか?

 

 神とは言え、島国で崇められている存在だ。我々、悪魔にとっては敵ではない!」

 

 ライザー・フェニックスは悪魔の駒を用いたレーティングゲームで勝ち進んでおり、現在一番調子の乗っている時期と言うことと、産まれながらの能力により倒された事がない故に自信過剰になっていた。

 

 そして、悪魔と言う高等な存在が島国の神になど負ける筈がないと思い込んでいた。

 

「先の件では油断して不覚をとりましたが、今度は絶対「ライザー君」」

 

 魔王達が凄まじい覇気を放つ。それは若輩であるライザーを簡単に黙らせた。

 

「君は確かに強い。若手悪魔の中でも期待をもたれている若者だ。しかし、覚えておきたまえ。

 

 上には上が居るということを」

 

 

 

 

 

 

 ~龍王神社~

 

「と言う訳で、2日後、ゲームを行う事になった。

 

 出て貰うのは夜叉、桔梗、白音、黒歌、神楽、神無、そして一誠だ。あの小僧とその駒である転生悪魔なら十分だろう」

 

 神社の神棚の前に座り、前にいる夜叉達にそう言った。その後ろには陽牙達も控えている。

 

「それは別にいいけど、何で一誠まで?」

 

 

「本人たっての希望だ。参加したいとな」

 

 夜叉は自分達の後ろに座っていた一誠を見た。

 

「だがよ」

 

 

「案ずるな、今回は悪魔共のゲームに乗っ取って行われる。

 

 一定以上のダメージを受ければ退場だ。死ぬことはないだろう。これも経験の1つだ。まぁ、試合までに禁手が出来た場合だけどな」

 

 

禁手(バランス・ブレイカー)?」

 

 

神器(セイグリッド・ギア)の奥の手と言う所だ。とは言え、アレは劇的な変化がなければ起こらない。出来て、その手前までだ」

 

 

「でもどうすればいいんですか?」

 

 

「本来なら身体の一部を取引として使う所だが、ドライグ」

 

 龍牙王が、一誠の中の赤龍帝ドライグに声を掛ける。一誠の左手に赤龍帝の籠手(ブースデット・ギア)が出現する。

 

 《代償無しじゃ無理だ》

 

 

「何とかしろよ」

 

 

 《例え、師であるアンタの言葉であろうと無理な物は無r「我はお前がチビの頃から見てる。つまりはあんな事やこんな事まで知ってるんだがなぁ。例えばティア」分かった!分かりました!逆らってすいません!師匠!》

 

 

「初めからそういやいいんだよ」

 

 

「りゅ龍王様ってドライグの師匠なんですか?」

 

 

「あぁ、コイツとアルビオンがチビの時から知ってるし、ドラゴンとして鍛えたのも我だ。

 

 だって言うのに、この恩知らず共は前の大戦の時には我に楯突いてきたからな。次があったらどうしてくれよう?」

 

 龍牙王が籠手を見ながらそう言うと、籠手の宝玉が震える様に点滅している。

 

「まぁいい。それで出来るんだな?」

 

 

 《あっ、あぁ。やろうと思えば出来るが、ただ、代償の代用品はいる。それに出来たとしても不完全な禁手で、時間制限もある……今の小僧じゃ、数分が限界だ。こればかりは、本人の能力の問題だからな》

 

 

「つまり、俺の実力不足か……」

 

 

「つい、この間、鍛え始めたばかりだ。そう落ち込むな、徐々にではあるが確実にお前は強くなっている。急く必要はない、少しずつ成長すればいい」

 

 

「はっ…はい!」

 

 龍牙王に言われて落ち込んでいた一誠が、そう返事を返した。確実に強くなっていると言われて嬉しいかったのだろう。

 

「さて…………代償だったか」

 

 龍牙王はそう言うと、自分の髪を1房抓むと、その爪で切った。そしてその髪に軽く息を吹きかけると赤い炎が灯り、赤い組紐に変化した。

 

「我の毛は1本だけでもかなりの力を秘めている。我が毛を束にし、これに純粋な龍の気を纏わせた。ドライグ、これが代償ならどうだ?」

 

 

 《確かに、アンタの力の詰ったそれが代償として使うなら十分だろう。だが、幾ら代償が凄い力を持っていても、力を受け止める小僧が弱けりゃ意味がない》

 

 

「どのくらい、保つ?」

 

 

 《小僧のスペックなら………そうだな、5分と言う所だろう》

 

 

「だそうだ。一誠、時間制限はあるが、禁手化すれば戦う事はできる」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「くれぐれも無茶はしない様に………じゃあ、リーダーを決めるとするか」

 

 組紐を一誠へ渡して、これからの作戦等を考えようとする龍牙王。

 

「あの、龍牙王様」

 

 

「どうかしたか、アーシア?」

 

 

「私も参加させて下さい」

 

 

「へっ?」

 

 真剣な表情で龍牙王に進言するアーシア。それと真逆に間の抜けた声と顔をする龍牙王。

 

 果たして、本当にアーシアも参加する事になるのだろうか?


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