サンダース戦(の裏)決着でございます。
アンツィオ陣営。客が来るまであと一時間と言った頃。
「……」
「……」
アンツィオ高校3年。アンチョビ。
イタリア語で総帥の意味をもつ『ドゥーチェ』の名でアンツィオでは通っている。
そんなアンチョビは今、『直接隊長と話がしたい』とやってきた大洗のイクサとテーブルを挟み向かい合って座っている。
「なんか……重い空気っすね……」
「えぇ……きっと話が難航してるのね……」
それを心配そうに見つめるのは同じく二年のペパロニとカルパッチョ。
共にアンツィオの幹部とも言える生徒である。
イクサとアンチョビの顔は真剣そのもの。それが十数分も続けば周りの空気も重くなるであろう。
「……いいかお前ら。今は見守れ。ドゥーチェを信じるんだ。」
「ペパロニ……あなた……」
喧嘩っぱやい他の生徒の空気を察したペパロニのそんな言葉にカルパッチョから感心の声が漏れる。
いつもこう言う時は真っ先に突撃するペパロニからは予想できない『見守れ』という指示。これにはアンツィオの生徒も従うしかない。
そしてペパロニは早口にこう続けた。
「だがあの男が少しでも不審な動きを取ったら直ちにヤれ。いいな!」
『イエス!マム!』
「やっぱりそうなるのね!」
カルパッチョの感心は吹き飛び、代わりにやってきたのは胃痛にも似た不安。
(ドゥーチェの話も終わらないし、この子達本気で武装し始めそうだしぃぃ……)
カルパッチョがそろそろ本気で胃痛を感じて来た頃。
イクサとアンチョビが突然握手を交わした。
それを見たカルパッチョが幸いとばかりにペパロニを呼ぶ。
「ほらペパロニ!終わったみたい!」
「よっしゃお前らとつげ」
「ヤメロォ!」
「ひぃ!パッチョ姉ぇ口調が!」
「誰のせいだと思ってるの!行くわよ!」
「お、おう!」
仲間に号令を出しそうになったペパロニを抑え、共に二人が会議しているテーブルへ走る。
そして最初にペパロニがアンチョビに話し掛ける。
「ドゥーチェー!どうなったんすかっ!?」
「…ペパロニ……私はやったぞっ……!」
「何をやったんすかっ!?」
「ついに……ついに我が軍にティーガーⅡが来たんだ!」
「うえええぇっっっっ!!??
…………ってなんすかてぃーがーつーって?」
「そこから!?」
そんなアンチョビとペパロニの天然コントを横目にカルパッチョがイクサに近寄る。
「……まさか本当にドイツの主力戦車と引き換えにしたんですか?」
「そんな訳ないじゃん。これだよ。」
イクサのスマホの画面に写っているのは誇らしげな戦車の姿と『BOSS CLEAR!!』の文字。
「……あぁ……ゲームの話ですか……」
今までの心配はなんだったのかと肩を落とすカルパッチョを尻目にアンチョビが胸を張る。
「そうだ!どうしてもクリア出来なくてなぁ……無課金には厳しい世の中だよホント。」
「だがそいつが居ればかなり楽になるはずだぜ?」
「うんうん……ホントに感謝してるよぉ~」
話が進まず、息抜きに娯楽の話をしていると偶然同じスマホゲームをしてると言うので協力プレイでも……というのが発端である。
「てかずっとゲームしてたんすかぁ~?」
「ゲームと侮るなよ!かなりリアルだから戦車を楽しみながら学べるんだ!」
「そりゃすげぇ!アタシもやろっかな!」
「二人とも、話が逸れてます。」
「あぁもちろんゲームばかりじゃない。ちゃんと紳士協定も結んだぞ?」
「あっはっは!アンチョビ姉さんてば!アタシらは淑女じゃないっすか~」
「そういう事じゃない!」
「紳士ってのは例えだ。」
「うむ。双方が紳士的である。つまり嘘偽りなく全てにおいて信頼出来るっていうのを前提にした口約束だ。だからまぁ淑女でも間違いではないな。」
「なんか遠回しに自分が淑女って言ってるみたいっすね!」
「二度と表出ろ。」
「日本語忘れるぐらいキレなくてもいいじゃないっすか!?」
「ふむ……それでどう言った協定を?」
「……まぁパペロニは後にして……イクサと相談した結果これからはジャンルを分ける事にした。大洗は飯。アンツィオはデザートって感じにな。」
「それはアンツィオに感謝だな。こっちは飯物しか用意できないし。」
「ウチなら全ての店を今からデザートに変えても問題はない。パスタ類はまだ茹でてないよな?」
「はい。他の食材はどうせ帰ってからウチで消費しますし。」
「ジェラートにパンナコッタにティラミスに、その他もウチらが喰う分を考えても余るほど用意してるっす!」
「だからウチが喰う事を前提にするなとあれほど……まぁ今回はいいか。そう言う事でお前らは準備に掛かってくれ。」
「「はい!」」
ペパロニとカルパッチョが遠巻きに見守っていた仲間の所に戻り指示を出す。
そしてアンツィオの陣営は再び慌ただしく動き出した。
「ふぅー……ひとついいか?」
一仕事終えたとばかりにため息をついたアンチョビが質問してきた。
「私達は一回戦に勝ったからいいが、大洗は今試合だろ?応援とか……気になったりしないのか?」
「応援するのは他の子達がやってる。だったら俺らは次の試合のため少しでも金を稼ぐだけさね。」
「ふーむ……ウチも予算が厳しいから気持ちは分かるけど……負けたらって考えると気が気でないんじゃ?」
「……結構俺らも背水の陣だしな。そもそも負けた時の事を考えていない。だから逆にこーゆー事が出来るのかもな。」
失う物が無いほど……とはよく言うが、実際には廃校が懸かってる。優勝とか以前に予算が無くて試合が出来ませんでした、なんて笑い話にもならない。それだけは避けたい。
「なにやら事情が有りそうな……まぁなんしても恨むべきは貧乏かぁ……」
「あぁ……」
試合について話してたらいつの間にか世知辛い話になってて悲しくなる。そこで昨日の会議で出てきた案の一つを思い出した。
「そういやタンカスロンやってるんだってな?どんな感じなんだ?ぶっちゃけ稼げるのか?」
「んー……タンカスロン自体まだまだマイナーだが、間近で戦車戦を見れるってんでコアな戦車道ファンからスポーツ感覚で観戦する人まで、試合をすれば結構お客は来るからな。それに人が集まればそれだけで得をする人もいる。そんなスポンサーからのファイトマネーもなかなかなもんだ。」
「想像以上に魅力的だな……まぁ悲しい事に戦車が無いがな。」
昨日も言ったが全国大会が全てだ。捜索してもし戦車が出てきてもタンカスロンに回される事は無いだろう。
「だったらウチと組むか?戦車ならあるぞ?」
「いいのか?ルールも分かってないぞ?」
「ルールなんて……使用できるのは10t以下の軽戦車のみ!」
「……えっ終わり?」
「うん。それ以外は何でもあり。審判も居ない。ウチなんてカルロベローチェに主砲が無いから、火力アップのために対物ライフル使ってるぐらいだしね。さらに乱入、同盟、裏切りも過去にあった。」
「怪我しない以外はホントの戦争みたいだな。面白そうだ。」
「だろう?てかイクサも戦車乗るの?」
「これでも中学の時はブイブイ言わせたもんだ。俺が助っ人で砲手やったらもう止めて下さいと言われた程度にはな。」
「なにやったのさ……」
「練習試合でスタート位置からフラッグ車狙撃した。」
「私なら練習試合なのに練習にならないじゃないかって言いそうだな。」
「全く同じ事を言われたな。真顔で。まぁその後の試合から装填手に移されたんだがそこでもな……」
「またか。」
「自動装填装置付けてるんじゃないかと相手に猛抗議された。」
「一体どんな早さで……」
「その時は熊本から来たチームとの試合だったが……その中の一人に威勢が良い奴がいてな……かなり大騒ぎされたが、実際に装填してるところを見て下唇噛みながら納得してくれたよ。」
「絶対心のなかで壁パンしてたな、それ。」
「今じゃあ一緒にゲームする程度には仲良くなったがな。」
「やはりゲームの力は偉大……まぁそれほどの腕だったら歓迎だ。次の試合にでも呼ぶよ。」
「あぁ。その時は頼む……っとそろそろ戻るか。今回は本当にありがとうな。」
「大したことじゃない。お互い商運を祈るよ。」
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大洗陣営……
「今帰りましたマム!」
「あれ?どこ行ってたのよ?」
「ちょっとアンツィオとお話を……てかそど子だけ?」
「皆休憩してるわ。あとはお客様が来るのを待つだけだしね。」
「……」
「なによ?」
「いや、そど子?でいいの?なんか文句言われると思ってたんすけど?」
「ん?……あぁ呼び方?別にイクサなら良いわよ。あんちゃんに免じてね。」
「あんちゃん……って会長の事かえ?」
「そうよ。というかあんた達の事は知ってるわよ。二股なんて随分良い御身分ね?」
「……杏が言ったんすか?」
「えぇ。あんちゃんとも長いからね。てか最初にそど子って言いやがったのは奴じゃけんのう……」
「なんか……いろいろ深そうだな?」
「まぁ悪い事ばかりじゃないわ。良くも悪くも堅い風紀委員があだ名で呼び会うようになったからね。それを見越しての事かは解らないけど。」
「ホントにそれは解らんな。」
「……ま、この際言っとくけど。これでもあんちゃんとは長いし、まぁ、悪友なわけよ。」
「おう。」
「弱い所は本当に弱いんだから、ああ見えて。」
「……おう。」
「泣かせたら風紀委員の総員で泣かすからね。」
「卒業の時に泣くのはカウントされます?」
「じゃあイクサを泣かすのも卒業の時ね。」
「例外は無しかよ。」
「無しね。あんちゃんが泣くときはイクサも泣きなさい。」
「……そうだな。」
「さて、そろそろお客様が来るわ。風紀委員の完璧な接客術を見せてあげるわ!」
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数時間後……
『イエェーイ!!』
「おうお前ら!アタシ達は淑女であるドゥーチェと同じで淑女だ!もう少し淑女らしい淑女じみた行動をだな……」
『でもペパロニ姉さん。淑女らしいってどーすれば良いんすか?』
「ん?そりゃぁお前……えーっと……あっ!この前聖グロと試合した時に居ただろ!……名前が出てこないが……」
『あぁあの飛ばしまくってた……』
「そうそう!あのスピードと優雅さを同居させたような!まさに淑女の権化だ!あれを参考にするんだ!」
『なぁるほど!』
「って事で……撤収ですのよォー!!」
『はいですわァー!!』
「参考にした人を間違いなく間違えてんな。」
「……まぁ三日もすれば忘れるさ」
日も傾き、観戦会場から帰るお客も捌き終わり、両陣営共に撤収を始めている。
そしてあらかた店を畳み終えた俺は「ですのー!」とか「よくってー!?」とか何かを履き違えた言葉を使ってるペパロニ達をアンチョビと眺めていた。
「イクサァー!!」
と、声のする方を見ると笑って手を振りながら走って来る杏が。
実は未だ試合の結果は知らされていない。いや、怖くて聞けていない、と言う方が正しいか。
だがあの嬉しそうな様子を見るに俺が不安がる必要は無かったようだ。
そしていっさい減速する事無く……
「イエェェェイ!!」
「グフォアァァ!?」
俺に抱き付いてきた。いや違う飛び付いてきた。そんで両手両足をがしっと俺に固定させる。
まぁ問題は無い。足がガクガクしたり腰が砕けたりしそうだが問題は無い。
「んー……なんだっけ?……あぁイージス◯ンダムだ。」
アンチョビ。これを見た感想がそれか。
「あんず……そろそろ…降り…」
「んぅー……はいはいっと…」
杏が名残惜しそうに俺から離れる。いや俺ももうちょっと堪能したかったが周りの視線とか俺の肉体とか問題が有るからな。
「いつつ……んで試合は……」
「勝った勝った!大勝利ぃ!」
興奮気味に胸を張りブイサインを付き出す。
いい笑顔だ。今までで一番輝いてるかもな。
「んで?そちらさんは?」
杏がアンチョビの方を見る。そういや紹介はまだだったか。
「私はアンツィオの戦車道隊長。アンチョビだ。」
「アンツィオ……って事は……」
顔が少し強ばる杏。
「ん?杏知り合いか?」
「トーナメント表見ようよ。次の相手っすよ。」
「え゛」
頭からスポーンと抜けてた。そういえばさっき一回戦終わってるってアンチョビが言ってたわ。
「ふっはははは!正直スパイか何かされると思ってたら、知らなかったとはね!」
「いやー……屋台に夢中ですっかり忘れてたよ。」
アンチョビが笑う。ホント恥ずかしい限りで……
「んでそっちは大洗の隊長なのか?」
「いや。隊長は別に居るよ。アタシは大洗の生徒会長。角谷杏でっす。」
「そうなのか……じゃあ角谷。」
アンチョビは仕切り直しと言わんばかりにマントを翻させ、杏と向かい合う。
「今回はイクサの協力によりこちらもいつも以上の売り上げを得られた!だがあのサンダースを下したとあってはこちらも手加減をするつもりは無い!」
「うん。こっちも勝ちたいからね。全力で相手させて貰うよ、チョビ。」
アンチョビが少しずっこける。
「チョ…って……違うアンチョビだ!」
「え~なんかあんずとあんちょびで『あん』が被ってるじゃん?」
「被ってるかは関係ないだろ!?」
「でもこっちが『あん』を譲ったらアタシ『ず』だけになっちゃうよ?」
「……確かに……いやいやそもそも譲る必要なんて無いよな!?」
「気にしないでよ~……んじゃイクサ。アタシもう戻るからねぃ。」
「あっ待て!訂正しろぉ!」
そして足早に杏は去ってしまった。ホント色んな意味で大物なんだと思うよ。
杏の姿が見えなくなり、アンチョビがジト目をこちらへ向ける。
「はぁ~……何?もしかして彼女なの?」
「ま、せやな。」
「この私をチョビなんて……初めて言われたぞ。」
「あれぐらいじゃないと学園艦の運営は出来ないんだよ。」
「いやそんな事は無いと思うが……まぁ良い。私もそろそろ帰る。」
「あぁ。後は、次の試合だな。」
「うむ。さっきも言ったが、手加減はしない。正々堂々と頼むぞ。」
「おう。今度遊びに行くよ。」
「その時は角谷も連れて来い。アンチョビの名の重さをイタリア本場のフルコースと共にじっくり教えてやる。」
そしてアンチョビとも別れ、俺も帰り支度をしている皆の元へと戻った。
終わりがあっさりなのは仕様です。
あとタンカスロンという単語が出たって事はリボンの武者にも首を突っ込んで……行くかなぁ……
あと前回からのそど子と杏の話は完全に妄想です。やっぱ風紀委員と生徒会って事で絡む事は多かった……ハズ。
それと小説そのものについて。地の文がおかしすぎる。
他の小説を見てるとおいしいカレーライスのようにセリフと地の文のバランスが取れているのに俺のはもうカレールーとらっきょうのみみたいな。
前半のほうがちゃんと出来てたってどういう事さ……
総括 次からちゃんとします。したいです。