テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第11話 ルナの夜ふかし

迷宮塔から精霊ルナを連れ出したテトラたち。

彼らは今、ルナが聞いた「声」というのを頼りにガンドコ西へと向かっていた。

 

…………夜の暗闇に浮かぶ船・船内…………

 

「なんだか、眠れません………」

なぜだか目がさえてしまったらしい。ルナはしずしずとベッドから脱出した。

すぐ側で眠る画家テトラと魔女ニーキスの顔をコッソリ、夜中の怪しい気分のまま眺めた。

チラリ……

「…テトラさんは、絵描きさん。昨日、お願いしたら狐の絵を描いてくれました。

また描いてほしいです。」

チラ……

「…ニーキスさんは、魔女さん。歌がとってもお上手です。歌手だったそうですが、

歌劇とはどうゆうのでしょう? いつか観てみたいです。」

 

ルナは結局、ニーキスと契約を結ばなかった。

それは育ての親ハリウサギ・ムーシュの反対があったからなのだが、

…実は『ただ人に付き従うのではなく一緒に歩き闘いたい』という思いが密かに

芽生えてしまったからでもあった。

精霊である彼女が実体化したままベッドで一緒に寝ようとしていたのも

きっとそんな気持ちの表れなのだ。

「……よいしょっ……」

未熟な精霊は少々手こずりながらも自身の体を透過させる。

半透明のルナは壁をすり抜け、今度は男たちの眠る部屋を覗いた。

 

じっ……

「…ヴェルディさんは、……妖魔さん。

ヒトと妖魔は昔から仲が良くないと塔で教わりましたが……

テトラさんは『ヴェルディはそんなにワルい奴じゃないよ』って。実はオオカミさん。」

じろり……

「…ナラシノさんは、対魔士さん。トクベツな任務があるらしいのですが、……

本来は妖魔をやっつけるのがお仕事。

ヴェルディさんと一緒に旅していて上司に怒られないのでしょうか?」

ルナはもちろんテトラたちのことをまだよく知らない。

しかしなんとなく、彼らと自分をどこかへと導こうとしているのは…

そのチカラのようなものの発生源はテトラなのだろうと思った。

 

…………夜の暗闇に浮かぶ船・甲板…………

 

外に出ると間もなく、ルナは魔導人形・レジンキッドを見つけた。

甲板に腰を下ろしてまったりと彼方の光を見つめていた。

「…レジンさんは、お人形さん。……周りを警戒してくれているんでしょうか?」

 

具現化したルナの素足がペタペタと音を鳴らす。

「こんばんはレジンさん。」

「……『さん』なんて付けなくて構わん。寝なくて平気なのか?」

「レジン…はいいんですか?」

「人形だからな。ヘッチャラさ。」

「……私も精霊だからヘッチャラです。 それに今日はいつにも増して眠れません。

船旅なんて生まれて初めてなのです…!」

「そうか、ずっと塔で暮らしていたんだものな。どうか旅を楽しんで、

…テトラと仲良くしてやってくれ。」

 

「……テトラさんは一体何者なんでしょうか?……」

思わずルナはざっくりとした質問を投げてしまうが、レジンは気にせずに話す。

「テトラはごく普通の女の子さ。小さい頃から絵を描いていた。夢中で描いていた。

私はオモチャとかペットのようなものとして買われたワケだが……

あまり私の相手はしてくれなかったな。」

「今でも、ずっと描き続けているんですね。ステキです。」

「イヤイヤ、アイツはしょっちゅう描かなくなる。飽きっぽいからな。でもまあ、

魔力尽きるまでテトラは描くのを止めないだろう。」

「……?」

「アイツはずっと姉の背を追い続けているのだ。」

「お姉さま??」

「…この造られた人形の眼では判らないが、テトラいわく『あまりにもウマい』、

『一生敵わない存在』。姉コルザの描く絵はソレハソレハ素晴らしいものだったらしい。」

「憧れ、というのでしょうか……?」

「それだけなら明快で可愛らしいんだが、恐らくはもう少しフクザツな、

……愛と憎しみ、リスペクトや劣等感が混ざりに混ざった情念のカタマリ……

そんなのがテトラを動かしているんじゃないかと私は思っている…………」

「は、はぁ…。?」

 

レジンが何処からともなく「苦労人オーラ的なもの」を纏い始めたように見え、

ルナはもう何とも言えないような、あるいは申し訳なさそうな笑顔で応えるしかないのだった。

「(色々と苦労があったんでしょうか??)…

でもレジンはテトラさんのことをずっと見守られてきたんですね?」

「…気晴らしの話し相手になったり、たまに遊び相手になったり。

必要とあらば盾となり、必要とあらば剣となる。それがお人形のオシゴトだからな。」

「!……お人形のオシゴト………」

 

突然、片膝立ちになるレジン。遠くの方を凝視している。

ルナもつられて目を向けた。

「船、でしょうか?」

「イヤな予感がするな…」

暗闇の中に小さく、青白い船が見えた。

青白い船はグングンと近づき、すぐにそれがテトラたちの船とは比べ物にならない程に

巨大だとわかった。

一応避けようとレジンが舵を取るも、やっぱりどうして逃れられず。

ルナとレジンは船ごと青白い巨大船の中に「飲み込まれて」しまった!

 

◆◆

 

…………死霊船マッド・ウォルラス…………

 

「ここは……?」

ルナとレジンは辺りを見回した。

一体何がいついつ壊れたのやら。そこには無数の残骸が散らばっていた。

かつて誰かに形作られ、いつの間にか跡形も無くなってしまった木片石ころ鉄くずイロイロ。

「…かすかに波の音が聞こえます。」

「船の中か。とりあえず地獄じゃなくてよかった……」

木や石や鉄のカケラは宙に浮き上がり、パズルのように器用に合わさると…

それらはルナとレジンに襲いかかった!

 

……vs.ブルータルデブリ×6!……

破片のカタマリたちは一ヶ所を鋭くトンガらせて一斉に突進!

ルナは綺麗な宙返りをみせて攻撃をかわす。

「幽霊さんのイタズラでしょうか?」

「除霊してやろう……マグネティックゲート!!」

黒い稲妻を帯びた強力な磁場が発生! デブリたちをみるみる引き寄せ動きを封じる。

レジンがチラと目配せするとルナの術撃!

「光に踊れ!!……シャイニングレイ!!」

上方に浮かび上がった華やかな魔方陣が光を放つ! 聖なる輝きはデブリを打ち砕いた。

砕かれたデブリたちは再び集まり合わさろうとするが、レジンの連続剣がそれを許さない。

「トドメだ!」

「はい!……月閃光!! 成仏しなさい!!」

白刃一閃! 魔原子の結晶刀はデブリを鎮めるとキラキラ宙に溶けた。

なんとか無事に悪霊を凌いだ、かと思った矢先。

バキバキと周囲の壁、床、天井がヒビ割れ始めた。

 

「船がいきなり壊れだしました??!」

「…というか、『形を変え始めた』かな。」

二人は急いでデブリ・ガレキの雨アラレをくぐり抜け、なんとか幽霊船の外…

甲板(のようなスペース)に躍り出る。

と言っても、もはやそれは『船ではない別の何か』になろうとしていた…

 

……vs.マッド・ウォルラス……

「この船は一体何なんです??」

「きっとこのデカイのは悪霊たちの集合体。…デブリも船自体も皆、おそらく幽霊だったのだ。」

口をバキバキと大きく開き二人を飲み込もうとする悪霊集合体。夜空まで食べそうな勢いだ。

レジンは素早くルナをおんぶ。即席の電磁フィールドを蹴って空を駆け登る。

大きなキバがレジンの赤マントの端っこを噛み千切った…!

「フゥ……こんなところで喰われるワケにはいかん。テトラはまだまだ旅の途中……」

「レジン……そうです! 私の冒険だって、まだまだ始まったばかり。

負けるワケにはいきません!」

 

二人は夜空から悪霊マッド・ウォルラスを見下ろした。

海上に黒々と蠢く巨大なカタマリ。悪魔とはコレのことか。

「さて、こんなデカイの、どうしてやろうか……」

「私に任せてください……レジン、失礼しますっ!」

そう言うとルナはレジンのおんぶを解き、しなやかな脚で彼の背中を蹴って更に上へとジャンプ!

輝く月……その中をルナの影が泳いだ。

「ヒトの安らかな眠りの時を……守るが月霊ルナのオシゴト!!

ワルいオバケにはお仕置きですッ!!」

ルナは月の魔力を背に浴びて特大サイズの剣を創り出す。

これだけあればなんでも斬れるだろう、そんな安心の特大結晶剣!

「いざ必殺の月影剣…………一つ!…二つ!!……三ッつ!!!」

ルナ渾身の三連撃!!

三日月型の斬撃波が海の悪魔を六等分。

ルナはゆっくりと海上…水面の上にひたと降り立つ……

「オマケです……ムーンスクレイパー!!」

悪魔を中心にして、月のシルエットを海面上に浮かべる!

ルナが特大剣を霧散させると、悪魔は斬り払われたことに気づいてバラバラと砕け散り、

暗闇の中へ還った……

「…浄化完了、でしょうか?」

戦いを終えたルナは、ふぅ、と気を休める。

『……タイマシドモヲ……・・・ヲ……コロシテクレ……』

「!?」

ルナは低くドロドロとした声を聞いた。レジンは……聞こえていないようだ。

ルナはしばらく耳をすませたが、それ以上の言葉は無かった……

 

◆◆

 

ルナとレジンは自分たちの船の無事を確認。

二人は甲板に帰還して夜ふかし(夜の警戒)を再開するのだった。

 

……翌朝……

「ルナちゃんなんだか眠そうだねぇ? そっか船旅なんて初めてだもんね??」

「えっと、まあ。……それに元々私、夜型でしたし……はいっ。」

ルナは視界の端にレジンを見つけた。

レジンは自身の体の汚れをブラシでゴシゴシと落としている様子。

悪霊に喰われてたことも知らずに、コイツは朝からお元気さんだこって…

とレジンの目が語っていたので、ルナはフフッと微笑んだ。

 

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