狗の長兄が行くD×D   作:始まりの0

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第48巻 ゲーム終了

 ~特別空間 校舎 アーシア陣営拠点~

 

 教室の中央に設置された祭壇の前に正座するアーシア。その後ろには神無と神楽が居た。

 

「すぅ………はぁ………すぅ……はぁ。では始めます!」

 

 気合いを入れたアーシアは白い毛皮のついた神楽鈴を両手で掲げ、祭壇に向かい言の葉を紡ぎ始めた。

 

「『我等をその大いなる愛により、見守りし龍神に願い奉る。

 

 愛すべき地に、愛すべき民を、生きとし生ける者達を闇へと引き擦り込もうとせし魔を、その光により退け給え。

 

 闇に引きずり込まれし者達にはその光にて照らし給え』」

 

 アーシアは祝詞を紡ぎながら、立ち上がり、扇子を広げて舞を舞い始める。すると、彼女の周囲に光の球が出現し始める。

 

「こりゃ………」

 

 

「全ての厄災を払い、人々の幸を神へと願う【破邪救世の舞】」

 

 

「今じゃ途絶えた神代の舞……懐かしいねぇ」

 

 ―シャラン、シャラン―

 

 アーシアが舞を舞う度、鈴を振る度に、周囲の空気が浄化されていく。

 

 この舞は先程、神無と神楽が言った様に、魔や災いを討ち祓い、人々の幸せを、神へと祈願する舞。

 

 現代では既に忘れ去られてしまった物であり、現在舞えるのは前世の記憶を思い出したアーシアだけだろう。

 

 舞が後半に差し掛かっているのか、彼女の動きが激しくなり、それに呼応するかの様に彼女の周囲の光球は光を増していく。

 

(どうか……皆さんが無事で帰って来ます様に。

 

 龍牙王様……皆さんに御加護を)

 

 アーシアの願いは唯、それだけだった。誰も怪我することがない様に願いを込めて彼女は舞続ける。

 

【よかろう。存分に使うがいい】

 

 龍牙王の声が聞こえてきた。その声を聞いた瞬間、彼女は目を開き神棚の前に座すると両手を合わせた。

 

 ーパァン!ー

 

 手と手がぶつかる音と共に彼女の額に龍牙王の紋章が浮かび上がった。

 

「『祓い給え。清め給え』」

 

 彼女を中心に眩い光が溢れ出し足元には陣が展開し広がり続ける。陣と光はやがて教室全体を、校舎を、学園を、この空間全体を覆い尽した。

 

「【破邪調伏】」

 

 再度手を叩くと、邪を打ち砕き、魔を調伏する光がこの特別空間を包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ?!」

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 突如この空間全体に出現した光により、ダメージを負い、そのまま強制退場となった。

 

「これは………」

 

 

「破邪調伏………今や忘れ去られてしまった、太古の巫女の術だ」

 

 

「すっすげぇ………綺麗だ」

 

 空間全体を包む光は温もりを帯びており、とても美しい物で、見る者全てをを魅入らせた。

 

 こうして夜叉達とライザーとその眷属との試合は終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~現実世界 会議室~

 

「よくやったな。お前達」

 

 龍牙王は戻ってきた彼らに労いの言葉を掛ける。

 

「おう」

 

 

「ただいま戻りました」

 

 

「怪我はないな?」

 

 

「はい、だいじょうb………きゃ」

 

 アーシアが大丈夫だと言おうとするが、何故か何もない所で転んでしまった。それを予想していたらしく、龍牙王は直ぐに自分の尾を伸ばし彼女を掴んだ。

 

「なんで何もない所で転ぶんだい?」

 

 

「ぅう……何故転ぶのでしょう?」

 

 

「こいつは術以外の事は基本鈍くさいんだ。過去最高は1日24回転んだぞ」

 

 

「なっなんでそんなこと覚えているんですかぁ?!」

 

 

「我はお前との事は全部覚えているぞ。子供達と遊んでいる時の事も、間違って毒キノコを食べそうになっていた事も、勿論ねy「きゃあぁぁぁぁぁ!それ以上はダメですぅ!」もがもがっ」

 

 何を言われるのか想像できたアーシアは直ぐに龍牙王の口を塞いだ。

 

 女性陣も言いたい事が分かった様で冷たい目をしている。白音なんか龍牙王の横腹に拳を入れながら、「セクハラ最低です」と言っている。

 

 そんな光景を後ろから暖かい目で見守っている眷族一同。

 

「最後のは一体………」

 

 ゲームの光景を見ていた魔王達が呟く。

 

「破邪救世の舞により我の力を引き出し……破邪調伏にそれを上乗せする【破邪の龍光】。久しく見たが、見事よな」

 

 

「いっいぇ、私なんて………龍牙王様の御力ですし」

 

 アーシアの行った術・破邪の龍光は【破邪救世の舞】により主である龍牙王の力を借り、邪を打ち砕き魔を祓う【破邪調伏】の術を発動する事で広範囲の魔に属する存在を祓う術だ。

 

「ちょ……ちょっと待って、神の力を借りるなんて」

 

 

「はっ反則ではありませんか?」

 

 リアスとソーナがそう呟く。それもそうだ、アーシア陣営とライザー陣営のゲームに龍牙王と言う第三者の力が介入すると言うのは確かに反則とも言える。

 

「反則?アハハハハハハ!」

 

 龍牙王はそれを聞いて笑いを上げる。

 

「戯けた事を言うな。巫女とは神の声を聴き人に知恵を与え、時に神の力を借り邪悪を退ける者…………そのアーシア(巫女)が我の力を借りる事に何か問題があるか?」

 

 

「それは……」

 

 

「フン、何も知らぬ小娘共が………さてと……我が巫女とイチャイチャするのは帰ってから存分にするにして」

 

 龍牙王は土地神としてのスイッチが入ったのか、目が鋭くなり、覇気を纏った。

 

「此方の圧勝だな。さて、悪魔の駒と詳細を書いた書類を渡して貰おう。後、これより日本での悪魔の駒の使用は止めて貰おうか。 

 

 姫島朱乃については3日後の晩、神社にくる様に」

 

 結果、龍牙王側が勝利した。事前に決めていた悪魔の駒のサンプルと詳細を渡す様に龍牙王が言った。

 

「悪魔の駒は我等の中でも最高機密の物なのです。魔王の我等と言えどそう簡単に動かせる物ではないのです。どうか、暫くm「残念ながら待つつもりはない。土足で我の土地に入って来たんだ、それも貴様等との話し合いの後に…………知っていたにしろ、知らなかったにしろ、悪魔(ライザー)がこの地に入った時点で、我と貴様等との戦争なんだよ」ッ!」

 

 

「だが小僧1人とその眷属を消そうと我に益はない故に、取引してやったんだ」

 

 会談の後、魔王達は直ぐに駒王だけではなく、日本全土の悪魔の出入りを禁止の命を出した。だと言うのに悪魔(ライザー)は許可なく龍牙王の地に足を踏み入れた。これは本来で戦争を意味する。龍牙王がライザー達を消し、冥界に乗り込んでもおかしくないにも関わらず、それでは自分に益がない故に悪魔に取引を持ちかけた。

 

「まさかとは思うが………我の力を借りて勝ったのだからゲームは無効だとか言わぬよな?」

 

 龍牙王は魔王達を睨みながら背中に収まっている叢雲牙を鞘から引き抜いていく。

 

「従わぬならばそれでもよいぞ…………その代わり、それだけの代価は支払ってもらう」

 

 彼はそう言うと叢雲牙の剣先をリアス達に向けた。

 

「なっなにを!?」

 

 

「代価を支払って貰うだけのこと………言っておくがこの叢雲牙で殺された者は黄泉の亡者へと落ちる事になる。いや……此処は魂を叢雲牙に喰わせるのもよいか」

 

 叢雲牙の刀身が紫色の光を帯び、その妖気から2匹の黒い地獄の龍が出現した。地獄の龍はリアスとソーナに絡み付くとその口を開き、2人を喰らおうとする。

 

 リアスとソーナは抵抗するどころか、恐怖で身が竦み動けなくなっていた。

 

「わっ分かりました!直ぐに用意しますので、1週間……いぇ、数日で結構ですので時間を頂き………下さい!」

 

 四大魔王が揃って土下座する。今此処で龍牙王の許しを得る為には魔王としてのプライドなど捨てて彼に懇願するしかない。

 

「…………言っておくが神前で言った事は守って貰うぞ。今此処でお前等を消しても此方に益はない故に、1週間の刻をやろ。だが守らぬ場合は……」

 

 彼は叢雲牙に自身の妖力を流し、リアスとソーナに絡み付いている地獄の龍に指示を出し、彼女達の腕に噛みつかせる。

 

「「!?」」

 

 

「「なっなにを!?」」

 

 リアスとソーナの兄と姉であるサーゼクスとセラフォルーが声を上げる。

 

「痛みはない………唯、刻印を刻むだけのこと」

 

 龍牙王がそう言うと、霧散する様に地獄の龍は消えた。

 

「リアス!怪我は!?」

 

 

「ソーナちゃん!大丈夫?!」

 

 

「えっ………はい。特に痛みは」

 

 

「なかったです、お姉さま」

 

 それを聞いて安堵するシスコン魔王達。しかし先程の龍牙王は言った「刻印を刻む」と、それを思い出し魔王達は妹達の腕を見る。そこには黒い龍の刻印がされていた。

 

「これは……」

 

 

「地獄の刻印、万が一貴様等が約束を守らなかった場合は…………その刻印よりこの小娘達は強烈な痛みと苦しみが襲い死ぬ。死後、その魂は叢雲牙に喰われ未来永劫苦しみ続けるだろう」

 

 

「なぁ……何でソーナちゃんにそんなことを!?」

 

 

「そっそうだ!リアスだって関係ない筈だ!何故私達でなくこの子達に!?」

 

 ソーナとリアスが何故そんな目に合うのか理解出来なかった。

 

「何故?可笑しなことを……我は事前に条件を出していた筈だ。ならば勝敗が分からぬにしろ、準備しておくのは当然の筈だが……貴様等はそれを怠った。それともあの小僧が負ける可能性はないと………相手は所詮人間と妖怪だから大丈夫だと考えていたか?」

 

 

「そっそんなことは……」

 

 

「まぁ貴様等が何を考えようが構わん。加えて、貴様等悪魔に苦しめられた者達の気持ちを知るがいい。

 

 それと我を侮ればどうなるか覚えておけ」

 

 龍牙王の神気と妖気がこの室内に満ちる。

 

 その圧倒的な力にリアスやソーナ、その眷属達、そして魔王達でさえも龍牙王の事を【化物】だと思った。

 

 リアスとソーナ、その眷属達は震え、腰を抜かす者さえいる。魔王達もなんとか踏ん張っているが、その手足は震えていた。龍牙王はそれを見ると、直ぐに力を納めた。

 

「貴様等が約束を守るのであれば、その刻印は消してやろう」

 

 

「くっ……」

 

 魔王達は思う、そんな事を言っているが、悪魔嫌いの龍牙王が本当に約束を守るのだろうかと。

 

「言っておくが、我は貴様等の様に約束をたがえる事はない」

 

 ―ドタッドタッ―

 

 外から誰かが駆けてくる音がする。

 

「慌しい」

 

 扉が開き、包帯を巻いた男が入ってきた。

 

「ぜぇぜぇ………なんだ………何なんだ!?貴様等は?!唯の一撃で俺達を倒すなど在って堪るかぁぁ!!どんな手を使った?!」

 

 どうやらライザーは先程のゲームの結果が不服であり、何か不正を働いたのだと思った様だ。

 

「はぁ………五月蝿い小僧だ。魔王共、そういう訳だ。その小娘たちの命が惜しいなら制約は守ることだ」

 

 彼はそう言うと、皆を連れて神社へと帰ろうとするがその前にライザーが立ち塞がる。

 

「貴様ぁぁぁ!この俺を無視するとはいい度胸だ!この俺が本気を出せば極東のかm「ダァァァァァリィィン!」ぶへぇ!?」

 

 ライザーの上に穴が開き、そこから女性が降りてきて、彼を踏みつけ………踏み潰した。

 

「げっ……」

 

 

「げっ……って何よ!折角、可愛い奥さんが通ってきたのにぃ!」

 

 頬を膨らませて文句を言う女性。

 

「あのなぁ………仕事は?」

 

 

「私は家庭と仕事はちゃんと両立する女よ!姉さんと違って引き籠ったりしないし!私生活もあんなにもだらしなくないもの!」

 

 

「それは………うん………まぁ………置いといて。そんなのアイツに聞かれたらまた姉妹喧嘩が始まりそうだから止めとけ。それで本当に何しに来た………終わった所だが、因みに此処は悪魔共との取引の場なのだが」

 

 

「あれ?…………アレって月が満ちた時じゃ?」

 

 

「それは蓬莱郷に行く日だが?」

 

 

「…………てへっ、間違えちゃった」

 

 

「月読………歳を考えr「ダーリンでも、言って良い事と悪い事があるわよ?」我が悪かった」

 

 そう言いながら笑う高天原の頂点に立つ3人の1人、月の神・月読。勿論、目は笑っていない。どんな慈悲深い女神でも年齢と体重の事は言っては駄目らしい。

 

「つっ月読!?」

 

 

「日本神話の頂点の1人………」

 

 魔王達が月読の名を聞き、騒ぎ出す。

 

「正確には日本の神道神話体系よ。ねぇ、ダーリン、そこにいる魔王って輩かしら?」

 

 

「あぁ」

 

 

「ふぅん、丁度良かったわ。私もコイツ等に言いたい事があったし」

 

 

「このぉ………ぐっ!」

 

 月読はライザーを踏みつけ魔王達の前まで歩いて行く。きっとワザとヒールに力を入れたのは気の所為じゃないかな。

 

「アンタ達の作った悪魔の駒の所為でどれだけの人間(子供達)や妖怪達が苦しんでると思ってるのよ」

 

 魔王達を睨み付け、彼等を神気を放ち威圧する。彼女の神気は龍牙王のそれに引けを取らない物で、魔王や後ろにいるリアス達は押し潰される様な感覚に襲われる。

 

「それは……まことに」

 

 

「アンタ達に親を、子を、同胞(はらから)を、友を奪われた気持ちは分かる?

 

 分かる訳ないわよね、分かるなら止めるだろうし、悪魔の駒の使用は中止させる筈よね。聞いた私がバカだったわ。

 

 此処で消しちゃう方が、この日の国の為になるわよね」

 

 月読はそう言うと、放っている神気が一層強くなる。

 

 聖書でも神と同じ天の座へと立とうした人間達に雷が降り注ぎ、統一言語を失ったとされる。日本で在っても神の怒りを買った者は崇りを受けた。

 

「あぁ……でも私の独断で殺ッちゃったら後々面倒かなぁ?まぁ、姉さんもスーちゃんも反対しないわy「何勝手にやろうとしてんだ、こらっ!」ぴぎゃ!」

 

 龍牙王は叢雲牙を鞘に仕舞った状態で月読の頭を叩いた。

 

「いったぁ~い!ダーリン!乙女の身体が傷付いたらどうするのよ!あっでも……もぅダーリンには傷だらけにされてるし」

 

 

「少し黙ってなさい」

 

 龍牙王は自分の尻尾の1本でで月読をグルグル巻きにした。

 

「もがっもがっ………ダーリン、人前z「そう言えば天照がデータが消えたとか騒いでたな。誰の仕業だろうな」ぴゅ~ぴゅ~。つっきー、お口チャックします」

 

 どうやら月読の弱みを握っているらしく、口に手を当てて黙る事にした様だ。

 

「全く………天照()といい、月読(此奴)といい、素戔嗚()といい、なんでこうも暴走するかねぇ。まぁ、それは置いといて…………。

 

 1週間以内に悪魔の駒と詳細を書いた書類を用意して貰おう。勿論分かっているだろうが、悪魔の駒の使用も禁止だ。もし禁止しなかった場合は………」

 

 龍牙王の持つ叢雲牙の宝玉が怪しい光を放つ。それに呼応するかの様に、リアスとソーナについた刻印も同じ光を放ち始める。

 

「うっ!……ぐぅ」

 

 

「いっ!」

 

 リアスとソーナは刻印を抑えて蹲ってしまった。

 

「リアス!?」

 

 

「ソーナちゃん!?」

 

 

「その小娘共の命は我が手中にある事を忘れるな」

 

 龍牙王がそう言うと、叢雲牙の光は消え、同時にリアス達の刻印の光も消えた。彼は叢雲牙を背中へと仕舞い、身を翻し扉の方へと歩き出す。

 

「姫島朱乃、君は3日後の社に来る様に…………ほらっ帰るぞ」

 

 

「ぁ~ん、ダーリン、抱っこ~」

 

 

「自分で歩け。子供かお前は?」

 

 龍牙王の尻尾に包まれたまま、引き摺られている月読。

 

「ほらっお前達も帰るぞ」

 

 

「「「「「はい(うぃす)」」」」」

 

 突如、風が吹き龍牙王達の姿が消えた。

 

 こうしてライザー達とのゲームは終了した。




・破邪救世の舞

現代では既に失われた神へ捧げる舞。厄災を祓い人々の幸せを願う為の舞であるが、同時に神を身に降ろしその力を行使する事ができる。


・破邪の龍光

アーシア(アイリ)が龍牙王の力を身に降ろして発動する巫女の術。

発動には破邪救世の舞を行い龍牙王の力を身に降ろす必要があるので発動までに少し時間が掛かる。

発動すると、アーシアの額に龍牙王の紋章が浮かび上がり、足元には陣が展開し拡大する。最後に手を叩く事で、陣から魔を調伏する光が溢れ出す。

魔に属する者にとっては致命的な攻撃手段である。
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