テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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あらすじ:テトラたちは怪物を殺さない道を見出した。
すごく簡潔に表すと、怪物をヒトに転生させようという話だ。


第22話 転生

……エストルーズ宮殿・神託の間……

 

広間というよりは展望スペース。

屋上に屋根だけ付けたような、風通しの良い儀礼場。

神託の間からは、いわゆる城下町や円形闘技場・城壁の向こうの山河。

そして天空の星々の動きが一望できた。

修学旅行キブンでそこらをひととおり見回った後(主にテトラが。)、

一同は中央に集まる。

ここでいよいよ人体錬成を行うのだ。

 

:幻魔ポルカ

「仮に儀式が失敗に終わった時。

わたしはお前たちによって倒されるのだろう。

それはもはや、やむなし。

だから今のうちに感謝を述べておきたい…皆ありがとう。

わたしが生き延びる道をわざわざ探してくれて。…テオリアもな。」

:テオリア

「…ポルカ…」

:画家テトラ

「成功するよ。大丈夫だよ。」

少女テオリアは頭を撫でられると、その場をゆっくり離れて安全地帯まで退いた。

テトラたちは念のため武器を持って待機する…

:太陽神エンテラス

「では、始めるぞ。 精霊諸君!!」

 

… vs 生命のことわり …

太陽神エンテラスが精霊言語をささやき始めると、

周囲に結界が張られたのか、景色は屈折して夜中のように暗くなる。

そしてホタルが群がるように、

エンテラスの前方に光が集まる。魔力が集まってゆく。

テトラたちが収集した素材も、浮かび上がって光の中に吸い込まれる。

【バジリスクのうろこ】 は人体骨格に。

【メリクリウスゼリー】 は筋肉に。

【女王茸】 は内臓に。

【かめにんの涙】 は血液になりかわる。

【肖像画】を参考に

具象の精霊マクスウェルが各々を造形し、

治癒の精霊ウンディーネが、立体パズルのようにつなぎ合わせていく。

【転生石】の魔力がその縫合を助ける。

 

光の中で人体が生成されていく。

幻魔ポルカはその様子を怯えながら凝視する。

自分への憐れみの心がこの儀式を行わせている。

テトラたち・精霊たちの良心が自分を救おうとしている。

それはこの上ない幸福のはずだ。しかし、

生物のなりそこないであるポルカ。

彼ですら今の状況が常軌を逸していると理解できた。

 

:精霊セルシウス

「もしかすると痛むかもしれん。覚悟せよ。」

冷たい声がポルカの獣耳を撫でる。

人体模型のとなりに寝かされた幻魔ポルカは、唐突に心臓をまさぐられる。

冷凍精霊セルシウスの白い腕はポルカの胸を貫通すると、

心臓を握りつぶすようにして彼の精神を"こおりづけ"にした。

セルシウスは慎重にその精神を抜き出す…

失敗は許されない。

ポルカは初めて、精神が肉体から離れてゆくのを感じた。

肉体…今まで自分の体だと思っていたものが、突然風景の一部となる。

もしくは自分自体が風景の一部となる。

目に映るものすべてが、違ってゆく。

それは世界から見放されたようで悲しかった。

セルシウスはポルカの精神をそっとイフリートに手渡した。

 

:精霊イフリート

「さあいくぜ、ヤケドするなよ!?」

火の精霊イフリートはポルカの精神を炎であぶる。

すると精神は炎と一体となり、

マクスウェルたちが生成した人体の内部に流れ込んでいく。

イフリートの巨腕は人体を押さえつけて、ポルカの精神を焼き付ける。

さながら心臓マッサージのようだ。

爆炎が人体を轟轟と焼く。

めらめら揺らめく炎の光はイフリートを一層凶悪に演出する。

そして。

人体模型はいつの間にか、ポルカの体だった。

つないだばかりの関節。

縫ったばかりの筋肉。

初めて光を通す眼球。

全身を激痛に襲われる。めまいもする。呼吸もままならない。

「なんだッ…これはッ…!!」

彼は必死に思考を巡らせる…だか何もわからない。

「わたしはッ…誰だッ…!?」

この新たな肉体にキオクはまだ無い。

ポルカは混乱したまま意識を失った…

 

:少女テオリア

「ねえ! ポルカは無事なの!?

ポルカ!! 聞こえる!? ねえ起きて!!」

:太陽神エンテラス

「安心せい、眠っておるだけじゃ。 あと少しで儀式は完了するぞ。」

 

◆◆

 

「…」

「…なんだ?」

「…」

「…なんだ、これは。」

「…ここはどこだ? わからない。」

「…わたしは何をしている? わたしは何を慌てているんだ?」

 

あたりを見回してもわからない。

ケムリの中に浮かんでいるようだ。

ここには自分以外なにもない…

いや。

ケムリの中に映像が映り始めた。

いくつもの映像がそこらに映る。

それらのほとんどには同じ 【少女】 が登場している。

この映像作品群の主人公だろうか?

そうか、なるほど。

わたしは、この映像作品の作者なのだ。

なかなか愛くるしいキャラクターを造形したな、わたしは。

「…」

いや。

それは逆な気がする。 逆とはなんだ?

 

ポルカは生まれてまだ一年弱。

その短い生の、短いキオクを取り戻すのはそう難しいことではないだろう。

地の精霊ノームが地脈からキオクを引用。

雷の精霊ヴォルトが電気信号のキオクを送信する。

そして最後に太陽神エンテラスが、

ポルカに生命を付与した…

:???

「起きて!! 起きてポルカ!!」

:???

「ポルカ?…そうだ、…わたしはポルカ…」

:少女テオリア

「ポルカ、死んじゃダメだよ!!」

:ポルカ

「ああ… わたしは今、生まれ変わった…!

わたしは死なないぞ!!」

 

意識を取り戻す人間ポルカ!

精霊たちは人体錬成と精神移植を成功させた!!

これでもう妖魔と精霊が死ぬことはない…

星の破滅も回避できたのだ。

ついに彼らは成し遂げた。

ポルカを殺さずに世界を救ったのだ。

そして幻魔の抜け殻は動き出した。

ようやくささやかな物語は終わりを迎えるということである!!

 

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