テイルズオブノワール ー君を見届けるRPGー   作:ピコラス

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第1話 トラッシュ

「ここがガラクタ屋『トラッシュ』だ。」

「ストレートでいい名前だね。」

パッと見、店をやっているようには見えない茶色い木組みの建物。

元々茶色いのか、汚れまくっているのか……たぶん後者なのだ。

少年がドアを押し開け店内へ進むと、

金髪の少女と背の低いマント男(実は人形)が後に続いた。

 

店の中は、当たり前だがガラクタの山!!

針の無い時計やカラッポの鳥かご、これでもかというくらい割れた鏡、

その他イロイロ用途不明の物体が数百点。

大体みんなサビているか黒ずんでいた。

店内の絶景を心底楽しそうに見回すテトラを置いて、

ヴェルディはサッサと奥へ向かう。

最奥にはこの店の主、黒い犬の妖魔だ。

「ようこそヴェルディ! めずらしく元気そうだ。」

 

「…どうしても欲しいものがあるんだ。……増幅器。それに関する情報だけでもいい…」

ヴェルディの言う「増幅器」とは『魔原子増幅器』のことだ。

この世界のあらゆるものの中に宿る魔力の源。

それが魔原子、『クロリム』……

「増幅器か……何か宿命のようなものを感じるな。実は今1つ、ある。

男が昨日の夜売っていった。」

 

「それがあればヴェルディは死なずに済むの!? 私の魔力も元に戻る!??」

と、うしろからテトラ。

手にはよくわからん物体を持っている。買うのか?

「キミは……ヴェルディのおともだちかい?お嬢さん」

「こいつが『テトラ・エピクロス』なんだ……! ビックリだろ?」

「!あぁ、あなたがテトラ!

あなたの『魔法画』はいくつか観たが、皆素晴らしかった!

この店にあったものは全部その少年に持っていかれてしまったがね。」

少年はそんなことわざわざ言うなよと、ほんの少し困ったカオをした。

少年はテトラの様子をうかがったが、その表情は真剣だった。

 

横からマント男レジンが言った。

「テトラ。増幅器や増幅術による爆発的なクロリム増幅は、ヘタをすれば

妖精を殺してしまうとても危険なものと聞く。

人体にも害を及ぼす禁断の技術と……

ましてガラクタ屋に売られるようなモノ。

危険過ぎる……」

 

「……そうだね。」

テトラの声は穏やかだった。

「そう。ガラクタ屋に売られるようなモノだったんだ、私の絵は。

誰かの為じゃない、ただ自分が『楽しく描く』だけの絵だった。

でも気に入ってくれる人は、いた。

…………正直もう…………もう、いいんじゃないかって気もしてる…………

けど、それでもヴェルディはまだ描けるって、

描いてほしいって言うんだ。

描きたいよ。」

 

店主はカウンターのさらに奥の部屋から箱を出してきた。

……傷も汚れも無い黒の木箱……

箱を開け、中に眠っていたそれを店主はゆっくり持ち上げた。

それは球根のような、「かたまり」。

店主は黙ってテトラに手渡す。

怪しげな割れ目がはしり、

黒いうぶ毛状のものが一ヶ所から微かに生えている……

 

「これ、持ってるだけで魔力をくれるの?」

テトラはヴェルディに目を向けた。

「いや、…………妖魔の血が要る。」

 

ヴェルディはおもむろに左腕…先日テトラのアトリエで怪我した腕を突き出した。

すると「黒いうぶ毛」が勢いよく波打ちながら伸びて腕に巻き付く!

「?!何……?」

「黒いうぶ毛」は一瞬で赤く染まり「かたまり」は膨らみ始める。

やがて「かたまり」から新たに根っこが生え出し、今度はテトラの両腕にまとわりつく!

テトラは、そこから身体中へ何かが流れていくのを感じた。

それと同時に危機感が沸きだした。

………このままにしておくとヴェルディを殺してしまう………?

 

「この……はなれろっ!!!」

テトラはあわてて「赤いうぶ毛」を引きちぎった。

近くのガラクタ達に血しぶきが飛ぶ。

ヴェルディの腕は解放され、うぶ毛は元の黒色に戻った。

「これは、何を?…………血を、吸ったの…………?」

ふう、と一息ついてからヴェルディは話した。

「そいつは、妖魔の血に宿るクロリムをタネに、

……核分裂……新たにクロリムを発生させる、

そういう性質を持ったものなんだ。」

「レジンは知ってたの……?」

「いや…。ただ、危険なものとして大昔に禁じられた技術だと認識してはいたが……」

「かたまり」を持ったままテトラはぺたりと座り込んだ。

「こんな、吸血鬼みたいなことしてまで、私……」

 

「すまないテトラ。わかってくれとは言わない。

…いや、ここのガラクタの山を宝の山のように思えるあんたなら、

きっとわかってくれるだろう……自分勝手な俺の気持ち。

よくわからないまま、消えていくヤツらの気持ち。

無意味に仲間を人間を自分を傷つける

面白くないヤツらの面白くない気分さえも………」

 

ずいぶんと長い静寂。

テトラはその無音の空間でガラクタの声を聞いた気がした。

テトラの手にあった「かたまり」はみるみる形を変え、

少々大きめな絵筆の姿を現した。

それを操りテトラは絵を描いた。

……『魔法画』は、絵具ではなくクロリムを用いて色彩明暗姿形を描き出す。

店内壁面の適当なところに描いたそれは、天を仰ぐ狼。

少年は黙ったまま絵を見つめていた。

これは売り物に出来ないなと、店主。

久しぶりに絵を完成させたぞと、テトラは喜んだりはしなかった。

 

「なんで魔力が弱まってるんだろう………?」

 

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