テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第13話 蜘蛛糸

「しかしてめえ、一匹オオカミが嬢ちゃんの言うことをヤケに素直に聞いてやがるなぁ。」

「…なんだよ、ワルイか?」

「いンや。ステキだなァと思うゼ。」

「……旅は道連れ、とかってヤツだよ。」

 

鉄獄を抜け出して階段を駆け上がるテトラたち。やがて重苦しい石のトビラが現れる。

「ナラシノ!」

「よしっ、…斬れるかなコレ。」

刀剣担当ナラシノは愛刀『ワライフクロウ』のことを心配しつつ、

閉ざされたトビラを斬り刻んだ。

トビラはサイコロ状に斬り分けられてバラバラと崩れ落ちてゆく…

「だいぶ音たてちゃったけど大丈夫かな?」

 

…………ミザール地獄牢・断罪場…………

 

恐る恐る先へと進むテトラたち。

薄暗い大部屋。そこには妖魔のホネ、それもかなり大きめのものが

ゴロゴロと転がっていた。

が。それよりなにより、闇の奥にたたずむ『なにか大きなもの』にテトラたちは

全員一斉に釘付けとなった。

 

「き、きょじん…巨人だ……!! でかい…………」

「なにかしら居るだろうとは思っていたが、まさに想像通りな感じだな…」

下手すれば丸呑みされそうなくらいの大型妖魔! 筋肉隆々のソレは壁に背中を預け、

腰を下ろしている。

…………。

…………?

「動かないね??」

「寝てるのか?」

この巨人。呼吸音は微かに聞こえるが、微動だにしない。

幸い(?)ぐっすりお休み中のようだ。

これは、やり過ごせそう?

 

「しかし出口というか、通路はドコだ? 見当たらん。」

「行き止まりってことはないよねえ。」

「巨人さんの大きな身体に隠れているのでは…?」

「ム。………」

巨人によって道が塞がれているとしたら、文字通り『避けては通れない』。

力ずくでどかすのは難しそうだ。

 

……vs.サイクロプス!……

「よし。テキトーな所に誘導して、サッサと抜けよう。」

ヴェルディ少年は床に転がる妖魔のホネを一本拾い、巨人サイクロプスに向かって投げた。

妖魔のホネが巨人の脚に当たると、やがて巨人は一つ目の眼球をギョロリ開眼!

ゆっくりと起床した。

「鬼さんこちら!ってね。」

魔女ニーキスがタクトを頭上に掲げると、タクト先端に小さく明かりが灯った。

魔女は光を振り動かして鬼さんの気を引く。

 

『…………グ……ォォ…………!』

巨人は地を揺らしながら立ち上がり、ドシンドシンと歩み出す。

テトラたちは巨人の足元をダッシュ。その向こう側へとまっしぐら。

しかしそこには…

「あれっ!?」

「通路、無いぞ……」

そこにあるのは石壁のみ。

これは一体どうしたもんかと狼狽えるヒマなく、巨大な魔法陣が床の上に

浮かび上がる。

 

「魔法陣!?なんかマズイ気が…」

テトラたちはもれなく全員が魔法陣の上に立っていたが、

特に「影響を受けてしまった」のは妖魔・精霊・そして人形レジン!

「な、何!!?」

「!!これはクロリムの力を…魔力を封じる、上級陣術『魔封陣』!!

妖精はマヒさせられ魔法は使えなくなる…!」

 

ニーキスは術を唱えてみたが、やはり失敗に終わる。

ニーキスの表情は険しい……

テトラは急いで妖魔たちのもとへ駆け寄った。

「ヴェルディだいじょうぶ!?オジサンも…!」

「…ッ大丈夫だ、と言いたいところ、だが…」

妖魔ヴェルディもガストロも、なかなか身体を思うように動かせないようだ。

「すみま……せん、ニーキス、さん……」

「ルナ?! あ、ああ……」

精霊ルナはニーキスに指輪『ムーンストーン』を預けると、キラキラと

光の粒になって指輪の中に退避した。

「なんてこった。魔力を封じられたら、僕の刀もナマクラだ……」

剣士ナラシノは冷や汗と共に愛刀を握り、動けなくなった人形レジンを庇うように立った。

ヴェルディ・ガストロ・ルナ・レジンキッドの四名が戦闘不能。

魔術も妖刀剣術も使用不可となってしまった!

 

……テトラ・ニーキス・ナラシノvs.サイクロプス……

一つ目の巨人は重たい足でナラシノを、レジンキッドも巻き添えに容赦なく蹴り飛ばす!

二人は石壁に叩きつけられ、部屋のスミに倒れた……

「ナラシノッ!!レジンッ!!」

「テトラ、一旦離れよう!」

「は、はい……あッ…」

予想外の事態。テトラは慌てて転んでしまう。

巨人の眼は怯えるテトラをギロと見た……

ヒト一人くらい容易く握り潰せそうな、大きな手はテトラに向かってゆっくりと伸びた。

 

「テトラッ!!」

薄暗い地下空間に悲鳴…呻き声が響いた…… だがその声は巨人によるもの。

ヴェルディの大型ナイフが巨人の片腕に突き刺さっていた!

そのスキに走り、距離をとるテトラ・ニーキス。

「グ…ァ…………ッ」

「ヴェルディッ!!!」

巨人はもう片方の手でヴェルディ・ガストロを乱雑に払い除けた。

そしてナイフを引き抜くと、それをテトラたちの方へ投げる。

「わ……ッ!」

ヴェルディの大型ナイフはテトラの足元…紙一重のところに刺さり、突き立てられた。

ナイフの刃にはベットリ赤黒い血がついている。

……赤黒い、妖魔の血……

……こんなところで死ぬ訳には、死なせる訳には……

 

「テ、テトラッ! 『ソイツ』は……?」

「えっ………?」

ニーキスは驚きつつ、テトラの方を指差していた。

気づかぬうちにテトラの魔筆『ノクティルカ』が、黒い筆毛を禍々しく

伸ばし始めていたのだ。

「その筆は魔導器…なのだろう? 魔力を封じられているのに、どうして動いて…

ソイツは一体……」

「分からない、ですけど……やっぱり確かにこの筆には「意思」があって!

今こいつは……血を欲してます……!!」

ノクティルカはナイフの血をすすり終えたが、まだまだ「足りない」らしい…

毛をギザギザと伸縮させる。

巨人は再びテトラたちの元へドシドシと迫り来る。

「返り討ちだッ、ノクティルカッ!!」

『グォ…オオオオ…………!!』

 

はたして魔筆はテトラの言葉を理解しているのか……

テトラの叫びと同時に毛糸がみるみる大部屋中に張り巡らされ、

蜘蛛糸の如く標的を捕らえた。

巨人は必死に糸を取り去ろうともがくが、その巨体は黒い毛糸にグルグル巻かれ、

…いつしかもがくのを止めた。

毛糸は獲物を強く締め付けると、じわり血色に染まってゆく。

溢れ飛んだ血は霧の様に部屋中を漂い、石の壁に美しいグラデーションを描いた……

 

魔筆は満足したのか、巨人に巻き付いた毛糸を切り捨てるとスルスル毛を縮め、

元の「絵筆のカタチ」に戻った。

ぐるぐる巻きになった巨人が大きな音をたてて倒れると…

「! トビラだ……」

「巨人の体重がどこかしらに掛かることで扉が開放されるようになっていたらしい…」

呆然と立ち尽くすテトラとニーキス。

もちろん二人は隠し扉のギミックに感心している訳ではなく。

「なんて恐ろしい、絵筆……」

「今回はワタシたちを助けてくれたが……」

いつか完全に持ち主を離れ、従わなくなってしまったら。

やはりこの筆は魔の血を求めて地を這いさまようのだろうか?

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