そんな二人の行く末は   作:BT-7274

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この作品ができるまでの、大まかな経緯

友人がバイハ7を購入、即クリア→作者金欠のため借りようとする→昔作者が小説を書いてたことを知っている友人がバイハ7を餌にガルパンの小説かいてとお願い→どうしてもプレイしたかったのとそろそろ復活しようかなという気持ちもあったために作者承諾。設定のためにガルパンを調べ始める。→何やらフィンランドをモデルにした高校があるらしい→フィンランドと言えばラリー→ついでに友人の好きなキャラがミカ→書き始めるか


プロローグ: それはとある深夜のこと

子供の時から、ずっとその光景が好きだった。

 

――牙を向けるは、鬱蒼と茂るまでの森、荒々しく、そして険しい岩、行く手を拒む、まるで粘土のように粘つく泥、どんな潤いすら乾かしてしまう砂。そして、灼熱の太陽に焦がされたアスファルト。

 

誰だって一度は、人生の中で憧れを持つ。ソレは当たり前のこと。あるいはテレビで目にするヒーローであったり、おとぎ話の中に出てくる白馬の王子様だったり。その形、あり方は人それぞれ、様々なれど。

 

――劈くほどの、まるで荒々しい獣の彷徨のようなノートを奏で、荒々しく進んでいく。ソレはまるで、戦にて一番槍を上げんとする勇猛な兵士のように。あるいは、ありとあらゆる障害を弾き飛ばす、鋼鉄に包まれた戦車のように。砂埃を上げて、大気をも震わす白煙を吐き出しながら。

 

だが、少しずつ成長するにつれ、その無限にも広がりを見せる憧れは、やがて現実という名の無情によって狭められていき、人は、大人という存在へと変貌を遂げる。

 

――一寸先すら見渡せぬ闇の中、生きるものすべてを拒むかのような、広大にして雄大なる砂漠、凍てつくほどに凍える雪の中、人が作り上げてきた文明が色濃く映る、町の中。

 

けれど、その少年が抱いた憧れは、彼が少しずつ大人になるにつれても、全く色あせることはなく……いやむしろ、そうなるにつれてその憧憬はより強くなった。なんてことはない。彼が抱いたその“憧れ”は、おとぎ話や特撮のような、そういった創作物の類ではなく、現実にあるある一種の競技だったが故に。

 

――そんな場所を、ひたすらに走ってゆく。ジェットコースターなんて生ぬるい。一度でも操作を誤れば、待っているのは悲惨な結果だけ。信じられるのは己が腕と、読み上げられるペースノート、そして、ドライバーとしてのカンだけ。

 

“ラリー”それが、幼き日の少年の心をとらえ、今なおまばゆいまでの輝きを誇り続ける、“憧れ”の対象だった。始まりはなんてことはない、元々少年は、とかく乗り物が好きな子供だった。電車であれ、車であれ、船であれ、とにかくそれが“乗り物”であるなら、たとえどんなにぐずっていようが乗るだけで上機嫌になるほどの、生粋の乗り物好き。そんな彼を、両親は手のかからない子と苦笑いしながらも、愛情をもって大切に育て上げてきた。そんな彼が、殊更“ラリー”と呼ばれる自動車競技に傾倒していくのは、そんな両親が気を利かせて連れて行った、“ラリージャパン”とよばれるイベントを経てだった。幼き日の少年の眼に、けたましくコースを駆け抜けてゆくラリーカーたちは、果たしてどう映ったのだろうか。興奮冷めやらぬまま、帰宅した少年はとかくラリーについて調べまくり、彼の部屋が忽ち、ソレ一色に染まっていくのを、両親は微笑ましくありながら複雑な気持ちで見ていたとか。そんな彼が、その憧れを口にするまで、対して時間など掛かるわけもない。

 

――おとうさん、おかあさん。ぼくね、おおきくなったら“ラリードライバー”になる!

 

これは、そんなラリー一色の少年――新井圭祐が、戦車道という新しい世界に触れて、カンテレを片手に謳う少女に振り回される、そんなお話。

 

***

 

劈くような彷徨が鼓膜を揺るがし、視界に広がる景色が、目にもとまらぬ速さで流れていく。車体はひっきりなしに揺れ、時たま意図しない方へと吹っ飛んでいきそうになる。本来、どんな衝撃をも和らげるように設計されているはずのサスペンションはうねり狂う地面に翻弄され続け、完璧なまでに調整されてある筈の車高を、いとも簡単に狂わせていく。ハンドルは地面に抗えず、凄まじい抵抗をドライバーの腕に伝達する。ソレが通る道幅なぞ、僅かに車体一個と半分ほどの狭い未舗装道路。パウダーのように舞う砂埃に、タイヤが食いつく抵抗なぞたかがしれ、下手をすればどこかに吹っ飛んでいきかけない。見渡す限りは鬱蒼と茂る木々が所狭しとそびえたつ森の中。もしそのままぶつかってしまえば、車体はまるで粘土のようにグチャリと歪み、大きな鉄のカタマリと化すだろう。いくら車体の剛性を上げるため、そしてドライバーを保護するためのロールバーが綿密な計算によって車体にはりめぐらされていようとも、平均百キロを超えるスピードで走り抜けるラリーカーの前には、ロールバー(そんなもの)はただの気休めにしかならない。それでも、ロールバーを張り巡らすと張り巡らせないのとでは、雲泥の差があるのだが。常人なら、とてもではないがそんなところを走り切れない。いや、単純に走ることならできる。しかしそれを、高速道路を走っているかのようなスピードで走行することはできない。けれど、彼はそんな悪路を、眉一つ動かすことなく、繊細なハンドリングとペダルワークを以て、まるで舞うように駆け抜けていく。

 

「動力系統は何とかこれで、けどまだ、全然だめだな」

 

ちらりと、圭祐はコクピットの正面、――ハンドルがある場所の後ろに備え付けられた回転計を見やる。そのオレンジの針は六千回転を示す6の数字を刺したまま、彼の微妙なアクセルワークによって敏感に、そしてせわしなく動いている。比較的長いストレートを超え、右に大きく旋回するコーナーの手前に差し掛かった圭祐は、右足をアクセルから放し、ブレーキに添えて一気に減速する。更にそのまま右足のかかとをアクセルの方へとずらしながら、ちょいちょとあおりつつ左足でクラッチを踏み、目にもとまらぬ速さを以てシフトダウンしていく。シフトダウンにより発生するエンジンブレーキを必要最低限におさえ、されどコーナーを曲がるには十分な減速を行った後、流れるようにしてハンドルを右に回す。それにこたえるように、車体が右の方へと向き始めるが、同時に発生する抵抗――μと呼ぶ――が舗装された道路よりも低いために車体が右を向いたまま横滑りをし始める。その左手――圭祐の操る車が向かいつつあるその場所には、大きくせり出した岩壁が待ち構える。常人なら、ソレはすぐさま事故を想定させるだろう。しかし――圭祐は、徐に回していたハンドルを右から左に切り返すと、カウンターをあてて横流れしようとする車体を押さえつける。クラッチをつなぎ終えたままアクセルで車体をコントロールし、横滑りしていたはずの車体は、その体制を維持したまま滑りゆくようにコーナーを抜ける。

 

「よし」

 

ほぼイメージ通り。脳裏に描いたラインの、ほぼ数センチ横を走り抜けた圭祐は、イメージと現実の誤差を修正しながらも、次なるコーナーへと向けてアクセルを開ける。

 

――もっとだ

 

――もっといける

 

――もっと踏み込め

 

――踏み込むんだ!!

 

それに呼応するかのように、車体のボンネット内部に収まる水平四連エンジンが悲鳴にも似た雄たけびを上げ、ターボによって倍増された凄まじいまでの動力を、ドライブシャフトを通じてタイヤへと伝える。減速したことによって落ち込んだ回転計は再び上昇をし始め、レットゾーンである数字がある場所まで上り詰めようとしたところで――しかし、パァンと何かが破裂したような音とともに、急に反応がなくなったかと思うと、その横にある警告ランプが突如として点灯し、エンジンの咆哮が止まる。

 

「あ、ヤベ!」

 

慌ててアクセルを放すも、時すでに遅し。何らかの異常を以て停止したエンジンは、そのまま動力を失い、コーナーの脱出後でピーキーになっていたケツが振り出した。

 

「くっ」

 

僅かな焦りとともに、再びスピンし始めようとする向きとは逆の方にカウンターを当てるも、時すでに遅し。くるくると、まるでフィギュアスケート選手のように華麗なるアクセルを繰り広げた圭祐のブルーに輝くマシン――スバルインプレッサ22BSTIverは、ぐしゃりと今の彼が聞きたくもない音と、感じたくもない衝撃と共に道路のそばに立つ大木に正面から衝突した。

 

***

 

「あーあ、やっちゃったよ」

 

大きなため息とともに、脱力したように滑り落ちる圭祐は、そのまま自分のデコがステアリングへとぶつかるのも気にせず、力なく前へとうなだれた。その視界の端には、忌々し気にエンジンに何らかの異常が発生していることを示す警告ランプが赤く転倒している。それを睨みつけるようにしばらく眺めた後、再び大きなため息とともにさしっぱにしてあるキーを捻って完全にエンジンを停止させると、そのままゆっくりと体を起こし、自分の体をバケットシートに固定させていた四点シートベルトを外し、憂鬱な気持ちのままドアを開いてドライバーシートから脱出する。未だ砂煙が舞い散るその空間はとても埃っぽく、それが彼の気管支を刺激し、圭祐は小さくせき込む。その際、僅かに下がった視界によってとらえられた光景が、より一層彼の気持ちを沈み込ませた。

 

「まじかよ……」

 

その足元、本来は乾いた砂利があるだけのはずの未舗装道路に、丁度ボンネットの真下に位置する場所より漏れ出した液体が一筋の線が描かれている。ジャリッと音を立てながら、彼がマシンの正面部分へと歩いてみれば、そこに広がっているのは見るも無残な己の愛車の姿だった。兎に角ひどい。それ以外に、言葉が見当たらない。フロントマスクはもとより、その後ろに続くラジエーターの部分にまでダメージが及び、フロントがゆがんでいる。液体の正体は水であり、ダメージを負って破裂したパイプと破損したラジエーターから漏れてきたのだ。不幸中の幸いか、コントロールを失った中でも彼の培った経験と直感によって何とか立て直そうと足掻いたおかげなのか、かなりスピードを減らすことに成功して心臓部たるエンジン本体にはダメージが及んでいないが、そもそもこうなった原因は何らかによるエンジントラブルのせいであるため、よかったと安心することはできない。圭祐は、自分の服が汚れることも気にせず地面に寝そべって車体の裏からエンジン部分を目にしてみるも、こんなくらい真夜中のせいか、状態はよくわからない。が、それでも何とか分かったのは、どこかしらからオイルが漏れ出している事だった。

 

「あーもう」

 

起き上がった圭祐は、そのままボンネットへと寝転ぶ。先ほどまで猛々しい雄たけびを上げながら駆動していたエンジンが発する熱のおかげか、彼の寝そべるボンネットは熱く、真冬の厳しい寒さを少しだけ和らいでくれるような気がした。見上げた先に広がる、満天の夜空を眺め、

 

――ああ、今日も月がきれいだな

 

とか

 

――俺の地元とは比べるべくもないけど、ここ石川県の夜空もまぁきれいだよなぁ

 

とかとか、ありたいに言えば彼は軽い現実逃避をしていた。しかし、それでこの現状が好転するわけもなく、このままぼうっとして凍え死んでしまうわけにはいかない。何とか気を取り直し、ポケットから昔ながらのガラケーを取り出した圭祐は、アドレスからある人物を探し出すと、それを選択してコールを始めた。トゥルルルトゥルルルと数回コール音が鳴り響いたのち、その人物と通話がつながった。

 

「誰だい?こんな夜中に電話をかけてくるのは」

「俺以外に居ないだろ?」

「……そうだね、ケイスケ。なんとなく要件はわかるけど、とりあえずこんばんは」

「こんばんは」

 

テレレーンと電話越しに聞こえてくる楽器の音色を耳にしながら圭祐は電話の相手――ミカへとあいさつをする。

 

「用件を聞こうか」

「いつもの場所、そこまで俺を拾ってきてくれ」

「また事故ったのかい?」

「ああ。二十三回目だ」

「おっとウソはいけないよ、正確には二十八回だ」

「細かいなぁ。けど、そのうち八割はマシントラブルだぞ」

「それでも私が迷惑するのは変わらない、そうだろ?」

「おっしゃる通りで」

 

はぁ、と電話越しから聞こえるため息と、少しだけトーンの落ちた楽器の音が彼女の心境を現しているような気がした。

 

「私は眠いよ」

「そこを何とか」

「たまにはそこで野宿でもしたらどうだい?」

「カンベン、真冬のこの時期に野宿なんてしたら風邪ひく」

「大丈夫。バカは風邪をひかないらしいからね」

「俺がバカだ、と?」

「ああいや、この言い方には少し語弊があるね。正確には、バカでアホの見下げた奴、だった」

 

口調はどことなくとげとげしくも、ソレが彼女の本心でないことは、なにかと付き合いの長くなった圭祐自身は知っている。いつも風のように自由そうで、飄々としていて、哲学じみた言葉をいつも口にする――ミステリアスな美人。たいていの人が抱くであろうイメージであるソレは、しかし彼からしてみればかなり苦笑いしてしまうものだ。本当の彼女、――新井圭祐が知るミカとは、実は少しズボラ……主に生活面――で、それにして食い意地が張っており、かつ――慈しみと優しさを備えた少女である。であるからにして――

 

「さて、君は助けてほしい。けれど、それだけでは不公平じゃないかな?」

 

ほらきた、と圭祐は電話を耳に当てたまま小さく笑った。

 

「世の中は等価交換で成り立っている。とすると、私が助けに行くお礼に、ケイスケはなにをしてくれるんだい?」

「そうだな……何がいい?」

「そうだね……とりあえず、私はお腹が空いたよ」

「今何時か考えろ、こんな夜中に食ったら太るぞ」

「おや、そんなデリカシーに欠ける言葉を乙女にむけるケイスケはそこで凍え死ぬといいよ」

「わかったわかった冗談だ。ミカが拾ってくれた後に、俺の部屋で何か軽く作るから」

「それだけかい?」

「――朝食と、明日の晩御飯も付ける」

「ケイスケお手製のシチューがいいな」

「おおせのままに」

「よし、じゃあ交渉成立だ。先ほど眠いといったけど、アレは嘘だ。すぐに行くから、待ってるといい」

「ほんと、助かるよ」

 

そういって、圭祐は通話を切る。パタリとケータイをしまってポケットの直した彼は、先ほどの会話を思い浮かべながら、ふっと小さく笑った。

 

「変わらないな、アイツ」

 

もうこんな会話を、幾度となく繰り返してきた。それを煩わしいとか、面倒くさいとか思ったことは一度もないし、恐らくは彼女だってそう思ったことはないだろうと、勝手ながらに圭祐は思う。最初の内は彼女の真意を測りかねることが多かったが、それもなんだかんだ言って理解できるようになった、という自信が彼にはあった。さて、彼女が来るまで、あともう少しある。すっかり熱の冷めてしまったボンネットの上にいたままでは、本当に風邪をひいてしまいかねない。そう考えた圭祐は、ふっと体を起こすと、ふたたびドアを開けてバケットシートへと座り込んだ。

 

 

「君は、戦車道というものに興味はあるかい?」

「知ってはいる、けど興味はない」

「ソレはいけないな。戦車道には人生の大切なすべての事が詰まっているのに」

「へぇ、そうか」

 

カンテレを片手に、トレードマークともいえるチューリップハットを身に纏い尋ねるミカと、そんな彼女の言葉に少しの興味も示さない圭祐。そんな二人がそうやって出会ったのは、彼らが丁度一年生の時期の、今頃の事だった。

 

 




用語解説

ラリー:指定されたコースを一定条件の下で走行し、区間タイムの速さや運転の正確性を競う自動車競技の一種。ドライバーと案内人(ナビゲーター若しくはコ・ドライバー)が乗車し公道を走る。F1などとは違い、基本的に販売されている車をベースにマシンを作るため、ラリーマシンは公道をふつーに走れる。有名な言葉に
「F1ドライバーは頭のネジが二、三個飛んでなければならないが、ラリーのドライバーには頭のネジが付いていてはなれない」
という言葉がある。実際、今は廃止されたグループBというカテゴリーは正に狂気

スバル インプレッサ22BSTIVERSION:圭祐の愛車。WRCのWRカーカテゴリーにて三連覇を果たしたIMPREZA WORLD RALLY CAR '97を再現したイメージレプリカであり、限定400台で販売されたプレミアムカー。500万という値段ながらわずか2日で完売。現在では非常に希少価値が高く、作者も本物を目にしたのは一度だけ。

フィンランド: 北ヨーロッパに位置する共和制国家。皆さんご存知ムーミンの生まれ故郷でありミカのカンテレが有名。けれどモータースポーツもかなり盛んで特にラリーとはかなりの縁がある。トイヴォネン、カンクネン、グロンホルムと有名にして大御所ばっかり。関係はないがフィンランドの白い悪魔ことシモ・ヘイへも有名。さらに関係はないが、作者のお気に入りラリードライバーはコリン・マクレーとペター・ソルベルグ。フィンランドカンケーねーじゃねーか!!

そんなこんなで書き始めてみたものですが、何分作者はニワカ過ぎる(知識は主にWikiと友人、そしてこのハーメルンの偉大なる作品たち)ためにかなり違和感を感じられる人が多くいると思います。しかし決してアンチではないため、もし原作とのあまりの乖離、キャラ崩壊が起きていたら感想欄にて(優しく)ご指摘頂けると幸いです。

取り敢えず、彼ら2人の現状は、友達以上恋人未満...が表現できていたらいいなぁ
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