ミッドチルダのカンピオーネ!   作:海豚

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遅くなった&文量若干減少&何か前回の後書き詐欺みたいな内容になった。
申し訳ない。

サブタイ変更。
内容に変化は無いのでご安心を。


Memory;16 守る者と護られる者/惑う信念

 目の前の光景は果たして現実のものなのだろうか。

 高町なのはの視界に映る戦場は、魔導師の戦いの域を超えたものだった。

 遠くで光が弾ける。

 深く、鮮烈なまでに紅に輝く閃光。目を凝らせばその源は紅蓮の炎そのものであることがわかる。バリアジャケット越し、さらに熱源は遠方にあるというのに肌をジリジリと焦がされるのを知覚できた。

 遠くで再び光が弾ける。

 深いながらも清く澄み渡る深紅。遠方の紅蓮の塊が如何に高密度であり、かつ純度が高いかが見て取れる、最早小さな太陽とも形容できる様相の強大な業火。自分では防ぐことも、まして魔導で競り勝つことなど想像すらできない、否が応でもそう痛感させられる超絶の魔法がそこにあった。

 閃光と共に、その業火に真っ向から同質量の白銀の魔力が衝突した。

 澄みきった白銀、純白と評せるほどに混じり気のない魔力が、半ば業火となった紅を喰らう。溶かして、解かして、飲み込んで、消し尽くさんとしていく。なのはには絶対に作り出せない規模の応酬が目の前で起きていた。

 数瞬で、白が紅を余すことなく覆い尽くし、そして――

 

「ちょ!? アストさん、まだわたしたちいるんだけどッ!?」

 

 

 ――白を突き破り、再び紅が世界を塗り潰した。

 

 

 鼓膜を突き破らんとする轟音に、網膜を焼き切らんばかりに光を放つ一瞬の紅い煌き。直後全方位に放たれた紅蓮の暴風。もちろん都合良くヴィヴィオとなのはの方だけ紅蓮の猛威が及ばないなんてことはあるはずもなく、爆発の余波が襲い掛かってきた。

 

「ヴィヴィオ下がって!」

 

 条件反射。武装隊の管理局員として戦い続けてきた経験は、心身共に疲弊していてもなのはを取るべき行動に移させた。

 ヴィヴィオの前に移動し、即座に半球型の防御魔法『サークルプロテクション』を発動する。しかしデバイスを使わずに速度重視で発動したためか構築が甘く、爆発の衝撃を正面から受け止めた障壁には瞬間的に亀裂が作られていく。

 衝撃は一瞬。紅蓮の爆発を辛うじて耐えきった障壁は既に瓦解寸前の状態だった。

 心にかかる負担を無視して周囲を見渡して、少年と男の姿を確認しようとし――一瞬の浮遊感がなのはの身体を包んだ。

 反射的に瞬きをした次に映ったのは結界内ではなく、結界外の廃都市の入り口だった。

 空間転移の移動魔法。一体誰がこれを行ったのか。

 そんなこと疑問を持つまでも無かった。

 

「ごめんなさい。でもこれ以上いたら、絶対に危険だったから」

 

 後ろに立つヴィヴィオが、申し訳なさそうに謝ってきた。

 何故謝っているのだろう。ヴィヴィオは何も悪いことはしていない。寧ろ状況を鑑みれば自分を助けてくれたのだ。誇れはすれど、謝罪など筋違いにもほどがある。

 

「……間違っていたのかな、私たちは」

「え?」

 

 ああ、駄目だ。

 せめて娘の前では強くありたかった。たとえやせ我慢であっても、悟られていようとも。自らの弱さを曝け出したくは無かった。

 なのに自分の口は、心は吐き出せとどうしようもなく訴えてくる。

 

「私たちの行動は、何の意味も無かったのかな……」

 

 最愛の娘の前で、吐露した己の弱さ。

 不屈の心。何者にも屈することなく、どんな相手でも事象でも何度でも立ち上がってきた、決して折れることのなかった心。

 『まつろわぬ神』

 初めて相対した天上の存在。人類とは隔絶した実力差を前に、高町なのはの精神、その支柱は完全に揺らいでいた。

 ……何もできなかった。

 戦えていると思っていた。相手はまだ自分たちの力が届く領域にあると。これで少年は戦わなくて済む。そう思っていた。実際のところは、唯踊らされているだけに過ぎなかった。遊ばれるような事すら起きなかった。

 結局相手はただ己の調子を確かめているにすぎなかった。少年と娘が言っていたように、あの存在は自分たちが相手取れるような相手ではなかったのだ。

 

「……」

 

 そんな母の姿に、初めてみせた弱弱しい姿を前に、ヴィヴィオは何も言えなかった。どう言葉をかければいいのかわからず、その表情に苦々しさと憂いを乗せていた。

 母たちがやったこと。未曾有の敵から人々を、その問題の渦中にいる子供たちを守ろうとしたこと。その行いは決して間違ってなどいない。

 ただ致命的なまでに相手が悪かった。

 『まつろわぬ神』という人類にとって天災と同義である存在は、文字通り人間がどうにかできる相手ではなかったのだ。

 そしてこの事がヴィヴィオに言葉を詰まらせ、迷いを生み出す原因だった。果たしてヴィヴィオは今の母を前にして、何を、どう言えばいいのか。

 母たちの信念、それ故の行動。肯定するのは簡単だ。彼女たちの行動はどこまでも正しく、正義たり得ているのだから。ヴィヴィオも心情としては慰めたいのだ。

 しかし肯定してしまえば再び彼女たちは『まつろわぬ神』に立ち向かってしまうだろう。たとえ勝つ見込みの無い相手でも自らの守るべき人のために、再び不屈の意志で立ち上がるだろう。アストや自分たちを、決して戦場に立たせることないように。絶対に戦場に立たせることなく。そうなれば今度こそ彼女たちの命は散ってしまう。今回だって生き残れたのはアストが寸前で間に合ったからだ。

 彼女たちの信念を否定したくない。だが彼女たちが死地に向かうのを肯定するような真似も絶対に嫌なのだ。娘として断じて認められるわけも無かった。

 

(……ちがう。それだけじゃないよ)

 

 気づかぬうちに俯きがちになっていた顔を上げ、結界の中で戦っているアストの方を見て、思う。

 

「……」

 

 心の翳りをどうしようもなく自覚してしまう。

 迷いを生み出すのはそれだけではない。

 それだけ、じゃない。

 同じなのだ。

 高町ヴィヴィオも同じように、アスト・フレアカード一人を戦わせたくなどない。

 自分だって彼と肩を並べて戦いたい。

 彼の隣で並び立ち、彼を守りたいのだ。

 しかしそれは叶わぬ願いだ。

 アスト・フレアカードもまた、誰かと共に戦うこと望んでいないから。

 カンピオーネとまつろわぬ神。

 先の超魔力の応酬ですら彼らにとっては所詮、ただの小競り合いにすぎない。そしてその余波ですら自分たちにとっては死に繋がるだけの力があるのだ。

 人間を超越した力を持つ魔王となった今のアストにとって、共に戦う存在はただの足枷にしかなりえない。

 

「アストさん……」

 

 せめて思いだけでも、共に在りたい。

 自らの思いを形作る言葉も見つからず、迷いを抱えた今の高町ヴィヴィオには、アスト・フレアカードを信じて待つことしかできなかった。

 

 

 

 

 

        ✟

 

 

 

 

 

 魔力の爆発が収束していく。

 緋色と銀色の魔力の残滓が雪のように降り注ぎ、結界に切り取られた世界を薄く染め上げる。

 廃都市より遥かな空の上で向かい合う二人。

 武装形態で疑似的に成長した肉体。黒い長袖の上下に深紅のコートに加え、右腕を除く四肢に黒銀の手甲を身に着けたバリアジャケット。背には円環の中に逆三角が描かれた魔法陣が展開され、そこから二対四羽の紅蓮の翼が猛々しく広がっている。その剛翼は内に宿す膨大な魔力を体現しているかのように焔を携え、先端にいくにつれて吹き出す炎の勢いは増していた。

 『カンピオーネ』――アスト・フレアカードは油断なく、右手に握られた奇抜な形状の剣を正眼に構える。

 薄く紅に色付く刃越しに覗く深蒼の双眸は、ただ真っ直ぐ正面の男を見据えていた。

 

「――それが君の武具か。……問題なく振るえるようだな」

 

 自分の中で完結している、淡々とした言葉。しかし口角は少し離れていても目で見えるほど上がっており、なのはたちを(なぶ)っていた時の無機質さは無くなっていた。

 袖が無く彩りもどこか貴族めいた防護服に身を包んだ男は、一部の隙を見せることなくただそこに佇んでいた。スーツの上からでは見分けることができなかった長身の肉体は、余分な物を総て削り落としたように美しい筋肉で引き締まっていて、惜しげも無く晒された両腕は特にそれが顕著に表れている。

 さらに、人とは思えぬほど美麗な顔立ちに常夜に浮かぶ星の輝きを宿したとも思える美しい髪色も相まって、浮世離れしながらも一つの『個』として完成された印象を与えていた。

 だが今のアストには男の容姿など、どうでもいいことでしかなかった。

 

「お前……どういうつもりだ」

「どう、とは? 何のことだ、神殺し」

 

 男は呆けたように、一体何の事かわからないと言わんばかりの態度で問うてくる。

 

 

 ――ふざけるな。

 

 

 何も無かったように空に立つその姿が。

 とぼけたような、それでいて確信を得ているその笑みが。

 男が形作るその全てが、アストの感情を逆撫でし、どうしようもなく苛立たせる。

 まるで狙ってそうしているかのように。

 

「とぼけてんじゃねぇぞ……!」

 

 先の攻防で多少静まった激情が再燃する。

 アストの感情に呼応する様に背の魔法陣は紅く脈動し、展開した紅蓮の翼は巨大に、何よりも強く色付いていく。

 赤く、紅く、朱く。深く、深く、何処迄も深く。

 狂おしいほどに、限りなく染み渡り、“アカく”色付いていく。

 

「何故あの人たちを襲った!? 狙いは俺だったんだろ! ……どうして巻き込んだッ、テメェは!!」

 

 覇を受け継ぐ少女との出会いを経、引き寄せられるように邂逅した『まつろわぬ神』

 奇妙な神により図らずも出来た時間は、アストに『神』の正体を暴かさせるのに充分なものだったと言える。

 神を指し示した真名、神が遺した来歴……或は人々が創り上げた神話を。

 だからこそ、アストには許せなかった。

 

「別に()は、巻き込んだつもりはないんだがね……」

 

 その姿は憂う様に、見下した様に。

 冷美に薄く弧を引かれた線は上と下に、二つに分かれる。

 

「先に手を出したと言うのであれば、それは彼女たちの方だ」

「ンだと……」

「何やら後を追ってきていたのでな。神をも恐れぬ蛮行、ならばと思い戦の舞台を整えたのだが――」

 

 一拍置かれ、視線が交わる。

 青と紫。

 遮るもののない、曇りない水晶の如き『まつろわぬ神』の異色の双眸が、大海の深い水底を思わせる『カンピオーネ』の蒼の瞳を見据えた。

 溜め息でもつきそうなほど、それこそ憐れむように。

 

「……買い被りだったよ。あれでは愚策も愚策。愚行も愚考――」

 

 言葉は最後まで続かなかった。

 轟音、そして爆炎。

 紅蓮を映す冷たい断頭の刃が、男の至近距離で振り下ろされた。

 

「どうした? 癇癪でも起こしたか神殺し?」

「もういい喋んなよ、クソが」

 

 声は掠れていた。

 抑えきれぬ感情を吐き捨てた様に、抑えきれない感情が流出した様に、震えていた。

 寒気すら覚えるアストの言葉を受けて尚も男は表情を崩さず、頭上で腕を交差し、鋼の手甲で迫る刃を受け止めた。

 

「そも、本気で僕を討つつもりがあったなら、初めから『刃引きの魔導』は解くべきだったのだよ。終ぞ、彼我の実力差すら気づけなかったがな」

「……黙れよ」

 

 眼前で鋼と鋼が削り合い火花を散らし、極光極大の陽光が頭上で照りつけ、四つの炎翼が明確な殺意を携え、紅蓮の業火と為って襲い掛かる。

 それは煉獄に閉じ込められたと同義。総てを灰にせんとする絶死の牢獄が男を滅さんとした。

 

「わかりやすく言えば」

 

 絶えず燃える炎が震えた。

 冷然に、凄然と、冷徹な言葉が響き渡る。

 ただそこに、存在の一切を揺るぐことなくそこにいる。

 神は悠然と、その身に猛火を受けながらその一切を焦がすことなく、ただ冷ややかな微笑をアストに向けていた。

 

()()()のやったこと総て――無意味だったんだよ」

 

 最早限界だった。

 

「黙れッつッてンだろォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ――――!!」

 

 決壊した激情を荒れ狂う魔力に。

 溢れ出る魔力を力任せに刃へと押し籠めていき、白銀の剣身に幾千もの魔導回路が浮かび上がり、極大の魔力が疾走していく。

 激情を籠め奔らせた剣身は鋼銀(ぎん)から緋焔(くれない)へと変わり、天に掲げた剣は曇りなき常闇に一筋の紅を引いていく。

 右腕を引き絞り、咆哮と共に、解き放った。

 

「ッオオオオオオオオオオオオオオオッッ――――!!」

 

 上段からの袈裟懸け。重力に己が体重、炎の翼を後方に向け爆発させた勢いを余すことなく乗せた斬り下ろし。

 鋼と鋼が重なり合う。

 火花は、散らなかった。

 

「ッこれは……!」

 

 明確な感情を宿した呟きが漏れる。

 涼しげな笑みを変えなかった『神』の表情が初めて明確に崩れた。

 

「ただの魔導で魔鋼の籠手を融かすか! やるじゃないか神殺し!!」

 

 拮抗は崩された。

 深紅に染まった焦熱の刃は鋼の手甲を徐々に融解させていき、手甲に潜り込んだ刃がさらに紅の輝きを増していくのを男は肌で感じていた。

 次に来るのは何か。

 男は未だ表情を崩したまま、重ねられるだろう追撃を待ち受けた。

 その顔に嘲笑ではない――()()()()()を携えて。

 

「ぶっ飛べ、クソ野郎!」

 

 剣を滑らせるようにして籠手から引き抜き、男の体勢を崩し、右踵から魔力を放射させる。

 体勢を崩した男に、黒銀の脚甲に包まれた右脚の廻し蹴りを叩き込んだ。

 弾丸のように眼下の廃都市へと叩き落とした。鼓膜を壊しかねない空絶音を連続で響かせながらその落下速度は緩むことなく、墜とされた男は廃都市を揺るがし、巨大な窪みを創り上げるものと思われた。

 遥か天空から数瞬で高層ビル群の頭頂にまで迫り、落下時に生じた衝撃波が密集したビル群を震わせ、地表に近づく度に通り過ぎた窓が悉く破壊されていった。

 阻むものなど何もない。そのまま地面に激突するはず。アストは米粒ほどの大きさにまで落下した男を眼下に見下ろし、その姿を明確に視界に収め続けた。

 時間にして丁度三秒。男と地表の距離が人の身長分にまでに縮まり――

 

「ちっ……」

 

 舌打ち一つ。

 眼下に広がる異質な光景は、アストに苛立ちを覚えさせるのに充分だった。

 

「ふざけやがって……」

 

 『まつろわぬ神』という爆弾を『カンピオーネ』の剛脚、それも師匠直伝の『リボルバー・スパイク』にさらに魔力放射による炎熱のブースターを乗せて撃ち放ったのだ。音速で落とされた廃都市はそれこそ広範囲に地面を捲り上げ隆起させ、その余波で建物の倒壊した様相を見せたとて可笑しくは無い。

 しかし、眼下の光景は()()()()()()()。倒壊の土煙も、大地を揺るがす震えすらも。落下したという音すらなく。

 アストには見えていた。

 大地に落下し叩き付けられるその瞬間、墜ちることに抗えなかったはずの男が、確かに空中で静止したのを。

 まるで男の周囲だけ重力が消失してしまったかのように。音速の落下の衝撃すら消失し、男は浮いていた。

 落下に身を任せ、背から堕ちていた男は天に向けていた両脚をゆっくりと地面に下ろし、降り立つように大地を踏み締めた。

 男は顔を上げ、アストを見据えた。

 

 

 ―― こ の て い ど か ?

 

 

 声は届かない。

 だが口の動きはハッキリと追えた。

 

「ンなわけがないだろ……」

 

 呟いた声色は静かなものであった。

 怒りが消えた訳ではない。だが一連の奇怪な光景を目の当たりにすれば、嫌でも沸騰した頭は冷却された。怒りに身を任せたものでは、男は堪えた様子は見受けられない。ならばここで冷静になれたのは好都合だと考えるべきだ。

 

「俺もまだまだ未熟だけど……考えなしにテメェに斬りかかったわけじゃないんだよ」

 

 男の絶やさぬ凄絶な笑みが、かつてないほどに深まる。相手もこちらの言葉を読んでいるのだろう。

 何が一体面白いのか楽しいのか、或は嬉しいのか。まつろわぬ神の考えている事など、やはりアストにはわからない。

 だが、考えるのは後だ。

 

「最適化は終わったか?」

 

 ここにいる、まつろわぬ神ではない誰かに向け、アストは問うた。

 答はすぐに返ってきた。

 終わった、と。

 時間稼ぎはもう必要ないと。

 そう応えてくれた。

 

「そうか……なら」

 

 右腕を暗闇の空に掲げ、アスト・フレアカードは言葉を下す。

 

「御披露目だ」

 

 アストの言葉を受け――掲げられたデバイスが真に起動する。

 暗天の中でも銀に輝く刃を芯棒に、円環(ミッド)正三角(ベルカ)の魔法陣が切先から柄まで交互に展開されていき、足下には剣身に展開された二つの魔法陣の組み合わさった術式が広がる。

 アストの魔力光に色付くそれは強く紅に輝き、足下から巨大な火柱を発生させ、アストを飲み込んだ。

 

「こっからは全力だ、まつろわぬ神」

 

 縦一閃、天を貫く火柱が裂かれた内からアスト・フレアカードが現れる。

 

「それが本当の武具か。……見違えたね」

 

 アスト自身外見に変化はない。武装形態もバリアジャケットも変わったところは見受けられない。

 だが変わった。背に携えた二対大小の緋翼は猛々しく業火を放ちながらも、感じられる魔力は清流ように静謐としたものだ。荒れ狂う獰猛なものから、洗練され制御されたものへと確かに変わった。

 そして何よりも変化し、目を引くのがデバイスだ。

 これまでは奇妙な形状の『剣』と認識していたが、最早『剣』とは言えないかもしれない

 漂う火の粉で淡く煌く銀の片刃剣は、アストの身の丈に迫るほどに巨大に。

 峰の部分にはライフルを思わせる銃身に加え、根元には新たにリボルバーが作られた。

 右手で握りこんだ黒色の柄は『剣』として握れる構造を残しながらも『銃』として扱えるグリップに似た形状になり、トリガーとガードも形成されていた。

 二つの武器の特性が見受けられる『剣』であり『銃』であるデバイス。どちらを主体にもできてしまう、使いこなす事が出来たならばすべての距離において対応できる、完成された武具。

 その形状をあえて言葉にするならば――。

 

「『銃剣』と、言ったところかな?」

「デバイスとしての名称は『Gun Blade(ガンブレード)』。ベルカの言葉なら『Bayonet(ベイオネット)』らしいぜ」

 

 もっとも、それは銃剣(デバイス)の名称であって、これから長く連れ添う()()の名前ではないのだが。そこまで丁寧に紹介しようとは思わなかった。

 ジャキッ、と。沈黙しかけた空気を薙ぎ払う。

 肩に担がれた剣を振るい、遥か地上に立つ者に銃口を向けた。

 準備は終わり。

 今、これより『人間』ではなく『カンピオーネ』として。

 アスト・フレアカードは力を振るうことができる。

 

「なら()()()()()神殺しの王(カンピオーネ)アスト・フレアカード」

 

 地上の『まつろわぬ神』が拳をつくる。

 融解された手甲は傷一つなく復元され、悠然と構えるその姿に隙の一つも見当たらない。

 隠し得ぬほどに濃く色付いた好奇と殺意を笑みに埋め込み、天を見据える。

 

「……ああ」

 

 昂揚した戦意はそのままに。

 荒れ狂う激情は内に秘め。

 紅蓮の双翼を強くはためかせ、深蒼の瞳で地を見やる。

 さあ――。

 

 

「仕切り直しだ。ぶち殺してやるよ、地に堕ちた覇王(まつろわぬ神)イングヴァルト」

 

 

 ――地獄の始まりだ。












Q.何で更新遅れた?

A.すまんかった。家庭の事情と休日が科学反応したんだ。

真面目に書くと祖父が急逝して葬式関係で駆り出されていたので休日がほとんど潰れて時間がががが(ry
今回の話もその影響で前半3000文字と後半4000文字で二週間近く空いてます。ヤバす。
しかもこの話、前回に書き足そうと思って書いてたら微妙な文量になったから足すわけにもいかなくなったやつだから話も進んでない。さらにヤバす。
とくにモチベーションが落ちた訳ではないのでぬるぬるもどしていきたいッス。

ではでは。
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