9話目 聖グロ回ですわ!
劇場版へのフラグを今から立てていくスタイル
ダー様の性格は某らぶらぶ作戦寄り。
ローズヒップは一年という設定で。
「すげー…」
「やっぱり日本じゃねぇなここ…」
俺と杏は校舎の前でため息をついていた。
校舎と言ってもここは大洗女子ではない。今居るのは先週行った親善試合の相手、聖グロリアーナ女学園。その校舎。
ちなみにその親善試合は5対5の殲滅戦で行われ、結果としてはこちらの全滅だったものの、相手の隊長車以外の4両を撃破するという大健闘を見せた。
これからの大会の事を考えても満足できる結果だったであろう。
負けた罰として行われたあんこう踊りも目の保養になったしな…踊った当人たちには悪いが。
それにしても。
「本当にイギリスのお城みたいだな…見たこと無いけど。」
「いやー本場の雰囲気が伝わってくるよね~…行ったこと無いけど。」
校舎…で良いんだよな?と何度見ても疑わずにはいられないこの外見。ちらほら見える生徒もイギリスらしい身のこなしをしている…まぁイギリス人の知り合いなんて居ないけど。
「んじゃーここの生徒会長に挨拶してくるから、ダージリンと仲良くしといてー。」
「この前も聞いたが本当にそんなざっくりで良いのかよ?」
「根回しの『根』ってのは張りすぎても枯らしちゃってもダメ…まぁつまりイクサの…その手土産のセンス次第よ~ん。」
杏は俺が手にぶら下げているバスケットを指差してニヤリとする。こいつは俺が用意した物だが…
「センスとか言われると非常に不安なんだがな。」
「まっ、ウチらのことを印象付けられたら勝ちよ。話は伝わってるから、よろしくぅ~」
そう言って校舎の中へ姿を消してしまう。
…ここまで来ちまったんだから気合い入れるしか無い。
校舎の中に足を踏み入れたが、早速問題点が。
「…どこに行けばいいんだ?」
俺は広い校舎の中で迷いながら数日前の杏との会話を思い出していた。
「イクサー今度の日曜暇ー?」
「ひまー。」
「んじゃー聖グロ行こうぜい。」
「んあ?聖グロ?試合やった所か?」
「そうそう…まぁこれから何が必要になるか分からないし、根回ししとこうかなー…って。親善試合って言うきっかけもあることだしねー」
最悪の事態を想定しておいて損はない。手は伸ばせる所まで伸ばしておくべき…という考えだな。
取り合えず遠くで聞こえた戦車の砲撃音頼りに歩いていくが…すれ違う女子生徒の視線が痛い。まぁ今さらか。
「あーっ!!」
後ろから突然聞こえる叫び声。振り向くと生徒が一人猛ダッシュでこちらに向かって来る。
「そこの殿方ァァァ!!」
俺だよね。俺しか居ないよね。
そしてその子は俺の目の前で急ブレーキ。衝突寸前の所で踏みとどまり、俺を見上げる。
「あのっ!大洗から来られたイクサ様でございますかっ!?」
「あ、あぁ。」
「ワタクシ、ローズヒップと申しますの。アナタの事は伺っておりますわ!」
今まですれ違った生徒は紺色の制服だったが、ローズヒップと名乗った子は赤色のパンツァージャケットを身に付けていた。髪も薄い赤色。そしてこの勢いと合わさって燃え盛る炎を彷彿とさせた。
「そ、そうか。じゃあ早速…」
ガシッ
そんな勢いに若干引きながら答えると突然手首を掴まれる。
「えぇ!早速!」
「えっ?」
そして俺を引っ張り…?
「行きますわよォォ!」
「うおおおおおお!?」
猛ダッシュ!?本当にこの子聖グロの生徒かよ!?
「待て。待って!走る必要は無いよな!?」
「時間は有限ですわ!急がないと無くなってしまいますわよ!!」
「淑女なら落ち着いて行動すべきじゃないか!?」
「急げば急ぐほど落ち着ける時間が多くなるから問題はないですのよ!!」
「意味がわかんねぇぇぇぇ!」
炎じゃないなこれ。ジェットエンジンだな。
そしてとある部屋…
「ゴク…ゴクッ……ハァー…ありがとう。」
コップに注がれた水を飲み干し、その水を出してくれた子…オレンジペコに礼を言う。
「いえ。こちらこそすいませんでした…」
「気にしないでくれ。俺も貴重な体験が出来たしな。」
「フフッ…」
俺が座っている席の正面。この学園の戦車道隊長にして実質的なナンバーワン。ダージリンがクスクスと上品に笑う。
「確かに…この聖グロリアーナの校舎を走り回るなんて、ここの生徒でもなかなか出来ないわよ?」
「えっそうなんですの!?ワタクシいつも走ってましたわ!」
「…まぁこの子はいつもこんな感じなのよ。」
「まぁ…なんとなく分かるな…」
ローズヒップはそんな会話を『はて?』という感じで聞いている。
初対面の相手にあそこまでできるのはもはや才能だと思うけどな。
「さて…まずは土産を…」
俺は『手土産』のバスケットをテーブルの上に置く。蓋を開けて姿を現したのは大量のスコーンと、ジャムが入ったビン。
「スコーンは…紅茶とよく合わせて食べらていると聞いたんでな。レーズン入りとチョコ入りがある。これはイチゴジャムだ。」
「ありがとう。早速頂きましょ?」
「ハイですわ!」
「頂きます。」
ダージリンに促され、オレンジペコとローズヒップも食べ始める。
「あら!美味しいわね!」
「えぇ…紅茶ともよく合いますね~」
「ダー様!これ!ジャムを付けたらさらに美味しいですわ!」
「ダー様はやめなさいって……んー…!確かにこれも捨てがたいわね…!」
「ジャムとだったらチョコ入りの方がいいですよ!」
「えっホント?……ホントだわ~…」
和気あいあいと食べるお三方。
口に合ったようで何よりだが…なんつーか…
「あら?どうしたのかしら?」
「あぁいや…もっと静かに…厳かに食べるものだと思ってたから…」
「フフッ…私達にも気を抜く時ぐらいあるわ」
「いつもおしとやかにしてたら疲れてしまいますわ~」
「ローズヒップはもうちょっと…いや何でもないです…」
スコーンの残りも少なくなってき頃、ダージリンが口を開く。
「ところで、このスコーンはもしかしてアナタが?」
「あぁそうだ。時間があればもう少しキレイに作れたんだがな。」
見破るとは流石と言ったところか。
「マジですの!?買ったお店を教えてもらおうとしてたのに!」
「ご注文は何時でも承るぜ?」
「えっじゃあ早速…」
「イクサ。この子に冗談は通じないわよ?…それで、なぜ店で買うのではなく、わざわざ手作りなんて事を?」
パーティームードは無くなっていた。
忘れていた。今目の前にいるのはこの学園のトップであることを。
…これは。試されている…か。
「ふー…」
ため息をひとつ。ダージリンは俺の答を待っている。俺の心まで見てそうな眼差しで。
そして俺は口を開く。
「事情は話せない。だが力を貸して欲しい。今では無いが、その時が来る。見返りは用意出来ないし、そちらにはなんのメリットはない。下手をしたらそちらに被害が出る可能性もある。」
「……」
「そして、贈り物とは自らの想いや誠意が直接形になった物。そちらに取ってこんな理不尽なお願いをするのに、店で作られた物を持っていくのはと、思ったからだ。」
これが俺の全て。あとは向こうの返事次第だ。
ダージリンは紅茶を一口飲み、スコーンをかじる。
「ご馳走さま。」
「えっ?」
予想外の言葉に思わず聞き返してしまう。
「あなたが言ったんじゃない。これはあなたの誠意なんでしょう?…美味しく、頂いたわ。」
スコーンを持ち上げ微笑むダージリン。
「…ありがとうございます…で、良いのか?」
「えぇ…でも、その時になったら事情を聞くわよ?」
「…ありがとう。」
頭を下げ、感謝の意を表す。その言葉に心底救われた気がした。
「ところで、あなた女子学園に居るのもその事情のせい?」
「あぁ…ウチの生徒会長がな…」
その後も他愛のない話が続き、
「ふむ、ではそろそろおいとまするかな。」
「そうね。ローズヒップ。お見送りを。」
「かしこまりましたですわ!」
「走らずに…ね?」
「か、かしこまりですわ…」
「…あと、イクサ。」
「うん?」
「ローズヒップではないけど…たまにお茶菓子の注文、よろしくて?」
「…今度はもっと美味いものを持ってこれるはずだ。」
「フフッ…楽しみしているわ。」
「あぁ…オレンジペコも。」
「はい。お待ちしてますね。」
「じゃあ、行こうか。ローズヒップ。」
「えぇ!行きますわよ!」
「待て、手を引っ張る必要は…待って!走るなって言われたろ!?」
ドタタタタタタ……
「あら!イクサ様、競歩はご存知無くて?」
「走ってなければいいって意味じゃないよな!?」
ドタタ……
「大洗…そして…イクサ……フフッ……これからが楽しみね。」
「えぇ。」
「うぃーっすイクサお疲れー……って、どしたの?」
「ハァ……ハァ………ちょっとな……」
「ふうん?で、どうだった?」
「ハァー……まぁ……協力を取り付けることが出来たし、こちらの印象も悪くないだろう」
「そっか!よくやったねぃ!ご褒美あげよっか!」
「ホシイモって言ったらどうしてやろうか。」
「……じゃあホシイモで。」
「えっ」
「……」
「……」
「……戻ってからな。」
「……うん。」
これを全校分やるぜ!覚悟しときな!