テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

17 / 29
第14話 燃えて消えた

「よし、…地上階だ。」

「誰も居ないじゃん。脱獄成功?」

「いや、どうかな…」

テトラ一味と妖魔ガストロはなんとか地下から脱した。

対サイクロプス戦で受けたダメージは残ったままだ。

テトラは扉を押し開けて外に出た…

 

…………ミザール地獄牢・正門前…………

 

「!!」

「待っててくれたようだな。」

「悪賊共、大人しく縛につけッ! 抵抗すれば命は無いぞ、この場で罰する!!」

久し振りに空を拝んだテトラたち。日は沈みかけている。

オオゲサな数の対魔士たちが正門前にてニクき脱獄囚共を包囲した。

 

「あァ、こいつァまいった!降参だ!! …対魔士サマよヒトツ聞いてくれ。」

「なんだ?」

「『コイツら』は、オレとはマッタク関係の無い、市民だ。すぐに解放してやれ。」

「盗賊団のボスの言うことを信用しろと?」

「わたしたち、なんにもしてないのに話も聞いてくれないなんて、あんまりだよっ!」

「脱獄はオレが脅して…協力させただけだ。」

「……むぅ…」

 

対魔士たちは困った。

ガストロはともかく、金髪の女の子テトラの眼差しはあまりにも透き通っており、

とてもウソをついているとは思えない。根拠は無いが…どうやら確かに

無関係の者を牢屋に押し込んでしまったようだと、察したのだ。

両者は離れるでもなく詰め寄るでもなく。ひたすら沈黙した…

 

「ゥグ………」

「?……」

「…なんだ?」

ガストロは突然、血を吐くと崩れるように倒れた。

テトラと妖魔ヴェルディは慌てて駆け寄る。

「大丈夫っ?!血が…」

「オッサン…!」

「ヴェルディ…「これ」を………」

ガストロは隠し持っていた「何か」をヴェルディ少年に手渡すと、

もう何も言わなかった。もう二度と…………

「どうして、…どうすれば、…ニーキスさま!!」

「くッ、治癒術はまだ修行中なんだが…」

魔女ニーキスは急いで術を試したが、効果は無かった。

そもそもガストロは致命的な物理ダメージを受けた訳ではない…

「ガストロッ!!」

 

妖魔ガストロの身体はドロドロと流れ落ち、ヴェルディが抱き抱えていた

肩や背中の重みは無くなった。

最後にはボロボロの身ぐるみと赤黒い跡だけが地面に残った。

夕陽は彼らに影を落とした。

 

……テトラ一味と対魔士たちは、妖魔盗賊の死を目撃した……

 

テトラ:

「なッ、なんで、………死んだ、の………?」

 

ヴェルディ:

「魔力が尽きたんだ、おそらく……」

 

レジンキッド:

「こんなにも呆気ないものなのか……」

 

ニーキス:

「助けられなかった……」

 

ナラシノ:

「『光の時代』とやらはもう目前に迫っているらしい……」

 

ルナ:

「これが妖魔の…死……?

私たちが生き延びるすべなんて有るのでしょうか……」

 

◆◆◆◆◆◆

 

ヴェルディはガストロから手渡されたものを見返した。

それは「封筒」だったのだが、中に入っていたのは手紙などではなく

「紙包み」のようなもの。

紙が小さく折り畳まれて、いくつか収められていた…

 

「これは……!!」

少年は脳裏になにが閃いたのか、驚愕した。

「なんだ、なにかヤツから受け取ったな。よこすんだッ!」

対魔士の一人が少年に詰め寄る。すると少年は素早く『ナイフ』…巨大剣を構えた!

「こ、こいつは渡せねェ…」

「なにを、どうせ盗品の在処を示した地図とかだろう。さあよこせッ!!」

少年はとっさにナイフで対魔士の手を薙ぎ払った! ナイフとガントレットは

綺麗な音を空に響かせる…

「ヴェルディ!?」

「すまんテトラ。俺にはどうも、イイモンのフリは向いてないようだ…」

 

「無礼者め、捕まえろッ!!」

「チッ、…飛燕連脚!!」

ヴェルディは対魔騎士たちを足技で牽制!

しかし当然騎士たちは怯むことなくジリジリ近寄る。

「オレが無礼者なら、旅行者をテキトーなシゴトで誤認逮捕する「あんたら」は

何者なんだよ!」

「なんだとッ!!」

「この、……グッ…!」

 

ヴェルディは抵抗を続けようとしたが、後方にいた対魔士の術攻撃によって

あえなく倒れた。その術攻撃…魔力火球は無情にもヴェルディの身体を焦がし、

「封筒」を焼いてしまった!

彼の手から離れメラメラと燃えるそれを、ヴェルディはただただ見つめることしか

出来なかった…

 

「しまった……クソ…ッ!!!」

「よし、捕らえろッ」

「待って…ノクティルカ、エザリィウィップ!!」

テトラが魔筆を地に下ろすと、筆毛は一旦地面を潜ってから無数の黒い「つる」

となって周囲にめきめき生え出た!

「つる」は複雑に交差し織り重なり、一時的な防御壁を編み出して

テトラとヴェルディを囲んだ。

「ヴェルディ!どうして……」

 

「昔、このワイルドヴェルトの荒野で一度、死にかけたことがあった。」

「……?」

「砂漠のド真ん中に倒れて……遂に地獄に逝くのだと……。

だがオレは生き延びた。助けられたんだ。

そのときの記憶はすっかりぼやけきっていたが、「こいつ」を見て、思い出した。」

ヴェルディは黒こげになったものを拾い上げて示した。

「熱にうなされながら…見知らぬ男にニガイ粉薬を飲まされたような…覚えはあった。

そのときの男はガストロだったんだ!間違いない!今になって思い出してしまった…

どうして気づかなかったのか……」

 

「…「それ」の中にも粉薬が……?」

「いや、わからない…。オレは紙包みを見ただけ。また何処かの誰かにやる為の、

気まぐれの風邪薬だったのか、「おつとめ」を滞りなく完遂させるための

魔法薬だったのか。それとも毒薬…睡眠薬だったのかもしれない。

……

だが燃えて消えた……。残ったのは消し炭。もう何もわからない。

確かなのは……ただ対魔士たちを、ぶちのめしてやりたいという衝動だけだ……!!」

 

◆◆

 

テトラは妖魔ヴェルディが感情をあらわにしたところを初めて見た気がした。

美しい感情ではなかったが、テトラはそれを見ることが出来て不謹慎ながら

少し嬉しかった。

「一発だヴェルディ。」

テトラは漆黒の防御壁をほどいた。

「一発。死なない程度にぶちのめしたら、すぐにこの町を出る!!」

 

……vs.対魔槍兵、術士……

「このワルガキッ、妖魔か!!」

『一発、か。…コイツラならソレで十分だ。「一人一発」、全員ぶちのめす…』

 

フェンリル化したヴェルディは、マグマの血をたぎらせ邪悪な獣毛を

燃やしながら対魔士たちを睨みつけた。

「お前は一体ッ……ガ、ガストロの敵討ちのつもりか?!」

「やはり盗賊仲間だったようだなッ!」

「愚かな……ガストロは我々の眼前で勝手に死んだだけだろうッ!」

『!…そうだな。ガストロは、勝手に死んだ。そしてオレは勝手にイラつき、

勝手にあんたらを殴るだけだ!!!』

 

破壊衝動のカタマリとなったヴェルディを見て、その場にいた者たちは皆

息を飲んだ…

ヴェルディは一気に力を解放!!

『失せろ!!…ヴァイレンスメイズハート!!!』

「なんだッ!?あ、脚が……」

「なにかが巻きついてッ?!」

(気の毒だけど、ヘタに動かれたらヴェルディの手加減が失敗して

死なせかねないからね…)

魔筆ノクティルカが伸ばした漆黒の「つる」に動きを封じられた対魔士たちは、

片っ端からヴェルディに屠られ叩きのめされ、そして全滅した。

 

『…ただ一言……ありがとうと、言いたかった……』

 

◆◆◆◆◆◆

 

「さあ、ずらかろうヴェルディ。」

「あ、ああ。」

「なんということを…一体どういうワケです!?」

ふいに遠くの方から女性の声。

夕暮れの牢獄に新たなる来客だ。

彼女は牢獄のメインゲート前にバタバタと倒れている対魔士たちを、

そしてそれを見下ろすテトラ一味を発見したのだった…

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。