ガールズ&パンツァー 俺の戦   作:アレク

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1000文字ちょっとで満足していた俺が皆さんの小説の長さに愕然とした今日この頃。

恋愛要素に進展あり。甘口なっていれば幸いです。


腹が減ってはなんとやら

「はぁぁー…寒っ。」

 

手を吐息で暖めながら廊下を進む。

 

「寒いねー」

 

 

一緒に歩いてた柚子が俺に同調してくれた。

 

 

何千人もの女子生徒の前で自己紹介をした次の休日。

今日は朝から柚子に学園の中を案内されていた。

そして今は昼が近いので一度生徒会室に戻っている所だ。

 

 

 

「南の方じゃあ梅雨入りしてるとか言ってなかったか。」

 

「海の上だし、けっこう北の方に来てるからね。」

 

「だったらもうちょい暖かい所行こうぜ…」

 

「それは船舶科と商業科が決める事だからねー」

 

 

交流や交易、補給のために北へ南へ常に航行している学園艦の上で生活している以上、日本の春夏秋冬は忘れなければならない。

 

そういえば俺が学園艦について杏に教わってるときに、

 

 

「春夏秋冬がはっきりしている日本が珍しいだけで、年中雪が降ってる国もあれば、冬でも水着で過ごせる国もある。そんな環境に慣れさせておくのも国際性豊かな生徒の育成を目的とする学園艦の一つの目的だね。」

 

 

って言ってたのを思い出した。

 

 

 

「大丈夫よ。朝から桃ちゃんと会長が暖まるのを作っているから!」

 

 

 

柚子が寒がる俺を励ますように言う。

暖まるのを作ってる?つまり杏の手料理が食えるってことか?

みなぎってきた。

 

 

 

「たぶんイクサ君が初めて見る具材が入ってるんじゃないかな。」

 

「そんなこと言われちゃあ期待するしかないな。」

 

 

 

正直歩きっぱなしで滅茶苦茶腹が減ってる。

さらに心のテンションをあげて廊下を進む。

 

 

 

 

 

ガチャッ

 

 

 

「戻りました、会長。」

 

「お疲れー小山ぁー」

 

 

 

柚子がドアを開ける。生徒会室の中は、食欲をこれでもかと刺激してくる匂いで充満されていた。

 

 

いつも杏が座ってる机は部屋の隅に片付けられ、代わりにコタツが置いてある。そしてその中央には、ガスコンロに熱せられ、蓋が被せられた大きな土鍋が白い湯気を上げながら鎮座し、その回りを囲むように野菜や魚の切り身、揚げ物などのおかずが並ぶ。

 

 

そして俺から見て正面の席に制服の上に赤いどてらを着た杏、左に黒いどてらの桃が座っていた。

 

 

 

「はい、イクサ君の。我が生徒会の証よ。」

 

「ん、あぁ。ありがとう。」

 

 

 

そして青いどてらをいつに間にか羽織っていた柚子に、杏と同じ赤のどてらを渡される。

 

早速羽織ってみる。暖かい。

ちょっとブカブカだがこれぐらいで丁度いいのだろう。

 

 

 

「似合ってるねぇ~」

 

「会長自ら同じ色と柄のを探して買ってきたんですよね~」

 

「こっ、小山っ!余計なこと言うなって!」

 

 

 

俺から見て右側の席に座りながら言う柚子に慌てて言い返す杏。

 

 

 

「イクサ!今日の鍋は会長が『イクサとの久し振りの食事だから』と言ってかなり奮発して気合い入れてたぞ!」

 

「河嶋ァァ!」

 

 

さぁ有り難く思えっ!と言わんばかりの桃に対し、もはや杏は涙目だ。

こんなに慌てた杏は珍しいと思いつつ、俺も気恥ずかしくなってそのまんま立ち尽くしてた。

 

 

「は、早く座りなって!鍋開けるよ!」

 

「お、おう!」

 

 

やたら声を張る杏に促され、そんな気恥ずかしさのまま慌てて杏の正面に座る。

 

 

 

「では…」

 

 

手袋をした桃が神妙に鍋の蓋を開ける。

 

 

「おおっ…」

 

 

思わず声が漏れる。

既に煮えている大量の肉と色とりどりの野菜。

鍋から漏れていた匂いもより一層濃くなった。

 

 

「よーし。小山入れろ。」

 

「はいっ。」

 

 

杏の指示で柚子が目の前に置いてあった魚の切り身を入れ始める。

 

 

「イクサ君。これ、あんこうだよ。」

 

「あんこう…って頭に明かりがついてる…」

 

「うん、そのあんこう。」

 

「あれって食えんの?!」

 

「河豚なんかと並ぶ高級食材よ~」

 

「へぇー…」

 

 

さっき言ってた初めて見る具材ってこれか!

確かに食ったことない。

 

 

「切り身で売ってるのか?」

 

「いんや、今回はまるごと買ってきた。」

 

「えっ?じゃあ杏が捌いたの?」

 

「そうだぜぃ!」

 

 

グッっと親指を立ててはにかむ杏。

趣味が料理なのは知っていたが、ここまでとは。

 

 

 

「いやー切り身でも売ってるんだけど、あんこう鍋初めてだろうし、丸ごと食べて貰いたかったからさ。」

 

 

「…ありがとう」

 

 

 

作り慣れているのだろうがその苦労は計り知れない。

俺は万感の思いを込めて礼を言う。

 

 

 

「えへへ…じゃあ食べよっか!」

 

 

 

「「「「いただきます!」」」」

 

 

 

____________________

 

 

 

 

「あー食った…」

 

「アタシもちょーっと食い過ぎちゃったかなー」

 

「ホシイモむしゃりながら言うセリフじゃねぇな」

 

「気にしない気にしなーい」

 

今席に座っているのは俺と杏のみ。

 

コタツの上には急須と緑茶が入った湯飲みが二つ、あとホシイモと茶菓子ぐらいしか無い。

 

土鍋や食器は柚子と桃が洗っている。

 

 

「なんか申し訳ねぇな。あんな上手いもん食わせてもらって」

 

「それこそ気にしなーい。これからかけるであろう苦労の前払いとしては安すぎるぐらいだよ。」

 

「苦労つったらお前の方がでかいだろ。」

 

 

そんな会話の後、突然杏の顔が暗くなった。

 

 

「……はぁーあ…苦労で思い出しちゃったよ…」

 

 

杏がため息をつきながら立ち上がると、部屋の隅にどかされたいつもの机に向かった。

 

 

「まさかまた問題が?」

 

「実は今この学園にはもう一人、戦車道経験者の女の子がいるんだ。」

 

 

これは予想外だ。経験者は一人でも多い方がいい。それにもしその子が教官役をやれれば俺は整備に専念できるしな。

 

…じゃあ苦労ってなんだ?

 

そんな疑問をよそに、杏は引き出しから書類を数枚取りだしてきて、またコタツに戻ってきた。

 

そしてその書類の中の一枚が俺に手渡された。

 

「はい」

 

「…『西住みほ』…この子が?」

 

「うん。ちょっと前に黒森峰から転校してきたんだ」

 

「!? 黒森峰の西住って…」

 

「うん。あそこの戦車道隊長、『西住まほ』の妹ちゃんで、元副隊長だね。」

 

戦車道全国大会の情報は毎回テレビや雑誌を通して得ていた。

 

そして黒森峰が去年の決勝戦、副隊長が崖下の川に転落した戦車を助けるため、フラッグ車を放置するという「判断ミス」のせいで十連覇を逃したことも知っている。

 

だが、あれは俺から言わせてもらえば誉められるべき行動であったと思うのだが。

 

…まさか。

 

 

 

「……去年のことで黒森峰から追い出されたのか?」

 

「いや、彼女は自分の意思でこの学校に来たみたいだね」

 

「接触済みか?で、どうだった?」

 

「…『戦車道が無い学校だからわざわざここを選んだのに…』って言われちゃった。」

 

「だろうな…」

 

 

十連覇の夢を途絶えさせた戦犯。そんな記事を目にしたこともある。黒森峰からはもちろん、戦車道そのものから逃げ出してこの学園に来たのだろう。

 

「でも無理矢理にでも戦車道をやってもらう。そうでなきゃこの学園に未来は無い。西住ちゃんにはイクサと同じだけの苦労をかけることになるけどね…」

 

俺の予想が合っているのなら、今は戦車なんて言葉すら聞きたくないだろうな…

 

「だからこそ、私たち3人が恨まれ役を買う。イクサには西住ちゃんの味方になって貰いたい。」

 

「この子の…味方?」

 

「そう。西住ちゃんに対してはかなり強引な手段をとる。脅し紛いの事もするつもりだよ。恨まれようがなんとしても戦車道に入ってもらう。そしてその後の心のケアをイクサがやるんだ。」

 

「…同じ戦車道経験者として、協力体制を作りやすくするために…か?」

 

「そんな打算的な考えじゃないよ。ただ、あの子に寄り添っていて欲しいんだ。この学園のために西住ちゃんが壊れちゃうのは私としても嫌だからね…」

 

 

どんな手段を使っても学園を守る。でもそのために犠牲は出したくない。その気持ちは俺も同じだ。

 

 

「イクサの苦労がまた増えちゃったねぇ」

 

 

申し訳なさそうな笑顔を俺に向ける。

 

 

…さっきからこいつは苦労苦労と…

 

 

「…それは違うぞ」

 

「はっ?」

 

 

今日初めて、杏の言葉を否定した。

 

 

「俺はこの学園事情に巻き込まれたことを迷惑とは思ってねぇし、この学園のために尽力することが苦労とは思ってない」

 

 

俺はさらに捲し立てる。

 

 

「俺はお前に呼ばれこの学園に来た事を運命だと受け入れている。それにこっちはとっくに覚悟完了してんだよ。お前が苦労だと言った事なんざ余裕でこなしてやるし、この学園だって守ってやる!」

 

 

俺の素直な気持ちを、我ながら不器用過ぎる言葉で杏にぶつける。

 

 

「だが…何よりも…」

 

 

そして、呼吸を落ち着かせ、俺が一番言いたい言葉を。

 

 

「俺が一番守りたくて、助けになりたくて、寄り添っていてやりたいのは、」

 

 

真っ直ぐ杏を見つめながら。

 

 

「お前なんだよ。」

 

 

言ってやった。

 

 

 

 

………言っちゃたよおおぉおおぉおおお!!!

 

どうしてこうなった?最初は俺に苦労なんて言葉使うんじゃねぇ的なことを言おうとしたんだよな?

 

なんで告白してんだあぁあぁあああぁあああ!?!?

 

無表情を保ちながらも俺の頭の中は俺の発言のせいで大混乱だよ!

 

しかもどてら羽織ってコタツに座りながらとか、ムードもへったくれも無いじゃん!告るなら告るでもっと考えt違う今はそれどころじゃねぇ。

 

いや、逆に考えろ。杏の事だ。きっと軽く受け流して

 

 

「////」(カァァァ

 

 

あっ可愛い…じゃねぇ!この反応、完全に「そう」だよな!

 

 

頭の中で頭を抱える。マジどうすっぺかなぁ…なんて考えてたら突然杏が立ち上がり、俺の側まで歩いてきた。

 

 

「下がれ。」

 

 

「アッハイ」

 

 

謎の威圧感に圧され、言われた通りに体を後ろにずらす。

 

 

「よいしょっと。」

 

「!?」

 

 

あぐらの上に杏がのっかって来た。

そしてそのまま俺の胸に寄っ掛かる。

 

俺の心臓が一気に跳ね上がった。

 

 

「か、角谷氏…?」

「足が寒い。詰めろ。」

 

「アッハイ」

 

 

そのままコタツの中に体をずらした。

 

 

「…」

 

「…」

 

 

しばしの沈黙。

 

最初に口を開いたのは杏だった。

 

 

「河島と小山さぁ…」

 

「は、はい?」

 

「片付け終わったら帰れって伝えてあるんだよ」

 

「そうですか」

 

「…わかんないかなぁ」

 

「何が?」

 

「今、このあたりには二人しかいないのよねぇ」

 

「へ、へぇ~」

 

 

心臓が高鳴りすぎて呼吸がおぼつかない。

 

辛うじて鼻から息を吸うと杏の匂いがダイレクトに伝わってきて、それが更に心臓を高鳴らせる。

 

 

「さっきのさぁ…」

 

「はい?」

 

 

声が裏返る。

 

 

「告白って事でいいの?」

 

「…ああ、そうだ」

 

「ふーん」

 

…まぁパニクっちゃったけどさ、あの言葉に偽りは無い訳で。俺はそのままの気持ちで答える。

 

 

「…そのどてら、良いでしょ」

 

 

杏が俺のどてらの袖をつかんでそう聞いてくる。

 

 

「わざわざ同じのを買ってきたんだろ?」

 

「うん。これから冬が来る度に『ずっと一緒に』着れると思ってさ」

 

 

『ずっと一緒』を強調して言ってきた。

…それって、つまり…

 

 

「……俺の告白の返事って事でいいのか?」

 

「……」

 

 

少しの沈黙のあと杏の顔が俺の方を向く。

 

 

そして目を閉じ、口を突き出す。

 

 

「ここまでやってわかんなかったら泣くよ?」

 

「…ああ」

 

俺も目を閉じる。

 

 

そして一瞬。本当に一瞬だけ、俺たちは触れ合った。

 

 

その後、杏はまた顔を前に向け俺に背中を預ける。

 

 

俺は杏を後ろから抱き締める。

 

 

「絶対に笑って卒業しような」

 

「…イクサとなら、できるよ」

 

 

 

 

 

 

新たな仲間、新たな問題、そして、新たな絆。

 

そのすべてを受け入れ、 俺たちは進んでいく。

 

 

 




3話目にしてやっとみぽりん(名前のみ)登場。

イクサとの絡みがどうなるのか。自分でも(妄想するのが)楽しみです

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