~重戦車キラーへの道~
そして、歯車は動き出す。
「あのっ……ご一緒してもいいですか?」
昼休み、大勢の生徒が昼食を食べる食堂。
一人で定食を食べていると声をかけられた。
「あぁ。どうぞ。」
「…はっはい……失礼します。」
一年チームの隊長、澤梓。
いつもはそのチームと一緒だったと思うが……
「友達と一緒じゃないのか?」
「えっと……相談したいことが……」
「……ふむ。」
男であり二年上の俺に話しかけるのも相当な勇気がいるだろう。
本気の相談なのだと伺える。
「……私達、あの試合で……えっと……」
「……言わなくて良い。俺もわかってる。」
「…はい。」
先の聖グロリアーナとの親善試合。そこで一年チームは自らの戦車を棄てて逃走、結果、撃破されてしまった。
澤はその事を言っているのだろう。
「あの後、皆で相談して……もっと本気にならなくちゃ駄目だなって……」
「……驚いたな。」
「えっ?」
「てっきり辞めたいって相談だと思ってたからな。」
砲弾が飛び交うなか、鉄の箱に閉じ込められ、戦う。普通だったら怖いものだ。
どんな強豪校だろうとその恐怖心を克服できずに辞めてしまう生徒は多いと言う。
「はい……最初はそういう意見もあったんですけど……負けた原因は私達にあると思ったので……」
「……律儀なんだな」
「いっいえ!そんな!ただ……皆さんにアンコウ踊りをさせたまま逃げるのはって……」
……逃げる、か。そんなこと思ってたとはな。
「だから!もうあんなことの無いように鍛えて欲しいんです!お願いします!」
俺の目を見て真っ直ぐにお願いする澤。
「わかった。お前達なら強くなれるさ。」
「!……ありがとうございますっ!」
本当に嬉しそうな笑顔を浮かべて礼を言う澤。
こいつは伸びる。そんな確信が俺の中にはあった。
「あと早速なんですが……」
「うん?」
「ペンキってどうやったら剥がせるんですか……?」
「……あー……」
……まぁ訓練より先にピンク一色のM3の色を戻す作業からだな。
その日の午後、戦車倉庫。
「うーん…やっぱり剥がすのは無理ですか…?」
「上から塗り潰すしかないな。」
「はい……うん!じゃあ皆で塗っちゃおう!」
『はーい!』
澤の号令に元気よく返事する一年チーム。
そしてピンク色の上から元の緑色の塗料が塗られていく。本当に良いチームだ。
よく見ると他のチームも元の色に戻そうとペンキを持ち出していた。
やはり初めての試合を経験して思う所が有ったのだろう。
「お前もそう思うよな?」
「……なにがー?」
38(t)の近くにいた杏。
「いやーこんな金ぴかにして他の戦車から目を反らさせる作戦とはやるねぇ」
「……わかったよぉ……上から塗り塗りすればいんでしょー?」
嫌味を言ってやると心底残念そうに塗料を手にする。どんだけ気にいってたんだか。
「イクサも手伝え~」
「はいよ。」
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「…………」
「よっ恋する乙女。」
「うわぁ!……ナカジマか……」
「ホシノも手伝ってくればいいのにー。」
「いや……そんなんじゃ……」
「ペンキ持ってうろうろしてるだけじゃあ何も起こらないよー?」
「うぅ……」
「……会長のことが気になる?」
「……うん」
「じゃあさ……一回ぶつかってみたら?」
「……」
「イクサにも、会長にも。このままよりは良いと思うよ?」
「……私は……」
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「イクサさーん!」
手を振って澤が俺を呼ぶ。
「終わったか?……おお、良い感じじゃないか……?」
ピンク一色から元の迷彩色に塗り直されたM3。だが気になるものが。
「うさぎ?」
その装甲に塗られていたのは両手に包丁を持ったピンクのうさぎ。
「私が説明しよう!」
「なにそのテンション」
「いやー金色もいいけどやっぱり戦車は迷彩色に限るよねぇ!っていうテンション。」
……杏が上機嫌ならそれでいいよもう。
「んで。やっぱりチーム名が無いとやりずらいよねーって西住ちゃんと話しててさー」
「そりゃあなぁ。AチームBチームじゃ混乱しやすいだろうし。」
「そうそう!んでM3を見た西住ちゃんが……『2つの砲塔がウサギの耳みたい……』って言ったからうさぎさんチーム。」
「西住らしいなぁ……」
後で聞いたが全部のチーム名を西住が決めたらしい。
三突は『どっしりしてて待ち伏せが得意そう』でカバさんチーム。
38(t)は『親ガメが子ガメを乗せてるように見える』でカメさんチーム。
八九式は『なんかアヒルっぽい』でアヒルさんチーム。
Ⅳ号は『大洗に来てあんこうを吊るして捌くのを初めて見たんですよねー』『あれ?西住ちゃんあんこう食べたことないのん?』『はい……美味しいとは聞くんですけど高くてなかなか……』『あっじゃあ今度ご馳走するする!』『本当ですか!?ありがとうございますー……あっチーム名……じゃああんこうで!』であんこうチーム。
いやいやふわっとしすぎじゃない?特に最後は完全に杏との会話のノリで決めてるし。
……まぁ全員嬉々としてそれぞれの戦車に動物をペイントしてるし、皆が覚えやすいならそれでいいさ。
「イクサさん!じゃあ早速……」
澤に急かされる。熱心な事だ……これからが楽しみになるな。
「よし。一年……改めうさぎさんチーム!行くぞ!」
『はいっ!』
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夕方、校庭。
「お疲れー……大丈夫か?」
『『大丈夫でーす……』』
立ってるのもやっとという感じのうさぎさんチーム。
今日はひたすら反復練習……地味だが、確実に経験を積める……そして疲れる。
「今日はこれまでだ。今日はゆっくり休めよ。」
『『はーい……』』
どんなに疲れていても返事はする6人。これも良いチームの証だな。
「イクサさーん!」
整備をしようと倉庫に向かっていると澤が走ってきた。
「どうした?」
「少しだけ時間ありますか?相談が……」
「いいけど……お前も疲れたろう?明日でも良いんじゃないか?」
「いえ……この感覚を忘れない内に……なんていうか…この…もやもやっとしたのを無くしておきたいんです。」
「……そうか。」
澤にはいつも驚かされる。
疑問に思うというのは初心者ではまず無い。言われた事を愚直に実行するのに精一杯だからな。
だが澤は今、この日数の少なさで初心者から抜け出そうとしている。
「日も落ちるし、少しだけだぞ?」
「はい!」
この学園の希望を育てる。
俺は今その実感を噛み締めていた。
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「いやーすっかり暗くなっちゃったな」
「すいません……」
相談に乗ってたら日が落ちたのに気づかなかった。
今は二人で澤の家まで歩いてる所だ。
犯罪などが全く無いと言って良い学園艦だが、夜道を女の子一人で歩かせるのもな……
「気にするな。強くなりたいって思ってるんなら、俺は応援するだけだ。」
「……男の人って慣れてないんですけど……イクサさんが優しい人で良かったです。」
「優しいか?」
「はいっ!」
こんなに勢いよく言われるとは思わなかった。
「訓練でも分かりやすくて皆楽しいって言ってるし、そうそう!クラスでもイクサさん人気なんですよ!」
「へぇ。」
普通に返事したけど心の中でニヤけてしまう。やっぱ男としてはなぁ。
「……私も……」
「ん?」
「いえ!あっ、私あそこなので!」
「そうか。お疲れ。」
「はーい!」
そして自分の家に入って行ったのを確認し踵を反す。
俺の住んでいる寮は学校のすぐ近く。だが荷物が学校に置きっぱなしなので一度学校に戻らないとな。
そして一つ目の角を曲がると。
「デートは楽しかったー?」
ホシノが腕を組んで壁に寄り掛かってた……いつものツナギ姿で。
「あ?ホシノもこの辺りだっけ?」
「いや?学校に戻るんでしょ?」
「わざわざ来たのか?」
「……ナカジマが行ってこいって。」
「ふうん?」
まぁいいや。話し相手が欲しかった所だし。
「……」
「……」
二人で歩き出すが、会話が無い。
いや俺から話しかけても良かったんだが、なんか様子が違う。テンションが低いというか……これから帰ろうって感じじゃない。
そして沈黙を破ったのはホシノだった。
「……モテモテなの?」
「は?」
「クラスでも人気なんですよー……って。」
聞いてたのか……
「いや……少なくても俺はモテてる自覚はないぞ。」
「じゃあ……」
歩きながらホシノが俺との距離を縮める。
「杏会長だけ?」
心臓が跳ねる。俺はこの前と同じかと思い適当に流そうとした。
「いや……だから」
「誤魔化さないで?」
優しい口調だが、言い逃れは許さないと悟った。
「実際は?」
「……あぁ。告白はした。お互いな。」
「それだけ?」
「まぁ……うん……」
「……うん。じゃあさ。その上で聞いてくれる?」
そしてホシノが俺の前に立ち、向かい合う。
「イクサ。」
電灯に照らされ赤い顔が良く見えるようになった。
その視線はひたすらに、真っ直ぐだった。
「好きです。」
それだけ言うと、ホシノは俺に歩み寄り……
チュッ……
一瞬だけ口づけをした。
「ごめん。でも考えといてね。」
そして学校の方に走っていくホシノ。
俺は何も理解出来ずにただ立ち尽くしていた。
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「会長~この書類は……うん?どうしたんですか双眼鏡なんて覗いて……あれ?会長?どこ行かれるんですか?……はい……じゃあこれは明日で……はい、お疲れ様です…………うーん、会長どうしたのかしら?」
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「……はぁ~あ……」
「お疲れ~」
「ああうんお疲れ……って会長!?」
「ホシノちゃん、ちょっといいかな?」
「……はい。」
もしかしたらハーレム行けるかも!
なんて希望を持ち続けたいけどやっぱムズイ……(吐血)
ドロドロにはならないようにする。絶対回避。あくまでハーレム。